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第五話 内緒でエントリー
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「何を訊きたい?」
「どうやったら出れますか?」
「エントリーすれば出られるさ。こっちの方で手続きしておくかい?」
「お願いします!」
伊吹は一人で出るつもりでいた。バトルは5対5が基本だが、5人未満でも参加できるのは聞いている。1対5では勝ち目がないかもしれないが、何もしないで美女ガチャを諦めるよりはマシだと思っていた。
バトルを見に行く約束をしているから、開始までには連れて行ってもらえるだろう。あとは、そこで何とかすれば……という気でいた。
「あの、今日のバトルって、いつ始まるんですか?」
「3時間後だよ。闘技場に行ったら、ユニフォームに着替えて、コールされるのを待つんだね」
「ユニフォームがあるんですか?」
「何にも知らないんだね。いいかい? バトルは会社をPRする格好の場なんだよ。社名入りのユニフォームを着て戦って勝つ。できれば、スキルやアビリティを駆使してね。そうすれば、戦いを見た人の中から、この事務所に仕事を依頼しようとする人が出てくる。あのスキルがあるなら、こういう仕事を頼みたいとか、あのチームに仕事を任せたいっていう風に思えるからね。仕事が増えれば会社が潤う。君らは勝利ボーナスが貰える。お互いにウハウハだよ」
受付は何かを掴み取るような仕草を見せた。
「ウハウハですか」
「ウハウハだね」
低い声で受付は笑った。つられて伊吹も笑う。
「うちの事務所は臆病者が多くてね。ずっとバトルには不参加だった……。出てくれる人を待ってたよ」
「あの、期待はしないで下さいね」
「まぁ、初戦だからね。期待はしないでおくよ。そうそう、身に着けられるのはユニフォームだけだから。他には何も身に付けられないし、持って入ることもできない。これを破ると反則負けになるから、気をつけな」
伊吹は軽く会釈して、サーヤ達の元へと戻った。
「受付で何を話してたのさ?」
戻った途端、サーヤが肩に座ってきた。
「いろいろ……。出社ボーナスのこととか」
「ふぅ~ん……」
「あっ、今日のお給料を貰ったよ。ほらっ」
ポケットから銅貨を出して、サーヤに差し出す。
「あたいに渡されてもね……。持ち運ぶだけで、疲れるんだけど。シオリンに渡しなよ」
「はい」
銅貨をシオリンに渡し、伊吹は席に着いた。
「チガヤは、まだ戻ってないよね? 3時間以内に闘技場まで行けるかな……」
「大丈夫ですよぉ~。闘技場のあるギボウシは、歩いても40分あれば着きますから」
シオリンが答える。間に合うと聞いてホッとしたものの、いよいよ戦うんだと思うと、緊張の高まりを抑えられなかった。死にはしないとはいえ、何でもありのバトルを控え、伊吹は胃が痛むというか、実際に腹の調子がおかしかった。
「顔色が悪いな」
ワニックが心配そうに、伊吹の顔を覗き込む。
「急に、お腹が……」
それは便意だった。
緊張したせいで、お腹がキュルキュルと言いだし、冷や汗も少し出ていた。思えば、こっちに来てから、トイレに行っていなかった。
「トイレ、行きたいんだけど……」
「案内しよう、こっちだ」
社外へ向かうワニックの後をついて行く。
少し歩いたのち、かまくら型の茶色い建物の前に着いた。ワニックに促されて中に入ると、石床の上に黄色くて丸い生き物が山ほど転がっていた。その丸い体からは細長い脚が4本伸びている。
「何か、いるんだけど……」
「この黄色いのはサニタだ。この国のトイレなら、何処に行ってもいる。気にするな」
「この建物、中に囲いがないから、外から丸見えなんだけど……」
「何だ? 見られるのが嫌なのか? 変わった奴だな」
人に見られても気にしないとか、文化が違い過ぎると思っているうちにも、お腹の方は限界に近づいていた。
「で、出そう……」
「さっさとすればいい。出す用意をすれば、サニタが周りを囲むから、誰からも見られないぞ」
何で囲むのかという疑問は捨て、伊吹はしゃがむと同時に下半身を露出した。その瞬間、目を閉じていたサニタ達が、一斉に大きな一つ目を開け、伊吹の周りに壁を作る。
「何、こいつら……」
