33 / 82
第二章
合縁奇縁 12
しおりを挟む
「そんで? リトは結局アイリスちゃん家でのバイトはしねーの?」
ニヤついた顔で情報屋にそう訊かれた俺は苛つきながら答えた。
「馬鹿じゃねーのか?
そんなバイトやる訳ねーだろ?」
「……そうかい。破格な話だとは思うがね」
「まあ虫殺しただけで金が手に入るのは確かに破格だろうけどよ」
「しかも可愛い子ちゃんと夢の同棲生活♪」
「あんなん何処が可愛いんだよ?
俺はあんな女死んでもごめんだね」
先程の少女の戦っている様を思い出しながら俺は情報屋の言葉を否定する。
確かに少女は見た目だけならかなり可愛い方ではあるだろうが、アレを見たらもう可愛いだなんて言えやしなかった。
「……ま、いいさ。
そんじゃあリトル・グリム……じゃなくてリト」
「いちいち呼び方変えてんじゃねー」
「まあまあ、また仕事が入ったら依頼するわ。
アイリスちゃんも、また近々仕事頼むかもだからよろしく~」
「ちっ、わーったよ」
「分かった。
それじゃあ情報屋さん、また」
それから俺が帰ろうと歩き出すと、またもや少女がついてきた。
そういえば、少女の住んでいるアパートは、俺の住んでいる路地に結構近かったのだ。
帰り道が被るのは仕方のない事ではあった。
しかし、対して話すほど仲が良い訳でもないのでそのまま無言で歩いていると、後ろから少女が話しかけて来た。
「あ、ねえリト」
「何だよ。気安く呼ぶんじゃねーよ」
半ばキレながら俺は少女の方へ振り返ると、少女は突然おかしな言葉を喋り出した。
「アジャラカモクレン・テケレッツのパー」
そう言って二回パンパンと何故か手を叩きだしたのだ。
「は? 今何つった? つーかどこの言葉だよ?」
少女の言葉も行動も何もかもが訳が分からずに俺はそう問い掛ける。
「んー、やっぱり消えない、か。
枕元でもないし……」
しかし、少女は俺の質問をガン無視してそんな事を言っていた。
「だから何なんだよ? 一体」
「ん? まあ呪文みたいなものだよ。
死神が消えるおまじない」
無表情にそんな事を言う少女を俺は鼻で笑った。
「はっ! てめー馬鹿じゃねーのか?
俺は普通の人間だっての」
「それもそうだね」
「つーか、お前こそ神殺しだの言われてたし、人間じゃねーんじゃねーのか?」
俺が冗談でそう言うと、しかし少女は少し考え込むかの様に首を傾げた後喋り出した。
「……私の持ってるこの刀、人を百人殺せば鬼になるって言われてる」
「は? オニ?」
またもや聞いた事のない単語を俺は訊き返す。
すると、少女は今度はすぐに答えてくれた。
「この国で言うところの悪魔みたいなものかな?」
「そんじゃあ何か? お前はそのオニだって言うのかよ?」
馬鹿にしながら俺が訊くと、少女はそんな俺に無表情に訊き返してきた。
「リトは今まで自分が何人の人を殺したかだなんて憶えている?」
「……さあな」
そう言えば、最初の頃は数えていたっけ?
しかし、両手で数えられない程人を殺めたあたりで数えるのをやめてしまった。
……数える事に何の意味も無い事に気付いてしまったから。
「私はこの刀でどれだけ人を殺したかなんて数えてないよ。
でも、そんなの数えなくても、人は人を一人でも殺せばその時点で鬼になる。
Devilish Homicideという名の鬼にね」
少女の言い分に、俺は確かにと頷く。
どんな理由であれ人を一人でも殺してしまった時点で、もう罪からは逃れられない。
「ふぅん……まあ、そうだろうな。
俺もお前も、もし地獄なんてものが本当にあるのならそっちに堕ちるんだろうしな」
「……でも、本物の鬼になれたなら、神様だって殺せるのかな?」
少女は何か小さく呟いたが、何を言っているのか聞こえなかった。
「あ? 何か言ったか?」
「……何でもない。
あ、私こっちだから、リト、それじゃあね」
少女は左の道を指さしてそう言った。
「何友達みたいなノリで挨拶してんだよ?
言っとくけど、次会う時はお前を殺す時だからな!」
「だからリトには私を殺せないって」
「絶対にいつかぶっ殺してやる!!」
無表情に言う少女に俺はそう宣言して別れたのだった。
その後、とある事件の後にこの少女、アイリスと一緒に暮らす羽目になるのだが、それはまた別の話。
ニヤついた顔で情報屋にそう訊かれた俺は苛つきながら答えた。
「馬鹿じゃねーのか?
