ボッチにラブコメは荷が重い

かる

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ボッチは強制入部をさせられる

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俺、香取かとりりょうのクラス担任・市原いちはら優香ゆかは左手に持った紙を右手の甲でパンパンと叩きながらため息を吐く。

「これ……なんですか?」
「見ての通り今日の総合学習の課題です。」

―――
『今日の総合学習を振り返って』
                              香取 稜
恋愛とは何であろうか?
難しくは考えなくていい、別にこの問題が産業の発展や環境汚染問題に結びつくわけではない。パッと思いついたことでいい。
普段の日常生活から男女間の親しい様子がある、これが発展することによって恋愛というものになるとする。では、片思いの場合はどうなのであろうか。それを恋愛とカウントしない場合、筆者もそのうちの一人であるが人間において恋愛を経験しなかった者は多いのかもしれない。故に男女間の価値観の違いは仕方ないのである。
―――

何が駄目であったのだろうか?他人に質問を投げかけるところから始めるレポートは説得力が増すって本に書いてあったんだけどな……。
あまりに高尚すぎて先生には理解が出来なかったのだろうか?
嘘です、そんなわけがないですよね、ハイ。

「却下。」
「ああああああぁぁぁぁぁ!」

何をしだすのかと思えば優香先生は俺の書いたレポートをシュレッダーにかけたのである。
俺が一生懸命に描いた汗と涙の結晶があああぁぁぁぁ………。
別に汗も涙も入っていない、何なら虚偽きょぎ欺瞞ぎまんの結晶である。

「私の本日の課題は『男女間での価値観の違いをなくす方法』です。誰もあなたの彼女いない歴=年齢のレポートを提出しろとは言っていません。」
「べ、べ、別に俺がそうとは限らないじゃないですか!この筆者の場合はそうかもしれませんけど俺の場合は違うかもしれませんよぉ?」

急いで訂正しようとするも無駄である。それこそ、筆者が俺でないならば問題であり、代筆を任せたことになるのでさらに重い反省文を書かされることになるだろう。
先生は生暖かい視線で急いで否定する俺を見守る。

「別にいいんですよ?教師は生徒の悩みを聞くのが職です。恋愛の相談でも何でも私に相談してください?」

やめろ先生、その言葉は俺に効く。

「大体、あなた友達いないじゃないですか。」

な、何イイイィィィ!?
あ…ありのまま今起こったことを話すぜ!俺は先生ヤツの前で友達いる前提で話を進めてたと思ったらいつの間にかいないことにされていた!
全く持って心外である、実際いたことはない。

「でもですね、先生だっていい年して彼氏の一人もいない」
パァン!
「え?」

大きな破裂音の様なものと共に顔の横を何かが通り過ぎるのが分かった。
先生が構えていたのはエアガンであった。それもオートマチックのデザートイーグルである。

「なんか言いました?」
「いいえ、何も。」

目が怖すぎる。
この場合は何も言わなかったことにするので見逃してもらおう。俺はプリントを受取り先生に一言謝ったのち職員室から出ようとした。

「待ちなさい。」

何だろうか、先ほどの失言、死を持って償ってもらおう!なんて言われたらどうしようか。

「あなたの腐った性根を叩き直すいい機会です。ちょっと待っててください、アポ取ります。」
「アポ?アポクリン汗腺の事ですか?別に先生のワキガ事情など微塵も興味がないですけd痛ぇ!」

話してる最中になんでエアガンで急所狙うの?しかも上唇と鼻の間という滅茶苦茶マイナーな急所、こんなの人体図鑑でしか載ってねえよ。

「あなたのデリカシーの無さは何処から?」
「す”み”ま”せ”ん”……。」

質問の仕方がベンザブロックのCMかよ。あなたの風邪は何処から?
僕は鼻から真っ赤な鼻水が出そうです。

「よし、アポ取れました。今から駅近くの喫茶店に行きますよ。」
「え、ちょっ、行くってまだ言ってないんですけど!」

なんて腕の力だ、この先生に振り回され続けたら俺の傷はどんどん増える一方だ。
絶対に家帰ったら小説投稿サイトに『転生したらゴリラだった件』ってタイトルで先生の話書いてやる。





この学校は比較的駅に近いが学校に行くまでの道のりに坂があり、さらに急勾配な丘の上にあるので登校は大変だ。その分、帰りは3分ほどで着く。毎朝、生徒たちはこの坂を上るために自転車ではなく徒歩を選ぶ人も多い。

「着きました。」
「ぜぇ………ぜぇ………着きましたって………下り坂で全力疾走とかアキレス腱切れますよ……!」

なんでこの人は物理の教師なんだろうか、体育教師のほうが似合うだろう。
学校を出て1分、ただひたすらに下り坂を全力疾走する先生。俺は腕を握られているため逃げることもできず、ただ先生に遅れないよう走り続けた。

「っていうか……教師が職務放棄で喫茶店まで来てよかったんですか?」
「何を言っているんですか?これは立派な生徒指導です。マスター、コーヒーを2杯。」

生徒指導に喫茶店のコーヒーは必要なのか。
先生は顔には見せないが、態度をウキウキとさせながら奥の方へどんどん進んでいき、一つの席の前で止まった。
1秒にも満たない間だっただろう、しかし時計の刻む音すら正確に聞こえてきそうなほど、俺にとってはかなりの時間に感じられた。その異様さの原因は目の前にいた一人の少女であった。
俺は芸術というものに感銘を受けたことはない。しかし、カップをソーサーに置きながら一息つく様子はまるで芸術作品のようであり、この時初めて芸術とは何かを理解できた、そう思わせるほどであった。
――――見惚れる、とはまさにこのことを言うのだろうか。
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