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自称:妖精王
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妖精さんの姿は見えませんが無数にいるようです。それを肯定するようにありえない動きで無数の妖精さんたちの攻撃を対処している人吉君。ですがいつの間にか押されていました。劣勢と言っていいでしょう彼の表情にも余裕がなくなります。
「あははは。無駄なんだよ。君がいくら妖精さんに干渉できようと数が違うんだ、数が。僕が呼びかければ呼びかけるだけ来てくれるんだよ。妖精さん、妖精さんってね」
チョウタ君が妖精さんという度に確かに数が増えている気がします。人吉君の加護《場酔い》によるチートは消耗が激しいようで目に見えて疲れているのが分かります。やはり限界が訪れます。すべての攻撃に対処していた動きはもう見る影もなくだらりと腕を落し気づけば見えない何かから打撃系の攻撃を受けています。
「やっぱり僕は選ばれた存在なんだ。妖精さんは最高だ。そしてそれを従える僕こそが妖精王なんだ。この力さえあればだれだって僕に従うはずさ。そうだ、みんなみんな僕の下に付けばいいんだ。そうすれば無用な争いもなくなる」
「おいおい、計画とちげーじゃねーかよ。チョウタ」
「言っただろ?テキトーなとこで戦力だけ削いで人吉に勝ち譲ってやろうって」
ボコボコにされている人吉君の前に立っていたのはいつの間にか復活していたアキト君とベニマル君でした。
「アキト君、ベニマル君?どうして……」
人吉君も状況がつかめないようです。
「どこぞの天使様のせいでちょっとこの世界に来てから考え方が変わっちまったんだよ」
アキト君が人吉君を支えます。
「アキト、ベニマル、僕はもうそのなまぬるい三文芝居はやめにするよ。この妖精王たる僕が頂点に立てばすべて解決するからね。黙ってみてなよ」
チョウタ君はの目にもう彼らは映っていませんでした。加護の効果なのでしょうかそれとも妖精の影響なのでしょうか。彼の中の気持ちが増長していくのが分かります。
「チョウタ、お前と喧嘩するのは初めてかもしれねーな」
「ダチとの喧嘩ってのも青春っしょ」
チョウタ君と明確に対立するアキト君とベニマル君。
「ああ、もういいや。まだ僕と同じステージにいるとおもちゃってるんだ。そのうぬぼれをまず修正してもらおうか。一応友達だったからね手加減くらいはしてあげるよ。妖精さん、遊んであげて」
「打ち合わせ通りいくぞベニ」
その言葉と同時にチョウタ君の位置と人吉君を腕に抱きかかえたアキト君の位置とが入れ替わりました。
「俺も隠し玉みせてやるよ」
加護[コートチェンジ]で移動させられたチョウタ君を確認するベニマル君。するとベニマル君の姿が一瞬で変わります。この巨大な姿は先ほど少しだけ拝見しました。巨大な翼に漆黒のボディ、威圧感のある強者のシルエット、これはアリューさんです。
「アリューねーさんが協力してくれんだよ。俺なんかのためにわざとやられてくれて感謝しかねーよ」
私も知りませんでした。アリューさんを一度倒したことでベニマル君はアリューさんに変身できるようになっていたようです。変身の際の衝撃ですぐ隣にいたチョウタ君が吹き飛び壁に叩きつけられます。
「っは、あ……ありえない。なんで僕がこんな痛い目にあわなきゃいけないんだ。僕は王だ。妖精王だぞ」
「凍れ」
チョウタ君の足元が凍り彼の足をその場から動かなくしました。
「ひれ伏せ」
上からの圧で床へとたたきつけられ無様な態勢になる妖精王。
「抱かれよ」
そして、床に全身がついたことでそのすべて凍らせていきます。
アリューさんの力をなかなか使いこなせています。
「ようせいさん?なんで、ぼくは君たちの王様だよ。どうして……やめろおおおおおおおおお」
凍てついていくチョウタ君の氷が一瞬で剝がされます。しかし、本人は苦しそうにしています。彼を中心に謎の術式が展開されています。チョウタ君の血を媒介に赤い光を放ち小さなそれらは姿を見せました。
棒人間と呼ばれる絵を御存じでしょうか。まさにそれです。サイズは15センチくらいといったところでしょうか。1000以上の赤い棒人間がチョウタ君の下に展開されていた術式から召喚されました。
「アソボ、アソボ、イッショニアソボ」
妙に高い声で1000以上の棒人間が龍めがけて突っ込んできます。
「凍れ、砕けよ、放て」
棒人間の目の前に氷柱を出現させ串刺しに、更にその氷柱が砕けつぶてとなって他の棒人間を襲います。棒人間は確実に減りましたが数が違いすぎます。いくら倒しても次がきます。気づけば龍の全身に棒人間たちが張り付いていました。
「セーノ、ハイ」
合図とともに龍の体は引きちぎられました。
