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第二章
合縁奇縁 12
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「そんで? リトは結局アイリスちゃん家でのバイトはしねーの?」
ニヤついた顔で情報屋にそう訊かれた俺は苛つきながら答えた。
「馬鹿じゃねーのか?
そんなバイトやる訳ねーだろ?」
「……そうかい。破格な話だとは思うがね」
「まあ虫殺しただけで金が手に入るのは確かに破格だろうけどよ」
「しかも可愛い子ちゃんと夢の同棲生活♪」
「あんなん何処が可愛いんだよ?
俺はあんな女死んでもごめんだね」
先程の少女の戦っている様を思い出しながら俺は情報屋の言葉を否定する。
確かに少女は見た目だけならかなり可愛い方ではあるだろうが、アレを見たらもう可愛いだなんて言えやしなかった。
「……ま、いいさ。
そんじゃあリトル・グリム……じゃなくてリト」
「いちいち呼び方変えてんじゃねー」
「まあまあ、また仕事が入ったら依頼するわ。
アイリスちゃんも、また近々仕事頼むかもだからよろしく~」
「ちっ、わーったよ」
「分かった。
それじゃあ情報屋さん、また」
それから俺が帰ろうと歩き出すと、またもや少女がついてきた。
そういえば、少女の住んでいるアパートは、俺の住んでいる路地に結構近かったのだ。
帰り道が被るのは仕方のない事ではあった。
しかし、対して話すほど仲が良い訳でもないのでそのまま無言で歩いていると、後ろから少女が話しかけて来た。
「あ、ねえリト」
「何だよ。気安く呼ぶんじゃねーよ」
半ばキレながら俺は少女の方へ振り返ると、少女は突然おかしな言葉を喋り出した。
「アジャラカモクレン・テケレッツのパー」
そう言って二回パンパンと何故か手を叩きだしたのだ。
「は? 今何つった? つーかどこの言葉だよ?」
少女の言葉も行動も何もかもが訳が分からずに俺はそう問い掛ける。
「んー、やっぱり消えない、か。
枕元でもないし……」
しかし、少女は俺の質問をガン無視してそんな事を言っていた。
「だから何なんだよ? 一体」
「ん? まあ呪文みたいなものだよ。
死神が消えるおまじない」
無表情にそんな事を言う少女を俺は鼻で笑った。
「はっ! てめー馬鹿じゃねーのか?
俺は普通の人間だっての」
「それもそうだね」
「つーか、お前こそ神殺しだの言われてたし、人間じゃねーんじゃねーのか?」
俺が冗談でそう言うと、しかし少女は少し考え込むかの様に首を傾げた後喋り出した。
「……私の持ってるこの刀、人を百人殺せば鬼になるって言われてる」
「は? オニ?」
またもや聞いた事のない単語を俺は訊き返す。
すると、少女は今度はすぐに答えてくれた。
「この国で言うところの悪魔みたいなものかな?」
「そんじゃあ何か? お前はそのオニだって言うのかよ?」
馬鹿にしながら俺が訊くと、少女はそんな俺に無表情に訊き返してきた。
「リトは今まで自分が何人の人を殺したかだなんて憶えている?」
「……さあな」
そう言えば、最初の頃は数えていたっけ?
しかし、両手で数えられない程人を殺めたあたりで数えるのをやめてしまった。
……数える事に何の意味も無い事に気付いてしまったから。
「私はこの刀でどれだけ人を殺したかなんて数えてないよ。
でも、そんなの数えなくても、人は人を一人でも殺せばその時点で鬼になる。
Devilish Homicideという名の鬼にね」
少女の言い分に、俺は確かにと頷く。
どんな理由であれ人を一人でも殺してしまった時点で、もう罪からは逃れられない。
「ふぅん……まあ、そうだろうな。
俺もお前も、もし地獄なんてものが本当にあるのならそっちに堕ちるんだろうしな」
「……でも、本物の鬼になれたなら、神様だって殺せるのかな?」
少女は何か小さく呟いたが、何を言っているのか聞こえなかった。
「あ? 何か言ったか?」
「……何でもない。
あ、私こっちだから、リト、それじゃあね」
少女は左の道を指さしてそう言った。
「何友達みたいなノリで挨拶してんだよ?
言っとくけど、次会う時はお前を殺す時だからな!」
「だからリトには私を殺せないって」
「絶対にいつかぶっ殺してやる!!」
無表情に言う少女に俺はそう宣言して別れたのだった。
その後、とある事件の後にこの少女、アイリスと一緒に暮らす羽目になるのだが、それはまた別の話。
ニヤついた顔で情報屋にそう訊かれた俺は苛つきながら答えた。
「馬鹿じゃねーのか?
