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第1話 君と入学式
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「……えっと、まず初めに伺いたいのですが……」
「はい、何でしょうか!?」
葵遥は目の前のニコニコしている面接官の女性教師にハキハキと返事をした。
「あなた、志願票が「普通科」になっているんだけど……芸能科の間違いじゃないのよね?」
やんわりと女性教師に指摘された遥は先ほどよりも更に元気良く満面の笑みで返事をした。
「はい! 普通科で合ってます!
私、顔面偏差値とか興味がないので!!」
「……そう、なの」
女性教師はやや残念そうな表情を浮かべながらも、面接を続けた。
そして数ヶ月の時が過ぎ--。
20××年、4月。
春の桜が咲き乱れる中、都立小鳥遊学園では粛々と入学式が行われていた。
「あの子、超可愛くない?」
「本当だ。普通科にいるけど合ってるのかな?」
粛々と……。
「入学式終わったら声かけてみる?」
「いやいや、俺らが声かけたってあしらわれるだけだろ」
「まあ、無理かー」
粛々と……?
「やべぇ、俺好みどストライクだわ」
「は? お前前にYukaが好みとか言ってなかったか?」
「いやー、あの子の方が可愛くね?」
「……皆さん、お静かに!」
一部生徒が盛り上がっているところを、教壇に上がって教頭が注意する。
……しかし、一瞬静かになったものの教頭の注意も虚しく周囲はまた徐々にざわめきだし、入学式は一部騒がしいまま幕を閉じたのだった。
「全く、あんたはやっぱり何処に行っても騒がれるよね」
入学式が終わり教室へと移動している途中、イケメン高身長女子の河合優希(通称ユウ)は遥へ感心するかの様に声をかけた。
「みんなルカちゃんの事見て騒いでたよねー」
ユウの隣からひょっこり顔を覗かせながら低身長ゆるふわ女子の天江春香(通称ハル)も遥に声をかける。
因みに遥と春香はどちらも「はるか」と言う名前なのでお互いの事を遥は「ハル」と呼び、春香は「ルカちゃん」と呼んでいる。
「ねー、凄いうるさかったねー」
2人に対して周囲をざわつかせた張本人である超絶美少女の遥はまるで他人事かの様に返事をした。
「いや、他人事じゃないからな?」
そんな遥に対してユウは即座に突っ込む。
「相変わらずルカちゃんって自分の事気にしてないよね。
というか小鳥遊学園の面接で顔面偏差値に興味ないとか言い切ってそれで受かってるの普通にヤバいでしょ……」
ハルの言葉に遥は心底不思議そうに言い返した。
「え……?
そうかな?
別に私以外にも美男美女とかに興味ない人とかいると思うけど?」
「そりゃあ世の中には美男美女に興味のない人もいるだろうけど。
でもここはあの有名な小鳥遊学園だよ?」
「え? 小鳥遊学園がどうかしたの?」
ハルの問いに何も分かっていないままの遥は相変わらずきょとんとした顔で更に質問を返す。
そんな遥にしびれを切らしたハルは強めの口調で喋り出した。
「小鳥遊学園って言ったら、芸能人の名門校でしょ!!
私みたいに零様のファンだからって理由で入った人もいるし、それが本当の志望動機なんて人もザラにいるよ!!」
話しながらハルは興奮気味にスマホの待ち受けにしている零の画像を遥に突き出した。
遥はそんなハルをまあまあと言って宥める。
因みに零とは小鳥遊学園2年生の現在人気沸騰中の歌手であり、ハルは零の熱狂的大ファンなのだ。
「まあ、そういう人も多いと思うけど……私やユウちゃんみたいに家が近いからってだけで入る人もいると思うよ?」
「いや、そうかもしれないけど、ここって人気すぎて毎年倍率も偏差値もヤバいのに、家が近いからってだけでそこにすんなり入れる2人の頭がヤバいと思うよ……。
というか、2人とも別に都内で通える学校他にもいっぱいあったんでしょ?」
遥とユウの2人の学力に引きつつ質問するハルに対し、遥はさも当たり前の様に答える。
「まあ、家から近くて1番通いやすいとこがここだったからね。
というか試験は別に学校の授業内容覚えてれば普通に受かると思うけど?」
遥の返答に唖然とするハルに対してユウはそっと肩を叩いた。
「ハル……遥は人外レベルに頭が良いんだから、比べる対象にしちゃいけない」
「ううう……私が零様の為に寝る間も惜しんで試験に臨んだのに、ノー勉で入れるルカちゃんは何者なのよ一体!?
しかも、ルカちゃんレベルの可愛さがあればわざわざ試験受けなくても芸能科でも余裕だったでしょ!?」
「えー? でも私芸能科興味ないしなー」
恨めしそうに嘆くハルに遥は笑顔で答える。
「神様はルカちゃんに二物も与えてる!!