「ヴォオオオオオオオオオオオ」
龍の悲鳴に近い咆哮と共にその姿は元のベニマル君に戻りました。
「べーわ。変身を解除できないで気を失ってたら死んでたわ」
冷や汗をかいているもののベニマル君に目立った傷はありません。メタモルフォーゼの加護はすごいですね。変身中のダメージを無かったことにできるみたいです。今回はそのチートに助けられました。しかし、状況は変わっていません。彼はまだ棒人間たちに囲まれたままの状況です。
「モウイッカイ、モウイッカイ」
「いやいやいやもう無理だって。アリューさんに変身すんのはすげえ消費すんだよ」
「ジャアイイヤ。ブンカーイ」
一斉に棒人間たちがベニマル君に襲い掛かってきます。
衝撃的な展開の数々に見入ってしまっていたため気づくのが遅れました。私たちの横を何かがすり抜けてベニマル君まで一直線に向かっています。
「剣舞」
ベニマル君を守るように現れた彼女。襲い掛かる棒人間たちを自身を中心に円を作るように切り刻みました。
「鏡……花?」
「えへへーきちゃった」
剣聖は彼氏の家にサプライズで来る彼女のような軽いトーンでベニマル君に告げました。
そういえば私に付与された加護は14個でした。剣聖の加護は適性がないからもらえないのかなとか都合のいいこと考えていましたがまさか脱走していたとは……
不意打ちをくらって思考が追い付いていない私とセリアは完全に油断していました。
今度は女子生徒ABCと幼い女の子が後ろから来ていることに全く気付けなかったのです。
女子生徒Aと目が合います。私は愛想笑いとお辞儀をしました。
向こうもお辞儀を返してくれました。そしてそのまま私達を通り過ぎます。これを他の女子生徒たちにも繰り返しました。先を急いでいるみたいでスルーしてくれました。お互いに関わらないでおこうという意思疎通に成功したみたいです。この子を除いては。
「あなたたちはだーれ?パパの敵?」
もしかして人吉君はこの幼い子にパパと呼ばせているのでしょうか。いやでもさっきはご主人様って呼ばれていたような……今はそれを考えてる場合ではなさそうです。とりあえずなんて答えていいのか悩みますね。
「今は共闘してる味方だと思いますよ?」
嘘は言ってないはずです。間違っても私達は棒人間サイドではないので。
「わかった」
それだけ言うと女の子は大広間へと入っていきました。それにしてもあの子、なにか引っかかりますがそれに頭を使っている余裕はなさそうです。セリアもどうしようどうしようとあたふたしていますしそろそろ行動に出るべきなのかもしれませんね。
「あははは。無駄なんだよ。君がいくら妖精さんに干渉できようと数が違うんだ、数が。僕が呼びかければ呼びかけるだけ来てくれるんだよ。妖精さん、妖精さんってね」
チョウタ君が妖精さんという度に確かに数が増えている気がします。人吉君の加護《場酔い》によるチートは消耗が激しいようで目に見えて疲れているのが分かります。やはり限界が訪れます。すべての攻撃に対処していた動きはもう見る影もなくだらりと腕を落し気づけば見えない何かから打撃系の攻撃を受けています。
「やっぱり僕は選ばれた存在なんだ。妖精さんは最高だ。そしてそれを従える僕こそが妖精王なんだ。この力さえあればだれだって僕に従うはずさ。そうだ、みんなみんな僕の下に付けばいいんだ。そうすれば無用な争いもなくなる」
「おいおい、計画とちげーじゃねーかよ。チョウタ」
「言っただろ?テキトーなとこで戦力だけ削いで人吉に勝ち譲ってやろうって」
ボコボコにされている人吉君の前に立っていたのはいつの間にか復活していたアキト君とベニマル君でした。
「アキト君、ベニマル君?どうして……」
人吉君も状況がつかめないようです。
「どこぞの天使様のせいでちょっとこの世界に来てから考え方が変わっちまったんだよ」
アキト君が人吉君を支えます。
「アキト、ベニマル、僕はもうそのなまぬるい三文芝居はやめにするよ。この妖精王たる僕が頂点に立てばすべて解決するからね。黙ってみてなよ」
チョウタ君はの目にもう彼らは映っていませんでした。加護の効果なのでしょうかそれとも妖精の影響なのでしょうか。彼の中の気持ちが増長していくのが分かります。
「チョウタ、お前と喧嘩するのは初めてかもしれねーな」
「ダチとの喧嘩ってのも青春っしょ」
チョウタ君と明確に対立するアキト君とベニマル君。
「ああ、もういいや。まだ僕と同じステージにいるとおもちゃってるんだ。そのうぬぼれをまず修正してもらおうか。一応友達だったからね手加減くらいはしてあげるよ。妖精さん、遊んであげて」
「打ち合わせ通りいくぞベニ」
その言葉と同時にチョウタ君の位置と人吉君を腕に抱きかかえたアキト君の位置とが入れ替わりました。
「俺も隠し玉みせてやるよ」
