幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

ゆびわのようなくびわ

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 なじみのメイド服を整えつつ、その身にキスや愛撫を落として時を過ごす。

 胸、尻、太もも。
 およそ性的な部分のみ肉付きが良く、されど全身のバランスは均整の取れたもの。
 神の不公平を体現したかのような彼女。

 それが今、俺の腕の中で無防備にくぅくぅと小さく寝息を立てている。

 嗚呼、我が運命のなんと恵まれたことか。
 神に感謝したいが、ここいらにいるのは邪神なので、感謝の口づけはやはりなじみに落としておく。遠くの神より近くの嫁だ。

 そんな思案に耽りながら服を整え、ひとまず局部だけは隠せるような形となった。
 だがなぜだろう、隠した所為で逆に淫猥だ。

 しかしシンプルに疑問なのだが、なぜバストとヒップはパッツパツなのにウエストはぶかぶかしているのだろうか。
 そりゃ多少は比例するだろうが、日本人はここまでメリハリのない部族であっただろうか。

 まあいい。日本人の平均的ボディバランスなど俺には何の関係もない事だ。
 今更平均的な女性に言い寄られたところで、そこに微塵の感慨も浮かぶまい。
 美酒を飲んだ後では生水さえ煮湯か苦渋だ。辛酸舐めて帰れ。

「んぅ・・・」

 あ、起きた。
 目が開かれ、焦げ茶色の瞳が俺を見る。

「んへぇ・・・」

 だらしなく笑って、赤子が抱っこをせがむように腕を伸ばしてくる。
 首の後ろに回った腕に逆らわず、なじみの体に沈み込む。

「・・・好き。すーき」

 間を開けて、何度も何度も甘い声で囁かれる好意。

「俺も」
「待って。今は私だけに言わせて?」

 応えようとしたら、なぜか止められてしまった。
 とはいえ止められた以上はしょうがない。とりあえず待つことにする。

「よろしい・・・好き。好き好き。大好き」

 しかし延々と続けられるこれは、ある種の暗示洗脳の様に思えてしまうのは俺だけだろうか。



 人間、集中していると時間感覚がイカれるのはよくある事である。
 死ぬ直前に走馬灯と呼ばれる意識と実時間の乖離現象が発生することは周知の事実だろうし、楽しい時間が割と一瞬なのは誰しも経験のある事と思う。

「まだ19時半か・・・」
「一晩はいた気がするねー」

 チェックインした時間が早かったのか、時刻はまだまだ宵の口。
 夏という季節柄もあって、ギリギリ太陽が見えなくもない、ぐらいの空模様だ。

 俺もてっきり22時ぐらいは回っているものかと思ったが。

 さて、俺たちは今少し外出をしていた。
 というのも、近場に24時間営業のアダルトショップを見つけたのだ。検索したら出てくるのだから、スマホとは全く便利なものである。大分久しぶりに使った気がするが。

 そう、この機会に首輪を買う事にしたのだ。
 ホテルでも販売はしていたのだが、やはりラインナップに乏しく『妥協』になってしまうという事で、こうしてわざわざ足を延ばすこととなったわけである。

 まあそうでもなくとも適当に外出しなければ体に悪いだろう。
 なにせあの部屋には窓すらなかったからな。なじみに集中していれば気にはならんが、一息つけば息も詰まる。

「あ、旅館」
「『月隠がちいん』だったか。本当はここに泊まる予定だったんだなぁ」

 どうやらホテルとショップの道中にあったらしい。
 気にしていなかった・・・というより、単純にスマホのマップ不慣れなだけか。気にできるほどの情報すら取れなかったのだ。

 というか今泊まってるホテルの屋号が『ガチ淫』なのマジで訴えられそうで怖いんだが。
 よくやるよな、経営者も・・・。

「思ったより良さげだな。こっちの方が良かったか?」
「んーん、壁薄そうだし、ケーくんいればどこでも変わらないし。でもこっちならもう少し美味しいご飯食べれたのかと思うと、そこは残念かなぁ」
「言うて酷くはなかっただろ。無難だっただけで」
「無難の中にも階級ってものがあるから・・・」

 なじみとしては断じて許せぬレベルの無難だったらしい。
 とはいえそれ以外ではおおよそ同じ条件という事もあって、いくらか安い今の方が総合的には良いと判断したそうだ。

 信照たちと鉢合わせても面倒なので、足早に歩き去った。
 そうそう起こる様なことではないだろうが、なんとなく後ろめたい気持ちがある。



 少し歩いて目的地に到着した。
 イメージとしてはもっとこう、けばけばしいのを想像していたのだが、実際は安価ブランドの服飾店並みにカジュアルな感じだった。

「なんというか、割と普通にあるんだな」
「これぞ、って感じは無いね。レンタルビデオ店の上にあるし・・・」

 そういえばAVを見て気持ちを高めるみたいなプレイもあったな。
 だが俺たちがやることは無いだろう。汚いものを見ては逆に雰囲気がぶち壊しだ。

 教材として割り切れば、まあ・・・いや、無理だな。

「まあ、行くか」
「ん」

 ラブホの時と同様に、なんとなく気恥ずかしくなりながら暖簾をくぐる。
 18歳未満立ち入り禁止の暖簾だが、これを真に受けて踏みとどまる18歳未満などいないだろう。今の俺たちと同じように。

