何れ人か神の花〜今日も殺し損ねた少女と一つ屋根の下で暮らしています〜

本田ゆき

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第二章

合縁奇縁 6

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「……ふぅ」

 それから少女は無表情のまままるで一仕事やり遂げた後の達成感に満ち足りたかの様な顔をする。

「いや、何が「……ふぅ」だよ!
虫一匹にわざわざ銃弾使う馬鹿がいるか!
退治しろよこんなもん!!」

 たまらずツッコむと、少女は少し嫌そうな顔をした。

「嫌。触りたくない」
「ならせめてナイフとかその刀で斬れば良いだろ!」

 まあ普通虫を退治するのにナイフや刀を使う奴なんて見た事ないが。

 しかし、少女はそれも首を横に振る。

「嫌。一度虫斬ったナイフや刀なんてもう使いたくないし、斬れた虫の切断面を見るのも嫌」

「我が儘かよ」

 俺は勿体ないと思いつつ銃弾を壁から引っこ抜く。

 銃弾には、やはり俺が見た通り小さな虫が壁と銃弾の間に挟まれていた。

 ……しかし、こんな小さな虫にピンポイントで銃弾を当てるところを見ると、やはりあの情報屋の言う通り手練である事には間違いないのだろう。

 それから俺は銃弾を虫の死骸ごとポイッと窓の外に投げ捨てた。

「……虫、平気なの?」

 そんな俺の行動を少女は少し驚いた様に眺めていた。

「は? まあ路地に住んでりゃ虫なんてよく見るし、逆にこんなんでビビってたら生活出来ねーよ」

 俺がそう言うと、少女は手を合わせて口を開いた。

「ねえ、私と一緒に住んでくれない?」

「……は?」

 俺は少女が言っている意味が分からず頭が一瞬真っ白になる。

 住む? 一緒に? こいつと?

「断る」

 俺は即答した。

 何でこんな如何にもヤバそうな女と同居なんてしなくちゃならねーんだよ。

「お金は払うよ」

 しかし少女は今度はそんな事を言ってきた。

「は?
何の金だよ?」

「虫を一匹退治する事に一万でどう?」

「はぁ?
お前、まさか俺の事を虫捕り係として雇いたいっつーのかよ」

 俺は頭を抱えながらそう質問すると、少女はこくんと頷く。

「だって、お前路地に住んでるんでしょ?
ここなら雨風凌げる屋根もあるし、何より虫を殺してくれた分だけお金をあげるよ?
良い条件だと思うんだけど」

 確かに、色々と破格ではある。

 路地の暮らしには慣れてるし、別に屋根のある家でぬくぬくと過ごしたいとは思わないが、虫を退治するだけで金が入るだなんてそんな簡単な仕事恐らく殆どないだろう。

 でも俺は。

「断る。
別に金に困ってねーし、屋根のある家に住みたい訳でもねぇんだ。
それにそんな良い条件なら、俺でなくともやりたがる奴は五万といるだろ?
そんじゃ俺は帰る。世話になったな」

 俺はそれだけ言ってまだ鈍くズキズキと痛む腹を気にせずベッドから起き上がってそのまま扉に向かって歩き出した。

「そっか。残念」

 少女は無表情のまま、特に見送る事もなく部屋に立っていた。

 こうして、俺は少女の部屋を出て玄関から外へ出て行った。
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