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今日から使える相手の動きを止める3種の方法

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 平行線の攻防は続きいつの間にか私の痺れもなくなってきました。なぜか律義にレデンさんはこちら側で待機しています。
「レデンごめんなさい。必要な事だったのですわ」
 ティアがわざとらしく謝っています。
「おい、さっきの説明に全く必要だった要素なかったぞ」
 そうですね。たぶん本人もわかってて言ってますよ。
「えと、レデンさん一応確認したいのですがどっちに付きます?」
 私は立場をはっきりしてほしかったのでレデンさんに尋ねました。
「そんなもん決まってんだろ……こっちだよ」
 泣きながらティアを指さしました。
「レデンさん……」
 ダメ男に尽くす女の逆バージョン、その思考は1年たっても変わりませんでした。

「すみませんがちょっと作戦タイムしたいのでよろしいですか?レデンさんをそちらに返しますので」
「許可いたしますわ」
 レデンさんはまったく交渉材料にならないはずなのにティアは考えることなく許可を出してくれました。
「二人とも戻ってきてくださーい」
 円陣を組んでしばしの作戦タイムです。本当に向こうは何もしてきません。それどころかレデンさんがザブラ君にもいじられていました。ティアがこちらに向ける視線だけ少し気になりましたが今は皆さんに私のプランを説明するのが先ですね。

「さて、みなさん。今から作戦を伝えますので役割を理解して敵を殲滅しましょう」
 私はやれることはやるタイプです。準備の時間さえ頂ければシンさんの時のように過剰なまでの準備をし目標を成します。今回は少し短いですがそれでも状況を把握した後にこうして作戦を設ける時間があるのは幸いでした。さあアドヴァンテージを活かして圧倒的なまでの勝利を目指しましょう。勝利の後の展開はたぶんアレ次第で決まると思うんでフィーリング的な対応を求められるのでしょうけどね。

 
「あ、準備できましたよ。再開しまーす」
 皆さんに作戦を教えたら意外と呑み込みが早くて助かりました。ただ、人吉君の加護、[場酔い]だけは燃え尽き症候群みたいで発動しないそうです。そこは残念ですが何とかなるでしょう。
「まったく待ちくたびれましたわ。この間に暇つぶしでやったミニゲームでレデンが何回罰ゲームを受けたと思っていますの」
 レデンさんの頭にはなぜか花が咲いています。そんな目で見ないでくださいレデンさん。どう考えてもそれは私のせいではありません。
「それではみなさん、手筈通りに」
 私は加護[指揮者]を使いました。指示を与えた者は龍と戦えるレベルまで能力上昇をします。これだけでもう勝てそうなものですが相手はティアです。手は抜きません。
「がんばれーふぁいとー」
 ちょっぴり恥ずかしのですが加護声援も使用します。セリアの顔が一瞬にやけていたように見えたのは気のせいですかね。
 残りの女子生徒BとCと人吉君は私の横にいてもらいます。女子生徒Bには詠唱を開始してもらい何時でも打てるようにしてもらいます。女子生徒Cには様々な事態にすぐ対処できるようにとお願いしています。人吉君にはある人物をずっと見ているように指示をしました。先輩には隠れるように指示を出しました。全体的な状況を見て必要なら動いてほしいと頼んでいます。

 攻めにまわしたセリアさんには正面からティアを狙ってもらいます。その後ろに続くとように女子生徒Aとアキト君、ベニマル君を走らせました。追撃を担当してもらいます。
「ティア、久しぶり」
 セリアは魔法で作り出した大剣をティアめがけて振り下ろします。
「斬りかかりながら挨拶されるとは思いませんでしたわ。ザブラ守りをお願い」
 ザブラさんがそれを防ぐため、黒い結界を作ろとしています。
「反転してください」
 私は加護[反転]を使用します。結界の作成を成功から失敗に変えました。結界になろうとしていた力が分散していきます。
「多重結界」
 私の妨害に即座に気づくザブラさんはさすがです。すぐに別の障壁を作り出しますが、先程と同じ能力値だと思われていたのでしょうか、それとも急遽作った障壁だからでしょうか、彼のスキル多重結界はセリアの大剣によってすべて砕かれそのままティアとザブラ君へと襲い掛かります。
「金縛り」
 ティアには余計な行動をとってほしくないのでスキルや補正を使えなくする加護[金縛り]で動きを封じさせてもらいました。
「停止」
 もちろんザブラ君が動こうとすることが分かっているので一手うたせてもらいます。加護[停止]で動けなくなってもらいました。

 二人がピンチの状況で彼が動かないはずがないですよね。
「女子生徒Bさん。かましてください」
「馬場だって言ってるでしょ!いい加減覚えなさい」
 横に噴射する火柱がティアをカバーしに向かったレデンさんへと襲い掛かりました。必死に回避しようとしますがここで彼の出番です。
「人吉君お願いします固定してください」
「了解」
 レデンさんは回避しようとした体が動きません。そのまま炎の中へとのみ込まれていきました。たぶん頭のお花は無事ではありませんね。
「ごめんなさい。私が加護の力を使えること言ってませんでしたね」
 レデンさんとザブラさんはもう動けないさそうです。私も加護の乱発で天界の力が底をつきかけています。しかし状況的にこちらの勝利は揺るがないでしょう。後はティアが倒れているのを視認するだけです。

「いいえ知っていましたわよ」
 なぜあなたは立っているのですか……いえ、なぜあなたはそこにいるのですか
「あなた達が作戦会議している間、わたくしが何もやっていないと思いましたの?さすがにステータスを見させてもらいましたわ。相手の動きを止める効果3種などの対処はどうしようかと思いましたが何とかなりましたわね。二人犠牲になってしまいましたが」
「なぜですか……どうやって」
 私の予想をはるかに上回るティア。彼女の声は私の後ろから聞こえます。ティア両腕が私の体にまわされ気づけば私は背後から抱きしめられていました。ティアの柔らかい感触を背中越しに感じます、相変わらずすごい破壊力です。後ろからでもその女性の象徴はしっかりと感じられます。
「はああああああああああああ久々ですわあああああああ」
 ティアが抱き着いて歓喜しています。
「あなたに抱き着けない日々が私をここまで狂わせたのです。まったくいけませんね。サラ成分をもっと吸収しなくては」
 後ろでハァハァ言っているのが正直怖いです。あと、体がだるくなってきました。これは本当に魔力を吸い取るスキルが発動していますね。手に力が入らなくなってきています。

「まったく手間のかかるやつだ」
 私とティアを引きはがすような見えない力が働きます。念力のようなものでしょうか。けれどやはり保険をかけておいてよかったです。上空に飛んでいた先輩が降臨なさります。
「助かりました先輩」
 先輩は気にするなと言って再び上空に戻りました。ちょっと絵面がシュールだったのですがそこを突っ込むとめんどくさそうなのでお口にチャックです。
「大丈夫ですか」
 また、抱き着かれました。今度は前からです。ですが先程と違い今度は安心できます。
「女子生徒Cさん」
 彼女は抱き着くことによって他の人の回復力を高めることができるのだそうです。更に彼女自身からも力を分け与えられているので私の力がみるみる回復していきます。
「無事でよかったよー」
 本当に心配していたようで涙目で私を見つめています。こんなにも他人を心配できるいい子そういませんよ天使ですか?
「女子生徒Cさん助かりました」
 しかしいつまでもこの子に甘えているわけにはいきませんね。
「さあ状況を整理し立て直しましょ」
 
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