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7.妊娠がわかってから
心の中でガッツポーズをした
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リーゼは、自殺願望を持っていたわけではない。
むしろ「今日死んだら明日の推しを拝めない」「推したちの最後を見守ることこそヲタの務め」とすら思っていた。
だから、生活習慣はあれこれ問題はあれど、必ず野菜はしっかり食べるなど、自分なりの健康法を実践していたのだ。
それが、よりによって、自分が目の前の男性を推しの1人だと気付かなかった挙句、最も相応しい女性を差し置いてエチエチな事をして、一発で妊娠してしまった。
エドアレファンクラブ会長としてだけではない。
この国にとって、大変な事をしてしまったのだ。
エドヴィン王子の子供であれば、次の次の王になる可能性がある子供。
リーゼは、エドアレの良いところを受け継いだ王子と王女の妄想を繰り広げ、来る日に備えて産着まで最低5着は作ってしまっていたのだ。
願わくばナニーに立候補して、子供達に「あなたたちの両親は、この世で最も讃えられるべきカップルなのよ」と毎日洗脳して、エドアレ同盟に加盟させる気満々だった。
それが一晩の、たった1回の自分のミスで台無しにしたのだ。
関係各所に申し訳ない。こんな自分、生きる価値などないゴミではないか。
そう、ぐるぐると考えた結果、いつの間にか落ちていたナイフを拾っていたのだった。
「……ナイフを持っていたら、なんだって言うの?」
「私は、事実を申し上げただけで、まだ何も言っておりませんが」
確かにそうだった。
「じゃあ、何しに来たの?」
「お聞きになりましたよね、妊娠の件」
リーゼはニーナのツンなところを気に入っていた。
だが、今日のツンは、ナイフ以上にリーゼの心にぶっ刺さって痛いと、リーゼは思った。
「だから……?」
「家族会議が必要かと思いまして。ね、殿下」
ニーナも、エドヴィン王子がここにいることを、もう隠さない。
「そ、そうだ。リーゼ嬢。俺たちはこの間、あんなに熱く愛し合ったではないか。体位だって、あんなに変えて」
「殿下、今それ関係ない」
ニーナのツッコミレーダーは、こんな時でもちゃんと作動した。
「と、とにかくだな……」
エドヴィン王子は、リーゼがいるベッドに腰掛けてから、リーゼのナイフを持っている方の手首を掴んだ。
「きゃっ!」
リーゼは驚きの反動で、ナイフをベッドの上に落とした。
「リーゼ嬢。騙していたことは本当に悪かったと思っている。だが、信じて欲しい。俺は、ずっと昔からリーゼ嬢のことが好きで仕方がなかったんだ」
よし、よく言った、とニーナは心の中でガッツポーズをした。
むしろ「今日死んだら明日の推しを拝めない」「推したちの最後を見守ることこそヲタの務め」とすら思っていた。
だから、生活習慣はあれこれ問題はあれど、必ず野菜はしっかり食べるなど、自分なりの健康法を実践していたのだ。
それが、よりによって、自分が目の前の男性を推しの1人だと気付かなかった挙句、最も相応しい女性を差し置いてエチエチな事をして、一発で妊娠してしまった。
エドアレファンクラブ会長としてだけではない。
この国にとって、大変な事をしてしまったのだ。
エドヴィン王子の子供であれば、次の次の王になる可能性がある子供。
リーゼは、エドアレの良いところを受け継いだ王子と王女の妄想を繰り広げ、来る日に備えて産着まで最低5着は作ってしまっていたのだ。
願わくばナニーに立候補して、子供達に「あなたたちの両親は、この世で最も讃えられるべきカップルなのよ」と毎日洗脳して、エドアレ同盟に加盟させる気満々だった。
それが一晩の、たった1回の自分のミスで台無しにしたのだ。
関係各所に申し訳ない。こんな自分、生きる価値などないゴミではないか。
そう、ぐるぐると考えた結果、いつの間にか落ちていたナイフを拾っていたのだった。
「……ナイフを持っていたら、なんだって言うの?」
「私は、事実を申し上げただけで、まだ何も言っておりませんが」
確かにそうだった。
「じゃあ、何しに来たの?」
「お聞きになりましたよね、妊娠の件」
リーゼはニーナのツンなところを気に入っていた。
だが、今日のツンは、ナイフ以上にリーゼの心にぶっ刺さって痛いと、リーゼは思った。
「だから……?」
「家族会議が必要かと思いまして。ね、殿下」
ニーナも、エドヴィン王子がここにいることを、もう隠さない。
「そ、そうだ。リーゼ嬢。俺たちはこの間、あんなに熱く愛し合ったではないか。体位だって、あんなに変えて」
「殿下、今それ関係ない」
ニーナのツッコミレーダーは、こんな時でもちゃんと作動した。
「と、とにかくだな……」
エドヴィン王子は、リーゼがいるベッドに腰掛けてから、リーゼのナイフを持っている方の手首を掴んだ。
「きゃっ!」
リーゼは驚きの反動で、ナイフをベッドの上に落とした。
「リーゼ嬢。騙していたことは本当に悪かったと思っている。だが、信じて欲しい。俺は、ずっと昔からリーゼ嬢のことが好きで仕方がなかったんだ」
よし、よく言った、とニーナは心の中でガッツポーズをした。
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