驚きのあまり、お腹の制御を失う。排泄物が出ていくと同時に、サニタ達は長い舌を伸ばして、それを綺麗に舐め取っていく。
「う゛わぁぁーーーーっ!」
と叫ぶ伊吹に、ワニックは込み上げる笑いを抑えられなかった。
「ハッハッハ……。すまんすまん、あまりの驚きっぷりに、おかしくなってしまった」
「ハァ……ハァ……」
一通り出し終えて、伊吹は少しだけ落ち着きを取り戻した。一方、サニタ達は舐め取った排泄物を飲み込み、次はまだかと待機している。これが彼らの食事だと思うと、複雑な心境になる。
「俺も最初は驚いたが、慣れると便利なものだ」
「これに慣れるのは、時間がかかりそう……」
「そうかい? 案外、すぐクセになるぞ。これは、いいものだ」
「僕は嫌ですね、こんなトイレは」
元いた世界のウォシュレットが恋しくなる。
「どんなトイレが好みだ? 隣国のような投げ捨て型か?」
「投げ捨て型?」
「ああ、まだ知らないか。隣国では、室内でオマルにした後、それを窓から投げ捨てている。長年そうしているもんだから、地面が徐々に高くなって、やがては家が埋まるらしい」
「それじゃ家に入れないじゃないですか」
「そうだ。だから、元あった家の上に家を建てる。お陰で、どの家に行っても地下があるという訳さ」
「そんなのは最低ですよ……。大体、そんなことしてたら、路上が臭くなるじゃないですか」
ワニックは手を叩いて、「それだ!」と伊吹を指差した。
「道理で……。だから、匂い系能力者の人気が高いのか、あの国は」
納得するワニックを見ながら、用を足した伊吹は服装を整えた。もう何も出さないと察したのか、サニタ達はサーッと波がひくように元の場所へと戻っていく。
「そもそも、排泄物をそのままにしておくのは不衛生です。病気の温床になるんですよ」
「ほぉ~」
伊吹は手を洗う場所を探したが、水が入っているものは見当たらなかった。仕方なく、手をパンパンとはたいて、トイレの外に出ることにした。
「今のは、何かの儀式か?」
「いや、そういうんじゃないんですけどね……。みんなのところに戻りましょう」
異文化交流は大変だなと苦笑しつつも、いつの間にか伊吹の緊張はほぐれていた。
トイレから戻って数十分後、戻ってきたチガヤと合流し、闘技場のあるギボウシへと向かった。
隣街のギボウシはスコウレリアほど大きくはないものの、多くの人が行き来する街で、闘技場の大きさではマ国で二番目と言われていた。一番は首都オルトドンティウムのものになる。国営の闘技場は地域単位で建設されていて、人口の少ない地方に行くほど、小さくなっていた。
スコウレリアを出発して30分ちょっとで、伊吹たちはギボウシの中心部まで来ていた。ここもスコウレリア同様、建物の壁が苔で覆われていたが、その苔から黄緑の葉っぱが伸びていることもあった。
「ここが闘技場だよ」
チガヤが闘技場の前に立つ。
闘技場は3つの正方形状の建物から成っていた。中央の大きな正方形はバトル会場で、左右の小さな正方形は出場者の控室になる。
「さぁ、入ろう」
バトル会場に入っていくチガヤを、ユニットたちは追いかけた。
中に入ってみると、階段状の観客席がバトルフィールドを取り囲む形となっていた。四角いフィールドは、観客席よりも人の身長分ほど低い位置にあり、端から端まで砂地になっている。
「砂地なんですね」
無人の砂地フィールドを見て、伊吹は走りにくそうだという感想を抱いた。
「始まるまで、まだ時間があるよね。近くを散歩しない?」
「いいですねぇ~」
チガヤの提案にシオリンがのり、他のみんなもついて行こうとする中、伊吹の目はバトルフィールドに向けられたままだった。
「一緒に来ないの?」
「僕は、ここにいるよ」
「そっか。じゃ、また後でね」
伊吹は観客席に腰をおろし、砂地での戦いを考えた。
バトルは旗を取れば勝者になるので、何も相手とガチでやり合う必要はない。となれば、いかに相手の攻撃を避けて、旗のもとに辿りつくかが重要になる。1対5だとしたら、5人の集中攻撃をかわすのは至難の業だ。避けるのは無理だと言っていい。なんとか、5人を相手にしなくて済む方法は無いものか……
「う~ん……」
腕組みして唸り声をあげる。
2~3人でいい、相手の動きを止められれば……という結論に至る。どうしたら動きを止められる? 自分だったら、何をされれば動きを止める?
