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7.妊娠がわかってから

もし妊娠が発覚してしまえば

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「つまり、あの夜で?」

 アレクサンドラが、クリスマスプレゼントを期待するような目でニーナを見た。

「医師の診断がまだなので確定ではないのですが、恐らく」
「いつ確定するの!?」
「さすがに、この状態で医師を呼ぶことはできないので、この状態になってからではないかと」

 ニーナが指差したのはメモ帳の「つわり」という文字。

「つわりって?」
「妊娠した女性は、吐き気や頭痛、耳鳴り、眠気、嗅覚過敏など様々な体調不良が起きると言われているそうです。この状態にリーゼ様がなれば、私も医師を堂々と呼ぶことができます」

 本当は、今の状態でも呼んでいいのかもしれない。
 だが、自分の計算故にこの状態に持っていった手前、下手に動いてブラウニー家をこのタイミングでクビになるのも困る。
 そう。この件、もし妊娠が本当に確定したら、エドヴィン王子にはもう1つ大きな壁を乗り越えてもらわなくてはならないのだ。

「アレクサンドラ様。リーゼ様のご家族はリーゼ様を大層溺愛しております」
「もちろん知っているわ。本当に微笑ましいわよね」

 アレクサンドラも、リーゼの家族とは何度か顔を合わせたことはある。
 リーゼの外見の雰囲気によく似た、可愛らしい家族だなと思っていたのだ。

「ええ。そうです。貴族にも関わらず、あの変態思考は行動を許す程、リーゼ様には激甘なのです」
「そう、なの」
「ということはですね……今回もし妊娠が発覚してしまえば、リーゼ様のご家族が相手は誰かと騒ぎ立てると思います」

 ニーナには、その光景が目に浮かぶようだった。

「下手したら、部屋に監禁ということも……」
「さ、さすがにそれはあのご家族がするとはとても」
「するんです。あの家の遺伝子は、愛する者のために何をしでかすか、わかったものじゃない」

 ニーナは数年あの家にいる。
 何もリーゼだけの側にいたわけではないのだ。
 だからこそ、その人間たちの思考も、最後の最後で利用する。
 全ては、不労所得ゲットのために。

「だからアレクサンドラ様、お願いがあります」
「隊長の言うことならなんでも聞くわよ」

 こうして、ニーナはあるお願いをしてから、朝になる前に屋敷に戻った。
 リーゼにつわりの症状がで始めたのは、まさにその日の夜だった。
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