魔法学院の最底辺

かる

文字の大きさ
23 / 28

テロ

しおりを挟む
あの日から魔法祭は異様な空気に包まれていた。いきなり準決勝を飛ばして決勝が始まろうとする謎の緊張感。そして、桃や姉さんに向けられた失望と憎悪の視線。考えてみれば当然だ。自分を倒してコマを進めた主席二人がまさかの準決勝で同時に棄権とはいくら何でもタイミングが良すぎるのだ。
明らかに俺に対する憎悪や嘲笑、見下しの視線も紛れていたに違いない。その中でも姉さんと桃は悠々と歩いていた。

「姉さんに桃、いやだったらこんなところ来なくてもいいんだよ?」

俺は二人に耳打ちするように、手を口元にあてて、小さく話す。すると二人はこちらを見て笑顔で

「私たちは期待からここにいるんです。」

と返してきたのを見て俺は心の中で二人の成長に感動をしていた。姉さんはいつも元気なのでこの状況でも俺の前を堂々と歩いていただろう。しかし、桃までも一切姿勢を崩すことなく歩くのを見て俺は二人の血のつながりを改めて実感した。
司会が少しためらいながらも咳払いの後、現在の状況について説明をしだした。

「えー……1年生の今回の準決勝ですが、竜虎茜選手と竜虎桃選手が棄権されたためただいまより決勝をとり行いたいと思います!」

会場は元気よく雄たけびを上げるも、やはり今回の決勝は唐突だったため盛り上がりに欠けていた。俺は3人で立ち見の席から見学をしていた。

「あの子たちが今回の桃と姉さんの相手になる予定だった子か。」

入り口から出てきたのはエメラルドグリーンのような美しい緑色をした髪色に軽くふわっとしたショートボブの髪形をした子であった。対する相手の子は眼鏡をかけたいかにも真面目という言葉が似合うような黒髪の男子生徒であった。

「では……試合開始!」

次の瞬間ルーンを書き始めた男子生徒が後ろから唐突に刺された。
試合開始の合図とともに突然の出来事に会場全体の時が止まったようであった。
そして2秒かおいて、男子生徒が地面に倒れた瞬間、会場に叫び声が響いた。周りの生徒たちは突然の出来事にただ叫んだりおろおろするしかなく、誰一人として何かアクションを起こそうとしなかった。俺はスモークを全力で使い会場一帯を包んだ。その観覧席から飛び降りて、男子生徒のほうへ行くとその男子生徒に回復魔法を使い、どうにか応急処置は施した。
なるべく俺がやったこととはばれないようにするため、完治はできない回復魔法をかけておいた。男子生徒には気の毒だがある程度、療養してもらおう。
その後観覧席へ戻ると、ちょうどスモークも晴れてたので、桃や姉さんが心配をしていたのか俺のところへとやってきた。

「大丈夫でしたか!?彼……。」

「あぁ、もう大丈夫だ。胃袋は完ぺきに貫枯れていたし、心臓の動脈のあたりも削れていたから後2、3分遅れていたら死んでいただろう。」

「そうでしたか……。大丈夫ならよかったです。」

そう考えていたのも束の間、アリーナ全体に武装集団がいて、すでに中に突入をしていた。

「俺とりあえず武装集団と戦ってくるからお前たちはここにいてくれ。」

「なーにいってんの?私たちも当然行くよ!」

「何かあったらこれに魔力を投入してくれ……これで俺に緊急の合図が届く。」

「さっすがけいちゃん!大好き!」

「あ!またお姉さま抱き着こうとしてる!」

「はぁ、二人とも早く行くよ!」

俺たちが階段から降りると1回にはすでに10名ほどの兵士がいた。その兵士たちはトランシーバーなどで連絡を取り合ったり重火器を持っていたりと、時代が古いところと魔法用チョッキなどを着ている最新鋭のところが混在している兵士たちであった。

「このご時世に重火器かよ……。」

確かに重火器自体の威力は高いし、ルーンを書く必要がない、しかし持ち運びにくかったり魔弾の登場などによって徐々に衰退していった。しかし今の状況において重火器はかなり厄介なものになる。ルーンを書く暇さえ与えてくれない、そして魔法がっっ校という限定された状況において、魔法対策チョッキという対魔法用繊維が練りこまれた防具がより一層俺たちは不利な状況に立たされていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

処理中です...