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仮初の春の中で
003 決意の先に
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元々死ぬ運命だった。
今さら命が惜しいなんて思わない。
もし、春の命と引き換えに月華の一族を、和臣を守れるなら、断る理由は一つも無かった。
「私の命と引き換えに出来るなら!それで、村に結界を張れるなら、そうしてください。」
春の決意は固かった。
震える拳を握りしめて、春は少女の方をじっと見つめる。少女の目はどこか寂しそうで、ひどく美しかった。
風がふいて木々を揺らす。少し間があって、少女は口を開いた。
「後悔はしないかい?」
春は静かに頷いた。
本当は。
和臣にさよならを言いたかった。
最後の別れの挨拶を、感謝の言葉を伝えたかった。でも、そんな事をすれば、和臣は必死になって春を止めるだろう。
そうすれば、村が危ない。今だって、危険にさらされているのだ。和臣に会いに戻る時間はない。
春は少女を真っ直ぐ見つめる。
「御神体を盗んでしまって、本当にごめんなさい。和臣さんと出会えた村だから、滅んで欲しくないんです。これからも村を守ってください。」
春は笑ってそう言った。
寂しくないと言えば嘘になる。それでも、進むべき道は決まっている。
「お主は、強いな・・・。」
少女は、春に小さな赤い石を手渡した。
「魂は巡る。人も魔物も、命あるものは全て。お主の次の旅が、穏やかなものになるよう、これはお守りだ。魔力はないが、きっと力になってくれる。」
春は赤い石を受け取ると、ぎゅっと目を瞑る。
「痛みはない、すぐ終わる・・・」
そういって、しばらく経ったが何の変化もない。
春は不思議に思って少女の方を見た。
「まずいな・・・村に魔物が侵入してきている・・・このままでは結界が張れない・・・。」
結界が張られていないことを嗅ぎ付けられたのだろうか。
「それは・・・偶然・・・?」
一匹だけが迷い込んだのか、それとも。
次の少女の言葉に、春は真っ青になった。
「いや、偶然ではない。すごい数だ・・・。村が襲撃にあっている!!」
村には和臣がいる。和臣は魔力が使えない。
「そんな・・・どうして・・・どうしよう。」
春は駆け出した。長い長い石の階段を降りて、いても立ってもいられなくて。
パニックになる春の頬は涙で濡れていた。
(どうしよう、どうしよう・・・私のせいだ・・・。)
走る春の前に立ち塞がったのは、少女だった。
「今から走っても間に合わない。ワシがお主を村の中心に飛ばす。後は魔力で何とかしろ。大丈夫、お主は今この村の守り神の魔力に守られているのだから。」
春は頷いた。次の瞬間、眩い光に包まれてあまりの眩しさに目を閉じる。目を開いたときには、春は総会場の前にいた。
「和臣さん!」
春の目に飛び込んで来たのは、血を流し倒れる和臣の姿だった。
「和臣さん・・・!和臣さん!!」
「春・・・?」
和臣はうっすらと目を開け、静かに笑った。
「天使が迎えに来たのかと思った・・・。」
「和臣さん・・・。」
春は和臣の身体を抱き締めた。秋の寒さも相まって、身体が冷たく感じる。
「死なないで・・・お願いだから・・・。」
ぼろぼろと流れ落ちる涙を、和臣は優しく指で拭った。
「動けるように・・・なったのか・・・。」
「お願い、もう喋らないで・・・和臣さん・・・本当にごめんなさい・・・私ばっかり守られて・・・和臣さんばっかり傷ついて・・・。」
辺りは戦場と化していた。
泣き叫ぶ子供、悲鳴と怒号、逃げ惑う人々の声が辺りに響いている。
春は涙を拭った。守らないと。今度は私が和臣さんを。
総会場には、もしもの時の為に手当てをする道具が置いてある。春は和臣の応急処置を済ますと、和臣の手をぎゅっと握った。
