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第六話 誤算だらけの戦い
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ユニフォームに着替えた伊吹たちは、バトルフィールドに整列した。
スコウレリア第三事務所のユニフォームは、タンクトップに短パン、それから大き目のリストバンドというシンプルなものだった。サイズも各種取り揃えられていたが、さすがにサーヤに合うものは無かったので、リストバンドをスカートのように身に着けていた。
相手チームは赤髪の少女、長髪のイケメン、巨乳の女性、豚顔の男が2人という面子だった。ユニフォームは様々で、少女とイケメンはローブ、巨乳の女性は胸元が開いた肩出しワンピース、豚顔の男たちは前掛けを身に着けていた。こちらも全員がリストバンドをしているので、両陣営ともに腕の星印が隠れて、レアリティがわからない状態となっている。靴はお互いにサンダルだった。
「どんな能力を持った相手かわからないって、ちょっと怖いかも」
「まぁ~ね」
伊吹の近くを飛ぶサーヤは、指の関節をならしていた。
「せめてレアリティがわかれば、能力のあるなしの参考になるんだけど……」
「向こうの代表として来てるんだ。全員、何か使えると思っとけばいいさ」
「そうかもね……」
サーヤと会話しながら、みんなで出るなら作戦を共有する時間が欲しかったと、今さらのように思う伊吹だった。作戦と言っても、砂で目潰しするというだけなのだが。
「準備は、よろしいようですね」
審判、回復役、転移係が両陣営の端に並び、中央にいる審判が一歩前に出る。審判は金髪の落ち着いた雰囲気の女性だった。
「私は、このバトルの審判を務めるニーナです。右が回復役のソフィー、左が転移係のフォンシエ。本日の運営スタッフは、私たちの三名と、観客席にいる合図係のゴドフリーになります」
回復役のソフィーは銀髪の長身女性で、束ねた髪を前に垂らしている。転移係のフォンシエはチリチリした黒髪の少女で、他の二人に比べると子供っぽく見えた。
「では、ルールを説明します。勝利条件は、相手陣地の旗を取る。相手チームを全員、強制離脱させる。このいずれかになりますが、指定された物以外を持ち込んだ場合は、その時点で反則負けとなります。また、運営スタッフに暴言を吐く、正常な進行を妨げる行為があった場合も、反則負けとなります。それ以外に関しては、特に制限はありません」
審判のニーナが説明を終えると、今度は転移係のフォンシエが前に出た。
「バトル中、生命に危険が生じた場合や、致命傷を受けると判断した場合は、私の方で『強制離脱』スキルを発動させ、その場から転移させます。この時点で対象者はバトルとは無関係になります」
次に回復役のソフィーが前に出る。
「バトルで傷ついた体は、私の『可逆治癒』で元の状態に戻しますので、思う存分やり合ってくださいね。激しく……フフッ」
ニーナが咳払いをすると、ソフィーは小さく舌を出した。
「観客席で合図係が笛を吹いたらバトル開始です。それでは、良いバトルを期待します」
気持ちのこもらない一言をニーナが残し、審判たちはフィールドの端へと移動していった。
「いよいよだな」
ワニックが身構える。
「なんか、緊張してきた……」
伊吹がしゃがむ準備をする。
「あら、かわいいボーヤがいるじゃない」
相手チームの巨乳女性が声をかけてくる。伊吹は強調された谷間に目が釘づけになった。
「ねぇ、ボーヤ。バトルが始まったら、お姉さんのところに来なさい。あたしの体の好きなところを触らせて、あ・げ・る」
投げキスを飛ばされて、伊吹は戦いのことが何処かに行きそうだった。心なしか、彼女の方から良い香りが漂ってきているように思える。
「ウフフ……」
巨乳女性が笑うと同時に、観客席で角笛が吹かれる。
伊吹はふら~っと、巨乳女性の方に足を踏み出していた。
「さぁ、おいで……」
「行ってはダメですぅ~!」
シオリンが伊吹を巨乳女性から突き放す。
「シ、シオリン?」
「あの人、毒を持ってますっ!」
