22 / 65
第22話 君と勉強会
しおりを挟む
土曜日の午前10時。
小鳥遊学園の図書室にて。
「みんな集まったみたいだし、早速始めるか」
ユウの一言に徹人とハルが声を上げた。
「はーい。おねがいしまーす!」
「お願いしますっ!」
「因みに図書室だからなるべく静かにな」
2人のやる気満々の声量を心配してユウが注意する。
「にしてもまさか俺らが葵さんと勉強する日が来るとは……」
「本当だよなー」
太一と明宏は近くで見る遥を眺めていたが、遥はそれを気にもせず静夜に話しかけた。
「東くん! 何か分からないところはない? あ、個人的な質問も受け付けるよ!」
「別に俺はないかな。
というか葵さんも俺も教える側でしょ?」
遥と平然と話している静夜を目の当たりにした男子3人はそれぞれ静夜に掴み掛かった。
「東~ちょっーと教えて欲しい事があるからこっち来てくんねー?」
「丁度俺も質問が……」
「俺も俺も!」
「は? え?」
そうして静夜は女子達から少し離れた場所へと連れていかれた。
「なんか……お前葵さんと仲良くね?」
「席も近くで頭も良い者同士、もしかしてデキてるのか?」
太一と明宏は静夜にそれぞれ率直に質問する。
「あれ? 勉強の事聞くんじゃなかったのか!?」
一方徹人は鈍感だった。
2人に質問されて静夜は全力で首を横に振って否定する。
「いやいや、たまたま友達になっただけでそんなんじゃないから!」
「ふーん、そんで?
実際東は葵さんの事好きなの?」
太一の直球な質問に静夜は狼狽えながら答える。
「いや……普通に友達としか思ってないけど……」
「なーんだつまんねーの。
片想いなら冷やかしつつ応援してやろうかと思ってたのにー」
静夜の答えに明宏はつまらなさそうな顔で答える。
「そっか……俺はちょっとホッとした……」
明宏とは対照的に、太一は胸を撫で下ろして安堵の息をついていた。
「そういや渡辺は葵さんの事好きなんだよなー」
そんな様子を見て明宏はからかう様に静夜へと暴露を始めた。
「え? そうだったのか!?」
「まあ、好きっていうか、憧れ? っていうか……」
唐突なカミングアウトに静夜が驚きつつも、太一はやや恥ずかしながら答えた。
「なーなー東ー、そんな事よりここの問題なんだけどさー」
一方徹人はマイペースだった。
そして場面は変わり女子サイドはと言うと。
「ハル、とりあえずどの位出来ないのか見てあげるから、テスト見せて?」
遥が満面の笑みでハルにテスト用紙を差し出す様に手を向けていた。
「ルカちゃん、東くんがいるからご機嫌だね」
「まーそれも勿論あるけど……単純にハルがどれだけ勉強出来ないのか見て笑ってやろうと思って!」
「うわー馬鹿にする前提じゃん。
見せたくないわー」
ハルは嫌がりつつも遥に渋々テスト用紙を差し出した。
「さーて、どれどれ……」
「……」
「……?」
「???」
意気揚々とご機嫌にテスト用紙を受け取った遥だったが、用紙を見るなり顔がどんどん真顔になり、やがて遥の脳内はハテナで埋め尽くされた。
「もールカちゃん、そんなマジマジと見ないでよ恥ずかしいなー!
さっさと教えてよー」
恥ずかしがるハルに遥は申し訳なさそうに呟く。
「ごめん……回答の意味が解らなさすぎて、言葉を失ってたわ」
「そんなに絶句するほど酷かった!?」
ハルが突っ込んでる中、ユウもハルのテストを覗き込んで苦言を呈した。
「塾でもめっちゃ馬鹿だなとは思ってたけど、改めて見ても酷いなこれ」
「ユウちゃんまで酷い!!」
「いや酷いのはハルの回答だよ。
何で南蛮貿易をペリー貿易って書いたの?
ってかペリー貿易って何?
何で「嘆く」の読みが「おどろく」になるの?」
「もう読み上げなくていいから真面目に教えてよ!!」
「真面目にも何も……だってハルの解答が訳分かんなさすぎて何をまず教えればいいのかさっぱりすぎて……」
ハルの頭の悪さに遥は頭を抱えていた。
そんな中、隣の男子達の席から徹人の声が聞こえてきた。
「あー! 成る程~だからここにXを代入するのかー!」
「そうそう、そんで次の問題も数字が変わっただけだから……」
「あ! 分かった! ここでこの公式使えばいいのか!」
親切丁寧に教える静夜を横に見ながら、各々も間違った所を直していた太一と明宏が感心する。
「東って教え方上手だな~」
「まあ、普段仕事の忙しい陽太に勉強教えてたりもするし、昔っからクラスメイトに教える事も多かったから」
スムーズに勉強していく男子達を見て、ハルもそこに混じっていった。
「東くーん! 一生のお願い!
