幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第一章 幼年編

誰でも人間として見れるかどうかの境はある

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 姉さんに手伝ってもらった食事は非常に美味であった。
 調理過程は非常にヒヤヒヤしたが、まあ普段家事なんて手も付けないような中学生なのだから仕方あるまい。

 食後も同じような感じで勉強に付き合わされた俺。
 これまで気づかなったが、ラックの奥底に美少年同士が濃厚に絡み合う感じのウス=異本を見つけてしまい、地獄の様な時間に早変わりだ。ショタコン腐女子とか闇が深いなおい。

 唯一の救いと言ったら、俺がその本に気付いたことに姉さんが気付いていない事か。
 だがこれからは姉さんの頼みをもう少し吟味するとしよう。いきなりどこの誰とも知れぬ美少年と体育倉庫に閉じ込められかねない。

 ホモは嘘つき。きちんと覚えておかなくては。



 さて、そんな色んな意味で地獄の様な休日を過ごし、翌日。

 早朝である。
 未だ太陽に侵されていない静謐で冷ややかな空気が何とも心地よい。

 今から行うのは『なじみに見合う男になるための自分磨き』の一環であると同時に、『異様に増大した性欲の発散』を兼ねたランニングである。

 先日の暴走を反省し、より運動量を上げるつもりだ。
 今度は何をするか自分でもわからない、用心に越したことはないだろう。最も運動で消化できる性欲など大したものではないのかもしれないが。

 まあやらないよりはマシだろうなどと言い訳をしつつ、入念にストレッチをしていく。
 これを怠ると後が大変だ。量を増やすつもりだし、やりすぎるということはない。

 数十分かけてウォームアップを済ますと、靴紐などを確認して走り出した。
 あまり離れすぎても家族を心配させるだけだ。マンションの周囲をグルグルと周回するだけの面白みのないルート。同じ風景に飽き飽きしてきたルート。

 しかし風景が同じだからこそ他の所に意識を向けられる。

 例えば、脚。
 腿の上がり具合。ふくらはぎの拡縮。膝にかかる負担。靴越しに踏みしめる地面。

 あるいは、腕。
 腕のふり幅。掌の形。脱力具合。

 他にも体幹やら息遣いやら体温やら。
 ただ漫然と走っても意味は薄い。全身を完璧に掌握しようとする心意気こそ運動の要だ。

 まあぶっちゃけ何の根拠もない持論なのだが。

 長ったらしい語りの全てを台無しにしたところで、ふと違和感。

「ふうっ、ふうっ、はふぅっ」

 俺の呼吸音ではない。
 あまりにも重い音。無理な呼吸。バタバタと騒がしく感じるのは無駄な動きが多いからだろう。

 総じて、『運動慣れしていない人間が何かしらのきっかけで運動を始めてみて数分から数十分』といったところか。

 その気配を感じるのは、後ろから。

 気配を感じるなんてなんだか凄いことが出来ているがこれは筋肉のおかげだな。間違いない。
 やはり意識を向け続けたときの筋肉は素晴らしいものになるのだな。
 筋肉はね、毎日かまってやらないと拗ねてしまうんです。女と同じですよ。でも女と違うところがある。それはね、裏切らない所ですよ。HAHAHA。

 ・・・HAッ! いかんいかん。筋肉に精神を上書きされるところだった。
 そんなことされたらなじみへの思いが筋肉への思いに塗り替えられてしまうじゃないか。
 ていうか精神を上書きしてくるとか筋肉が裏切ってね?

 つまり裏切らないなじみこそが最高ということだな。
 つまりそのなじみを裏切った俺は大罪人なのでは・・・?

 自分の罪の重篤さを再認識したところで、予定していた周回数を終える。
 背後の気配も俺に合わせてか走り終えたようだ。

 クールダウンのストレッチを始めながら、俺は気配の主を見て・・・驚愕した。
 こんなに驚いたのは邪神を名乗る何かしらに『マジカルチンポあげるよ! 強制的に!』と言われたとき以来だ。

 年齢、不明。
 横幅、測定不能。
 体重、測定不能。
 性別、不明。
 体脂肪率、想像もしたくない。
 発汗量、異常。

 総じていうと、とんでもねえクソデブに追い回されていたことが判明したのだった。



 習慣というのは凄まじいもので、驚愕する精神を置き去りに俺の体はストレッチを続けていた。
 運動を終えてさらに運動する俺を見てかのデブは信じられないものを見るような目で見てきたが、俺からすればお前の蓄えた脂肪の量こそ信じられん。

 つーか。

「クールダウンしねーの?」
「・・・ぇ?」

 このデブが何を言ったのかマジで聞き取れなかったが、多分疑問符を浮かべたのだろうと予想して話を続ける。

「だから、クールダウン。運動終わったんだからしないとダメでしょ。体にかかる負担大きくなるし、良いことないぞ」

 こひゅーこひゅーと喘息の発作を疑いたくなるレベルの呼吸音を鳴らしている。
 荒々しい息はやがて落ち着いたのか、俺の問いへの答えを言う。

「く、くーるだうんって、なに?」
「はぁ? そんなことも知らないで走ってたのか。俺の後ろをずっと」

 こくりと頷くデブに対して、ストレッチしながら内心で溜息をつく俺。
 俺はまだ6歳だ。骨格が出来上がっていないため歩幅も小さく、肺活量も少ない。しかしこのランニングを始めて結構経つのだ。子供にしては、の範疇の出ないだろうが、スピードは早いし距離も長い。

 それにパッと見た限り運動なんてしたこともないって奴がついてくるなど結構な難事だ。
 俺の見立てがどの程度信用できるはともかく、それ相応の負担があるはず。なのにクールダウンもしないとは自殺行為・・・は言い過ぎかもしれないが、それぐらいのことだ。

 もしかしたらウォーミングアップもしてないんじゃないか?

「ウォーミングアップはした?」
「うん、したよ」
「どんなかんじ?」
「えーと、ラジオ体操」

 オリジナルのウォーミングアップなんてチャレンジャーでなくて良かったと言うべきだろうか。
 ラジオ体操自体は非常に優秀なのだし。

「どれくらい?」
「え?」
「ラジオ体操をどれくらい・・・いや、どこまでやったの?」
「どこまでって・・・」
「第一? 第二? 第三?」
「そ、そんなにあるの?」
「君ね・・・まあ第三はマイナーか。第二まで?」
「た、たぶん・・・」

 ちょっと怪しいので、今ここでやらせてみる。

「え!? あんなに走ったのに!? さらにラジオ体操もしろっていうの!?」
「しないとそれだけ体がイカれるよ。運動前後のメンテナンスみたいなもんなんだから、キチンとしないと体に毒だ」

 君のように太ってる人は特にね。
 その言葉だけは、必死に飲み込んだ。男か女か知らないが、どっちにせよ失礼だ。

「でも体が動かないし~」
「後でもっと動かなくなる」
「なんだか怠いし~」
「今後悪化させないようにクールダウン覚えとけ」
「これ風邪ひいてるかもな~」
「風邪ひいてる人はあんなスピードでランニングしないよ」
「誰か助けてくれないかな~チラッチラッ」
「ではもうそのまま死ね」

 クールダウンを切り上げてマンションの中に入っていく。
 これ以上付き合ってられるか。俺は俺で忙しいんだ。縁も義理もない豚に割く時間などないし、ストレスの原因というやつはさっさと処分するに限る。どうせこれからの人生、ストレスは大量に抱え込むのだ。無駄なストレスなんて抱えられるほど寛容になれるか。

 残りのクールダウンは浴室でやろう。どうせシャワー浴びるつもりだったし。多少手狭だが・・・この豚に付き合うよりはマシだ。

「・・・ああ! 待って、やる! ラジオ体操するから待って! ねえ! ちょっと!?」

 間があったのは多分俺がしているのが帰るフリだとでも思っていたのだろう。
 しかし俺はマジで帰るつもりだった。そこで当てが外れて慌てているのだ。

 勿論ここで呼び止められて止まるようなお人好しではない。
 ああいう言動をする奴はこれから何度も同じような言動をするし、その度に俺のストレスがたまっていては胃に穴が開いてしまう。

 そんなことになれば健全な成長、ひいては筋肉が萎えてしまうじゃないか。
 こんな奴に構っていては筋肉が拗ねてしまう。
 筋肉はね、毎日かまってやらないと拗ねてしまうんです。女と同じですよ。でも女と違うところがある。それはね、裏切らない所ですよ。HAHAHA。

 ・・・HAッ! いかんいかん。また筋肉に精神を上書きされるところだった。
 まさかもう拗ねているのか?
 おいおい愛しの・・・じゃねえよ。どんどん来るな俺の筋肉。ちょっと意識を向けたらすぐ侵食してくるぞ。なんだこれは、新手の精神病か? 怖いなオイ。

 質の悪いコンピュータウイルスの様な筋肉をどうすべきか。
 迫りくる肉塊を避けながら俺は考える。

 絶対に取りたくない手だが・・・仕方ない。

「わかった。後でお前のラジオ体操見てやるから、今はこれ以上こっちに来るな」
「ホント!?」
「本当。だから一旦家に帰って風呂に入れ。来週同じ時間に」
「わかった。じゃーな!」

 ドスドス、ゆさゆさとデブは去っていった。
 結局奴の名前はおろか性別すら分からなかったが、まあいいだろう。

 とりあえず、あのデブを俺の運動に付き合わせてあのデブに意識を向け、筋肉からの侵食を防ぐという方針を固めたわけだが。

 うまくいくのだろうか。
 俺は訝しんだ。



 その日の晩、夢の中に邪神が出てきた。
 どうやらあの筋肉の侵食は邪神の仕業とのこと。
 他にもいろいろ弄ったがとりあえずお詫びに、と『手加減』のスキルを追加された。
 性感を一定以下に抑え込む効果があるらしい。過度な快楽は負担に変わるので、まあ良いスキルだ。

 ここまでの説明は全部まくしたてられただけだったが、もう少し説明しようという気概は無いのだろうか。
 無いか。
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