幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

個人的には雑草魂万歳みたいな作品も結構好き

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 綺麗な喉をコクリコクリと動かしてかすかが茶を飲み切ったころ。
 ゆっくりと扉が開かれ、俺の待ち人である雄大が来た。

「お、来たか」
「おお、安心院。来たずエえイ!?」

 何発狂してんだこいつ。

「にっ仁科にしな先輩どうしてここに・・・?」
「あら、原島君ね。なに狂乱してるのよ」

 同感だ。
 文芸部の人間が図書館に居て何が不自然だというんだ。

「いやあ予想外でしたので! ちょっとそこの安心院をお借りしていいでしょうか?」
「そういうのは彼本人に聞きなさいな」
「良いよな? 安心院」
「別にいいよ。だからそんなドスの利いた声を出すな」

 謎の狂乱に満ちた雄大に連れられ、図書館の出入り口付近まで行く。

「どういうことだよ」
「何が」
「お前が図書館の女神と一緒に居ることだよ!」

 ああ、そう言えばこいつ微に惚れてたんだっけ。

「図書委員なんだから活動している文芸部の人間と仲良くしてる。何がおかしい」
「そうじゃなくて今日は水曜日だろ!」
「それがどうした」
「水曜日は文芸部は休みなんだよ!」
「何?」

 そうだとすれば、何か帰らない理由があるのか?

「しかもその予定変更は先週いきなり仁科先輩が提案したらしいんだ」
「となると不自然なのはか・・・仁科先輩の方か」

 あぶね、素が出るとこだった。こいつの前だと年功序列以上にめんどくさいだろうからな。
 しかしなんでまたいきなり日程改変なんてするんだ、それも急に。

「噂じゃ自分の影響力を再度見せつけて次期部長の座を確実なものにしたいらしい」
「日本円かよ」

 ありえないな。
 微はそういうタイプじゃない。
 他人に気を回すぐらいなら一人で本を読んでいる。そういうタイプの人間だ。
 権力なんて興味ないだろう。活字の世界の方がよっぽど魅力的に感じてる。

 多少離れたりもしたが、それでも伊達に十年近く一緒に居たわけじゃないのだ。

 だとすれば本格的に意味不明な行動だ。

「ま、軽音部の俺には関係ねえ。好きにやってくれや」
「いや! で! なんでお前は仁科先輩と一緒に居るんだよ!」
「知るか。のんべんだらりとしていたらあっちの方から来たんだ。『僕は悪くない』」
「何カッコつけてんだてめえは! じゃあ何か!? 仁科先輩の方からお前の隣に座ってきたとでもいうのか!?」
「そういっているだろうが」
「俺は! まだ! 話しかけられたことすら! ないのに!」
「何を言い出すかと思えばただの嫉妬か」
「やはり顔か! 顔なのか! 畜生台無しにしやがった! お前はいつもそうだ! お前は色んな女に手を付けるが一人だって添い遂げない! 誰もお前を愛さない!」
「何言ってんだお前」

 いや、割とマジで。
 なじみ以外に手を付けとらんし付ける予定もつもりもないわ、失礼な。

「落ち着け。冷静に考えろ。俺はお前にアドバイスしたよな? つまり俺がお前と仁科先輩を取り合う間柄になるならみすみす塩を送っていることになるだろう。つまり俺はお前の競合相手じゃないんだよ」
「いや、お前のアドバイス自体が虚偽って可能性もある」
「疑り過ぎだろ」
「男はあのおっぱいのためなら裏切るぞ」

 二人して微の方を見る。
 なにやら不機嫌そうに見えるのは俺だけだろうか。

 そしてその下にある男を裏切らせる双果実。

「・・・まあ否定はできないな」
「だろうが!」
「じゃあ証明しよう。実際に聞いて、その本が好きかどうか確かめるんだ」
「・・・なるほど、そりゃ名案だ」

 納得した雄大を連れて微の元へ戻る。

「お待たせしました」
「いやあすいませんね長い事ぐちぐちと!」
「気にしてないわ。でも男の友情に嫉妬しそう、なんてね」

 それはどちゃくそ気にしているのでは?

「そ・・・そうっすか! はい!」

 雄大、お前は何を興奮しているんだ?

