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手駒を増やしましょう
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棒人間たちは広間にいるすべての人間に対して襲い掛かっています。
「それにしても数が異常でしょ。キリがないよー」
女子生徒Aがうんざりした声をあげます。その言葉が出るほど今は余裕があるということです。
「だが存在が見えるだけ対処が楽だ」
ベニマル君と剣聖は息を合わせて次々に棒人間を塵に変えています。
「こいつらチョウタが従えていた時は見えなかった。それが厄介だったんだが今はそこら辺にいる魔物と変わんねーな」
アキト君にも余裕が見えます。
「てゆーか普通に馴染んでるけどあんた達なんで共闘する気になったの?態度も全然違うし」
女子生徒Bは光を放つ魔法で棒人間を薙ぎ払いながら急に味方になったアキト君たちに当然の疑問をぶつけます。
「ああーあれはちょっとした清算みたいなもんだからよ。今は純粋に協力してやるよ。安心しろ」
アキト君が少し照れくさそうに言っています。
「さて、大技いくよ」
「あたしもあたしも」
女子生徒Bと剣聖が集まってきた棒人間を一瞬の閃光のあと即座に塵へと昇華しました。
いつのまにか1000以上いた棒人間達は転移者達によってすべて消されていました。
女子生徒Cがチョウタ君を含めた皆の治療を行っています。彼女の加護は自身の回復系スキルを強化するもので死んでいなければどのような重症患者でも健康体になれます。しかし、あの子はあんな目に遭わされてもしっかりとチョウタ君も助けるのですね。
「そろそろ出て来たら?」
女子生徒Aがこちらに向かって声をかけてきました。どうやら観察と思考の時間は終了を告げたようです。もうちょっと考えをまとめたかったのですが、この後の流れをある程度形にできました。がんばって誘導しましょう。
「み、皆さん、こんにちわー天使のサラです。後ろにいるのは護衛のセリアです」
セリアは初対面の人間が多すぎるためおとなしくお辞儀だけしました。
「サラの姉御おおお」
アキト君とベニマル君が駆け寄ってきます。剣聖がこちらをにらんでいますが勘違いはやめてもらいたいです。別に私とベニマル君は何もありません、頼みますからその剣から手を放してください。冷や冷やしながらもアキト君たちに軽く事情を話して人吉君たちのパーティに向き直ります。
「少しお話よろしいでしょうか」
「天使っていったっけ。ということは私たちのこと助けに来たの?」
そう受け取りますか。天使というワードに疑問を持っていなそうですしその辺の説明は不要っぽいですね。
「返答は私の質問を先にしてからでいいですか」
「なんか回りくどいわね……」
女子生徒Aはあまり交渉とかは好きではないのでしょうね。はいはいどーぞと投げやりに返されました。なぜ彼女は率先して私と会話しているのでしょう。確実に適任は他にいる気がします。
「皆さんはなぜここにいるのですか?一応の目的を聞きたいのです」
「僕の復讐につき合わせちゃったんだよ。最低だよね僕は」
人吉君は自虐モードで感傷に浸っています。復讐が終わって頭の中が整理できて来たのでしょうね。こういうタイプの感情はいいですね。話しやすいです。しかしティアとの関係が不透明なのが嫌です。
「ティア……えーとグラティアという人物を御存じですか」
「彼女はこの作戦の立案者だよ。王都にたまたま来ていた僕とヨーちゃんに声をかけてくれたんだ。ああヨーちゃんって言うのはこの子で名前の由来は幼い子だからヨーちゃんって呼んでるだけで本名は別にあるんだけど」
なんか語り始めました。長くなりそうですので本筋に戻さなくては。
「それよりもティアになんと言われて今回参加したのですか」
「君に復讐の機会を与えようって。馬鹿ですよね。行方不明になった3人の手がかりをなにももっていなかったので、その言葉に飛びついていました。今思えば本当に復讐しか頭にない馬鹿でしたよ」
「そんなことはないです。その気持ちは大事ですよ。復讐いいじゃないですか。しましょうよ」
まずは相手を否定せず、話に乗りましょう。
「え?でももう僕の復讐は……」
「復讐するのはアキト君たちにではないですよ。こんな状況になった原因がありますよね」
そして、話の方向をこちらに持っていきます。
「へ?原因?」
さあ、こじつけましょうか。
「まず王都の王族の方々があなた達をここに連れてきた張本人です。これも原因の一つになります。しかし、王族たちも自分たちだけでそんなことができるはずがありません。そこで注目すべきはあなた達に加護が付与されている理由です。確実にこの件には女神アルリスが関わっています。加護の付与などこの世界を統べる者でなければできません。天界でも彼女の行動は問題になっており人間達に迷惑をかけているのです。だから今こそ力を貸してはいただけませんか。皆さんで原因の根本を断ちましょう」
「ど、どうする……みんな」
いきなりの話に自分一人では決められない。仲間の方を見ます。