答えの1つとして、目の前で美女が脱ぎ始めたら、目を奪われるから止まるというものが浮かぶ。これは、自分が男である時点で不可能だし、相手がスケベな男性でなければ意味がない。それでも、やることは同じことだと気づく。相手の目さえ、奪えばいい。目さえ、奪えば……。
バトルフィールドの砂を見つめ、「これだと」と指をはじく。
砂で目潰しという小学生がやりそうな手を思いつき、伊吹はもう勝ったつもりになっていた。開始早々に相手の目を潰し、視界を奪った隙に旗までダッシュして抜き取ればいい。完璧だと、心の中で自画自賛した。
あとはバトル開始まで体力を温存しておこうと、体の力を抜いて仮眠を取ることにした。
周囲の騒がしさに目を開けると、観客席に人が集まり始めていた。
「あっ、起きた起きた」
隣には散歩から戻ったチガヤ達が座っている。
「もう始まる時間?」
「うん。最初のバトルが始まるよ」
バトルフィールドを見ると、既に白い旗が両サイドに突き刺さっていた。フィールド中央では、バッファローの顔をした亜人種5人と、下半身が蛇の女性2人と骸骨3体が向き合っている。そこに3人の女性たちが近づいていく。
女性たちは揃いのローブを身にまとい、手には金色の杖を持っていた。
「あの女の人たちは?」
「運営スタッフだよ。真ん中の人が審判で、隣にいるのが回復役と転移係だよ」
「あの人たちが……」
出場者への説明を終えると、三人はバトルフィールドの隅へと移動し、持っている杖を重ね合わせた。それを見て、観客席にいた男が角笛を吹く。
笛の音が場内に鳴り響くと同時に、バッファロー顔の者達が力任せに殴りに行く。その初撃を蛇女と骸骨が下がって避ける。
今度は蛇女たちが尻尾を伸ばしてバッファロー顔2人を、ぐるぐる巻きにして動きを封じると、骸骨たちはその2人に飛びついて顔面に噛り付いた。5対2の状態になったことで、バッファロー顔3人がフリーになったが、彼らは旗を狙わずに飛びついた骸骨に殴り掛かった。
「えっ!? 旗は無視……?」
伊吹には納得がいかなかったが、目の前で行われている戦いは、相手を潰すことだけを目的としているようにしか見えなかった。そんな戦いぶりに観客席は盛り上がっていったが、チガヤは見たくないのか目を逸らしていた。
「な、平和的じゃないだろ?」
サーヤが伊吹の肩に胡坐をかいて言う。
「旗を取れば勝てる。けど、仲間が殴られたら、殴り返さないと気が済まない……ってのが多いんだよ」
「気持ちは、わかるけど……」
「それにさぁ、致命傷を受ける前に転移させる係がいるけど、メンバー全員が転移したら負けになるんだよ。バトルが続行不能になるから。つまり、相手をぶっ潰す方が確実だと考える奴がいても、おかしくないって話。出なくて正解だろ?」
「そう……だね……」
伊吹の顔が引きつる。
そんな話をしているうちに、バトルフィールドではバッファロー顔に殴られた骸骨3体が転移され、残った蛇女も尻尾を掴まれてブンブン振り回されていた。もう勝敗は決したも同然だった。
蛇女は投げ飛ばされると同時に転移され、対戦相手がいなくなったバッファロー顔チームの勝利が確定した。会場に割れんばかりの拍手が起こり、興奮したバッファロー顔たちが雄叫びを上げる。
一方、転移された骸骨や蛇女たちは、回復係によって元の状態に戻されていた。
「スキルもアビリティも使用しない肉弾戦とは……面白い!」
ワニックは一人興奮し、武者震いしていた。
「えぇ~……ワニック、こういうの好きなんだ。私は苦手だなぁ……まだ、観るの?」
チガヤが伊吹の顔を覗き込んできた時、さっき角笛を吹いた男が会場に大きな声で呼びかけた。
「次の試合は、イクビ畜産事務所VSスコウレリア第三事務所です。出場選手の方は、準備してください」
所属する事務所名が呼ばれたことで、伊吹の周りがざわつき始める。