加護[コートチェンジ]で移動させられたチョウタ君を確認するベニマル君。するとベニマル君の姿が一瞬で変わります。この巨大な姿は先ほど少しだけ拝見しました。巨大な翼に漆黒のボディ、威圧感のある強者のシルエット、これはアリューさんです。
「アリューねーさんが協力してくれんだよ。俺なんかのためにわざとやられてくれて感謝しかねーよ」
私も知りませんでした。アリューさんを一度倒したことでベニマル君はアリューさんに変身できるようになっていたようです。変身の際の衝撃ですぐ隣にいたチョウタ君が吹き飛び壁に叩きつけられます。
「っは、あ……ありえない。なんで僕がこんな痛い目にあわなきゃいけないんだ。僕は王だ。妖精王だぞ」
「凍れ」
チョウタ君の足元が凍り彼の足をその場から動かなくしました。
「ひれ伏せ」
上からの圧で床へとたたきつけられ無様な態勢になる妖精王。
「抱かれよ」
そして、床に全身がついたことでそのすべて凍らせていきます。
アリューさんの力をなかなか使いこなせています。
「ようせいさん?なんで、ぼくは君たちの王様だよ。どうして……やめろおおおおおおおおお」
凍てついていくチョウタ君の氷が一瞬で剝がされます。しかし、本人は苦しそうにしています。彼を中心に謎の術式が展開されています。チョウタ君の血を媒介に赤い光を放ち小さなそれらは姿を見せました。
棒人間と呼ばれる絵を御存じでしょうか。まさにそれです。サイズは15センチくらいといったところでしょうか。1000以上の赤い棒人間がチョウタ君の下に展開されていた術式から召喚されました。
「アソボ、アソボ、イッショニアソボ」
妙に高い声で1000以上の棒人間が龍めがけて突っ込んできます。
「凍れ、砕けよ、放て」
棒人間の目の前に氷柱を出現させ串刺しに、更にその氷柱が砕けつぶてとなって他の棒人間を襲います。棒人間は確実に減りましたが数が違いすぎます。いくら倒しても次がきます。気づけば龍の全身に棒人間たちが張り付いていました。
「セーノ、ハイ」
合図とともに龍の体は引きちぎられました。
「ヴォオオオオオオオオオオオ」
龍の悲鳴に近い咆哮と共にその姿は元のベニマル君に戻りました。
「べーわ。変身を解除できないで気を失ってたら死んでたわ」
冷や汗をかいているもののベニマル君に目立った傷はありません。メタモルフォーゼの加護はすごいですね。変身中のダメージを無かったことにできるみたいです。今回はそのチートに助けられました。しかし、状況は変わっていません。彼はまだ棒人間たちに囲まれたままの状況です。
「モウイッカイ、モウイッカイ」
「いやいやいやもう無理だって。アリューさんに変身すんのはすげえ消費すんだよ」
「ジャアイイヤ。ブンカーイ」
一斉に棒人間たちがベニマル君に襲い掛かってきます。
衝撃的な展開の数々に見入ってしまっていたため気づくのが遅れました。私たちの横を何かがすり抜けてベニマル君まで一直線に向かっています。
「剣舞」
ベニマル君を守るように現れた彼女。襲い掛かる棒人間たちを自身を中心に円を作るように切り刻みました。
「鏡……花?」
「えへへーきちゃった」
剣聖は彼氏の家にサプライズで来る彼女のような軽いトーンでベニマル君に告げました。
そういえば私に付与された加護は14個でした。剣聖の加護は適性がないからもらえないのかなとか都合のいいこと考えていましたがまさか脱走していたとは……
不意打ちをくらって思考が追い付いていない私とセリアは完全に油断していました。
今度は女子生徒ABCと幼い女の子が後ろから来ていることに全く気付けなかったのです。
女子生徒Aと目が合います。私は愛想笑いとお辞儀をしました。
向こうもお辞儀を返してくれました。そしてそのまま私達を通り過ぎます。これを他の女子生徒たちにも繰り返しました。先を急いでいるみたいでスルーしてくれました。お互いに関わらないでおこうという意思疎通に成功したみたいです。この子を除いては。
「あなたたちはだーれ?パパの敵?」
もしかして人吉君はこの幼い子にパパと呼ばせているのでしょうか。いやでもさっきはご主人様って呼ばれていたような……今はそれを考えてる場合ではなさそうです。とりあえずなんて答えていいのか悩みますね。
「今は共闘してる味方だと思いますよ?」
嘘は言ってないはずです。間違っても私達は棒人間サイドではないので。
「わかった」
それだけ言うと女の子は大広間へと入っていきました。それにしてもあの子、なにか引っかかりますがそれに頭を使っている余裕はなさそうです。セリアもどうしようどうしようとあたふたしていますしそろそろ行動に出るべきなのかもしれませんね。
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