「ごめんね、和臣さん・・・。」
春の体温が離れていく。春は振り返らずに駆け出した。
今さら命が惜しいなんて思わない。
もし、春の命と引き換えに月華の一族を、和臣を守れるなら、断る理由は一つも無かった。
「私の命と引き換えに出来るなら!それで、村に結界を張れるなら、そうしてください。」
春の決意は固かった。
震える拳を握りしめて、春は少女の方をじっと見つめる。少女の目はどこか寂しそうで、ひどく美しかった。
風がふいて木々を揺らす。少し間があって、少女は口を開いた。
「後悔はしないかい?」
春は静かに頷いた。
本当は。
和臣にさよならを言いたかった。
最後の別れの挨拶を、感謝の言葉を伝えたかった。でも、そんな事をすれば、和臣は必死になって春を止めるだろう。
そうすれば、村が危ない。今だって、危険にさらされているのだ。和臣に会いに戻る時間はない。
春は少女を真っ直ぐ見つめる。
「御神体を盗んでしまって、本当にごめんなさい。和臣さんと出会えた村だから、滅んで欲しくないんです。これからも村を守ってください。」
春は笑ってそう言った。
寂しくないと言えば嘘になる。それでも、進むべき道は決まっている。
「お主は、強いな・・・。」
少女は、春に小さな赤い石を手渡した。
「魂は巡る。人も魔物も、命あるものは全て。お主の次の旅が、穏やかなものになるよう、これはお守りだ。魔力はないが、きっと力になってくれる。」
春は赤い石を受け取ると、ぎゅっと目を瞑る。
「痛みはない、すぐ終わる・・・」
そういって、しばらく経ったが何の変化もない。
春は不思議に思って少女の方を見た。
「まずいな・・・村に魔物が侵入してきている・・・このままでは結界が張れない・・・。」
結界が張られていないことを嗅ぎ付けられたのだろうか。
「それは・・・偶然・・・?」
一匹だけが迷い込んだのか、それとも。
次の少女の言葉に、春は真っ青になった。
「いや、偶然ではない。すごい数だ・・・。村が襲撃にあっている!!」
村には和臣がいる。和臣は魔力が使えない。
「そんな・・・どうして・・・どうしよう。」
春は駆け出した。長い長い石の階段を降りて、いても立ってもいられなくて。
パニックになる春の頬は涙で濡れていた。
(どうしよう、どうしよう・・・私のせいだ・・・。)
走る春の前に立ち塞がったのは、少女だった。
「今から走っても間に合わない。ワシがお主を村の中心に飛ばす。後は魔力で何とかしろ。大丈夫、お主は今この村の守り神の魔力に守られているのだから。」
春は頷いた。次の瞬間、眩い光に包まれてあまりの眩しさに目を閉じる。目を開いたときには、春は総会場の前にいた。
「和臣さん!」
春の目に飛び込んで来たのは、血を流し倒れる和臣の姿だった。
「和臣さん・・・!和臣さん!!」
「春・・・?」
和臣はうっすらと目を開け、静かに笑った。
「天使が迎えに来たのかと思った・・・。」
「和臣さん・・・。」
春は和臣の身体を抱き締めた。秋の寒さも相まって、身体が冷たく感じる。
「死なないで・・・お願いだから・・・。」
ぼろぼろと流れ落ちる涙を、和臣は優しく指で拭った。
「動けるように・・・なったのか・・・。」
「お願い、もう喋らないで・・・和臣さん・・・本当にごめんなさい・・・私ばっかり守られて・・・和臣さんばっかり傷ついて・・・。」
辺りは戦場と化していた。
泣き叫ぶ子供、悲鳴と怒号、逃げ惑う人々の声が辺りに響いている。
春は涙を拭った。守らないと。今度は私が和臣さんを。
総会場には、もしもの時の為に手当てをする道具が置いてある。春は和臣の応急処置を済ますと、和臣の手をぎゅっと握った。
「ごめんね、和臣さん・・・。」
春の体温が離れていく。春は振り返らずに駆け出した。
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