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第三話:霊 たまこ
殺され方2
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「あの男はそのまま私を二、三日放置しました」
水も食べ物もなくて、暑いし暗いし、体に力も入らないし、立つことだってままならなかった。外にも出られない。動けるようになったとしても外から鍵をかけられているんです。だから逃げられるはずもありません。そんな状態が続き、とうとう朦朧としだした意識の中で私は死を覚悟しました。
そんなときでした、黒い大きな靄が目の前を通って行ったんです。何度も何度も。行ったり来たり。靄の周りを覆うように赤ぁく燃えていたのを覚えています。そして不気味に甲高い笑い声も聞こえました。それが何だったのかはいまだにわかりませんが、でも……
「靄ときたかい。靄っていったらなんだと思う? 」
「黒い大きな靄ねえ。俺らは影に潜めば何にでもなれるから一概にこれとは言い難いけど」
「靄だってよ太郎。でかい靄っていったら、あれだよ、あたしが思い浮かべるのは一つしかないね。そうだろう? どう思う?」
「ああ、でかい黒いのっつったらあれしか思いつかないけどねえ」
「あいつならやりかねないよねえ」
「時々人で遊びますからねえ」
「そんなことを言って、まったく仕方のない。ほんにあんたは仕方のない」
昭子が肩を揺らして笑いを噛み殺している。
太郎も同じように己の額をパンと叩き、「これは参った」と言いつつ昭子と共に笑っている。
「だからまた始まったよ。昭子さん、太郎、今はたまこちゃんが話してるんだから最後まで静かに聞きぃよ。まったく」
昭子と太郎が待ってましたとばかりに話に割り込んできて、またしてもあれこれ推測して楽しんでいるのを見兼ねた侍は、たまこに話の先を促す。
「空腹と喉の渇きと体の痛さにもうダメだと思ったときでした。あの男が姿を現したんです。私は怖くて逃げようと頭では思いましたが体はぜんぜんいうことをきかなかったんです。動かしているつもりでしたがまったく動いていませんでした」
男が大きなノコギリを持っているのが視界の片隅に見えました。
男が私の腕を掴みました。腕にチクっとするものを感じ、すぐに視界がぐにゃりと歪んだんです。
ああ、もうダメだ。最初のあのときの時間に戻って欲しい。そうしたら道案内なんかしない。描いてやった地図だけ渡してすぐに帰るのに。親切になんてしなきゃよかった。家に帰りたい。なんであのとき逃げなかったの。戻れるのなら同じ失敗はしない。そう思ったのを最後に意識が途切れたんです。
あの男は何か言っていましいたが私の耳にはもう何も届きませんでした。そのまま暗い闇の中に落ちていきました。
次に起きたとき、両足に激痛が走ったのを覚えています。
動かそうとしても動かなかった。手が自由になっていることに驚いたのと同時に逃げようとしました。でも、立ち上がろうとしたときに異変に気づいたんです。
激痛で足が動かないんです。
相変わらず真っ暗なので、どうなっているのかわからなかったのが幸いだったと今では思います。
痛みを和らげようと足を揉もうとして手を伸ばしましたが、あるべきところに脚はありませんでした。触れたのは地面でした。悲鳴をあげました。声が枯れるくらい悲鳴を上げ続けました。
足がないんです。私の足は切り落とされていたんです。腿の付け根あたりからばっさり。恐怖と不安で胸の間がじんわりと痛みだして、それから逃れるために悲鳴を上げ続け、私はいつの間にか気を失いました。
そうして、ようやく気を取り戻したとき、わたしは自分の着ている服で両足を止血されていることに気づいたんです。腿の付け根を恐る恐る触ってみました。激痛が走ったのを覚えています。
最初は誰がやったんだか検討もつきませんでした。でもすぐに、あの男がやったんだって思うと、わざと生かされているみたいですごく怖かった。
もう死んじゃえばいいのにって本気で思いました。
水も食べ物もなくて、暑いし暗いし、体に力も入らないし、立つことだってままならなかった。外にも出られない。動けるようになったとしても外から鍵をかけられているんです。だから逃げられるはずもありません。そんな状態が続き、とうとう朦朧としだした意識の中で私は死を覚悟しました。
そんなときでした、黒い大きな靄が目の前を通って行ったんです。何度も何度も。行ったり来たり。靄の周りを覆うように赤ぁく燃えていたのを覚えています。そして不気味に甲高い笑い声も聞こえました。それが何だったのかはいまだにわかりませんが、でも……
「靄ときたかい。靄っていったらなんだと思う? 」
「黒い大きな靄ねえ。俺らは影に潜めば何にでもなれるから一概にこれとは言い難いけど」
「靄だってよ太郎。でかい靄っていったら、あれだよ、あたしが思い浮かべるのは一つしかないね。そうだろう? どう思う?」
「ああ、でかい黒いのっつったらあれしか思いつかないけどねえ」
「あいつならやりかねないよねえ」
「時々人で遊びますからねえ」
「そんなことを言って、まったく仕方のない。ほんにあんたは仕方のない」
昭子が肩を揺らして笑いを噛み殺している。
太郎も同じように己の額をパンと叩き、「これは参った」と言いつつ昭子と共に笑っている。
「だからまた始まったよ。昭子さん、太郎、今はたまこちゃんが話してるんだから最後まで静かに聞きぃよ。まったく」
昭子と太郎が待ってましたとばかりに話に割り込んできて、またしてもあれこれ推測して楽しんでいるのを見兼ねた侍は、たまこに話の先を促す。
「空腹と喉の渇きと体の痛さにもうダメだと思ったときでした。あの男が姿を現したんです。私は怖くて逃げようと頭では思いましたが体はぜんぜんいうことをきかなかったんです。動かしているつもりでしたがまったく動いていませんでした」
男が大きなノコギリを持っているのが視界の片隅に見えました。
男が私の腕を掴みました。腕にチクっとするものを感じ、すぐに視界がぐにゃりと歪んだんです。
ああ、もうダメだ。最初のあのときの時間に戻って欲しい。そうしたら道案内なんかしない。描いてやった地図だけ渡してすぐに帰るのに。親切になんてしなきゃよかった。家に帰りたい。なんであのとき逃げなかったの。戻れるのなら同じ失敗はしない。そう思ったのを最後に意識が途切れたんです。
あの男は何か言っていましいたが私の耳にはもう何も届きませんでした。そのまま暗い闇の中に落ちていきました。
次に起きたとき、両足に激痛が走ったのを覚えています。
動かそうとしても動かなかった。手が自由になっていることに驚いたのと同時に逃げようとしました。でも、立ち上がろうとしたときに異変に気づいたんです。
激痛で足が動かないんです。
相変わらず真っ暗なので、どうなっているのかわからなかったのが幸いだったと今では思います。
痛みを和らげようと足を揉もうとして手を伸ばしましたが、あるべきところに脚はありませんでした。触れたのは地面でした。悲鳴をあげました。声が枯れるくらい悲鳴を上げ続けました。
足がないんです。私の足は切り落とされていたんです。腿の付け根あたりからばっさり。恐怖と不安で胸の間がじんわりと痛みだして、それから逃れるために悲鳴を上げ続け、私はいつの間にか気を失いました。
そうして、ようやく気を取り戻したとき、わたしは自分の着ている服で両足を止血されていることに気づいたんです。腿の付け根を恐る恐る触ってみました。激痛が走ったのを覚えています。
最初は誰がやったんだか検討もつきませんでした。でもすぐに、あの男がやったんだって思うと、わざと生かされているみたいですごく怖かった。
もう死んじゃえばいいのにって本気で思いました。
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