「実は私も魔王を倒せば帰れるって言われたときに少し思ってたんだよね。それってちゃんと解決してないよねって。また何かある度に呼び出されるんじゃないかって。だってそうでしょう。こっちに呼んだのは魔王じゃなくて女神や王族たちなんだから。また呼ばれたらたまったもんじゃないわ」
女子生徒Bが乗ってきてくれました。
「そうですよ。問題を先送りにせず解決を目指しましょう」
なかなか好感触です。この自分の向けたい方向にもっていけています。
しかし、私は一つ悩んでいます。ティアの存在です。あの子をこのまま打ちめかして女神になることを選ぶか。それとも彼女のあの言葉を信じるべきか、人吉君の発言から何かを企んでいるのは確かなのですが……保険はかけましょう。でも私らしい道を選びます。
「これより私たちは魔王に加勢します。今、魔王と戦っているグラティアを止めます」
「それでほんとに解決するのか?」
人吉君の発言は皆も思っている当然の疑問ですね。しかし、詳しく説明しましょうという私の言葉は勢いのある別の言葉にかき消されました。
「姉御を信じてくれ人吉。頼む!俺たちを変えてくれた恩人なんだ」
アキト君とベニマル君が人吉君に頭を下げていました。
「いいよ。今の僕はそういうの考えたい気分じゃない。なるようになるさ」
憑き物が落ちたような人吉君は不器用な笑顔でアキト君と肩を並べました。
詳しく説明する前に話がまとまっていました。女子生徒たちもアキト君たちも協力してくれるようです。剣聖の子もベニマル君に説得され了承してくれました。チョウタ君はまだ意識を失っているのでここに置いていこうと思います。
「おね―ちゃんはパパの味方なの?」
不意に声をかけられました。気づけば私の横に幼い女の子がまた同じ質問をしています。
「ずっと気になっていたのですがパパというのは誰のことを言っているのですか?」
「パパの名前わね。グラティアっていうんだよ」
疑問符が頭の中を飛び交います。
「はい?」
「言われたの。私はあなたの父親であり母親でもあるからパパでもママでも好きな方で読んでいいよって」
どういうことですかティア。初めてだって言ってたのに。こんな子がいるなんて私の純情裏切りまくってるじゃないですか。
「えとあなた名前は」
「レ――――」
上の方からものすごい音がします。彼女の言葉が聞き取れませんでした。屋上で最終決戦が始まったのかもしれません。
「急ぎましょうか。魔王が倒されてしまったらすべてが終わってしまいますし」
この子のことを棚上げにするのはどうかとも思いましたが今は上の状況が気になります。私たちは急いで大広間から屋上へと続く階段を駆け上がりました。
「それにしても数が異常でしょ。キリがないよー」
女子生徒Aがうんざりした声をあげます。その言葉が出るほど今は余裕があるということです。
「だが存在が見えるだけ対処が楽だ」
ベニマル君と剣聖は息を合わせて次々に棒人間を塵に変えています。
「こいつらチョウタが従えていた時は見えなかった。それが厄介だったんだが今はそこら辺にいる魔物と変わんねーな」
アキト君にも余裕が見えます。
「てゆーか普通に馴染んでるけどあんた達なんで共闘する気になったの?態度も全然違うし」
女子生徒Bは光を放つ魔法で棒人間を薙ぎ払いながら急に味方になったアキト君たちに当然の疑問をぶつけます。
「ああーあれはちょっとした清算みたいなもんだからよ。今は純粋に協力してやるよ。安心しろ」
アキト君が少し照れくさそうに言っています。
「さて、大技いくよ」
「あたしもあたしも」
女子生徒Bと剣聖が集まってきた棒人間を一瞬の閃光のあと即座に塵へと昇華しました。
いつのまにか1000以上いた棒人間達は転移者達によってすべて消されていました。
女子生徒Cがチョウタ君を含めた皆の治療を行っています。彼女の加護は自身の回復系スキルを強化するもので死んでいなければどのような重症患者でも健康体になれます。しかし、あの子はあんな目に遭わされてもしっかりとチョウタ君も助けるのですね。
「そろそろ出て来たら?」
女子生徒Aがこちらに向かって声をかけてきました。どうやら観察と思考の時間は終了を告げたようです。もうちょっと考えをまとめたかったのですが、この後の流れをある程度形にできました。がんばって誘導しましょう。
「み、皆さん、こんにちわー天使のサラです。後ろにいるのは護衛のセリアです」
セリアは初対面の人間が多すぎるためおとなしくお辞儀だけしました。
「サラの姉御おおお」
アキト君とベニマル君が駆け寄ってきます。剣聖がこちらをにらんでいますが勘違いはやめてもらいたいです。別に私とベニマル君は何もありません、頼みますからその剣から手を放してください。冷や冷やしながらもアキト君たちに軽く事情を話して人吉君たちのパーティに向き直ります。
「少しお話よろしいでしょうか」
「天使っていったっけ。ということは私たちのこと助けに来たの?」
そう受け取りますか。天使というワードに疑問を持っていなそうですしその辺の説明は不要っぽいですね。
「返答は私の質問を先にしてからでいいですか」
