何れ人か神の花〜今日も殺し損ねた少女と一つ屋根の下で暮らしています〜

本田ゆき

文字の大きさ
71 / 82
幕間

花休め 6

しおりを挟む
(……良かった、という事は、つまりこの大家はアイリスに好意的だという事だろうか?

 あいつはやめといた方が良いと思うが、いや、それ以前に凄い歳離れてないか?)

 そう頭をぐるぐるとフル回転させているリトに、イリアスは困った様に頭を掻きながら答えた。

「あ、いえいえすみません。
私情を仕事に挟むのはよくない事なんですけどね」

「いや、そもそもあんたとあいつじゃ一回り近く離れてるだろ?
下手したら犯罪……」

 リトは目の前に居るイリアスとアイリスの事を思い浮かべながら思った感情を口に出す。

(……アイリスはどう見ても俺より歳下、よくて十四、五くらいだろうし、逆にこの大家は二十代後半といった感じだ。
 未成年相手に恋愛は普通に犯罪だと思うのだが)

 しかし、そんなリトの考えは次のイリアスの言葉で完全に否定された。

「いえ、こう見えても彼女との歳の差は2つだけなんですけどね」

「……は?」

 イリアスの言葉にリトは一瞬時が止まったかの様に反応が遅れる。

「アイリスさんはああ見えても十九歳ですよ。
アジア人はやはり若く見えますよね。
それと私も、老け顔に見える様でよく年齢を間違えられるのですが、一応今二十一です」

「は、はぁぁ!?
あいつが十九!?」

 そしてイリアスが語る内容にリトは驚愕した。

 イリアスが二十一と結構若かった事も驚きだが、何よりアイリスの年齢に驚きを隠せなかったのだ。

「いやいや! あいつ俺より背も低いし、あんな見た目で俺より歳上とかあり得ないって!
それこそ嘘吐いてるとしか思えねー!」
「ですが、彼女はきちんと身分証と高校の卒業証書なども持ってたんですよ。
彼女の国では飛び級制度などもないので、どんなにサバを読んでも十八以上なのは確かです」
「ま、マジかよ……」

 今までてっきひ歳下だと思い込んでいたアイリスが、まさか歳上だったとは思いもよらなかったリトはその事実に顔を歪める。

「あ、それと私が密かにアイリスさんを想っている事はご内密にお願いしますね」

 そんなリトにイリアスは人差し指を口にあて「しー」と言うかの様にニコリと微笑む。

「まあ、それは別にいいすけど……
でも、あいつは色々とやばいですよ?
やめておいた方が……」
「おや? もしかして、君もアイリスさんの事を狙っていますか?」「断じてそれはないですっ!!」

 リトのまたしても全力の否定に、イリアスはまた笑いながら応じた。

「ははっ、そんなに必死に否定しなくてもいいですよ。分かりましたから。
……では、残りの空欄も埋めていくので、いくつか質問させて頂きますね?」
「え? あ、はい」

 それからイリアスにいくつか質問され、リトはそれに話せる限りで答えて何とか同居人の空欄部分が一通り埋まった。

「もう大丈夫ですよ。
ご協力ありがとうございました」
「あ、いえ、こちらこそ全然自力で埋めれなくてすんません」
「いえ、いいですよ。
君の様な人が初めてではないですから」
「ふーん、そうなんすか」

 それを聞いてリトはそうだろうなと内心呟く。

 この辺りは一見表通りだけなら観光が賑わい活気ある街に見えなくもないが、かと言ってそこまで治安がいい部類ではない。
 
(このアパートにも、俺の様に素性不明、もしくは素性を明かしたくない人もいるのだろう。

 それもそれで問題だろうけど、しかし大家がいいと言うならそれでいいのだろう)

「ではもう戻っていいですよ。
今後ともお隣さん同士、よろしくお願いします」
「え? ああ、はい。よろしく……お願いします」

 その後イリアスに握手を求められたリトはぎこちない挨拶とともに握手を交わし、リトはアイリスの居る一○二号室へと戻るのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀
恋愛
公爵令嬢のマリアベルーナは、厳しい母の躾により、完ぺきな淑女として生まれ育つ。 両親は政略結婚で、父は母以外の女性を囲っていた。 母の死後1年も経たないうちに、その愛人を公爵家に入れ、同い年のリリアーヌが異母妹となった。 リリアーヌは、自分こそが公爵家の一人娘だと言わんばかりにわが物顔で振る舞いマリアベルーナに迷惑をかける。 マリアベルーナには、5歳の頃より婚約者がいて、第1王子のレオンハルト殿下も、次第にリリアーヌに魅了されてしまい、ついには婚約破棄されてしまう。 すべてを失ったマリアベルーナは悲しみのあまり、修道院へ自ら行く。 修道院で聖女様に覚醒して…… 大慌てになるレオンハルトと公爵家の人々は、なんとかマリアベルーナに戻ってきてもらおうとあの手この手を画策するが マリアベルーナを巡って、各国で戦争が起こるかもしれない 完ぺきな淑女の上に、完ぺきなボディライン、完ぺきなお妃教育を持った聖女様は、自由に羽ばたいていく 今回も短編です 誰と結ばれるかは、ご想像にお任せします♡

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

王女を好きだと思ったら

夏笆(なつは)
恋愛
 「王子より王子らしい」と言われる公爵家嫡男、エヴァリスト・デュルフェを婚約者にもつバルゲリー伯爵家長女のピエレット。  デビュタントの折に突撃するようにダンスを申し込まれ、望まれて婚約をしたピエレットだが、ある日ふと気づく。 「エヴァリスト様って、ルシール王女殿下のお話ししかなさらないのでは?」   エヴァリストとルシールはいとこ同士であり、幼い頃より親交があることはピエレットも知っている。  だがしかし度を越している、と、大事にしているぬいぐるみのぴぃちゃんに語りかけるピエレット。 「でもね、ぴぃちゃん。私、エヴァリスト様に恋をしてしまったの。だから、頑張るわね」  ピエレットは、そう言って、胸の前で小さく拳を握り、決意を込めた。  ルシール王女殿下の好きな場所、好きな物、好みの装い。  と多くの場所へピエレットを連れて行き、食べさせ、贈ってくれるエヴァリスト。 「あのね、ぴぃちゃん!エヴァリスト様がね・・・・・!」  そして、ピエレットは今日も、エヴァリストが贈ってくれた特注のぬいぐるみ、孔雀のぴぃちゃんを相手にエヴァリストへの想いを語る。 小説家になろうにも、掲載しています。  

処理中です...