「えっ!?」
邪魔されたことで、巨乳女性は激昂していた。
「黙れっ! カエル風情がぁーーっ!」
突進してきたかと思うと、巨乳女性はシオリンの肩を鷲掴みにする。
「な、何を?」
「あたしのポイズンで痺れさせてやるっ!」
巨乳女性は大きく息を吸い込むと、シオリン目がけて吐き出す。
「ブリオ、ヘルプぅ~!」
シオリンはブリオに助けを求めた、というかブリオを盾にした。急に引っ張られたブリオの頭部が、巨乳女性の口を塞ぐ。
「ふごっ……ふごっ……」
口を塞がれて息を吐けなくなった巨乳女性は、もがきながらもブリオを払い投げた。
「ぷはっ……」
塞がれていた口が自由になると同時に、巨乳女性は大きく息を吸い込んだ。自分が息を吐いた、その場所で。
「しま……った……」
自分の毒を吸い込んだ巨乳女性は、全身を痙攣させながら足元から崩れ落ち、みっともないアヘ顔を伊吹たちの前に晒した。
「い、痛いんだな……」
巨乳女性の横では頭に歯型のついたブリオが倒れていたが、伊吹とシオリンは互いの顔を見合わせてホッとしていた。
「毒を持ってるって、なんでわかったの?」
「あの人、見るからに怪しいじゃないですかぁ~。だから、食べ物じゃないですけど、『毒素感知』のスキルを使ったら、引っ掛かりました」
「なるほど」
「呑気に話してる場合じゃない!」
サーヤに軽いキックをお見舞いされ、伊吹は「痛っ!」と声を上げる。
「ワニックを助けて!」
ワニックは1人で赤髪の少女と豚顔の男たちが旗に向かおうとするのを阻止していた。長髪の男は数歩下がった位置で両手を天にかざしている。
「今行くよ、ワニック」
砂を蹴って、伊吹はワニックの元へと駆けつけた。
「チッ、増えやがったぜ」
豚顔の一人が舌打ちする。
「やっぱり、旗を狙うより倒した方が早そうね」
赤髪の少女は人差し指を立てると、その先に炎を出現させた。
「炎の能力者!?」
ゲームや漫画で見聞きした能力に、伊吹は少しワクワクしたが、その危なさも充分に感じていた。いつ、その炎が飛んでくるか、どうしたら避けられるか、そのことで頭が一杯だった。
だが、いつまで経っても炎は飛んでこなかった。それどころか、赤髪の少女は炎を宿した指先を伊吹に向け、一直線に突進して来る。
「たぁーーーっ!」
「その炎、飛ばさないの?」
「飛ばせるんなら、とっくに飛ばしてるわ!」
少女と伊吹の追いかけっこが始まる。それは汚い物を同級生に付けようとする、小学生の悪戯を彷彿とさせる光景だった。
一方、ワニックは豚顔の男たちと肉弾戦を繰り広げていた。
「ふんぬっ!」
と殴り掛かる豚顔の攻撃を避けると、ワニックは膝蹴りを胸部に決めた。だが、もう1人が横から組んだ両手を振り下ろしてくると、片手で受け止めるのがやっとだった。
「うっ……」
痛そうな顔をしたのは、攻撃した豚顔の方だった。
「痛ってぇ……硬い野郎だぜ、まったく」
痺れた手を振りながら豚顔が言う。膝蹴りを食らった方は、何とか立ちあがって唾を吐いた。
「大した奴だが、2対1なら勝てない敵じゃない」
「それは、どうかな」
ワニックは『瞬間加速』のスキルを自分に発動させた。4秒間だけ2倍のスピードで行動可能だが、その後に4秒間だけスピードが半減するスキルだ。見た目的には何も変わらない。
「行くぞ」
ワニックは一瞬にして、膝蹴りを当てた豚顔の前に移動すると、そのままの勢いで肘鉄を食らわせた。豚顔は後ろに跳ね飛ばされ、落ちたところにワニックのフライングクロスチョップが決まる。
豚顔は気を失い、転移係の判断で『強制離脱』が適用される。ブンッという音と共に、豚顔は審判団の方に移動し、回復役による治療を受けることになった。
「さて、次は……お、ま、え、だ」
もう一人の豚顔の方に体を向けようとしたワニックだったが、動くスピードがゆっくりになっていた。加速時間が終わっていたのだ。
「何だ? 急にぎこちなくなりやがって……」
豚顔は警戒していたが、チャンスには変わりないと思ったのか、覚悟を決めてワニックに殴り掛かった。速く動けないワニックは、攻撃をもろに受けて後ろへと倒れ込んだ。豚顔はマウントポジションを取り、ワニックをボコボコ殴り始める。なるべく、柔らかそうなところを狙って。
ワニックがそんなことになっているとは知らない伊吹は、相変わらず赤髪の少女に追いかけられていた。途中から、巻き込まれる形でシオリンも参加している。もちろん、逃げる側として。
「待ちなさいよ!」
「0.01秒なら待ってあげますよ」
「それじゃ待つ内に入らないわよ!」
低次元な会話をしながら、砂地のダッシュを繰り返す。
「ハァ……ハァ……ひぃ~……もう限界ですぅ~。何か手は無いんですかぁ~?」
シオリンの息があがり始める。
「そんなのあったら、とっくに……あっ!」
忘れていた砂で目潰し作戦を、伊吹はようやく思い出した。
「反撃は、これからだ!」
伊吹はしゃがみ込むと、砂をギュッと握りしめた。
「てやっ!」
しゃがみ込んだ伊吹を目がけ、赤髪の少女は足元の砂を蹴り上げた。砂が伊吹の顔面に直撃する。
「うわっ! ぺっ……ぺっ……」
幸い、とっさに瞼を閉じたので、目には入らなかったものの、口の中に何粒か入ってしまう。口から砂を出したところで顔を上げると、赤髪の少女が不敵な笑みを浮かべていた。
「私の全力を見せてあげるわ」
少女が手を開くと、5本すべての指先に炎が揺らめいた。さしずめ、炎の爪といった感じだが、見た目的には格好の良いものではなかった。
「今、温めてあげる!」
少女が手を振り下ろすと、炎が伊吹のタンクトップをかすめ、燃え移った炎は徐々に広がっていった。
「熱っ!」
堪らずタンクトップを脱いだ伊吹は、少女に向かってそれを投げつけた。タンクトップの炎は少女のローブに移り、今度は少女が熱がり始める。
「いやっ! 熱い!」
「凄い手ですね」
シオリンは伊吹の作戦だと思って感嘆していた。
「えいっ!」
赤髪の少女が両手を広げると、ローブの炎は一気に消え去った。
「どう? 私には火を消す力もあるのよ」
自慢する少女に対し、伊吹は「一人火災現場かよ」と心の中で突っ込む。同時に、彼女が調子こいている今がチャンスだと、握りしめた砂を彼女に向かって投げつけた。
「キャーーッ!」
慌てて顔を覆おうとするが間に合わず、少女は目に砂を入れることになった。彼女が目をこすり始めたのを見て、伊吹は相手陣地の旗を奪おうと走り出した。
「行かせるか!」
後ろに控えていた長髪の男が伊吹の前に立ちふさがる。天井に向けられた彼の手のひらの上には、大きな水の球が浮いていた。
「何、それ……」
「驚いたか? これが俺の能力『水分操作』だ! ここまで水を集めるのに時間がかかったが、これだけ溜まればこっちのもの。お前ら全員、溺れさせてやる!」
水と聞いて、伊吹はワニックのアビリティ『水分蒸発』を思い出した。
「ワニック! この水を……」
声をかけたワニックは豚顔にマウントポジションを取られ、ボコボコと殴られている最中だった。それでも、ワニックは右手を上げると指をパチンッと鳴らす。
長髪の男が集めた水はブクブクと沸騰し始めたかと思うと、きれいさっぱり蒸発してしまった。
「何ーーーっ!?」
集めた苦労が水の泡となり、長髪の男は呆然と立ち尽くす。
「あとは頼んだ。俺は少し休む……」
疲れやすいと自ら言っていたワニックは、ボコられながら眠りについた。寝息を立てて。
「寝たんなら、もういいか。こいつは硬くて敵わん」
ボコ殴りしていた豚顔は立ち上がると、伊吹の前へとやって来た。そこに、長髪の男も並び立つ。
「集めた水の仇を取ってやる!」
「手伝うぜ」
豚顔と長髪の男が伊吹に近づいてくる。伊吹は周囲を確認したが、ワニックは眠り、ブリオは倒れたまま、シオリンは赤髪の少女に追いかけられていた。サーヤの姿は見つけられない。
自分で切り抜けるしかないと知り、伊吹は有効な手を考えた。また、砂をかけようかとも思ったが、うまくいくとは限らないことを学んだので他の手段を模索する。何か手はないのかと自分の手を見た時に、ガチャ神殿で言われた言葉を思い出した。
『発動条件は接触。効果は欲を満たす』
それは、いまだ発動させたことのない自分のスキル『快感誘導』に関する言葉だった。相手の欲を満たして、どうなるものか……。そう思わないでもないが、もはや賭けるしかないと覚悟を決める。
伊吹は近づく男たちを睨み付け、全速力で突進する。
「おい、突っ込んできたぜ」
「ヤケになったか」
余裕を見せる男たちの前で、伊吹はヘッドスライディングする。砂地を滑り、二人の足を左右の手で掴み、スキルの発動を強く念じる。
「何か起こってくれーーっ!」
叫んだ瞬間、伊吹の手を通して、赤い波動のようなものが、男たちの体を下から上へと駆け上がっていった。
波動が全身を駆け巡ると、長髪の男は重くなった瞼を閉じ、後ろに倒れるようにして眠りについた。豚顔はゲップをしただけで、すぐに拳を振り下ろしてくる。避けることもできずに、伊吹は背中に鈍い痛みを感じることになった。
「うっ……っく」
もうダメか、そう思った時だった。
「勝者、スコウレリア第三事務所!」
審判の判定と共に、角笛が吹かれる。
伊吹は何が起こったのか、わからなかった。
「旗を取られただと……」
豚顔の一言で誰かが旗を取ったのだと知り、相手陣地に目を向けると、サーヤが自分よりも大きな旗を持ち上げていた。彼女はずっと、旗を持ち上げようとしていたのだった。
「やっと抜けた……ふぅ」
サーヤが手を放すと、旗はパタンと砂地に落ちた。
「うわぁぁ~! サーヤぁ~!」
思わぬ勝利に感激したシオリンがサーヤに抱きつこうとする。それを避けたサーヤが冷や汗を流す。
「おいおい、あたいを潰す気かよ」
「えへへ、嬉しくって……あはは」
二人はお互いを見て笑いあった。その光景に、伊吹は今まで感じたことのない充実感を覚えていた。ふと、周りを見てみると大勢の観客が歓喜している。その観客の中で、チガヤだけが泣いていた。
こうして初めてのバトルは勝利で幕を閉じた。
スコウレリア第三事務所のユニフォームは、タンクトップに短パン、それから大き目のリストバンドというシンプルなものだった。サイズも各種取り揃えられていたが、さすがにサーヤに合うものは無かったので、リストバンドをスカートのように身に着けていた。
相手チームは赤髪の少女、長髪のイケメン、巨乳の女性、豚顔の男が2人という面子だった。ユニフォームは様々で、少女とイケメンはローブ、巨乳の女性は胸元が開いた肩出しワンピース、豚顔の男たちは前掛けを身に着けていた。こちらも全員がリストバンドをしているので、両陣営ともに腕の星印が隠れて、レアリティがわからない状態となっている。靴はお互いにサンダルだった。
「どんな能力を持った相手かわからないって、ちょっと怖いかも」
「まぁ~ね」
伊吹の近くを飛ぶサーヤは、指の関節をならしていた。
「せめてレアリティがわかれば、能力のあるなしの参考になるんだけど……」
「向こうの代表として来てるんだ。全員、何か使えると思っとけばいいさ」
「そうかもね……」
サーヤと会話しながら、みんなで出るなら作戦を共有する時間が欲しかったと、今さらのように思う伊吹だった。作戦と言っても、砂で目潰しするというだけなのだが。
「準備は、よろしいようですね」
審判、回復役、転移係が両陣営の端に並び、中央にいる審判が一歩前に出る。審判は金髪の落ち着いた雰囲気の女性だった。
「私は、このバトルの審判を務めるニーナです。右が回復役のソフィー、左が転移係のフォンシエ。本日の運営スタッフは、私たちの三名と、観客席にいる合図係のゴドフリーになります」
回復役のソフィーは銀髪の長身女性で、束ねた髪を前に垂らしている。転移係のフォンシエはチリチリした黒髪の少女で、他の二人に比べると子供っぽく見えた。
「では、ルールを説明します。勝利条件は、相手陣地の旗を取る。相手チームを全員、強制離脱させる。このいずれかになりますが、指定された物以外を持ち込んだ場合は、その時点で反則負けとなります。また、運営スタッフに暴言を吐く、正常な進行を妨げる行為があった場合も、反則負けとなります。それ以外に関しては、特に制限はありません」
審判のニーナが説明を終えると、今度は転移係のフォンシエが前に出た。
「バトル中、生命に危険が生じた場合や、致命傷を受けると判断した場合は、私の方で『強制離脱』スキルを発動させ、その場から転移させます。この時点で対象者はバトルとは無関係になります」
次に回復役のソフィーが前に出る。
「バトルで傷ついた体は、私の『可逆治癒』で元の状態に戻しますので、思う存分やり合ってくださいね。激しく……フフッ」
ニーナが咳払いをすると、ソフィーは小さく舌を出した。
「観客席で合図係が笛を吹いたらバトル開始です。それでは、良いバトルを期待します」
気持ちのこもらない一言をニーナが残し、審判たちはフィールドの端へと移動していった。
「いよいよだな」
ワニックが身構える。
「なんか、緊張してきた……」
伊吹がしゃがむ準備をする。
「あら、かわいいボーヤがいるじゃない」
相手チームの巨乳女性が声をかけてくる。伊吹は強調された谷間に目が釘づけになった。
「ねぇ、ボーヤ。バトルが始まったら、お姉さんのところに来なさい。あたしの体の好きなところを触らせて、あ・げ・る」
投げキスを飛ばされて、伊吹は戦いのことが何処かに行きそうだった。心なしか、彼女の方から良い香りが漂ってきているように思える。
「ウフフ……」
巨乳女性が笑うと同時に、観客席で角笛が吹かれる。
伊吹はふら~っと、巨乳女性の方に足を踏み出していた。
「さぁ、おいで……」
「行ってはダメですぅ~!」
シオリンが伊吹を巨乳女性から突き放す。
「シ、シオリン?」
「あの人、毒を持ってますっ!」
「えっ!?」
邪魔されたことで、巨乳女性は激昂していた。
「黙れっ! カエル風情がぁーーっ!」
突進してきたかと思うと、巨乳女性はシオリンの肩を鷲掴みにする。
「な、何を?」
「あたしのポイズンで痺れさせてやるっ!」
巨乳女性は大きく息を吸い込むと、シオリン目がけて吐き出す。
「ブリオ、ヘルプぅ~!」
シオリンはブリオに助けを求めた、というかブリオを盾にした。急に引っ張られたブリオの頭部が、巨乳女性の口を塞ぐ。
「ふごっ……ふごっ……」
口を塞がれて息を吐けなくなった巨乳女性は、もがきながらもブリオを払い投げた。
「ぷはっ……」
塞がれていた口が自由になると同時に、巨乳女性は大きく息を吸い込んだ。自分が息を吐いた、その場所で。
「しま……った……」
自分の毒を吸い込んだ巨乳女性は、全身を痙攣させながら足元から崩れ落ち、みっともないアヘ顔を伊吹たちの前に晒した。
「い、痛いんだな……」
巨乳女性の横では頭に歯型のついたブリオが倒れていたが、伊吹とシオリンは互いの顔を見合わせてホッとしていた。
「毒を持ってるって、なんでわかったの?」
「あの人、見るからに怪しいじゃないですかぁ~。だから、食べ物じゃないですけど、『毒素感知』のスキルを使ったら、引っ掛かりました」
「なるほど」
「呑気に話してる場合じゃない!」
サーヤに軽いキックをお見舞いされ、伊吹は「痛っ!」と声を上げる。
「ワニックを助けて!」
ワニックは1人で赤髪の少女と豚顔の男たちが旗に向かおうとするのを阻止していた。長髪の男は数歩下がった位置で両手を天にかざしている。
「今行くよ、ワニック」
砂を蹴って、伊吹はワニックの元へと駆けつけた。
「チッ、増えやがったぜ」
豚顔の一人が舌打ちする。
「やっぱり、旗を狙うより倒した方が早そうね」
赤髪の少女は人差し指を立てると、その先に炎を出現させた。
「炎の能力者!?」
ゲームや漫画で見聞きした能力に、伊吹は少しワクワクしたが、その危なさも充分に感じていた。いつ、その炎が飛んでくるか、どうしたら避けられるか、そのことで頭が一杯だった。
だが、いつまで経っても炎は飛んでこなかった。それどころか、赤髪の少女は炎を宿した指先を伊吹に向け、一直線に突進して来る。
「たぁーーーっ!」
「その炎、飛ばさないの?」
「飛ばせるんなら、とっくに飛ばしてるわ!」
少女と伊吹の追いかけっこが始まる。それは汚い物を同級生に付けようとする、小学生の悪戯を彷彿とさせる光景だった。
一方、ワニックは豚顔の男たちと肉弾戦を繰り広げていた。
「ふんぬっ!」
と殴り掛かる豚顔の攻撃を避けると、ワニックは膝蹴りを胸部に決めた。だが、もう1人が横から組んだ両手を振り下ろしてくると、片手で受け止めるのがやっとだった。
「うっ……」
痛そうな顔をしたのは、攻撃した豚顔の方だった。
「痛ってぇ……硬い野郎だぜ、まったく」
痺れた手を振りながら豚顔が言う。膝蹴りを食らった方は、何とか立ちあがって唾を吐いた。
「大した奴だが、2対1なら勝てない敵じゃない」
「それは、どうかな」
ワニックは『瞬間加速』のスキルを自分に発動させた。4秒間だけ2倍のスピードで行動可能だが、その後に4秒間だけスピードが半減するスキルだ。見た目的には何も変わらない。
「行くぞ」
ワニックは一瞬にして、膝蹴りを当てた豚顔の前に移動すると、そのままの勢いで肘鉄を食らわせた。豚顔は後ろに跳ね飛ばされ、落ちたところにワニックのフライングクロスチョップが決まる。
豚顔は気を失い、転移係の判断で『強制離脱』が適用される。ブンッという音と共に、豚顔は審判団の方に移動し、回復役による治療を受けることになった。
「さて、次は……お、ま、え、だ」
もう一人の豚顔の方に体を向けようとしたワニックだったが、動くスピードがゆっくりになっていた。加速時間が終わっていたのだ。
「何だ? 急にぎこちなくなりやがって……」
豚顔は警戒していたが、チャンスには変わりないと思ったのか、覚悟を決めてワニックに殴り掛かった。速く動けないワニックは、攻撃をもろに受けて後ろへと倒れ込んだ。豚顔はマウントポジションを取り、ワニックをボコボコ殴り始める。なるべく、柔らかそうなところを狙って。
ワニックがそんなことになっているとは知らない伊吹は、相変わらず赤髪の少女に追いかけられていた。途中から、巻き込まれる形でシオリンも参加している。もちろん、逃げる側として。
「待ちなさいよ!」
「0.01秒なら待ってあげますよ」
「それじゃ待つ内に入らないわよ!」
低次元な会話をしながら、砂地のダッシュを繰り返す。
「ハァ……ハァ……ひぃ~……もう限界ですぅ~。何か手は無いんですかぁ~?」
シオリンの息があがり始める。
「そんなのあったら、とっくに……あっ!」
忘れていた砂で目潰し作戦を、伊吹はようやく思い出した。
「反撃は、これからだ!」
伊吹はしゃがみ込むと、砂をギュッと握りしめた。
「てやっ!」
しゃがみ込んだ伊吹を目がけ、赤髪の少女は足元の砂を蹴り上げた。砂が伊吹の顔面に直撃する。
「うわっ! ぺっ……ぺっ……」
幸い、とっさに瞼を閉じたので、目には入らなかったものの、口の中に何粒か入ってしまう。口から砂を出したところで顔を上げると、赤髪の少女が不敵な笑みを浮かべていた。
「私の全力を見せてあげるわ」
少女が手を開くと、5本すべての指先に炎が揺らめいた。さしずめ、炎の爪といった感じだが、見た目的には格好の良いものではなかった。
「今、温めてあげる!」
少女が手を振り下ろすと、炎が伊吹のタンクトップをかすめ、燃え移った炎は徐々に広がっていった。
「熱っ!」
堪らずタンクトップを脱いだ伊吹は、少女に向かってそれを投げつけた。タンクトップの炎は少女のローブに移り、今度は少女が熱がり始める。
「いやっ! 熱い!」
「凄い手ですね」
シオリンは伊吹の作戦だと思って感嘆していた。
「えいっ!」
赤髪の少女が両手を広げると、ローブの炎は一気に消え去った。
「どう? 私には火を消す力もあるのよ」
自慢する少女に対し、伊吹は「一人火災現場かよ」と心の中で突っ込む。同時に、彼女が調子こいている今がチャンスだと、握りしめた砂を彼女に向かって投げつけた。
「キャーーッ!」
慌てて顔を覆おうとするが間に合わず、少女は目に砂を入れることになった。彼女が目をこすり始めたのを見て、伊吹は相手陣地の旗を奪おうと走り出した。
「行かせるか!」
後ろに控えていた長髪の男が伊吹の前に立ちふさがる。天井に向けられた彼の手のひらの上には、大きな水の球が浮いていた。
「何、それ……」
「驚いたか? これが俺の能力『水分操作』だ! ここまで水を集めるのに時間がかかったが、これだけ溜まればこっちのもの。お前ら全員、溺れさせてやる!」
水と聞いて、伊吹はワニックのアビリティ『水分蒸発』を思い出した。
「ワニック! この水を……」
声をかけたワニックは豚顔にマウントポジションを取られ、ボコボコと殴られている最中だった。それでも、ワニックは右手を上げると指をパチンッと鳴らす。
長髪の男が集めた水はブクブクと沸騰し始めたかと思うと、きれいさっぱり蒸発してしまった。
「何ーーーっ!?」
集めた苦労が水の泡となり、長髪の男は呆然と立ち尽くす。
「あとは頼んだ。俺は少し休む……」
疲れやすいと自ら言っていたワニックは、ボコられながら眠りについた。寝息を立てて。
「寝たんなら、もういいか。こいつは硬くて敵わん」
ボコ殴りしていた豚顔は立ち上がると、伊吹の前へとやって来た。そこに、長髪の男も並び立つ。
「集めた水の仇を取ってやる!」
「手伝うぜ」
豚顔と長髪の男が伊吹に近づいてくる。伊吹は周囲を確認したが、ワニックは眠り、ブリオは倒れたまま、シオリンは赤髪の少女に追いかけられていた。サーヤの姿は見つけられない。
自分で切り抜けるしかないと知り、伊吹は有効な手を考えた。また、砂をかけようかとも思ったが、うまくいくとは限らないことを学んだので他の手段を模索する。何か手はないのかと自分の手を見た時に、ガチャ神殿で言われた言葉を思い出した。
『発動条件は接触。効果は欲を満たす』
それは、いまだ発動させたことのない自分のスキル『快感誘導』に関する言葉だった。相手の欲を満たして、どうなるものか……。そう思わないでもないが、もはや賭けるしかないと覚悟を決める。
伊吹は近づく男たちを睨み付け、全速力で突進する。
「おい、突っ込んできたぜ」
「ヤケになったか」
余裕を見せる男たちの前で、伊吹はヘッドスライディングする。砂地を滑り、二人の足を左右の手で掴み、スキルの発動を強く念じる。
「何か起こってくれーーっ!」
叫んだ瞬間、伊吹の手を通して、赤い波動のようなものが、男たちの体を下から上へと駆け上がっていった。
波動が全身を駆け巡ると、長髪の男は重くなった瞼を閉じ、後ろに倒れるようにして眠りについた。豚顔はゲップをしただけで、すぐに拳を振り下ろしてくる。避けることもできずに、伊吹は背中に鈍い痛みを感じることになった。
「うっ……っく」
もうダメか、そう思った時だった。
「勝者、スコウレリア第三事務所!」
審判の判定と共に、角笛が吹かれる。
伊吹は何が起こったのか、わからなかった。
「旗を取られただと……」
豚顔の一言で誰かが旗を取ったのだと知り、相手陣地に目を向けると、サーヤが自分よりも大きな旗を持ち上げていた。彼女はずっと、旗を持ち上げようとしていたのだった。
「やっと抜けた……ふぅ」
サーヤが手を放すと、旗はパタンと砂地に落ちた。
「うわぁぁ~! サーヤぁ~!」
思わぬ勝利に感激したシオリンがサーヤに抱きつこうとする。それを避けたサーヤが冷や汗を流す。
「おいおい、あたいを潰す気かよ」
「えへへ、嬉しくって……あはは」
二人はお互いを見て笑いあった。その光景に、伊吹は今まで感じたことのない充実感を覚えていた。ふと、周りを見てみると大勢の観客が歓喜している。その観客の中で、チガヤだけが泣いていた。
こうして初めてのバトルは勝利で幕を閉じた。
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これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
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最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
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もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
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