勉強教えてー! ルカちゃん全然教えてくれないの!」
「失礼な! ハルの解答が怪文書すぎるだけだよ!
東くんだってハルのテスト見たら驚くと思うよ!」
ハルが他の男子を押し退けて静夜にテスト用紙を見せにきた。
急な事に驚きつつも、静夜はハルから受け取ったテスト用紙を見て真顔で呟く。
「わあ、確かにこれは酷い」
「でしょ!
酷いでしょ!?
とてもじゃないけど教えられないでしょ!?」
そんな静夜の発言に遥は同意を求めるかの様に質問した。
しかし、テスト用紙を見ていた静夜はハルの解答を察しハルに教え始めた。
「あ、でも天江さん、単語自体は鈴木より知ってんじゃん。
後ここの覚え方間違えてるんじゃない? 語呂合わせでこれだと……」
「……ああ! 成る程~! そうやって覚えると確かに分かりやすいかも!」
静夜に教わりハルも理解出来た様で、それを横で見ていた遥が驚きの表情を浮かべていた。
「え? え?
東くん何でハルの考え分かるの!?」
「何でっていうか……みんなどの辺でつまづくのか問題見たら大体分からない?」
静夜の問いに、遥は静かに首を横に振る。
「ごめん、このテストのどこにつまづく要素があるのか全っ然分からない」
「マジか……多分葵さんが当たり前に分かる事は、他の人にとっては当たり前じゃないって事なんだろうけど」
「私の当たり前がみんなの当たり前じゃない……かぁ。
(相変わらず哲学的な東くんもかっこいい……!)」
遥が感心した様に呟いている横で、太一がそんな遥の横顔を顔を赤らめながら眺めている。
そんな太一の表情を察して静夜はみんなに提案した。
「あのさ……ここにいるみんなでひとまずグルチャ作らない?」
小鳥遊学園の図書室にて。
「みんな集まったみたいだし、早速始めるか」
ユウの一言に徹人とハルが声を上げた。
「はーい。おねがいしまーす!」
「お願いしますっ!」
「因みに図書室だからなるべく静かにな」
2人のやる気満々の声量を心配してユウが注意する。
「にしてもまさか俺らが葵さんと勉強する日が来るとは……」
「本当だよなー」
太一と明宏は近くで見る遥を眺めていたが、遥はそれを気にもせず静夜に話しかけた。
「東くん! 何か分からないところはない? あ、個人的な質問も受け付けるよ!」
「別に俺はないかな。
というか葵さんも俺も教える側でしょ?」
遥と平然と話している静夜を目の当たりにした男子3人はそれぞれ静夜に掴み掛かった。
「東~ちょっーと教えて欲しい事があるからこっち来てくんねー?」
「丁度俺も質問が……」
「俺も俺も!」
「は? え?」
そうして静夜は女子達から少し離れた場所へと連れていかれた。
「なんか……お前葵さんと仲良くね?」
「席も近くで頭も良い者同士、もしかしてデキてるのか?」
太一と明宏は静夜にそれぞれ率直に質問する。
「あれ? 勉強の事聞くんじゃなかったのか!?」
一方徹人は鈍感だった。
2人に質問されて静夜は全力で首を横に振って否定する。
「いやいや、たまたま友達になっただけでそんなんじゃないから!」
「ふーん、そんで?
