BLACK Tier【黒い怪物】

愛優

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二章  狼

狼奪還計画2

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「つぅ…」
「わざわざケガする必要なかったでしょー。まったく」
マチがそういいながら私が刺されたところの手当てをしてくれる。あの場所で少年に触れる行為は爆発してくれというようなもんだ。
「目、覚ましたよ」
白が呼びに来て地下へと向かう。一旦拘束して地下に置いておこうとなったのだ。敵側ももし亜連が脅されて使われているとしても誘拐となれば脅し材料に手出しすることはないだろうという判断だ。
「亜蓮だね?」
そう問いかけた秋斗を無視したが直ぐに自害する用の毒もないことに気づきため息をつく。
「何が目的だ。蒼鳥について知る情報は俺なんかに期待できないぜ」
「君はなぜ蒼鳥についている」
その言葉に多少の動揺が現れた。どうするべきか考えるように下を向き止まった。そして、思い出したかのように
「イアムは?」
とつぶやいた。
「少年なら今、上で黒の作ったご飯を食べている」
「なんで?」
いたってシンプルな疑問だった。マフィアの中でも質の悪い蒼鳥を敵に回しておきながらその中の中枢にいる人物を誘拐して拷問もせずにただ説いているのだから。
「私たちと手を組まないか?組むというならば君の足枷となる物も取ってあげよう」
「断るといえば?」
「君ごと足枷も燃やすのみさ」
秋斗のその返事に「選択肢なんてないじゃないか」と呟いている。彼はきっとわかっている。こちらに来た方がずっと安全だということが。だが、恐れているのだ。かつて自分が敗れたように私たちが敗れ大切な人が殺されることを。
「君たちの強さは分かった。だが、上層部には勝てないよ。蒼鳥がなぜあれほど暴力的でも成り立つのか。答えは簡単だよ。上層部の奴らは桁違いで強いんだ」
秋斗が笑ったのが表情を見なくとも分かった。
「君はご飯を食べて体力をつけるといい。うちの黒也が作るごはんが美味しいよ」
それだけ言うと一階への階段を上がっていってしまった。
鎖を外しても逃げる様子は見受けられない。
「イアム…」
マチにより精密検査を受け終わったイアムは疲れたのかソファーに座って寝ていた。
「無数の拷問跡と火傷があった」
「蒼鳥は失敗を許さない。失敗したら今度はないという意味でいたぶられる。それで死んでいく幼い子もたくさん見てきたしイアムのように自爆テロの人材として活用されることもある。それが日常茶飯事なんだよ。蒼鳥にとっては」
悔しそうにイアムの頭を撫でた。この人は本来こちらの世界にいるべき人間じゃないのかもしれない。本来は真っ当な人生を送るべき人間だったのかもしれない。たった数パーセントの殺しの才能のせいで数十年も苦しめられている。まるで私たちと似たようなものね。
「私たちには勝てないといったね。秋斗は君がいれば勝てると判断したんだ。私たちの上がそう判断したんだ。間違いはないよ」
イアムを見ていた目線がゆっくりこちらに向いた。
「俺の師匠が人質にされている」
時間の猶予は一ヶ月。
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