見えるあなたと見えない僕

愛優

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6章

見えるあなたと見えない僕

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「こんにちは」
「今日はお願いします」
そう言って松本駅の前で会う。今日はこの左手の処理をするらしい。塩尻にある事務所まで電車に乗って移動する。普段はあまり気にしてなかったが、やはり天野さんは目立つらしい。向かいに座っている男子高校生らしい男の子がこちらをチラチラ見ながら話している。それに気づいていないのか彼女はスマホを見ている。
「大丈夫ですか」 
なんとなく心配になりそう聞くと少しすまなそうに
「多くて…」
そう言ってくる。朝早くから出ているため電車内は混雑しているが彼女が言っているのはそこじゃないのだろう。普通には見えない何かについてだろう。混んでいるといっても満員ではない車内を見ながらぼんやりと考える。東京のこの時間はもっとすごいのだろうな…。そんなことを考えていたら塩尻駅につく。ワインが有名で駅には本物の葡萄ぶどうがなっている。初めて塩尻駅に来たがとても綺麗なホームで景色も良かった。
「いいですよね。綺麗で」
そう言って山の方を見る。外の空気を吸ったおかげか顔色は良くなっていた。そのまま駅を出て10分ぐらい歩いたところのマンションに事務所はあった。見た目からはそんな感じしないが意外と人は来るらしい。中に入ると一人の女性と夫婦らしい二人が揉めていた。
「それはお気の毒ですがそれはできません」
「娘は殺されたかもしれないんだ。娘に聞いて見て欲しいんだ。あなた方が頼みの綱なんだ」
それを聞いてか、天野さんは先に奥の待合で座るように言ってから一人の女性の隣に座る。俺は少し聞いてしまったため大人しく行くこともできずに待合の前を隔てる壁に寄りかかる。そこしだが会話は聞き取れた。
「こんにちわ。わたくし、天野 空と言います。こちらの柏井かしわいが何か失礼なことを致しましたか」
あの女性は柏井というらしい。
「娘に合わしてくれないんです」
妻らしき女性が泣きながらそういう。俺は前カフェで彼女が言ってた言葉を思い出す。娘を見てトラウマにさせてしまう。最愛の娘が見るだけでトラウマにさせてしまうほどのおぞましい姿になっているとは考えてもいないのだろう。
「娘さんに犯人を聞く。そうですか…」
「そしたらきっと娘も…」
「不可能です。私たちは超能力者ではなく、霊能力者なので。あなた方が望む娘さんはもうこの世にはいません」
そう告げた彼女の表情は見えなかった。夫婦は怒ることもこれ以上頼むこともしなかった。ただ黙ったまま下を向いていた。数分が経ち、帰るとこちらに天野さんがやってくる。
「聞いてたんですか」
その声と被るように後ろから柏井と呼ばれていた女性が出てくる。
「お、これはまた…」
そう言った彼女の目はやはりと言っていいのか左手を見ていた。それほどにやばいのだろうか…。
「そんなにですか…」
そういうととりあえずさっきまで話をしていた席に座らされる。
「如月にやらせればいいのに…。あいつの得意分野じゃん」
「如月は荒いし、強すぎる」
なんか自然な天野さんを見れて笑ってしまう。あの男もここで働いている一人なのか…。あの時もなんの連絡もなしに来れたのは霊かなんかが知らせに行ったのだろう。
「まぁ、意識持って触ろうとは普通しないはずなんだけど、相当変わっているのんだろうね。じゃあ手、出して」
向かい合って座っている柏井さんに左手を差し出す。そして彼女が俺の手に触れた瞬間、俺は気を失った。



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