幼馴染でマジカルなアレが固くなる

余るガム

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第二部 高校生編

このお姉ちゃんの名前覚えてるやつおりゅ?

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 我が家の合鍵が三つに増えた。
 いやまあ、元々なじみが密造していた分をかすかに渡しただけなのだが、とりあえず我ら三名の仲は中心にある俺の部屋を基にしていくらしい。
 さすがに三人で住むには手狭が過ぎるので、微は基本的に自分の部屋で過ごすものの、気が向いたときは自由に訪問してきてほしい、ということになった。

 それに伴って微の部屋の合鍵も受け取る事となり、これについては後日発注しておくそうだ。

 嫁と浮気相手の仲が浮気を公認したうえでドンドン良くなっていくのだが、渦中の人である俺の心中を察する事が出来る人間は一体この世に何人いるのだろうか。
 事実は小説より奇なり、とは良く言ったものだ。

 さて、夏休みの内にやっておこうと思った帰省。
 なんだかんだゴールデンウイークでもこっちにいっぱなしなので、そろそろ帰っておこうと思ってこの予定を入れた。母に聞いたところ、何という偶然か、姉さんも同じタイミングで帰省するらしい。

 あの家に家族四人が揃うなどあまりないことだ。
 連絡を受けた母は嬉しそうで、珍しく声が浮足立っていた。

 時期を同じくしてなじみも同じように帰省するつもりらしいが、微は帰省などするつもりはないそうだ。
 曰く、お互いに合わせる顔も無いだろう、とのこと。まあ無いだろうな。実際今度は殺されかねない、父親の方が。

 とはいえ帰省と言ってもそう長い距離を行くわけでもないので、別段気負うようなことでもない。
 実家との折り合いもあるので連絡したが、多少迷惑を考えないなら別にその連絡すら要らないぐらいなのだ。
 一泊して帰って来るだけだし、向こうに置きっぱなしの服などもある。更に敷居は低い。一応持ってはいくが、多分使わないだろう。

 そんなわけでなじみと電車に乗る事しばらく。
 そこから更に駅から少し歩いて道を分かれるという、最近では中々珍しいことしてから実家へ。

 まるで回想でもするかのように階段をゆったりと実家のある階まで上がっていく。
 随分使っていなかったせいで、しばらく見つからなかった鍵を使ってドアを開ける。

「ただいま」
「お帰り~」

 見ると、母が相変わらずのぽやぽやした笑顔で出迎えてきた。
 美麗ながらも冷たい彫刻を思わせる姉さんと瓜二つの美貌だが、大量の愛想は印象をガラリと変える。こんなナリで二児の母。しかも片方は成人済みという外見詐欺。
 また、転生者をきっちり育て上げたことからも分かるが、やたらと肝が据わっていることも特徴か。

 母は強し、なんて言葉を実感させてくれる人である。

 なお、視界に映ってしまう『絶頂回数0』の数字は不変だ。まさか処女受胎したって訳でもあるまいし、父さんは何をやっているのだろうか。
 親の情事など知りたくもないが、そうだとしても勝手に入ってくるこの数字は実に忌々しい。

 未だ手入れの痕跡が見受けられる自室へ行き、ベッドの脇へドサドサと荷物を積む。
 疲れているわけでもないのに肩を鳴らして寝転んでみれば、何やら懐かしさすら感じる天井。

「実際には数か月だが・・・」

 随分長いこと見てなかったような気がする。具体的には2年3ヶ月ぶりぐらいのような感覚だ。
 高校入学からは色々『濃かった』からだろう。正式になじみと付き合い、超能力を修め、部長と出会い、微と浮気して・・・なるほど、そりゃあ濃いに決まってる。

 そうだ。実は今回の帰省で一つやるつもりだったことがあるのだ。
 わざわざ言うようなことでもないとは思うのだが、筋という奴は通しておくとそれを盾にできるので何かと便利だ。

 つまりは、なじみと正式に付き合うことになったという報告を。

 そのためにはなじみとどこかしらで合流する必要があるので、それなりに機会を待つ必要がある。
 ま、明日明後日と言ったところだろう。それまでは久々の実家を楽しむとするか。

