幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

本作は一人称視点でお送りしております

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 俺、微、なじみの三人で買い物に出かける。

 非常に珍しい組み合わせである。
 俺はともかく、残りの二人がしている対面と言うのは微との情事の直前のみ。

 それ以前にはお互いの面識はなく、お互い一方的に相手を知っている状態だった。

 なじみの美少女具合と言えば交友関係の狭い微の耳にも入る程で、微のアンバランス具合は美貌が成熟する中1ぐらいまでは交友関係の狭いなじみの耳にも入る程だったらしい。

 距離感の経験値がほぼ存在しないので、二人と面識はおろか肉体関係まである俺が橋渡し役になる・・・と思っていたのだが。

「え!? これ自作!?」
「そうなのよ。日本規格だとほら、サイズがないし・・・でも可愛いの付けたいじゃない?」
「あー、わかるなぁ・・・サイズに合わせると野暮ったいのしかないし」
「じゃあもう自分で作るしかないじゃない」
「はえー、でもこれ、なんていうんだろ、芸達者?」
「芸が細かい、ね」

 なんというか、年齢も軋轢も全部無視して仲良くなってるんだが。
 どうやらお互い共通の悩みがあったようで、そこを切り口に親密度が上がっているらしい。

 最初の頃はもっとこう、ぎすぎすとは言わないまでも、ぎこちない感じだった。
 方や彼氏を取ろうとする泥棒猫、方や彼氏と関係を持つために言い包めた相手。
 当時は綺麗に乗せられていたらしいが、時間をおいてクールダウンした現状では本当に気まずい事この上ない。その間に挟まれる俺も相当だった。気まずいを超えて罪悪感すら湧いていく。

 せめてもの罪滅ぼしと買った荷物を山と抱えていたが、特に問題もなく運搬している最中、その事件は起きた。

 そこに行きたいと言いだしたのはなじみなのだが、微は元々その店に行くつもりはなかったのだという。
 その理由をなじみが問うて・・・先の会話劇が繰り広げられたのだ。

 ランジェリーショップである。

 いやまあ、そこに行くのは別に良いのだ。
 本当におしゃれな人間は見えないところのおしゃれを最も気にするというのだし、そういうのを抜いても俺からすれば実用的(意味深)なので、糸目をつけないという程ではないにせよ金の使いどころである。

「はえーすっごい大きい・・・でもちょっと固い? もしかして胸筋?」
「そんなわけないでしょう、強めに張ってるの」
「生理?」
「あなたね・・・ちょっと中身が詰まってるだけよ」
「ふーん?」
「ゆっくりでも揉まれてることぐらいわかるのよ?」

 珍しい、微が饒舌だ。
 むしろなじみが口数が少なすぎやしないだろうか。伝わっているならいいのだが。

 再度言うがここに来ること自体は良い。
 しかしだ。仮に俺が店舗の外側にいたとして(それでも十分アレだが)、その仮定で会話の内容を精査してみよう。

 明らかに会話内容は試着室で行う類のものだ。
 そうでなくとも、外から聞こえる様なボリュームでしていい会話ではない。

 しかし俺には聞こえている。その事実は変わらない。

 ではどういうことか。
 単純な話だ。聞こえる範囲にいるだけの事。
 つまりは、あの美少女コンビが試着室の中でキマシタワーおっ勃てて♀いる時に、その試着室の前で滞在することを強要されているのである。

 周囲はすべて女性用下着、当然客層も女性ばかり。その中で一人筋肉質なメンズが試着室の前で仁王立ち。
 この状況の気まずさと言うか、後ろめたさは尋常ではない。

 完璧に変質者の類である。

 一連の下りを全部見ていた人たちからは生暖かい目を、二人が試着室に入ってから見始めた人はツンドラの眼差しをそれぞれ送ってくる。

 主よ、こんなところに滞在しなければならないほどの大罪を私は犯したのでしょうか。などとふざけたことを考えて現実逃避するしかないのが現状なのである。
 ちなみに犯した大罪はすぐに『浮気』であると思い至ったので二度と言わないことを神に誓った。