「うちの事務所から誰か出んの?」
とサーヤ。
「何かの間違いじゃないですかぁ? うちの事務所で、こういうのに出る人なんて、いませんよぉ~」
シオリンが否定する。
「そうだよね。もう何年も参加していないって言うし」
チガヤも続いたところで、伊吹はゆっくりと手を上げた。
「僕が出ます」
少しの間をおいて、皆が一斉に突っ込み始める。
「はぁ!? バカじゃないの!」
というサーヤの罵声が飛び、
「いつエントリーしたの!?」
チガヤが疑問を投げかけ、
「つ、つまらないジョークですねぇ……」
シオリンが受け入れられないでいた。ただ、ワニックだけは拳を握りしめ、伊吹に熱視線を送っていた。ちなみにブリオは、天井をボーッと見ている。
「えっと、その……まずは、勝手にエントリーしてすみません。エントリーは受付の人に頼みました。出場するのは僕一人なので……」
その点は安心して……と言おうとしたが、泣きそうになっているチガヤを見て、何も言えなくなった。
「さっきのバトル、見たでしょ?」
「う、うん……。凄かったね」
「1人で出たら、もっと酷い目に遭うよ。私、そんなの見たくない……。棄権しよう、ね?」
優しく語りかけるチガヤの肩に、ワニックがそっと手を置く。
「戦いを決意した者を止めるべきではない」
「ワニックは、ヤマネイブキが酷い目に遭ってもいいの?」
「よくはない。だが、一度決めたことを投げ出すのは、それ以上によくない」
ワニックは伊吹を見据え、二度頷いた後に話し始めた。
「時として、戦いに身を置かねばならないこともあるものだ。理由は訊くまい。君にも、譲れない何かがあるのだろう。だが、一人で戦うことはない。俺も出よう」
「ありがとう、ワニック。でも、ルール的には大丈夫なの?」
訊かれたチガヤは、言いたくなさそうに答える。
「それは大丈夫だよ。エントリーした事務所のユニットなら、誰でも出られるし、メンバーもバトル直前まで変えられるから」
「それなら、あたいも出るよ。役に立てるか、わかんないけどさ」
「サーヤまで……」
サーヤの意外な申し出に、チガヤは一瞬ふらっとした。
「チガヤは心配しすぎなんだよ。死にはしないんだ、もう少し軽く考えたらいい。それよか、一人でも戦うっていうんだ。こいつの戦う理由こそ、重く受け止めた方がいいかもな」
「サーヤがそう言うなら、シオリン的にも手助けしないワケにはいきませんねぇ~」
「オ、オイラだけ、仲間外れはイヤなんだな」
次々に参加を表明され、伊吹は嬉しさ半分、申し訳なさ半分だった。申し訳なさは、戦う理由が“美女ガチャ”目当てというところにある。
「ありがとう、みんな! 僕は嬉しいよ」
何となく、いい雰囲気になりかけたところで、「スコウレリア第三事務所の選手の方、いらっしゃいますか?」と探す声がした。
「いまーす! ここにいまーす。すぐ準備するので、待ってください」
伊吹はジャンプしながら、自分たちを探す男に手を振って答えた。
「取り敢えず、ユニフォームに着替えよう」
全員が頷き、急ぎ控室へと向かった。
「どうやったら出れますか?」
「エントリーすれば出られるさ。こっちの方で手続きしておくかい?」
「お願いします!」
伊吹は一人で出るつもりでいた。バトルは5対5が基本だが、5人未満でも参加できるのは聞いている。1対5では勝ち目がないかもしれないが、何もしないで美女ガチャを諦めるよりはマシだと思っていた。
バトルを見に行く約束をしているから、開始までには連れて行ってもらえるだろう。あとは、そこで何とかすれば……という気でいた。
「あの、今日のバトルって、いつ始まるんですか?」
「3時間後だよ。闘技場に行ったら、ユニフォームに着替えて、コールされるのを待つんだね」
「ユニフォームがあるんですか?」