 ガチャリ。

「ん?」

 玄関のドアが開いた音。
 これは、多分あれか。姉さんも帰ってきたか。

 それを受けて俺は倒れ込んでいたベッドから飛び起きて、玄関へと姉さんを迎えに行く。

「ん、弟」
「おかえり、姉さん」
「お姉ちゃんにハグをしろ」

 表情も声色も動かすことなく、そしてついでに悪気もなく腕を伸ばしてくる。
 世の姉弟の例にもれず、俺も姉の言葉にはとりあえず逆らわない。
 へいへい、などと言いながら、いつの間にやら見下ろす身長差の姉を両腕で抱き寄せる。

 今更だが、これって姉弟の一般的スキンシップの範疇なのだろうか。

「頭もなでろー」
「へいへい」

 うん、絶対に違うわ。
 一般的姉弟がこのレベルのスキンシップするんなら、世の弟はあそこまで姉に愚痴を言わない。

 エロくて肉感的ななじみと比べると姉さんの体はスマートで、ともすれば貧相ですらあるが、美しさという観点ではなじみを上回る。
 もはや個々人の好み以外では甲乙つけられまい。

 あと無駄に良い匂いがする。

 3、4分ほど抱きしめ合ったところで、姉さんがもぞもぞしだしたので腕を解く。

「うん・・・うん、やっぱり・・・」
「どしたの」

 何やら真剣そうな顔でぶつぶつ呟く姉に問うが、それに答えが返ってくることはなく、ただ『なんでもない』とだけ言われて誤魔化された。

 さて、これは俺の経験則なのだが。
 こういう事をしている時の女性というのは後々突拍子もない行動をするんだ。俺は詳しいんだ。

「よし、弟」
「なに?」
「ちょっとこの日に手伝ってほしいことがある」
「えーと? この日付は?」
「イベント」

 ああ、あれか。
 なじみが手伝って欲しいと言っていたイベントだ。
 まさか姉さんも参加するとは。

「なんか手伝えと?」
「そう。力仕事は山のようにある」
「悪いけど、そのイベントに参加する別の人の手伝いするから姉さんの方は手伝えないよ」
「むむむ」
「筋が通らないからね」
「はぁ・・・わかった」

 ちゃんと筋は通してくれるからまだ突拍子もないって程ではない。
 世の姉御はこういう時に無理を押してくるもんなんだろうか? そうだとしたら確かにヘイトは溜まりそうなものだ。

「ちなみに別の人とは?」
「なじみ」
「むぅ・・・またあの女・・・」

 こういうブッキングが起きた時、というか起きてなくても俺は基本的になじみを優先する。
 流石に不利益が大きそうなら姉さんに向かうが、そうでない限りは割と放置しがちだ。折を見て埋め合わせしたいと思いはするものの、やっぱりなじみにベッタリなのでその機会もあまりない。

 さっきの奇行も合わせて考えると予想だにしない暴発をしそうで少々怖い。

 俺の初実家帰りは小さな不安を伴って始まったわけである。



 今学期の通知表は母のご機嫌取りに非常に有効だった。
 もっと頻繁に帰って来い、寂しいじゃないかと何度も繰り返し言っていて、いい加減うんざりしたあたりで話題そらしに出したのだ。

 こういうのも親の愛情と分かってはいるが、どうしてもな・・・。

 なお父であるが、今は仕事でいないようだ。
 なるほどそりゃあ母も寂しかろう。忙しいってことは多分仕事が上手くいってるって事だと思うが、それはそれ。

 もう社会人である姉の方はあまり時間も取れないということで、学生の身分である俺が頼みの綱だろう。
 別段必要性とかは感じないが、なるべく意識はしておこうと思う。

 実際にどうするかはともかくとして。



 この帰省で最も心配していたのは就寝である。
 子供のような事を言ってしまうが、ここ最近はずっとなじみと一緒に寝ていたので、一人での就寝だと少し物寂しい。

 抱き枕でも買った方が良いのだろうか?
 しかし使う機会もそうそうないし、買ったところで代用できるとも思えない。
 金銭についてはまだ余裕があるとはいえ、こんなレベルで使っていたらその余裕もすぐなくなる。

 まあ買う意味はないだろう。

 なに、多少物寂しいとはいえ横になって目をつぶっていればそのうち眠る。
 数日耐えれば良いだけのことだ。なじみからしても似たようなものだろうさ。



 半眠半覚。
 今の意識レベルはそんな感じ。

 とりあえず手近にあった暖かいものを手繰り寄せる。

 布団?
 にしては重いか。

 人?
 そんな感じだ。

 なじみ?
 にしては感触が違う。

 じゃあ誰だ。

 その疑問が意識を揺り起こした。

「・・・なにしてんの、姉さん」
「・・・バレてしまってはしょうがない」
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