そんなバイトやる訳ねーだろ?」
「……そうかい。破格な話だとは思うがね」
「まあ虫殺しただけで金が手に入るのは確かに破格だろうけどよ」
「しかも可愛い子ちゃんと夢の同棲生活♪」
「あんなん何処が可愛いんだよ?
俺はあんな女死んでもごめんだね」
先程の少女の戦っている様を思い出しながら俺は情報屋の言葉を否定する。
確かに少女は見た目だけならかなり可愛い方ではあるだろうが、アレを見たらもう可愛いだなんて言えやしなかった。
「……ま、いいさ。
そんじゃあリトル・グリム……じゃなくてリト」
「いちいち呼び方変えてんじゃねー」
「まあまあ、また仕事が入ったら依頼するわ。
アイリスちゃんも、また近々仕事頼むかもだからよろしく~」
「ちっ、わーったよ」
「分かった。
それじゃあ情報屋さん、また」
それから俺が帰ろうと歩き出すと、またもや少女がついてきた。
そういえば、少女の住んでいるアパートは、俺の住んでいる路地に結構近かったのだ。
帰り道が被るのは仕方のない事ではあった。
しかし、対して話すほど仲が良い訳でもないのでそのまま無言で歩いていると、後ろから少女が話しかけて来た。
「あ、ねえリト」
「何だよ。気安く呼ぶんじゃねーよ」
半ばキレながら俺は少女の方へ振り返ると、少女は突然おかしな言葉を喋り出した。
「アジャラカモクレン・テケレッツのパー」
そう言って二回パンパンと何故か手を叩きだしたのだ。
「は? 今何つった? つーかどこの言葉だよ?」
少女の言葉も行動も何もかもが訳が分からずに俺はそう問い掛ける。
「んー、やっぱり消えない、か。
枕元でもないし……」
しかし、少女は俺の質問をガン無視してそんな事を言っていた。
「だから何なんだよ? 一体」
「ん? まあ呪文みたいなものだよ。
死神が消えるおまじない」
無表情にそんな事を言う少女を俺は鼻で笑った。
「はっ! てめー馬鹿じゃねーのか?
俺は普通の人間だっての」
「それもそうだね」
「つーか、お前こそ神殺しだの言われてたし、人間じゃねーんじゃねーのか?」
俺が冗談でそう言うと、しかし少女は少し考え込むかの様に首を傾げた後喋り出した。
「……私の持ってるこの刀、人を百人殺せば鬼になるって言われてる」
「は? オニ?」
またもや聞いた事のない単語を俺は訊き返す。
すると、少女は今度はすぐに答えてくれた。
「この国で言うところの悪魔みたいなものかな?」
「そんじゃあ何か? お前はそのオニだって言うのかよ?」
馬鹿にしながら俺が訊くと、少女はそんな俺に無表情に訊き返してきた。
「リトは今まで自分が何人の人を殺したかだなんて憶えている?」
「……さあな」
そう言えば、最初の頃は数えていたっけ?
しかし、両手で数えられない程人を殺めたあたりで数えるのをやめてしまった。
……数える事に何の意味も無い事に気付いてしまったから。
「私はこの刀でどれだけ人を殺したかなんて数えてないよ。
でも、そんなの数えなくても、人は人を一人でも殺せばその時点で鬼になる。
Devilish Homicideという名の鬼にね」
少女の言い分に、俺は確かにと頷く。
どんな理由であれ人を一人でも殺してしまった時点で、もう罪からは逃れられない。
「ふぅん……まあ、そうだろうな。
俺もお前も、もし地獄なんてものが本当にあるのならそっちに堕ちるんだろうしな」
「……でも、本物の鬼になれたなら、神様だって殺せるのかな?」
少女は何か小さく呟いたが、何を言っているのか聞こえなかった。
「あ? 何か言ったか?」
「……何でもない。
あ、私こっちだから、リト、それじゃあね」
少女は左の道を指さしてそう言った。
「何友達みたいなノリで挨拶してんだよ?
言っとくけど、次会う時はお前を殺す時だからな!」
「だからリトには私を殺せないって」
「絶対にいつかぶっ殺してやる!!」
無表情に言う少女に俺はそう宣言して別れたのだった。
その後、とある事件の後にこの少女、アイリスと一緒に暮らす羽目になるのだが、それはまた別の話。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する
青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。
両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。
母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。
リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。
マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。
すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。
修道院で聖女様に覚醒して……
大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが
マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない
完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく
今回も短編です
誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる