あなたが賞金首になったら

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あなたが賞金首になったら

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「最近、これで稼いでるんだ」

 長髪男が、短髪男に自分のスマホを見せて言う。
 短髪男は画面を見るなり、自分たちがいる喫茶店内をぐるりと見まわした。

「おいおい、こんな所でしていい話なんだろうな?」
「問題ないって、ただのアプリなんだし……。まぁ、野良アプリだけど」

 スマホの画面に映されていたのは、毒々しいデザインの『ネット賞金首』というロゴだった。メニューには、賞金首の登録、賞金首リスト、依頼主審査などがある。

「内容が、随分と物騒なんだが」
「名前こそ賞金首だけど、別に懸賞金が掛けられた犯罪者を捕まえるわけじゃない。ターゲットは、一般人だ」
「そっちの方が、マズいだろ」
「まぁ、待て。話を最後まで聞いてくれ。まず、ターゲットを捕まえる必要はない。指定された条件をクリアすればいいだけなんだ」

 長髪男はスマホを操作し、賞金首リストを表示させた。そこには賞金首の情報と一緒に、クリア条件が書かれている。
 退職、離縁、転居……。
 人間関係が変わりそうな条件が多くある。

「こんな感じにクリア条件が載っていて、それを満たせば報酬が手に入るんだ。貰う時には、自分が関与したって証拠が要るけどな」
「証拠って、どんな?」
「音声だったり、データだったり、色々さ」
「証拠の具体的な内容を訊きたいんだが」
「それを話すには、手口を語るしかないな。まず、俺が狙ってるのは、条件が退職や降格のヤツ。でもって、職業が接客業の賞金首だ。賞金首になるような奴は、勤務態度に問題があるから嫌われているケースが多い。だから、客のフリをして、そいつを名指ししたクレームを入れると、割と簡単に退職コースに乗ってくれる」
「その場合の証拠は、クレーム内容ってわけか」

 長髪男が満足げに頷く。
 対して、短髪男は不可解そうに首を傾げた。

「証拠に難癖をつけて、報酬を払わない奴はいないのか?」
「そうなったら、アプリ内裁判よ。無作為に選ばれたアプリ利用者で、証拠の妥当性を決めるんだ。でもって、難癖認定されればペナルティ」
「なるほど、思っていたより考えられているな。俺も、やってみるよ。このアプリ、どこにある?」
「これはな……」
 待っていましたとばかりに、長髪男はアプリの場所を話し始めた。


 数分後――。
 短髪男が登録を終えると、長髪男のスマホが鳴った。

「いやぁ~、お前が登録してくれたおかげで、ランクが上がったわ」
「ランク?」
「稼いだ額や紹介した人数で、ランクが上がるんだ。上がれば、高単価の首が狙えるシステムになってる」
「そうか。なんか、うまい具合に利用された感じがするな」
「別に、お前が何か損したわけじゃないんだから、いいじゃないか」


 さらに、数分後――。

「おい、お前が賞金首リストに載ってるぞ」

 短髪男が、長髪男にスマホの画面を見せる。
 そこに映っていたのは、長髪男の賞金首情報だった。

「マジかよ、冗談じゃねぇ~ぞ。条件は……何だと!?」

 クリア条件の欄には、『街中で漏らしている写真の流出』とあった。

「これからは、食い物や飲み物に気をつけた方が良さそうだな」
「何で?」
「そりゃ、この条件をクリアするなら、口に入れる物に下剤を入れるのが手っ取り早いからな。外で飲食するのは、避けた方がいい」
「チキショー! 誰だ、こんな依頼したのは!? これじゃ脅されているのと一緒じゃないか」

 長髪男は苛立って頭を掻きむしった。

「まぁ、落ち着けよ。考えようによっては、儲け話だ。下剤を盛られる恐怖からも解放される」
「どういうことだ?」
「自分で漏らした写真を撮って流せば、報酬を貰えて賞金首じゃなくなる。一石二鳥じゃないか」
「そいつは名案だ! さっそく、外に出てしてくるぜ」

 長髪男は喫茶店を出ると、人通りの多い道で立ち止まり、力み始めた。
 その姿を窓越しに見て、短髪男は腹を抱えて笑う。

「千円の報酬で、アイツをお漏らし野郎にできるなら、安いもんだよ」
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