Mの憂鬱とSの街

TOKYOなめこ

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はっ、はっ、はっ。
奴が来る。
薄暗い地下通路の中、ピチャリと水溜りを踏みつつ、奴はこちらへとゆっくり向かってくる。
「ちょっと待てよ!私は何もやってないだろ!頼むから見逃してくれ!」
息も絶え絶えにそう懇願する。
このままだと待っているのは確実な死。
どうにかして……
「ほかの、ジャンクの居場所を教えてくれたら……」
そんなこと……
「吐くわけねぇだろ!クソ野郎が!」
「そう……」
あぁ。言っとくべきだったか?
いや、それはねぇな。
目の前に広がる行き止まりの壁に立ち止まり考える。
どうすれば……。リーダーならどうするか。
奴が近づく。
漆黒の長い髪。無機質な目。整った鼻や口。白い肌。
「まったく、そんだけ完璧な見た目ならモデルでもやった方が儲かるんじゃないか?」
時間稼ぎと同時に皮肉や挑発も込めてそう話しかける。
しかし、彼女は歯牙にも掛けず近づく。
どうする。考えろ。
「いいぜ、殺せよ。どうせ囮役だ。けど、最後まで必死に抵抗させてもらうがな」
少しでも反応を稼ぎ時間を……。
「あなたたちの強さはその諦めないところだと思う」
やばい。なんとか……。
彼女は腰にかけた刀に手をかける。
どうする……。
「だからこそ、ここで殺す」
彼女が抜刀する直前、右の膝を脱力させ彼女の懐に潜り込み、超近距離戦に持ち込む。
狙うは顎。左足を思い切り蹴り右手で思い切り掌底を打ち込む。
……はずだった。
「……やっぱり、強い」
彼女は私が動くと同時に後ろに飛び退いていたのだ。
間合いを見誤った私は彼女にとって格好の的だった。
「くたばれ化けもん」
そう言って、右手の親指を下にさげると
私の人生は終わった。
「……こちら、C地区治安管理委員長。20人中、犠牲者5。重症者3。軽症者6で任務完了しました」
「了解。A、Eともに完了している。直ちに戻ってくるように。負傷者は救護チームがすぐに回収に向かう」
「わかりました。それでは直ちに向かいます」
私は彼女の死体を一瞥すると、来た道を引き返す。
まったく、彼女たちが弱ければこれだけ死者や重症者も出なかったのに。
そう、走りながら考える。
能力者相手に一般人もどきがここまで戦える。まったく、由々しき事態だ。
全てはあの魔法少女と一般人もどきの少年のせいだ。
彼女たちが出会ってしまったあの日以来、私の生活は休む暇もない。
「まったく、ジャンクどもめ……」
つい声が漏れる。
ここ最近の激務せいで疲れているのだろうか……。
それに、ジャンクどもが無駄だとわかっていても最後まで足掻くせいで、精神的疲労も尋常じゃない。
さっさと奴らのこのふざけた名前の計画を阻止しないと……。
そんな、ジャンクへの恨みつらみを脳内で吐き捨てながら本部へと向かう。
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