「何にも知らないんだね。いいかい? バトルは会社をPRする格好の場なんだよ。社名入りのユニフォームを着て戦って勝つ。できれば、スキルやアビリティを駆使してね。そうすれば、戦いを見た人の中から、この事務所に仕事を依頼しようとする人が出てくる。あのスキルがあるなら、こういう仕事を頼みたいとか、あのチームに仕事を任せたいっていう風に思えるからね。仕事が増えれば会社が潤う。君らは勝利ボーナスが貰える。お互いにウハウハだよ」
受付は何かを掴み取るような仕草を見せた。
「ウハウハですか」
「ウハウハだね」
低い声で受付は笑った。つられて伊吹も笑う。
「うちの事務所は臆病者が多くてね。ずっとバトルには不参加だった……。出てくれる人を待ってたよ」
「あの、期待はしないで下さいね」
「まぁ、初戦だからね。期待はしないでおくよ。そうそう、身に着けられるのはユニフォームだけだから。他には何も身に付けられないし、持って入ることもできない。これを破ると反則負けになるから、気をつけな」
伊吹は軽く会釈して、サーヤ達の元へと戻った。
「受付で何を話してたのさ?」
戻った途端、サーヤが肩に座ってきた。
「いろいろ……。出社ボーナスのこととか」
「ふぅ~ん……」
「あっ、今日のお給料を貰ったよ。ほらっ」
ポケットから銅貨を出して、サーヤに差し出す。
「あたいに渡されてもね……。持ち運ぶだけで、疲れるんだけど。シオリンに渡しなよ」
「はい」
銅貨をシオリンに渡し、伊吹は席に着いた。
「チガヤは、まだ戻ってないよね? 3時間以内に闘技場まで行けるかな……」
「大丈夫ですよぉ~。闘技場のあるギボウシは、歩いても40分あれば着きますから」
シオリンが答える。間に合うと聞いてホッとしたものの、いよいよ戦うんだと思うと、緊張の高まりを抑えられなかった。死にはしないとはいえ、何でもありのバトルを控え、伊吹は胃が痛むというか、実際に腹の調子がおかしかった。
「顔色が悪いな」
ワニックが心配そうに、伊吹の顔を覗き込む。
「急に、お腹が……」
それは便意だった。
緊張したせいで、お腹がキュルキュルと言いだし、冷や汗も少し出ていた。思えば、こっちに来てから、トイレに行っていなかった。
「トイレ、行きたいんだけど……」
「案内しよう、こっちだ」
社外へ向かうワニックの後をついて行く。
少し歩いたのち、かまくら型の茶色い建物の前に着いた。ワニックに促されて中に入ると、石床の上に黄色くて丸い生き物が山ほど転がっていた。その丸い体からは細長い脚が4本伸びている。
「何か、いるんだけど……」
「この黄色いのはサニタだ。この国のトイレなら、何処に行ってもいる。気にするな」
「この建物、中に囲いがないから、外から丸見えなんだけど……」
「何だ? 見られるのが嫌なのか? 変わった奴だな」
人に見られても気にしないとか、文化が違い過ぎると思っているうちにも、お腹の方は限界に近づいていた。
「で、出そう……」
「さっさとすればいい。出す用意をすれば、サニタが周りを囲むから、誰からも見られないぞ」
何で囲むのかという疑問は捨て、伊吹はしゃがむと同時に下半身を露出した。その瞬間、目を閉じていたサニタ達が、一斉に大きな一つ目を開け、伊吹の周りに壁を作る。
「何、こいつら……」
驚きのあまり、お腹の制御を失う。排泄物が出ていくと同時に、サニタ達は長い舌を伸ばして、それを綺麗に舐め取っていく。
「う゛わぁぁーーーーっ!」
と叫ぶ伊吹に、ワニックは込み上げる笑いを抑えられなかった。
「ハッハッハ……。すまんすまん、あまりの驚きっぷりに、おかしくなってしまった」
「ハァ……ハァ……」
一通り出し終えて、伊吹は少しだけ落ち着きを取り戻した。一方、サニタ達は舐め取った排泄物を飲み込み、次はまだかと待機している。これが彼らの食事だと思うと、複雑な心境になる。