「なんか回りくどいわね……」
女子生徒Aはあまり交渉とかは好きではないのでしょうね。はいはいどーぞと投げやりに返されました。なぜ彼女は率先して私と会話しているのでしょう。確実に適任は他にいる気がします。
「皆さんはなぜここにいるのですか?一応の目的を聞きたいのです」
「僕の復讐につき合わせちゃったんだよ。最低だよね僕は」
人吉君は自虐モードで感傷に浸っています。復讐が終わって頭の中が整理できて来たのでしょうね。こういうタイプの感情はいいですね。話しやすいです。しかしティアとの関係が不透明なのが嫌です。
「ティア……えーとグラティアという人物を御存じですか」
「彼女はこの作戦の立案者だよ。王都にたまたま来ていた僕とヨーちゃんに声をかけてくれたんだ。ああヨーちゃんって言うのはこの子で名前の由来は幼い子だからヨーちゃんって呼んでるだけで本名は別にあるんだけど」
なんか語り始めました。長くなりそうですので本筋に戻さなくては。
「それよりもティアになんと言われて今回参加したのですか」
「君に復讐の機会を与えようって。馬鹿ですよね。行方不明になった3人の手がかりをなにももっていなかったので、その言葉に飛びついていました。今思えば本当に復讐しか頭にない馬鹿でしたよ」
「そんなことはないです。その気持ちは大事ですよ。復讐いいじゃないですか。しましょうよ」
まずは相手を否定せず、話に乗りましょう。
「え?でももう僕の復讐は……」
「復讐するのはアキト君たちにではないですよ。こんな状況になった原因がありますよね」
そして、話の方向をこちらに持っていきます。
「へ?原因?」
さあ、こじつけましょうか。
「まず王都の王族の方々があなた達をここに連れてきた張本人です。これも原因の一つになります。しかし、王族たちも自分たちだけでそんなことができるはずがありません。そこで注目すべきはあなた達に加護が付与されている理由です。確実にこの件には女神アルリスが関わっています。加護の付与などこの世界を統べる者でなければできません。天界でも彼女の行動は問題になっており人間達に迷惑をかけているのです。だから今こそ力を貸してはいただけませんか。皆さんで原因の根本を断ちましょう」
「ど、どうする……みんな」
いきなりの話に自分一人では決められない。仲間の方を見ます。
「実は私も魔王を倒せば帰れるって言われたときに少し思ってたんだよね。それってちゃんと解決してないよねって。また何かある度に呼び出されるんじゃないかって。だってそうでしょう。こっちに呼んだのは魔王じゃなくて女神や王族たちなんだから。また呼ばれたらたまったもんじゃないわ」
女子生徒Bが乗ってきてくれました。
「そうですよ。問題を先送りにせず解決を目指しましょう」
なかなか好感触です。この自分の向けたい方向にもっていけています。
しかし、私は一つ悩んでいます。ティアの存在です。あの子をこのまま打ちめかして女神になることを選ぶか。それとも彼女のあの言葉を信じるべきか、人吉君の発言から何かを企んでいるのは確かなのですが……保険はかけましょう。でも私らしい道を選びます。
「これより私たちは魔王に加勢します。今、魔王と戦っているグラティアを止めます」
「それでほんとに解決するのか?」
人吉君の発言は皆も思っている当然の疑問ですね。しかし、詳しく説明しましょうという私の言葉は勢いのある別の言葉にかき消されました。
「姉御を信じてくれ人吉。頼む!俺たちを変えてくれた恩人なんだ」
アキト君とベニマル君が人吉君に頭を下げていました。
「いいよ。今の僕はそういうの考えたい気分じゃない。なるようになるさ」
憑き物が落ちたような人吉君は不器用な笑顔でアキト君と肩を並べました。
詳しく説明する前に話がまとまっていました。女子生徒たちもアキト君たちも協力してくれるようです。剣聖の子もベニマル君に説得され了承してくれました。チョウタ君はまだ意識を失っているのでここに置いていこうと思います。
「おね―ちゃんはパパの味方なの?」
不意に声をかけられました。気づけば私の横に幼い女の子がまた同じ質問をしています。
「ずっと気になっていたのですがパパというのは誰のことを言っているのですか?」
「パパの名前わね。グラティアっていうんだよ」
疑問符が頭の中を飛び交います。
「はい?」
「言われたの。私はあなたの父親であり母親でもあるからパパでもママでも好きな方で読んでいいよって」
どういうことですかティア。初めてだって言ってたのに。こんな子がいるなんて私の純情裏切りまくってるじゃないですか。
「えとあなた名前は」
「レ――――」
上の方からものすごい音がします。彼女の言葉が聞き取れませんでした。屋上で最終決戦が始まったのかもしれません。
「急ぎましょうか。魔王が倒されてしまったらすべてが終わってしまいますし」
この子のことを棚上げにするのはどうかとも思いましたが今は上の状況が気になります。私たちは急いで大広間から屋上へと続く階段を駆け上がりました。
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