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4.なぜ彼女を好きになったのか

へ た れ め が ね ど う し た

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「あの……」
「はい」
「つ……!!!」

 くるりとエドヴィン王子を見たリーゼは、首を少し傾けて、キョトンとエドヴィン王子の顔を見つめている。
 その可愛らしさに、ノックアウトされそうになった。

「…………ええと…………」

 あれ、何を言わなきゃいけないんだっけ。
 どうしよう。
 エドヴィン王子はすっかり頭が真っ白になっていた。

「あのぉ……?」
「あ、あのですね……あのあの……」

 お互い「あの」しか言わない時間が1分程経過した時だった。
 がしゃんと大きな音がエドヴィン王子の背後から聞こえた。
 咄嗟に振り向くと、アレキサンドラが整った綺麗な薔薇色の唇を動かしていた。


へ た れ め が ね ど う し た

 そうだ。メガネだ。
 エドヴィン王子は、アレクサンドラのへたれ発言はいただけないものの、心の中だけで感謝した。
 ちなみに感謝を口にしようものなら

「それなら態度で示してちょうだい」

 と言ってくるのは目に見えてわかっていたので、ここでは何を言わないことにした。

「すみません、うちのウエイトレスがご迷惑をおかけして」

 エドヴィン王子は、このレストランで働いてるウエイターという設定に今した。

「何のことですか?」

 リーゼは、本気でわからない様子だった。

「メガネのことです」
「ああ、はい」
「これ、ちゃんと拭いておきましたので」
「あ、ありがとうございます」

 リーゼは手を伸ばしたが、やはりちゃんと見えないのか、なかなかエドヴィン王子が差し出しているメガネまで届かない。
 どうしよう、ちゃんと自分が手渡しするべきだろうか。
 そんなことを考えている時だった。
 そっと、温かい感触が手に触れた。

「っ!?」
「あ、すみません」

 リーゼが、エドヴィン王子の手に触れたのだ。
 それもリーゼの方から。
 突然のことにメガネを落としそうになったエドヴィン王子は

「わわわっ!すみません!」

 と、メガネを落とさないように再度キャッチするのでいっぱいいっぱいだった。
 そんなこんなで、リーゼに手渡すのは自分の心臓がもたないと判断したエドヴィン王子は、そのままテーブルの上に

「メガネです、どうぞ」

 とおいたわけだが。
 問題はこの次だった。
 そしてそれは、手に触れただけで動揺しまくってるエドヴィン王子にとっては、試練中の試練だった。
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