8 / 11
二章 狼
狼奪還計画2
しおりを挟む
「つぅ…」
「わざわざケガする必要なかったでしょー。まったく」
マチがそういいながら私が刺されたところの手当てをしてくれる。あの場所で少年に触れる行為は爆発してくれというようなもんだ。
「目、覚ましたよ」
白が呼びに来て地下へと向かう。一旦拘束して地下に置いておこうとなったのだ。敵側ももし亜連が脅されて使われているとしても誘拐となれば脅し材料に手出しすることはないだろうという判断だ。
「亜蓮だね?」
そう問いかけた秋斗を無視したが直ぐに自害する用の毒もないことに気づきため息をつく。
「何が目的だ。蒼鳥について知る情報は俺なんかに期待できないぜ」
「君はなぜ蒼鳥についている」
その言葉に多少の動揺が現れた。どうするべきか考えるように下を向き止まった。そして、思い出したかのように
「イアムは?」
とつぶやいた。
「少年なら今、上で黒の作ったご飯を食べている」
「なんで?」
いたってシンプルな疑問だった。マフィアの中でも質の悪い蒼鳥を敵に回しておきながらその中の中枢にいる人物を誘拐して拷問もせずにただ説いているのだから。
「私たちと手を組まないか?組むというならば君の足枷となる物も取ってあげよう」
「断るといえば?」
「君ごと足枷も燃やすのみさ」
秋斗のその返事に「選択肢なんてないじゃないか」と呟いている。彼はきっとわかっている。こちらに来た方がずっと安全だということが。だが、恐れているのだ。かつて自分が敗れたように私たちが敗れ大切な人が殺されることを。
「君たちの強さは分かった。だが、上層部には勝てないよ。蒼鳥がなぜあれほど暴力的でも成り立つのか。答えは簡単だよ。上層部の奴らは桁違いで強いんだ」
秋斗が笑ったのが表情を見なくとも分かった。
「君はご飯を食べて体力をつけるといい。うちの黒也が作るごはんが美味しいよ」
それだけ言うと一階への階段を上がっていってしまった。
鎖を外しても逃げる様子は見受けられない。
「イアム…」
マチにより精密検査を受け終わったイアムは疲れたのかソファーに座って寝ていた。
「無数の拷問跡と火傷があった」
「蒼鳥は失敗を許さない。失敗したら今度はないという意味でいたぶられる。それで死んでいく幼い子もたくさん見てきたしイアムのように自爆テロの人材として活用されることもある。それが日常茶飯事なんだよ。蒼鳥にとっては」
悔しそうにイアムの頭を撫でた。この人は本来こちらの世界にいるべき人間じゃないのかもしれない。本来は真っ当な人生を送るべき人間だったのかもしれない。たった数パーセントの殺しの才能のせいで数十年も苦しめられている。まるで私たちと似たようなものね。
「私たちには勝てないといったね。秋斗は君がいれば勝てると判断したんだ。私たちの上がそう判断したんだ。間違いはないよ」
イアムを見ていた目線がゆっくりこちらに向いた。
「俺の師匠が人質にされている」
時間の猶予は一ヶ月。
「わざわざケガする必要なかったでしょー。まったく」
マチがそういいながら私が刺されたところの手当てをしてくれる。あの場所で少年に触れる行為は爆発してくれというようなもんだ。
「目、覚ましたよ」
白が呼びに来て地下へと向かう。一旦拘束して地下に置いておこうとなったのだ。敵側ももし亜連が脅されて使われているとしても誘拐となれば脅し材料に手出しすることはないだろうという判断だ。
「亜蓮だね?」
そう問いかけた秋斗を無視したが直ぐに自害する用の毒もないことに気づきため息をつく。
「何が目的だ。蒼鳥について知る情報は俺なんかに期待できないぜ」
「君はなぜ蒼鳥についている」
その言葉に多少の動揺が現れた。どうするべきか考えるように下を向き止まった。そして、思い出したかのように
「イアムは?」
とつぶやいた。
「少年なら今、上で黒の作ったご飯を食べている」
「なんで?」
いたってシンプルな疑問だった。マフィアの中でも質の悪い蒼鳥を敵に回しておきながらその中の中枢にいる人物を誘拐して拷問もせずにただ説いているのだから。
「私たちと手を組まないか?組むというならば君の足枷となる物も取ってあげよう」
「断るといえば?」
「君ごと足枷も燃やすのみさ」
秋斗のその返事に「選択肢なんてないじゃないか」と呟いている。彼はきっとわかっている。こちらに来た方がずっと安全だということが。だが、恐れているのだ。かつて自分が敗れたように私たちが敗れ大切な人が殺されることを。
「君たちの強さは分かった。だが、上層部には勝てないよ。蒼鳥がなぜあれほど暴力的でも成り立つのか。答えは簡単だよ。上層部の奴らは桁違いで強いんだ」
秋斗が笑ったのが表情を見なくとも分かった。
「君はご飯を食べて体力をつけるといい。うちの黒也が作るごはんが美味しいよ」
それだけ言うと一階への階段を上がっていってしまった。
鎖を外しても逃げる様子は見受けられない。
「イアム…」
マチにより精密検査を受け終わったイアムは疲れたのかソファーに座って寝ていた。
「無数の拷問跡と火傷があった」
「蒼鳥は失敗を許さない。失敗したら今度はないという意味でいたぶられる。それで死んでいく幼い子もたくさん見てきたしイアムのように自爆テロの人材として活用されることもある。それが日常茶飯事なんだよ。蒼鳥にとっては」
悔しそうにイアムの頭を撫でた。この人は本来こちらの世界にいるべき人間じゃないのかもしれない。本来は真っ当な人生を送るべき人間だったのかもしれない。たった数パーセントの殺しの才能のせいで数十年も苦しめられている。まるで私たちと似たようなものね。
「私たちには勝てないといったね。秋斗は君がいれば勝てると判断したんだ。私たちの上がそう判断したんだ。間違いはないよ」
イアムを見ていた目線がゆっくりこちらに向いた。
「俺の師匠が人質にされている」
時間の猶予は一ヶ月。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜
黒城白爵
ファンタジー
異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。
魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。
そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。
自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。
後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。
そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。
自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる