10 / 11
第二章 潜入開始!生徒会には近づきません!
第十話 く る し い
しおりを挟む
「どういうこと、ですか。陛下の兄って、たしか、病気で………」
「あぁ亡くなっているーーー、だが、正確には、私が殺した。」
王は目を伏せた。
分かってしまった。この人がなぜメアリーとアルバートを、こんなに近づける理由が。思わず、尻餅をつく。震える手を口にやる。
(この人は………一回、失敗してるんだ)
それも、自分が。
「おにいたま、おにーたま!」
「どうしたの?レオン。」
「れ、れいんおにーさま、あ、のね、今日は、こ、こんにゃくしゃ?さまと、会ってきたんだ!」
「こんにゃくしゃ?婚約者のことかな?」
「うん!そえー!」
拙い言葉だが、懸命に兄に言葉を伝えようとする。レオンに、レオンの兄であるレインは口角を上げる。
(おにーさまは、とっても優しい人…… 。)
それにつられ、レオンも口角を上げる。
幼いレオンにとって、優しくて頼り甲斐のある兄は、憧れであり尊敬できる、……レオンが1番頼れる人であった。
「兄様、今日はね、この勉強が出来なくて………!」
「そっか、政治はまだ難しいもんね。でも、王様になるためには頑張らないと。」
“王様になるためには頑張らないと。”と、兄はよく言っていた。
おそらく無意識だったのだろう。だが、レインが王になりたいということは見て分かった。だから、レオンは王様になんてならなくてよかった。………だけど。
レオンが14歳、レインが20歳の夏。
ヒュンッと矢が空を切る。
そして的の中心へと刺さった。
次の矢。
矢はヒュッと軽く飛び、的の中心から少しズレた右あたりに刺さった。
的当て大会優勝者は、第二皇子であるレオン。
準優勝が兄のレイン。
「うーん、やはり、的当てではレオンに敵わないねぇ」
「へへ、練習はしてないんだけどね!」
「え………?」
「ん?練習はしてないんだけど………なんかあたっちゃったぁー」
「そっ、そう、なんだ?」
レオンは気づいてなかった。
兄の目が、少し見開かれて。少しだけ。ほんの、少しだけ、歯軋りをしたことに。
さらに、レオンは知らなかった。
毎日、毎日。レインが次こそは、次こそはと、夜な夜な練習をしていることに。
その時期から、レインとレオンの関係は、少しづつ壊れていった。
ピアノも、球技も、勉強も、支持も。
何もかもレオンが優勢だった。
レインは体が弱く、時期国王としてあまり支持されていなかった。
使用人すら、レオンの味方をする。
レインの精神は、段々と壊れていった。
「お兄様!今日は、乗馬大会で一位を取ったんです!いつもは、ミカに負けてしまうんですけど、今日はだいぶ差をつけて勝てたんです!ミカも、私のことを認めてくださって………!」
レインは分かっていた。この弟は、ただ自分に褒められたいだけなのだ、ということを。でもレインは褒められなかった。
ただ、“すごいね”というだけでよかったのに。だめだった。もうその頃には、かなりレインの精神は、弱ってしまっていたから。
「……な」
「なんですか、お兄様。ちょっと聞こえなくてーーー」
「うるさいなっていってんだよこのクズが!楽しいか!なにもかもがお前より劣っているこの兄に!そんな自慢をして!当て付けて!楽しいかって聞いてんだよ!」
「ちが、ただ、私は………!!」
「何が違うっていうんだ………!!!」
痛かった。苦しかった。ずっとずっと苦しかった。でも、これで終わる。
レインはそばにあった果物ナイフを掲げる。すでに心は壊れていた。
幼き頃の楽園のような日々は、もう、心には残っていない。あるのは苦しみと、憎悪と、狂気だけ。
「や、だ、兄様、」
レオンが涙を浮かべる。
レインはレオンの上へ馬乗りになる。
「いやだ!兄様!戻って、戻って下さい!あの頃の、兄様みたいにーー!」
しかしレインの無慈悲な心は動かない。
「兄様ぁぁぁぁぁーー!ッッッ!!」
ざくっ。
「ぐあっ、うぁ、ぁぁぁぁぁっ!!!」
肩を、焼け付くような痛みが切り裂く。
(なんで………なんでだよ、兄さま。なんで………!!)
(俺は………馬鹿だろうか。心臓をついたら、愚弟は死ぬんだ。自分が救われるためにも、殺さなきゃ。王になるために。殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ………
だけど………っ、出来ないんだ。どうして、だろう?こんなやつ、嫌いなはずなのに……………!)
