何れ人か神の花〜今日も殺し損ねた少女と一つ屋根の下で暮らしています〜

本田ゆき

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第四章

驚嘆風化 1

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 ◇


 縁側で庭に咲き誇る花々を眺めていると、祖父が私の隣に腰を下ろした。

「なあ××、人間と花の違いって何か分かるか?」

 祖父はニカッと笑いながらそんな事を問いかけてくる。

「……動物か植物かの違い?」
「まあそうだな。それも正解だ」

 私の答えに、祖父は頭を撫でながら答える。

「ただ俺はな、人間と花の違いは心があるかないかだと思ってんだ」
「心?」

「ああ、後は手足だな。
人間は心があって、何処にでも行ける手足がある。
花は根を張る事は出来ても、自分で考えて何処かに行く事は出来ないからな。

だからな××、世界はこの狭っ苦しいお屋敷の中だけじゃあないんだ。
お前は綺麗に咲くだけの花になんかなるなよ」

 六歳の私には、その祖父の言葉の意味が分からなかった。

 そして、その言葉の意味も分からないまま、ある日突然祖父は行方不明になった。

 周囲が驚いたり嘆いたりしている横で、私は、ただもう祖父に会う事はもう二度とないのだろうなと何故かそう決まった事の様に考えていた。

 それから必死の捜索も虚しく祖父は見つからず、結局戻る見込みも見つかる見込みもないだろうと葬式が開かれた。

 そして、今現在も祖父の行方は分からないままである。


 ◇


 二〇十八年、十月の中頃。

 紅葉が紅く街を染め上げる中。

 街を歩いていた一人の女性が、楽しげに子供連れの親子を眺めていた。

「あら、可愛いお子さんだわ~。
でも、貴女の方がも~っと可愛いものね
♡」

 女性はチラリと自身と手を繋いだ少女に目をやると、少女はニコリと笑いながらそれに答える。

「うん! でも私も可愛いよね、ママ!」
「そうよね♡
でもね、ニコル。そこは、"ニコルの方が可愛い“って言わなきゃ駄目じゃない」

 にこにこ顔の女性は、柔らかい笑みを顔に貼り付けたまま少女に優しく注意する。

 その注意に、一瞬少女の顔が固まったが、すぐに笑顔で応じた。

「うん! ニコルの方が可愛い!
だよね? ママ?」

「そう。それで良いのよ。ニコル」

 女性は少女の言葉に満足気に微笑み、そのまま少女の手を引いて街を後にした。

 手を引かれている少女の笑顔は、どことなく引き攣っていた。
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