 入ってみたが・・・うむ、まあ壮観だな。
 非日常な代物がごまんと置いてある光景は中々お目にかかれるものではない。
 いやそういう店なのだから当然なのだけれども。

「おお・・・」
「SM関係こっちだって」

 冷静ななじみ。
 いや、これは気が急いているのか。

 デパートへ玩具を選びに来た子供が、家電に足を止める親を急かすような。
 例えるならそんな気持ち。

 冷静かどうかで言えば、なじみは興奮している方なのだ。

 なじみの急かす方に足を運べば、なるほどSM関係のものが大量に。

「蝋燭? 普通のじゃダメなの?」
「ダメなの。普通のは融点が高いから皮膚に着くと火傷する。こっちのは溶けやすいから熱いだけで済む」
「ふーん・・・物知りだね」
「若気の至りさ」
「18にもならない高校生が何を・・・」

 軽い興味から無駄な知識を取り込むこと、あると思います。
 モケーレムベンベという単語を聞いて検索しなかったものだけが私に石を投げよ。

「ねえねえ、どれが良いと思う?」
「ふーむ・・・」

 なじみは楽し気に首輪を指さす。
 これが指輪であるなら給料三ヶ月分あたりを目安にできるのだが、今探しているのは首輪だ。三分の二は同じだというのに一気にインモラルになるのは何故だろう。

「店自体がリーズナブルな価格帯だし、金額は気にしないとして・・・純粋になじみに似合うものを探さないとな」
「でもケーくんの好みも大切じゃない? 着け心地はともかく、主に見るのはケーくんなんだしさ」
「ああ・・・そういえばなじみからは首元だからあんまり見えないのか。失念していた」

 まあそれを加味しても俺の好みは『なじみに似合うもの』なのだが。

「試着とかできるのかな?」
「・・・どうなんだろうか。首輪は服飾と言い張れなくもないが・・・聞いてくる」
「うん」

 少し見回して店員を見つけたので、聞いてみた。

「無理だってさ」
「そっかー・・・」

 制度的に出来ないのならしょうがない。
 合わせる程度にしておこう。

「こういうのは?」

 なじみが手に取ったのは赤くて細い、チョーカーの様にも見える一品。
 それを受け取ってなじみの首元に合わせてみる。

「んー・・・ちょっと快活な印象があるな。日常のオシャレとしては悪くないが、用途を考えると少し場違いだろう」
「そういえば、そういう用途だったね・・・」

 棚に戻した。

 ああいったカジュアルなのは少し違うと見るなら・・・いっそ極端にしてみるか。

「こっちはどうだ?」
「おお、対極」

 俺が手に取ったのはとにかくデカい、一番小さく絞ってもまだまだ余裕のありそうなもの。
 ベルトは真っ黒で太く、金具も同様に大きい、ともすれば無骨な一品だが、細く白いなじみの首にはきっと映えるだろう。

 そして何よりも・・・このずしりと来る重量感だ。
 『繋がれている』という実感も恐らく一番大きい。首輪はなじみから見えないという問題を思い起こすとこの点はかなり重く見るべきだ。

 あと、構造が単純で手入れや掃除が楽そうというのもある。
 ここについては言わぬが花だろうが、現実問題その辺りが面倒では使うのも億劫になるかもしれないからな。長く使うつもりなら割と重要な要素ではなかろうか。

 手渡されたなじみはその重量感に少し唸った後、さも当然であるかのように自分の首に着けようとした。

「待て待て待て」
「え?」
「試着はダメって言っただろ?」
「ああそうか・・・なんかもう完全に受け入れ態勢整ってた」
「まあ、気に入ってくれたようで何よりだ」

 という訳で、お買い上げである。
 ちなみにセットでリードと緊縛用の縄と説明書も手に入った。抱き合わせ商法の餌食になった感じもあるが、まあこの際良いだろう。

 一式をまとめて紙袋に入れてもらい、帰路につく。

 もう夜だ。
 普段なら出歩かない様な時間帯に歩いている事にちょっとしたワクワク感もあるが、粘っこく残り続ける熱気に辟易する気持ちの方が強い。

 戻ったらとりあえずクーラー付けないとな。
 この調子だと熱中症になりかねない。

 ところで。
 俺には今現在、夏の暑さ以外に辟易する要素があった。
 これに比べれば蒸し暑さなどどうとでもなる様な、鬱陶しそうな要素が。

「あ、安心院さん・・・」
「はあ~~~~~~~~~~・・・」
「そんな溜息でることあります?」

 旅館の外でなぜか一人佇む、圭希の姿だった。
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