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第三話:霊 たまこ
殺され方1
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しかも両手は縛られたまま。
うまく歩けないしもちろん走れない。
何かを踏んで音がしたら気づかれてしまう。
そう思うと全身から冷たい汗が吹き出しました。顔を拭うことも出来ず、肩をあげて服で顔を拭きつつ息を殺して門まで歩きました。
母屋は真っ暗で静かでした。
良かった。寝ていると思いました。
地面に何か無いか、音のするものや金属音を響かせる物がないか目を凝らして歩きました。
なので、腰を低くして歩いていたんです。
門を見つけた時にはこれで助かるって思ってホッとしました。
門の外には街頭が朧げに光っていました。
助かった。ここを出たらすぐにお巡りさんに助けを求めよう。
そう思ってホッとしたのがいけなかったんです。油断してしまったんです。
腰を思い切り伸ばして走り出そうとしたところに物干し竿があったんです。
頭にガツンと当たり、金属音が夜の中に響き渡りました。
やばい。そう思いましたが思い切り頭をぶつけて目の前に星がたくさん飛んでいたんです。クラクラして足取りが悪くなりました。
逃げなきゃと思えば思うほど足がもつれうまく走れない自分自身に、物干し竿なんかにぶつかった自分に情けなくてイライラしたのを覚えています。
そうこうしていうちに母屋に明かりがつきました。
玄関にも明かりがさしたとき、ドアを思い切り開け放つ音と共に私の姿を見つけた男が何か罵声を私に浴びせながら近づいてくる音が後ろに聞こえました。私は恐怖でもつれる足をなんとか動かそうとしましたが思うように足は動かない。自分の足じゃないみたいでした。
本当に本気で心から自分にイライラしたのは後にも先にもあのときだけです。
そんな私を嘲笑うかのように、男はゆっくりと、恐怖で逃げられなくなっている私を弄ぶように近づいてきたんです。すぐ後ろからで「ほら、早く逃げないと捕まえちゃうよ」っていう気持ちの悪い声と笑い声が聞こえて、内臓を手でぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような気持ちの悪い感覚に陥ったのを覚えています。
私は簡単に男に捕まりました。
頭を何回も殴られ、体に力が入らなくなりました。
首根っこを掴まれて引きずられているのがわかりました。足が地面に擦れて熱かった。痛かった。力の入らない指先も地面に擦れて痛かった。ヌメッとしたものが指先に触れて、鉄の匂いが鼻につきました。
それが自分の血の匂いだとわかるまでに時間がかかりましたが、悲鳴をあげる間も無く私はさっきまでいた、ようやう逃げ出したあの小屋に投げ入れられたんです。
しばらく呆然と床に転がっていました。動ける気力がなかった。体も動かなかった。
小屋の外でガチャガチャと鍵をかける音がしていて、それは男が小屋に錠をかける音だったんです。
「死ぬまでそこにいろ。じわじわ殺してやる」そんなことを言ってたのを消えゆく意識の片隅に聞きました。
たまこは大きく深呼吸をすると、氷が溶けきってオレンジジュースと水に分離し薄くなったジュースを綺麗に飲み干した。
太郎が新しく冷たいオレンジジュースを出してやる。
たまこがいつもしているように、己の飲み干した空のグラスを持ち上げた。台所に持って行こうとしたのだ。空いた食器を片付けるのはもうずっとたまこの仕事であった。
いつもするようにたまこが取ろうとする。それを太郎が手で制した。
太郎自身で空いたグラスを取り、代わりに新しいグラスを置いてやる。
たまこは伸ばした腕を落とし、広げた手をぐっと閉じる。そして、
私はもうこの仕事ができないんだ。そう思うと心が痛くなった。
目の前に出されたオレンジジュースがこの世で飲む最後の飲み物だと思うと、たまこはなぜだか無性に悲しくなった。
「お飲みなさい」