実際東は葵さんの事好きなの?」
太一の直球な質問に静夜は狼狽えながら答える。
「いや……普通に友達としか思ってないけど……」
「なーんだつまんねーの。
片想いなら冷やかしつつ応援してやろうかと思ってたのにー」
静夜の答えに明宏はつまらなさそうな顔で答える。
「そっか……俺はちょっとホッとした……」
明宏とは対照的に、太一は胸を撫で下ろして安堵の息をついていた。
「そういや渡辺は葵さんの事好きなんだよなー」
そんな様子を見て明宏はからかう様に静夜へと暴露を始めた。
「え? そうだったのか!?」
「まあ、好きっていうか、憧れ? っていうか……」
唐突なカミングアウトに静夜が驚きつつも、太一はやや恥ずかしながら答えた。
「なーなー東ー、そんな事よりここの問題なんだけどさー」
一方徹人はマイペースだった。
そして場面は変わり女子サイドはと言うと。
「ハル、とりあえずどの位出来ないのか見てあげるから、テスト見せて?」
遥が満面の笑みでハルにテスト用紙を差し出す様に手を向けていた。
「ルカちゃん、東くんがいるからご機嫌だね」
「まーそれも勿論あるけど……単純にハルがどれだけ勉強出来ないのか見て笑ってやろうと思って!」
「うわー馬鹿にする前提じゃん。
見せたくないわー」
ハルは嫌がりつつも遥に渋々テスト用紙を差し出した。
「さーて、どれどれ……」
「……」
「……?」
「???」
意気揚々とご機嫌にテスト用紙を受け取った遥だったが、用紙を見るなり顔がどんどん真顔になり、やがて遥の脳内はハテナで埋め尽くされた。
「もールカちゃん、そんなマジマジと見ないでよ恥ずかしいなー!
さっさと教えてよー」
恥ずかしがるハルに遥は申し訳なさそうに呟く。
「ごめん……回答の意味が解らなさすぎて、言葉を失ってたわ」
「そんなに絶句するほど酷かった!?」
ハルが突っ込んでる中、ユウもハルのテストを覗き込んで苦言を呈した。
「塾でもめっちゃ馬鹿だなとは思ってたけど、改めて見ても酷いなこれ」
「ユウちゃんまで酷い!!」
「いや酷いのはハルの回答だよ。
何で南蛮貿易をペリー貿易って書いたの?
ってかペリー貿易って何?
何で「嘆く」の読みが「おどろく」になるの?」
「もう読み上げなくていいから真面目に教えてよ!!」
「真面目にも何も……だってハルの解答が訳分かんなさすぎて何をまず教えればいいのかさっぱりすぎて……」
ハルの頭の悪さに遥は頭を抱えていた。
そんな中、隣の男子達の席から徹人の声が聞こえてきた。
「あー! 成る程~だからここにXを代入するのかー!」
「そうそう、そんで次の問題も数字が変わっただけだから……」
「あ! 分かった! ここでこの公式使えばいいのか!」
親切丁寧に教える静夜を横に見ながら、各々も間違った所を直していた太一と明宏が感心する。
「東って教え方上手だな~」
「まあ、普段仕事の忙しい陽太に勉強教えてたりもするし、昔っからクラスメイトに教える事も多かったから」
スムーズに勉強していく男子達を見て、ハルもそこに混じっていった。
「東くーん! 一生のお願い!
勉強教えてー! ルカちゃん全然教えてくれないの!」
「失礼な! ハルの解答が怪文書すぎるだけだよ!
東くんだってハルのテスト見たら驚くと思うよ!」
ハルが他の男子を押し退けて静夜にテスト用紙を見せにきた。
急な事に驚きつつも、静夜はハルから受け取ったテスト用紙を見て真顔で呟く。
「わあ、確かにこれは酷い」
「でしょ!
酷いでしょ!?
とてもじゃないけど教えられないでしょ!?」
そんな静夜の発言に遥は同意を求めるかの様に質問した。
しかし、テスト用紙を見ていた静夜はハルの解答を察しハルに教え始めた。
「あ、でも天江さん、単語自体は鈴木より知ってんじゃん。
後ここの覚え方間違えてるんじゃない? 語呂合わせでこれだと……」
「……ああ! 成る程~! そうやって覚えると確かに分かりやすいかも!」
静夜に教わりハルも理解出来た様で、それを横で見ていた遥が驚きの表情を浮かべていた。
「え? え?
東くん何でハルの考え分かるの!?」
「何でっていうか……みんなどの辺でつまづくのか問題見たら大体分からない?」
静夜の問いに、遥は静かに首を横に振る。
「ごめん、このテストのどこにつまづく要素があるのか全っ然分からない」
「マジか……多分葵さんが当たり前に分かる事は、他の人にとっては当たり前じゃないって事なんだろうけど」
「私の当たり前がみんなの当たり前じゃない……かぁ。
(相変わらず哲学的な東くんもかっこいい……!)」
遥が感心した様に呟いている横で、太一がそんな遥の横顔を顔を赤らめながら眺めている。
そんな太一の表情を察して静夜はみんなに提案した。
「あのさ……ここにいるみんなでひとまずグルチャ作らない?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる