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第三章
戒心散花 28
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カミラは首元に刃を向けられたまま思考する。
どうして……どうして、作戦は完璧だったはずなのに!?
しかし悔やんだ所でもう殺ってしまった事は仕方ない。
バレた以上全員殺さなくては……!
カミラは両手から真っ赤な石楠花をぽんぽんと作りだしながら内心ここから逃げる算段を考えていた。
この花が爆弾だと分かっているのなら、この刀の少女は爆発に巻き込まれまいと咄嗟に距離を置く筈だ。
そこから一旦逃げて、またチャンスを窺って花をぶつけてやれば……。
しかし、カミラの予想は大きく外れた。
アイリスはカミラから逃げるどころか、更に近づきその刀でカミラの手の平から作り出された花を叩っ斬り、更にその勢いのままカミラの腹部へと刀を振り翳す。
「なっ!?」
驚いたカミラは後ろによろけながら自身のお腹を確認した。
確かに斬られた……様に見えた。
しかし、実際はドレスすら斬れていなかった。
それなのに、腹部から強烈な痛みが走る。
不思議に思ったカミラがゆっくりと下を向くと、スカートの中からパラパラと赤い石楠花の花が落ちてきた。
それから、足元をツゥーっと生暖かい液体が伝う。
「あっ……あぁっ……!」
カミラの足元には血が流れていた。
カミラは一生懸命お腹を支えながらしゃがみ込む。
「痛い……痛い痛いっ!
赤ちゃんが……っ! 誰か、救急車呼んで!!」
「お前、何をしたんだっ!?」
アイリスの動きが早すぎて見えていなかったローガンは驚きながらアイリスを見やる。
しかし、当のアイリス本人は袂にしまってあったスマホを取り出した。
「あ、すみません、救急車一台お願いします。
えーと、場所は……」
アイリスが救急車を呼んでる最中に、上の階から降りてきたリトは呆れた様にアイリスへと問い掛ける。
「てか、お前殺されそうになった相手によく救急車なんて呼べるよな?」
「え? だって呼べって言われたから」
リトの呆れた問いにアイリスはキョトンと不思議そうに答える。
「あー、そうかい」
リトはしゃがんで顔を真っ青にしているカミラの腹部を凝視した。
上から見た際、確かにアイリスの刀の切っ先はカミラの腹部を貫いていた。
それなのに、ドレスすら無傷である。
それがこの上なく不気味で気持ちが悪い。
「花の核を斬ったのか?」
「うん」
俺の問いにアイリスはこくんと頷く。
「今回はこの人も完全に花に支配される前だったから、この程度ですんだよ」
そう呟く様に答えるアイリスは、カミラを通して何処か遠くを眺めているかの様だった。
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