 買ったランジェリーがどういうものなのかについては秘匿された。
 『その時』のサプライズ感が欲しいとかで、脱いだ状態で見ることも許してもらえなんだ。

『なぜ女性はああも着飾るのが好きなのだろうね。どうせ脱がしてしまうのだから同じだろうに』
『おいおい、君は剥き身のプレゼントを渡されて喜ぶクチかい? もっと袋を開ける時のワクワク感を楽しみたまえよ』

 はて、こんなセリフを言っていたのは誰だったか。相当な女たらしであることに間違いはなさそうだが。
 一応俺は言ったことも思ったこともないと明記しておく。

 ともあれ買い物はそれで一段落したらしく、俺が荷物を抱え込んで帰路についた。
 荷物の大部分は微のものだが、先述のランジェリーを始め、なじみのものも多数ある。

 部屋に運び込むにはそこそこの労力が費やされた。主に俺の。

 大部分は微の部屋に運び込むことになったのだが、その際の人手は俺一人だった。

 微が自分の部屋になじみが入ることを許容しなかったのだ。
 前は普通に入ってきたが、当時混乱の極致にあったのは微も同じだったらしい。

 くるり。

「ん、まあ・・・微は元からビブリオマニアな所があるからな。似合ってるよ」

 そして今は『荷下ろし』と言う名の、どさくさ紛れに買っていた伊達メガネのお披露目をしてくれた最中である。
 かけているのは赤縁のもので、レンズの全方位を囲む野暮ったい程分厚いフレームが印象的な一品。

 普段静謐な印象が強い微に赤は似合わないと思ったのだが、実際に掛けてみると存外悪くない。
 ほぼ無表情なだけに鮮烈な赤がよく目を引き付け、その模造のレンズの奥にある微の大きな瞳に吸い込まれそうな印象を受ける。こうなるといよいよ野暮ったく感じるフレームの分厚さが翻ってアピールポイントになるというのだから美人は得である。

「眼鏡単体で見るとそうでもなかったが、微が掛けるとこうも化けるとはな」

 にこにこ。

 褒められてか、微は大変上機嫌だ。電灯をキラキラと反射させてご満悦である。
 こうなると一つ二つの年の差なんて些末事だというのがよくわかる。今の微は普段の年上然とした態度からは想像もできないほど可愛らしい。

「じゃあ、俺はそろそろ戻る。荷下ろしも終わったし、いいもんも見せてもらったしな」

 こてん。

「そうもいかんだろ。あっちはあっちでそれなりに運び込んでる。こっちよりは少ないとはいえ、男手は欲しい所だろう」

 しょぼん。

「また来るからさ」

 ぐだぐだぐだぐだ。

「ごめんって」

 言い方こそ柔らかいが、俺としては引くつもりはない。
 数回のやり取りの中で微もそれを察したのだろう、両腕をこちらにすらりと伸ばした。

「わかったよ」

 その要望に応え、か細い背中から大きすぎる胸部装甲まで丸ごと両腕で包み込む。
 やっぱり圧迫感の方が強い。

 一分ほどして。

「・・・もういいか?」

 ふるふる。

 二分が経ち。

「もうよろし?」

 ふるふる。

 三分を経て。

「もう」

 ふるふる。

 四分間のハグで許してもらえた。
 背中に感じるじとりとした視線を務めて無視し、俺は玄関から自宅へ帰った。



 どうやら蝶ヶ崎なじみという人物は、俺の予想を上回るほどに要領が良い女性のようだった。

 男手が必要であろうとという俺の予想を裏切り、彼女の持ち込んだ多数の物資は既に綺麗に整理され、買い物に行った形跡など何も感じられないほど整った部屋で俺を迎えてくれた。

「おかえりなさい」
「ただいま」

 抱き着いてきたりはしない。
 廊下の奥から顔をこちらに向けて、にへらと笑うだけだ。

 遠くからでも俺の帰宅を強く喜んでいることわかる。
 『家を守ってくれていた』という実感が、その笑顔を元に湧き上がって、少しとは言え放置したことを謝りたいと感じる。

 これを感謝と言うのだろう。
 だから感謝と言うのだろう。

 バキのピークはスペック戦。
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