そんなバイトやる訳ねーだろ?」
「……そうかい。破格な話だとは思うがね」
「まあ虫殺しただけで金が手に入るのは確かに破格だろうけどよ」
「しかも可愛い子ちゃんと夢の同棲生活♪」
「あんなん何処が可愛いんだよ?
俺はあんな女死んでもごめんだね」
先程の少女の戦っている様を思い出しながら俺は情報屋の言葉を否定する。
確かに少女は見た目だけならかなり可愛い方ではあるだろうが、アレを見たらもう可愛いだなんて言えやしなかった。
「……ま、いいさ。
そんじゃあリトル・グリム……じゃなくてリト」
「いちいち呼び方変えてんじゃねー」
「まあまあ、また仕事が入ったら依頼するわ。
アイリスちゃんも、また近々仕事頼むかもだからよろしく~」
「ちっ、わーったよ」
「分かった。
それじゃあ情報屋さん、また」
それから俺が帰ろうと歩き出すと、またもや少女がついてきた。
そういえば、少女の住んでいるアパートは、俺の住んでいる路地に結構近かったのだ。
帰り道が被るのは仕方のない事ではあった。
しかし、対して話すほど仲が良い訳でもないのでそのまま無言で歩いていると、後ろから少女が話しかけて来た。
「あ、ねえリト」
「何だよ。気安く呼ぶんじゃねーよ」
半ばキレながら俺は少女の方へ振り返ると、少女は突然おかしな言葉を喋り出した。
「アジャラカモクレン・テケレッツのパー」
そう言って二回パンパンと何故か手を叩きだしたのだ。
「は? 今何つった? つーかどこの言葉だよ?」
少女の言葉も行動も何もかもが訳が分からずに俺はそう問い掛ける。
「んー、やっぱり消えない、か。
枕元でもないし……」
しかし、少女は俺の質問をガン無視してそんな事を言っていた。
「だから何なんだよ? 一体」
「ん? まあ呪文みたいなものだよ。
死神が消えるおまじない」
無表情にそんな事を言う少女を俺は鼻で笑った。
「はっ! てめー馬鹿じゃねーのか?
俺は普通の人間だっての」
「それもそうだね」
「つーか、お前こそ神殺しだの言われてたし、人間じゃねーんじゃねーのか?」
俺が冗談でそう言うと、しかし少女は少し考え込むかの様に首を傾げた後喋り出した。
「……私の持ってるこの刀、人を百人殺せば鬼になるって言われてる」
「は? オニ?」
またもや聞いた事のない単語を俺は訊き返す。
すると、少女は今度はすぐに答えてくれた。
「この国で言うところの悪魔みたいなものかな?」
「そんじゃあ何か? お前はそのオニだって言うのかよ?」
馬鹿にしながら俺が訊くと、少女はそんな俺に無表情に訊き返してきた。
「リトは今まで自分が何人の人を殺したかだなんて憶えている?」
「……さあな」
そう言えば、最初の頃は数えていたっけ?
しかし、両手で数えられない程人を殺めたあたりで数えるのをやめてしまった。
……数える事に何の意味も無い事に気付いてしまったから。
「私はこの刀でどれだけ人を殺したかなんて数えてないよ。
でも、そんなの数えなくても、人は人を一人でも殺せばその時点で鬼になる。
Devilish Homicideという名の鬼にね」
少女の言い分に、俺は確かにと頷く。
どんな理由であれ人を一人でも殺してしまった時点で、もう罪からは逃れられない。
「ふぅん……まあ、そうだろうな。
俺もお前も、もし地獄なんてものが本当にあるのならそっちに堕ちるんだろうしな」
「……でも、本物の鬼になれたなら、神様だって殺せるのかな?」
少女は何か小さく呟いたが、何を言っているのか聞こえなかった。
「あ? 何か言ったか?」
「……何でもない。
あ、私こっちだから、リト、それじゃあね」
少女は左の道を指さしてそう言った。
「何友達みたいなノリで挨拶してんだよ?
言っとくけど、次会う時はお前を殺す時だからな!」
「だからリトには私を殺せないって」
「絶対にいつかぶっ殺してやる!!」
無表情に言う少女に俺はそう宣言して別れたのだった。
その後、とある事件の後にこの少女、アイリスと一緒に暮らす羽目になるのだが、それはまた別の話。
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