「俺も最初は驚いたが、慣れると便利なものだ」
「これに慣れるのは、時間がかかりそう……」
「そうかい? 案外、すぐクセになるぞ。これは、いいものだ」
「僕は嫌ですね、こんなトイレは」
元いた世界のウォシュレットが恋しくなる。
「どんなトイレが好みだ? 隣国のような投げ捨て型か?」
「投げ捨て型?」
「ああ、まだ知らないか。隣国では、室内でオマルにした後、それを窓から投げ捨てている。長年そうしているもんだから、地面が徐々に高くなって、やがては家が埋まるらしい」
「それじゃ家に入れないじゃないですか」
「そうだ。だから、元あった家の上に家を建てる。お陰で、どの家に行っても地下があるという訳さ」
「そんなのは最低ですよ……。大体、そんなことしてたら、路上が臭くなるじゃないですか」
ワニックは手を叩いて、「それだ!」と伊吹を指差した。
「道理で……。だから、匂い系能力者の人気が高いのか、あの国は」
納得するワニックを見ながら、用を足した伊吹は服装を整えた。もう何も出さないと察したのか、サニタ達はサーッと波がひくように元の場所へと戻っていく。
「そもそも、排泄物をそのままにしておくのは不衛生です。病気の温床になるんですよ」
「ほぉ~」
伊吹は手を洗う場所を探したが、水が入っているものは見当たらなかった。仕方なく、手をパンパンとはたいて、トイレの外に出ることにした。
「今のは、何かの儀式か?」
「いや、そういうんじゃないんですけどね……。みんなのところに戻りましょう」
異文化交流は大変だなと苦笑しつつも、いつの間にか伊吹の緊張はほぐれていた。
トイレから戻って数十分後、戻ってきたチガヤと合流し、闘技場のあるギボウシへと向かった。
隣街のギボウシはスコウレリアほど大きくはないものの、多くの人が行き来する街で、闘技場の大きさではマ国で二番目と言われていた。一番は首都オルトドンティウムのものになる。国営の闘技場は地域単位で建設されていて、人口の少ない地方に行くほど、小さくなっていた。
スコウレリアを出発して30分ちょっとで、伊吹たちはギボウシの中心部まで来ていた。ここもスコウレリア同様、建物の壁が苔で覆われていたが、その苔から黄緑の葉っぱが伸びていることもあった。
「ここが闘技場だよ」
チガヤが闘技場の前に立つ。
闘技場は3つの正方形状の建物から成っていた。中央の大きな正方形はバトル会場で、左右の小さな正方形は出場者の控室になる。
「さぁ、入ろう」
バトル会場に入っていくチガヤを、ユニットたちは追いかけた。
中に入ってみると、階段状の観客席がバトルフィールドを取り囲む形となっていた。四角いフィールドは、観客席よりも人の身長分ほど低い位置にあり、端から端まで砂地になっている。
「砂地なんですね」
無人の砂地フィールドを見て、伊吹は走りにくそうだという感想を抱いた。
「始まるまで、まだ時間があるよね。近くを散歩しない?」
「いいですねぇ~」
チガヤの提案にシオリンがのり、他のみんなもついて行こうとする中、伊吹の目はバトルフィールドに向けられたままだった。
「一緒に来ないの?」
「僕は、ここにいるよ」
「そっか。じゃ、また後でね」
伊吹は観客席に腰をおろし、砂地での戦いを考えた。
バトルは旗を取れば勝者になるので、何も相手とガチでやり合う必要はない。となれば、いかに相手の攻撃を避けて、旗のもとに辿りつくかが重要になる。1対5だとしたら、5人の集中攻撃をかわすのは至難の業だ。避けるのは無理だと言っていい。なんとか、5人を相手にしなくて済む方法は無いものか……
「う~ん……」
腕組みして唸り声をあげる。
2~3人でいい、相手の動きを止められれば……という結論に至る。どうしたら動きを止められる? 自分だったら、何をされれば動きを止める?
答えの1つとして、目の前で美女が脱ぎ始めたら、目を奪われるから止まるというものが浮かぶ。これは、自分が男である時点で不可能だし、相手がスケベな男性でなければ意味がない。それでも、やることは同じことだと気づく。相手の目さえ、奪えばいい。目さえ、奪えば……。
バトルフィールドの砂を見つめ、「これだと」と指をはじく。
砂で目潰しという小学生がやりそうな手を思いつき、伊吹はもう勝ったつもりになっていた。開始早々に相手の目を潰し、視界を奪った隙に旗までダッシュして抜き取ればいい。完璧だと、心の中で自画自賛した。
あとはバトル開始まで体力を温存しておこうと、体の力を抜いて仮眠を取ることにした。
周囲の騒がしさに目を開けると、観客席に人が集まり始めていた。
「あっ、起きた起きた」
隣には散歩から戻ったチガヤ達が座っている。
「もう始まる時間?」
「うん。最初のバトルが始まるよ」
バトルフィールドを見ると、既に白い旗が両サイドに突き刺さっていた。フィールド中央では、バッファローの顔をした亜人種5人と、下半身が蛇の女性2人と骸骨3体が向き合っている。そこに3人の女性たちが近づいていく。
女性たちは揃いのローブを身にまとい、手には金色の杖を持っていた。
「あの女の人たちは?」
「運営スタッフだよ。真ん中の人が審判で、隣にいるのが回復役と転移係だよ」
「あの人たちが……」
出場者への説明を終えると、三人はバトルフィールドの隅へと移動し、持っている杖を重ね合わせた。それを見て、観客席にいた男が角笛を吹く。
笛の音が場内に鳴り響くと同時に、バッファロー顔の者達が力任せに殴りに行く。その初撃を蛇女と骸骨が下がって避ける。
今度は蛇女たちが尻尾を伸ばしてバッファロー顔2人を、ぐるぐる巻きにして動きを封じると、骸骨たちはその2人に飛びついて顔面に噛り付いた。5対2の状態になったことで、バッファロー顔3人がフリーになったが、彼らは旗を狙わずに飛びついた骸骨に殴り掛かった。
「えっ!? 旗は無視……?」
伊吹には納得がいかなかったが、目の前で行われている戦いは、相手を潰すことだけを目的としているようにしか見えなかった。そんな戦いぶりに観客席は盛り上がっていったが、チガヤは見たくないのか目を逸らしていた。
「な、平和的じゃないだろ?」
サーヤが伊吹の肩に胡坐をかいて言う。
「旗を取れば勝てる。けど、仲間が殴られたら、殴り返さないと気が済まない……ってのが多いんだよ」
「気持ちは、わかるけど……」
「それにさぁ、致命傷を受ける前に転移させる係がいるけど、メンバー全員が転移したら負けになるんだよ。バトルが続行不能になるから。つまり、相手をぶっ潰す方が確実だと考える奴がいても、おかしくないって話。出なくて正解だろ?」
「そう……だね……」
伊吹の顔が引きつる。
そんな話をしているうちに、バトルフィールドではバッファロー顔に殴られた骸骨3体が転移され、残った蛇女も尻尾を掴まれてブンブン振り回されていた。もう勝敗は決したも同然だった。
蛇女は投げ飛ばされると同時に転移され、対戦相手がいなくなったバッファロー顔チームの勝利が確定した。会場に割れんばかりの拍手が起こり、興奮したバッファロー顔たちが雄叫びを上げる。
一方、転移された骸骨や蛇女たちは、回復係によって元の状態に戻されていた。
「スキルもアビリティも使用しない肉弾戦とは……面白い!」
ワニックは一人興奮し、武者震いしていた。
「えぇ~……ワニック、こういうの好きなんだ。私は苦手だなぁ……まだ、観るの?」
チガヤが伊吹の顔を覗き込んできた時、さっき角笛を吹いた男が会場に大きな声で呼びかけた。
「次の試合は、イクビ畜産事務所VSスコウレリア第三事務所です。出場選手の方は、準備してください」
所属する事務所名が呼ばれたことで、伊吹の周りがざわつき始める。
「うちの事務所から誰か出んの?」
とサーヤ。
「何かの間違いじゃないですかぁ? うちの事務所で、こういうのに出る人なんて、いませんよぉ~」
シオリンが否定する。
「そうだよね。もう何年も参加していないって言うし」
チガヤも続いたところで、伊吹はゆっくりと手を上げた。
「僕が出ます」
少しの間をおいて、皆が一斉に突っ込み始める。
「はぁ!? バカじゃないの!」
というサーヤの罵声が飛び、
「いつエントリーしたの!?」
チガヤが疑問を投げかけ、
「つ、つまらないジョークですねぇ……」
シオリンが受け入れられないでいた。ただ、ワニックだけは拳を握りしめ、伊吹に熱視線を送っていた。ちなみにブリオは、天井をボーッと見ている。
「えっと、その……まずは、勝手にエントリーしてすみません。エントリーは受付の人に頼みました。出場するのは僕一人なので……」
その点は安心して……と言おうとしたが、泣きそうになっているチガヤを見て、何も言えなくなった。
「さっきのバトル、見たでしょ?」
「う、うん……。凄かったね」
「1人で出たら、もっと酷い目に遭うよ。私、そんなの見たくない……。棄権しよう、ね?」
優しく語りかけるチガヤの肩に、ワニックがそっと手を置く。
「戦いを決意した者を止めるべきではない」
「ワニックは、ヤマネイブキが酷い目に遭ってもいいの?」
「よくはない。だが、一度決めたことを投げ出すのは、それ以上によくない」
ワニックは伊吹を見据え、二度頷いた後に話し始めた。
「時として、戦いに身を置かねばならないこともあるものだ。理由は訊くまい。君にも、譲れない何かがあるのだろう。だが、一人で戦うことはない。俺も出よう」
「ありがとう、ワニック。でも、ルール的には大丈夫なの?」
訊かれたチガヤは、言いたくなさそうに答える。
「それは大丈夫だよ。エントリーした事務所のユニットなら、誰でも出られるし、メンバーもバトル直前まで変えられるから」
「それなら、あたいも出るよ。役に立てるか、わかんないけどさ」
「サーヤまで……」
サーヤの意外な申し出に、チガヤは一瞬ふらっとした。
「チガヤは心配しすぎなんだよ。死にはしないんだ、もう少し軽く考えたらいい。それよか、一人でも戦うっていうんだ。こいつの戦う理由こそ、重く受け止めた方がいいかもな」
「サーヤがそう言うなら、シオリン的にも手助けしないワケにはいきませんねぇ~」
「オ、オイラだけ、仲間外れはイヤなんだな」
次々に参加を表明され、伊吹は嬉しさ半分、申し訳なさ半分だった。申し訳なさは、戦う理由が“美女ガチャ”目当てというところにある。
「ありがとう、みんな! 僕は嬉しいよ」
何となく、いい雰囲気になりかけたところで、「スコウレリア第三事務所の選手の方、いらっしゃいますか?」と探す声がした。
「いまーす! ここにいまーす。すぐ準備するので、待ってください」
伊吹はジャンプしながら、自分たちを探す男に手を振って答えた。
「取り敢えず、ユニフォームに着替えよう」
全員が頷き、急ぎ控室へと向かった。
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食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
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「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
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※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
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もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
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