世の中不公平だ!!」
「安心しろハル、世の中公平だった事なんて一度もない」
ハルの怒りに、ユウが冷静につっこんだ。
……そんな3人が普通科の教室に入ると、同じクラスの人達はほぼみんな遠巻きに遥の事を眺めていた。
「はい、何でしょうか!?」
葵遥は目の前のニコニコしている面接官の女性教師にハキハキと返事をした。
「あなた、志願票が「普通科」になっているんだけど……芸能科の間違いじゃないのよね?」
やんわりと女性教師に指摘された遥は先ほどよりも更に元気良く満面の笑みで返事をした。
「はい! 普通科で合ってます!
私、顔面偏差値とか興味がないので!!」
「……そう、なの」
女性教師はやや残念そうな表情を浮かべながらも、面接を続けた。
そして数ヶ月の時が過ぎ--。
20××年、4月。
春の桜が咲き乱れる中、都立小鳥遊学園では粛々と入学式が行われていた。
「あの子、超可愛くない?」
「本当だ。普通科にいるけど合ってるのかな?」
粛々と……。
「入学式終わったら声かけてみる?」
「いやいや、俺らが声かけたってあしらわれるだけだろ」
「まあ、無理かー」
粛々と……?
「やべぇ、俺好みどストライクだわ」
「は? お前前にYukaが好みとか言ってなかったか?」
「いやー、あの子の方が可愛くね?」
「……皆さん、お静かに!」
一部生徒が盛り上がっているところを、教壇に上がって教頭が注意する。
……しかし、一瞬静かになったものの教頭の注意も虚しく周囲はまた徐々にざわめきだし、入学式は一部騒がしいまま幕を閉じたのだった。
「全く、あんたはやっぱり何処に行っても騒がれるよね」
入学式が終わり教室へと移動している途中、イケメン高身長女子の河合優希(通称ユウ)は遥へ感心するかの様に声をかけた。
「みんなルカちゃんの事見て騒いでたよねー」
ユウの隣からひょっこり顔を覗かせながら低身長ゆるふわ女子の天江春香(通称ハル)も遥に声をかける。
因みに遥と春香はどちらも「はるか」と言う名前なのでお互いの事を遥は「ハル」と呼び、春香は「ルカちゃん」と呼んでいる。
「ねー、凄いうるさかったねー」
2人に対して周囲をざわつかせた張本人である超絶美少女の遥はまるで他人事かの様に返事をした。
「いや、他人事じゃないからな?」
そんな遥に対してユウは即座に突っ込む。
「相変わらずルカちゃんって自分の事気にしてないよね。
というか小鳥遊学園の面接で顔面偏差値に興味ないとか言い切ってそれで受かってるの普通にヤバいでしょ……」
ハルの言葉に遥は心底不思議そうに言い返した。
「え……?
そうかな?
別に私以外にも美男美女とかに興味ない人とかいると思うけど?」
「そりゃあ世の中には美男美女に興味のない人もいるだろうけど。
でもここはあの有名な小鳥遊学園だよ?」
「え? 小鳥遊学園がどうかしたの?」
ハルの問いに何も分かっていないままの遥は相変わらずきょとんとした顔で更に質問を返す。
そんな遥にしびれを切らしたハルは強めの口調で喋り出した。
「小鳥遊学園って言ったら、芸能人の名門校でしょ!!
私みたいに零様のファンだからって理由で入った人もいるし、それが本当の志望動機なんて人もザラにいるよ!!」
話しながらハルは興奮気味にスマホの待ち受けにしている零の画像を遥に突き出した。
遥はそんなハルをまあまあと言って宥める。
因みに零とは小鳥遊学園2年生の現在人気沸騰中の歌手であり、ハルは零の熱狂的大ファンなのだ。
「まあ、そういう人も多いと思うけど……私やユウちゃんみたいに家が近いからってだけで入る人もいると思うよ?」
「いや、そうかもしれないけど、ここって人気すぎて毎年倍率も偏差値もヤバいのに、家が近いからってだけでそこにすんなり入れる2人の頭がヤバいと思うよ……。
というか、2人とも別に都内で通える学校他にもいっぱいあったんでしょ?」
遥とユウの2人の学力に引きつつ質問するハルに対し、遥はさも当たり前の様に答える。
「まあ、家から近くて1番通いやすいとこがここだったからね。
というか試験は別に学校の授業内容覚えてれば普通に受かると思うけど?」
遥の返答に唖然とするハルに対してユウはそっと肩を叩いた。
「ハル……遥は人外レベルに頭が良いんだから、比べる対象にしちゃいけない」
「ううう……私が零様の為に寝る間も惜しんで試験に臨んだのに、ノー勉で入れるルカちゃんは何者なのよ一体!?
しかも、ルカちゃんレベルの可愛さがあればわざわざ試験受けなくても芸能科でも余裕だったでしょ!?」
「えー? でも私芸能科興味ないしなー」
恨めしそうに嘆くハルに遥は笑顔で答える。
「神様はルカちゃんに二物も与えてる!!
世の中不公平だ!!」
「安心しろハル、世の中公平だった事なんて一度もない」
ハルの怒りに、ユウが冷静につっこんだ。
……そんな3人が普通科の教室に入ると、同じクラスの人達はほぼみんな遠巻きに遥の事を眺めていた。
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