やればやろうとするほど、出来ない。
まるで誰かに手を掴まれているようで。
心臓をつけば、一撃なのに。
ふと蘇る記憶。
自分は、可愛くて、大好きだったレオンに、いろいろなことを教えてあげていた。
だが今自分は、その可愛い弟を、殺そうとしているのだ。
(あれ、なんで………)
一瞬だけ正気に戻る。しかし、すぐに狂気に喰われてゆく。その、直前に。
「ごめん、ごめん、レオン………ごめんな。こんな弱い兄様で、ごめん………!!」
「に、いさ、」
レインの体の中は、体を蝕む狂気と、まだ残る優しさとで、ずっと闘っている。
「壊れないでよ兄様。いやだよ、ねぇ!」
レインからもボロボロと涙がこぼれ落ちている。
「兄さま、お願い………っ、負けないでぇ……………っ!!」
「っ、ごめ、なっ、だめだよ、無理だ。こんな、嫉妬と憎悪でっ、溢れった、俺のっ、心なんか、壊れたほ、がっ、いいんだよ、」
「いやだ、嘘だろ、やめて、やめろぉぉぉぉぉぉっ!!」
「さよなら、レオン。ごめんな、傷つけて。
兄様は、ずっとお前のことを。ずっとずっと、愛してるから………」
ずぅっ………
レインは自分の心臓を、突いた。
ぶしゃっと血飛沫が舞う。
「兄様?ね、ぇ、兄様、兄様ぁ!!」
強烈な吐き気がする、
「う、おぇ、ぅぉ、ぁ………」
肩の傷もズキズキと痛む。
強烈な痛みと吐き気と眩暈で、レオンは気を失った。
気を失う直前に聞いた声は………
『おれは、天国にはいけないけど。ずっとずっとお前を、見守っているから………』
「にい、さま」
目を覚ますとそこは、自室だった。
「兄様!」
まもれな、かった。
王になるべきは兄だったのに。
「俺は王なんて、別になりたくなかった。ずっとずっと、幸せだったから。だから………それでよかったのに………」
悲しく、辛い記憶は、ずっと。
「そんな………」
「君には、私と同じような結末に、たどり着いてほしくはなかったからね。
メアリーは思わず涙を浮かべてレオンを見上げる。
失うものがあってからこその強さが、この人にはあるんだ。
私が母を失ってしまった時のように。
「ごめんなさい………っ!」
レオンは優しくメアリーの頭を撫でる。
………かつて兄が、自分にしたように。
「あぁ亡くなっているーーー、だが、正確には、私が殺した。」
王は目を伏せた。
分かってしまった。この人がなぜメアリーとアルバートを、こんなに近づける理由が。思わず、尻餅をつく。震える手を口にやる。
(この人は………一回、失敗してるんだ)
それも、自分が。
「おにいたま、おにーたま!」
「どうしたの?レオン。」
「れ、れいんおにーさま、あ、のね、今日は、こ、こんにゃくしゃ?さまと、会ってきたんだ!」
「こんにゃくしゃ?婚約者のことかな?」
「うん!そえー!」
拙い言葉だが、懸命に兄に言葉を伝えようとする。レオンに、レオンの兄であるレインは口角を上げる。
(おにーさまは、とっても優しい人…… 。)
それにつられ、レオンも口角を上げる。
幼いレオンにとって、優しくて頼り甲斐のある兄は、憧れであり尊敬できる、……レオンが1番頼れる人であった。
「兄様、今日はね、この勉強が出来なくて………!」
「そっか、政治はまだ難しいもんね。でも、王様になるためには頑張らないと。」
“王様になるためには頑張らないと。”と、兄はよく言っていた。
おそらく無意識だったのだろう。だが、レインが王になりたいということは見て分かった。だから、レオンは王様になんてならなくてよかった。………だけど。
レオンが14歳、レインが20歳の夏。
ヒュンッと矢が空を切る。
そして的の中心へと刺さった。
次の矢。
矢はヒュッと軽く飛び、的の中心から少しズレた右あたりに刺さった。
的当て大会優勝者は、第二皇子であるレオン。
準優勝が兄のレイン。
「うーん、やはり、的当てではレオンに敵わないねぇ」
「へへ、練習はしてないんだけどね!」
「え………?」
「ん?練習はしてないんだけど………なんかあたっちゃったぁー」
「そっ、そう、なんだ?」
レオンは気づいてなかった。
兄の目が、少し見開かれて。少しだけ。ほんの、少しだけ、歯軋りをしたことに。
さらに、レオンは知らなかった。
毎日、毎日。レインが次こそは、次こそはと、夜な夜な練習をしていることに。
その時期から、レインとレオンの関係は、少しづつ壊れていった。
ピアノも、球技も、勉強も、支持も。
何もかもレオンが優勢だった。
レインは体が弱く、時期国王としてあまり支持されていなかった。
使用人すら、レオンの味方をする。