「まあいい、本題です。仁科先輩は『大和工務店第四巻』って好きですか?」
「大好きよ。というか安心院君とはさっきまでそのことで話してたじゃない」
「いえ、こいつがその本に興味があるというので、ここは一つ仁科先輩に布教していただきたいなと」
「あら、この本は安心院君が私に勧めたのではなくて?」
「そうでしたっけ?」

 いかん、完全に忘れているぞ。
 必死に頭をひねって考えるが、全然思い浮かばない。

「まあ、それならそれで布教して下さいよ」
「むう・・・わかったわ。ええとね原島君、この作品は・・・」

 これで良し。
 読書嫌いの雄大も、好きな女のためならそれぐらい克服するだろう。
 その内に微が雄大に素を出せるまで仲良くなればそれで晴れて円満解決だ。
 俺ができる残りの仕事は、出来るだけ陰に徹すること。

 まあ後は雄大の頑張り次第だ。
 ここまでお膳立てしたのだから充分だろう。
 後は傍観者らしく気ままに気楽に眺めているとしよう。

 信照の時もそうだったが、他人の恋愛を後押しするのは割と楽しい。



 ここじゃ私たちが気になって集中できないだろうから、家で読んできなさい。

 微が雄大に出した最後の指示だ。
 割と的確なアドバイスであろう。俺とてなじみを前に悠長に本を読んでいる自信はない。徹底的に密着しているならともかく。

 そんなわけで、再び俺と微だけになった図書館。

「ねえ、どうして彼を呼んだの?」

 微が俺に話しかける。

「どうして、言われましても。おすすめの本を聞かれて、それなら今日俺が当番だから借りに来いと言っただけさ。早く読んでほしかったからな」
「ふーん、ずいぶん仲良さげね」
「なんだかんだで付き合いは長いからな。仲は良いさ」

 今更だけど、この図書館で微に対しては敬語でいるべきなんだろうか。
 誰もいないことは確認しているが。

「絶対、私の方が一緒に居たわ」
「タメの男と年上の女性じゃ話が違う」
「あら、年増は嫌い?」
「別にどうとも。微はまた別の所に居るから、そんな気にしなくていい」
「・・・もう」

 今更一年二年の差など、あってないようなものだ。

「はい、この話終わり! ねえ安心院君、それはそれとして一つ相談があるんだけど」
「相談?」

 微は顔を赤らめて、言を重ねる。

「ええ、相談。十月に文化祭があるのだけれど、実はそこで演劇部の台本を文芸部が担当することになっているのだけど、演劇部の中の一人が『ぜひ仁科さんに』って聞かなくて、私が書くことになったの」
「ほう、じゃあ相談内容とは」
「そう、今全然できて無いから、一緒に考えてほしいってこと」

 ほほう。
 正直文化祭が十月であることも、その中で演劇部が演劇を披露することも、その演劇の台本を文芸部が担当しているのも知らなかったが、面白そうな話だ。

 特に最近小説を書く楽しみを知ってしまったので、創作話は大歓迎だ。

 ちなみに、前世の作品を流用するのは控えることにする。
 創作の労力を知ってしまった以上、それを世界が違うとはいえ吸い上げるのは気が引けるからだ。

 まあ必要とくればいくらでも使う気だが。

「OK、その話受けよう。とりあえず演者と公開体制を教えてくれ」
「えーと、確か午前と午後で一回ずつやるらしいわ。それで演者は三年が・・・」

 色々と演劇部の情報を微から聞き取りつつ、それで出来そうな演目を考えていく。
 人数が多いので結構壮大な脚本でもよさそうだ。

 そんな風に色々考えているうちに、業務時間が終わっていた。



 業務時間が終わってからはさっさと帰ることにした。
 一応微を送ったりもしたが、どうせお隣だ。大した手間でもない。

 で、今は盗聴器の捜索中だ。
 なじみの帰宅にはまだまだ時間があるので、今のうちに発見しておかなくてはならない。

 そしてその合間合間に見咎めたゴミを回収する。
 昨日テーブルから払ったゴミも回収した。真っ黒だけどこれなんなんだろ?

 そのまま数時間捜索を続けたが、見つかることはなかった。

 見落としている、という可能性を考慮しないなら、やはり誰かに回収されたとみるのが妥当か?

 不安の中でイライラしながら、ひとまずそれ以外の家事やら宿題やらに着手することにした。
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