そんな気持ちを察した昭子が、真っ白い人差し指をグラスに向けて数度振る。
たまこは小さく頷き、冷たいオレンジジュースを半分ほど飲み干した。
また、続ける。
うまく歩けないしもちろん走れない。
何かを踏んで音がしたら気づかれてしまう。
そう思うと全身から冷たい汗が吹き出しました。顔を拭うことも出来ず、肩をあげて服で顔を拭きつつ息を殺して門まで歩きました。
母屋は真っ暗で静かでした。
良かった。寝ていると思いました。
地面に何か無いか、音のするものや金属音を響かせる物がないか目を凝らして歩きました。
なので、腰を低くして歩いていたんです。
門を見つけた時にはこれで助かるって思ってホッとしました。
門の外には街頭が朧げに光っていました。
助かった。ここを出たらすぐにお巡りさんに助けを求めよう。
そう思ってホッとしたのがいけなかったんです。油断してしまったんです。
腰を思い切り伸ばして走り出そうとしたところに物干し竿があったんです。
頭にガツンと当たり、金属音が夜の中に響き渡りました。
やばい。そう思いましたが思い切り頭をぶつけて目の前に星がたくさん飛んでいたんです。クラクラして足取りが悪くなりました。
逃げなきゃと思えば思うほど足がもつれうまく走れない自分自身に、物干し竿なんかにぶつかった自分に情けなくてイライラしたのを覚えています。
そうこうしていうちに母屋に明かりがつきました。
玄関にも明かりがさしたとき、ドアを思い切り開け放つ音と共に私の姿を見つけた男が何か罵声を私に浴びせながら近づいてくる音が後ろに聞こえました。私は恐怖でもつれる足をなんとか動かそうとしましたが思うように足は動かない。自分の足じゃないみたいでした。
本当に本気で心から自分にイライラしたのは後にも先にもあのときだけです。
そんな私を嘲笑うかのように、男はゆっくりと、恐怖で逃げられなくなっている私を弄ぶように近づいてきたんです。すぐ後ろからで「ほら、早く逃げないと捕まえちゃうよ」っていう気持ちの悪い声と笑い声が聞こえて、内臓を手でぐちゃぐちゃにかき混ぜられるような気持ちの悪い感覚に陥ったのを覚えています。
私は簡単に男に捕まりました。
頭を何回も殴られ、体に力が入らなくなりました。
首根っこを掴まれて引きずられているのがわかりました。足が地面に擦れて熱かった。痛かった。力の入らない指先も地面に擦れて痛かった。ヌメッとしたものが指先に触れて、鉄の匂いが鼻につきました。
それが自分の血の匂いだとわかるまでに時間がかかりましたが、悲鳴をあげる間も無く私はさっきまでいた、ようやう逃げ出したあの小屋に投げ入れられたんです。
しばらく呆然と床に転がっていました。動ける気力がなかった。体も動かなかった。
小屋の外でガチャガチャと鍵をかける音がしていて、それは男が小屋に錠をかける音だったんです。
「死ぬまでそこにいろ。じわじわ殺してやる」そんなことを言ってたのを消えゆく意識の片隅に聞きました。
たまこは大きく深呼吸をすると、氷が溶けきってオレンジジュースと水に分離し薄くなったジュースを綺麗に飲み干した。
太郎が新しく冷たいオレンジジュースを出してやる。
たまこがいつもしているように、己の飲み干した空のグラスを持ち上げた。台所に持って行こうとしたのだ。空いた食器を片付けるのはもうずっとたまこの仕事であった。
いつもするようにたまこが取ろうとする。それを太郎が手で制した。
太郎自身で空いたグラスを取り、代わりに新しいグラスを置いてやる。
たまこは伸ばした腕を落とし、広げた手をぐっと閉じる。そして、
私はもうこの仕事ができないんだ。そう思うと心が痛くなった。
目の前に出されたオレンジジュースがこの世で飲む最後の飲み物だと思うと、たまこはなぜだか無性に悲しくなった。
「お飲みなさい」
そんな気持ちを察した昭子が、真っ白い人差し指をグラスに向けて数度振る。
たまこは小さく頷き、冷たいオレンジジュースを半分ほど飲み干した。
また、続ける。
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