62 / 82
第三章
戒心散花 29
しおりを挟む◇
その後、到着した救急車にカミラは運ばれていった。
その際ローガンはやや渋っていたが、カミラの夫であるからという理由でローガンも救急隊の人と一緒に救急車へと乗り込んでいった。
俺は面倒ごとに巻き込まれたくなかったのでアイリスと共にただの通行人でたまたま見かけたと嘘を吐いてその場を離れる事にした。
「それで? 花の核を壊せたんなら、もうこの事件は解決って事でいいんだよな?」
俺は確認する様にアイリスへと尋ねる。
「うん。核はちゃんと斬ったよ。
もうあの女の人が花の能力を使う事は出来ない」
……俺にもよく分からないが、花のバケモノに取り憑かれた人には体に花の核があるらしく、それを壊す事で花のバケモノから元の人間に戻れるらしい。
「でもよ、この前のおっさんは核を破壊した後ボロボロになったし、その前の奴も結構被害が大きかったよな?
今回の女の人はほぼ無傷みたいなもんだったけど、なんか違いでもあったのか?」
俺の何気ない問いに、アイリスは淡々と答える。
「情報屋さん曰く、どれだけシンクロしてしまったかによって核を壊した時の代償に差があるみたい。
前のおじさんはもう花にほぼ完全に取り込まれていたからどのみち助からなかった。
今回の女の人は今までの人達に比べてそこまでシンクロしてなかったからね。
でも、代償は当然あったけど」
「ふーん」
アイリスの話を聞いて何となく理解はしたが、しかしあの花のバケモノにはこれ以上興味もなかったのでその後は無言で帰路につく事にした。
「そう言えばリト、どうやってここが分かったの?」
ふと、アイリスに尋ねられ、俺はあー、と面倒に思いながらも何とか答えた。
「てめーの猫がな、アパート前で鳴いてうるさかったから追いかけたらあそこだったんだよ」
まあ実際、これは嘘の様な実話である。
まるでアイリスの居場所へと案内された様で釈然としないが。
「そうだったの? あの子達、普段はそんなに鳴かないけど」
「知らねーよ。腹でも減ってたんじゃねーの?」
そう口にした途端、俺の腹がぐぅ、と声を上げた。
俺はたまらず下を向く。
「あ、お腹空いてるの?」
「うるせーな! 人間腹だって減るだろ!!?」
アイリスに腹の音を聞かれたのが恥ずかしくて俺は声を荒げながら言い返した。
しかし、怒鳴られた事もアイリスは大して気にも留めずに話し出す。
「まあ、もう夜だしね。
作るの面倒だし、どっか寄る?」
何食わぬ顔でアイリスがそう訊いてきた為、俺は仕方なく答える。
「てめーの奢りならいいぞ」
「いいよ」
アイリスはあっさりと了承した。
「あ、それとリトってさ、浮気する人をどう思う?」
俺は奢ってもらえるという事で何処の店に寄ろうかと辺りの外食店を見ていると、唐突にアイリスはそんな事を訊いてきた。
「はぁ? 浮気?
何だよ急に」
訳が分からず問い返すと、アイリスは首を傾げながら更に訊いてくる。
「いや、浮気や不倫ってした方が悪いんだと思ってたけど、された方も相手にしないから悪いとかって聞いて」
そんなアイリスの言葉に俺は心底面倒に答えた。
「そんなんその人達本人の問題だろ?
まあ所詮二人ともその程度の関係だったってだけじゃねーの?」
「……そっか」
俺の言葉に納得したのかしていないのか、アイリスはぼそりと呟く様に返事をした。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
新婚初夜に『白い結婚にしてほしい』と言われたので論理的に詰めたら夫が泣きました
ささい
恋愛
「愛人がいるから、白い結婚にしてほしい」
政略結婚の初夜にそう告げた夫ルーファス。
妻カレンの反応は——
「それ、契約不履行ですよね?」
「あなたの感情論、論理的に破綻してますよ?」
泣き落としは通じない。
そして初夜の翌朝、夫は泣いていた。
逃げ道は全部塞がれ、気づけば毎日論破されていた。
これは、論破され続けた夫がなぜか幸せになる話。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
《完結》金貨5000枚で売られた王太子妃
ぜらちん黒糖
恋愛
「愛している。必ず迎えに行くから待っていてくれ」
甘い言葉を信じて、隣国へ「人質」となった王太子妃イザベラ。
旅立ちの前の晩、二人は愛し合い、イザベラのお腹には新しい命が宿った。すぐに夫に知らせた イザベラだったが、夫から届いた返信は、信じられない内容だった。
「それは本当に私の子供なのか?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる