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幕間
花休め 7
しおりを挟むリトがアイリスの部屋に戻ると、アイリスは、テレビのニュースをただ眺めていた。
そのニュースの内容は、男性の遺体があがったというものだった。
まあ、よくある殺人事件の様なものか、と内心リトは皮肉に思う。
……殺人事件がよくあると考えるなんて、やっぱりこの国の治安はこの街だけでなくどこも悪い。
だけど、そのおかげで俺の様な悪い事をして懐を温める連中にとっては過ごしやすい街でもあるのだが。
「しかしまあ、花の事件以外にも普通に犯罪は多いし、この国も大分物騒だよな」
思った事を口に出すリトに、アイリスも同意する。
「まあ、そうだね。観光業で成り立ってるところもあるから、移民を入れないなんて今更出来ないだろうし」
「お陰で犯罪者にとってはいい住処だよな」
「……」
「? 何だよ?」
話している最中、アイリスは半ば不思議そうにリトを見ていた。
「今日のリト、よく話してくれるね?」
「はぁ? まあ、暇だからな。
つーか、お前、歳本当に十九かよ?
全然見えねーしサバ読んでんのか?」
「うん? 十九であってるよ?
西暦一九九九年産まれだけど」
「……マジかよ」
アイリス本人から直接年齢を聞いてもやはりリトは釈然としない様子だった。
そんなリトにアイリスは気にする事なく続ける。
「ここだと若く見られるんだよね」
「いや、それにしても背も低いし」
「元々母国自体背が低い民族だからね。
身長は平均的だけど」
「その身長で!?」
リトの言葉にアイリスは無表情ながらに少しムッとした様な顔つきになる。
「人種が違えば身長も髪色も瞳の色も様々だよ」
「まあ、それはそうだけど」
そう言い返すアイリスにリトはややたじろいだ。
それは、言い返してきたアイリスが怖かった訳ではなく、単純に驚いたからである。
(こいつ、こんな表情も出来たのか。
いや、無表情にはあまり変わりないから、むしろ俺が変化が分かる様になっただけか?
……それはそれでこいつと仲良くなった様で何だか嫌だが)
こうして、リトとアイリスの日常はまた一日と過ぎていく。
少し風が冷たくなり、もうじき冬がやって来る。
忘れられない、二○一八年の冬が。
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