レインの精神は、段々と壊れていった。
「お兄様!今日は、乗馬大会で一位を取ったんです!いつもは、ミカに負けてしまうんですけど、今日はだいぶ差をつけて勝てたんです!ミカも、私のことを認めてくださって………!」
レインは分かっていた。この弟は、ただ自分に褒められたいだけなのだ、ということを。でもレインは褒められなかった。
ただ、“すごいね”というだけでよかったのに。だめだった。もうその頃には、かなりレインの精神は、弱ってしまっていたから。
「……な」
「なんですか、お兄様。ちょっと聞こえなくてーーー」
「うるさいなっていってんだよこのクズが!楽しいか!なにもかもがお前より劣っているこの兄に!そんな自慢をして!当て付けて!楽しいかって聞いてんだよ!」
「ちが、ただ、私は………!!」
「何が違うっていうんだ………!!!」
痛かった。苦しかった。ずっとずっと苦しかった。でも、これで終わる。
レインはそばにあった果物ナイフを掲げる。すでに心は壊れていた。
幼き頃の楽園のような日々は、もう、心には残っていない。あるのは苦しみと、憎悪と、狂気だけ。
「や、だ、兄様、」
レオンが涙を浮かべる。
レインはレオンの上へ馬乗りになる。
「いやだ!兄様!戻って、戻って下さい!あの頃の、兄様みたいにーー!」
しかしレインの無慈悲な心は動かない。
「兄様ぁぁぁぁぁーー!ッッッ!!」
ざくっ。
「ぐあっ、うぁ、ぁぁぁぁぁっ!!!」
肩を、焼け付くような痛みが切り裂く。
(なんで………なんでだよ、兄さま。なんで………!!)
(俺は………馬鹿だろうか。心臓をついたら、愚弟は死ぬんだ。自分が救われるためにも、殺さなきゃ。王になるために。殺さなきゃ、殺さなきゃ、殺さなきゃ………
だけど………っ、出来ないんだ。どうして、だろう?こんなやつ、嫌いなはずなのに……………!)
やればやろうとするほど、出来ない。
まるで誰かに手を掴まれているようで。
心臓をつけば、一撃なのに。
ふと蘇る記憶。
自分は、可愛くて、大好きだったレオンに、いろいろなことを教えてあげていた。
だが今自分は、その可愛い弟を、殺そうとしているのだ。
(あれ、なんで………)
一瞬だけ正気に戻る。しかし、すぐに狂気に喰われてゆく。その、直前に。
「ごめん、ごめん、レオン………ごめんな。こんな弱い兄様で、ごめん………!!」
「に、いさ、」
レインの体の中は、体を蝕む狂気と、まだ残る優しさとで、ずっと闘っている。
「壊れないでよ兄様。いやだよ、ねぇ!」
レインからもボロボロと涙がこぼれ落ちている。
「兄さま、お願い………っ、負けないでぇ……………っ!!」
「っ、ごめ、なっ、だめだよ、無理だ。こんな、嫉妬と憎悪でっ、溢れった、俺のっ、心なんか、壊れたほ、がっ、いいんだよ、」
「いやだ、嘘だろ、やめて、やめろぉぉぉぉぉぉっ!!」
「さよなら、レオン。ごめんな、傷つけて。
兄様は、ずっとお前のことを。ずっとずっと、愛してるから………」
ずぅっ………
レインは自分の心臓を、突いた。
ぶしゃっと血飛沫が舞う。
「兄様?ね、ぇ、兄様、兄様ぁ!!」
強烈な吐き気がする、
「う、おぇ、ぅぉ、ぁ………」
肩の傷もズキズキと痛む。
強烈な痛みと吐き気と眩暈で、レオンは気を失った。
気を失う直前に聞いた声は………
『おれは、天国にはいけないけど。ずっとずっとお前を、見守っているから………』
「にい、さま」
目を覚ますとそこは、自室だった。
「兄様!」
まもれな、かった。
王になるべきは兄だったのに。
「俺は王なんて、別になりたくなかった。ずっとずっと、幸せだったから。だから………それでよかったのに………」
悲しく、辛い記憶は、ずっと。
「そんな………」
「君には、私と同じような結末に、たどり着いてほしくはなかったからね。
メアリーは思わず涙を浮かべてレオンを見上げる。
失うものがあってからこその強さが、この人にはあるんだ。
私が母を失ってしまった時のように。
「ごめんなさい………っ!」
レオンは優しくメアリーの頭を撫でる。
………かつて兄が、自分にしたように。
0
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
退屈令嬢のフィクサーな日々
ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。
直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる