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3.???
06
「協力してくれてありがとう、小緑君。君のおかげで純白君とゆっくりお話しできたよ」
純白君との約束もある。なるべく平静を取り繕う。
それでも自分の体の異変に気付かれるのではないかと思うと緊張した。
小緑君の表情は変わらない。……もしかして、聞かれてたのかな。純白君とのこと。
なるべく声は我慢したつもりだったけれど、だとすれば少しばつが悪い。が、わざわざ言う必要もない。
小緑君と純白君は恋人でもなんでもないと知っているからこそ、今は。
「じゃあ、帰ろうか。……純白君は今小緑君の家で寝泊まりしてるんだっけ?」
「今日は遠慮しときます」
「自分の家に帰るの?」
「……まあ」
純白君は本来根が正直なのだろう。何故か僕よりも居心地の悪そうな彼に、小緑君は「好きにしろ」と続けた。
「そう、じゃあ僕の家に来る?」
「は?」
「何言ってるんだ、織和」
「小緑君。君と純白君は本当は付き合ってないんだよね?」
「……まあ、そうだが」
「彼を一人にするのは危険だよ。……どこで犬馬先輩や慈門君が居るかもわからないっていうのに」
半分本音だった。慈門君も犬馬先輩も僕の意思を知っているだろう。あの狡猾な男のことだ、そのために僕が純白君に近付くのも恐らく見抜かれている。そして、次に狙われるとしたら。
「……いや、駄目だ。それなら俺の家に来い」
「……小緑君」
「織和、お前もだ。……今のお前は危なっかしすぎる」
「……」
恐らくこれは、僕と純白君がセックスしてたことは気づいていないだろう。そうでなければわざわざ僕らを一緒に扱わない。
「僕も?」
「お前んちは親父さんが帰ってくるのが遅いだろう」
「まあ、そうだね」
「おばさん一人だったとき、天翔たちに押し入られた時が心配だ」
ここ最近家を空けることが多い父のことを思い出す。夜中一人でリビングの明かりがついたまま母が啜り泣く声を聞いたのを思い出す。
家を空けるのは少し、気になった。
「それなら君たちが僕の家にきてほしいな」
「……けど、邪魔にならないか?」
「ならないよ。……小緑君の家みたいに広くないから寝床には困るだろうけど」
「じゃあ俺は折先輩の家で」
「おい、藤。お前な……」
「良いんじゃないですか? 甘南先輩、昔はよくお互いの家に泊まってたんでしょ?」
「それはそうだが……おばさんが大変だろう」
「じゃあ飯は外で食っていきましょう。俺が奢りますよ」
「そういう問題じゃなくてだな……」
小緑君はきっと母さんのことも考えているのだろう。自分の家に泊めることは抵抗ないのに、人に世話になるのは抵抗があるらしい。
僕はどちらでも良かった。
「小緑君、無理はしなくて良いよ」
「していない。……一応、事前に連絡して菓子折りを……」
「いらないよ、僕が伝えておくから」
「……織和」
「……なんだか昔みたいで楽しいね」
そう続ければ、小緑君は変な顔をしていた。
純白君のところには慈門君がいた。そのことを考えているのだろう。「まあ、そうだな」と少し端切れの悪い返事をする。
そんな小緑君をじっと観察していた純白君はわざとらしく大きな溜息を吐いた。
「ま、いいでしょう。それじゃあ見回りが来る前にさっさと帰りましょう。――あいつに見つかると厄介なので」
あいつ、というのが誰を指しているのか分かってしまう。
なるべく意識しないように脳の外へと押し出していたが、どうしても胸の奥がざわつき始めてしまった。
今の自分は先生には見られたくない。
僕は「そうだね」と頷き、二人について校舎を後にする。
あまり遅くなると補導される。正直さっさと風呂に入りたかったが、今はそれを顔に出さないように二人に付き合うことに気を回すことにした。
純白君との約束もある。なるべく平静を取り繕う。
それでも自分の体の異変に気付かれるのではないかと思うと緊張した。
小緑君の表情は変わらない。……もしかして、聞かれてたのかな。純白君とのこと。
なるべく声は我慢したつもりだったけれど、だとすれば少しばつが悪い。が、わざわざ言う必要もない。
小緑君と純白君は恋人でもなんでもないと知っているからこそ、今は。
「じゃあ、帰ろうか。……純白君は今小緑君の家で寝泊まりしてるんだっけ?」
「今日は遠慮しときます」
「自分の家に帰るの?」
「……まあ」
純白君は本来根が正直なのだろう。何故か僕よりも居心地の悪そうな彼に、小緑君は「好きにしろ」と続けた。
「そう、じゃあ僕の家に来る?」
「は?」
「何言ってるんだ、織和」
「小緑君。君と純白君は本当は付き合ってないんだよね?」
「……まあ、そうだが」
「彼を一人にするのは危険だよ。……どこで犬馬先輩や慈門君が居るかもわからないっていうのに」
半分本音だった。慈門君も犬馬先輩も僕の意思を知っているだろう。あの狡猾な男のことだ、そのために僕が純白君に近付くのも恐らく見抜かれている。そして、次に狙われるとしたら。
「……いや、駄目だ。それなら俺の家に来い」
「……小緑君」
「織和、お前もだ。……今のお前は危なっかしすぎる」
「……」
恐らくこれは、僕と純白君がセックスしてたことは気づいていないだろう。そうでなければわざわざ僕らを一緒に扱わない。
「僕も?」
「お前んちは親父さんが帰ってくるのが遅いだろう」
「まあ、そうだね」
「おばさん一人だったとき、天翔たちに押し入られた時が心配だ」
ここ最近家を空けることが多い父のことを思い出す。夜中一人でリビングの明かりがついたまま母が啜り泣く声を聞いたのを思い出す。
家を空けるのは少し、気になった。
「それなら君たちが僕の家にきてほしいな」
「……けど、邪魔にならないか?」
「ならないよ。……小緑君の家みたいに広くないから寝床には困るだろうけど」
「じゃあ俺は折先輩の家で」
「おい、藤。お前な……」
「良いんじゃないですか? 甘南先輩、昔はよくお互いの家に泊まってたんでしょ?」
「それはそうだが……おばさんが大変だろう」
「じゃあ飯は外で食っていきましょう。俺が奢りますよ」
「そういう問題じゃなくてだな……」
小緑君はきっと母さんのことも考えているのだろう。自分の家に泊めることは抵抗ないのに、人に世話になるのは抵抗があるらしい。
僕はどちらでも良かった。
「小緑君、無理はしなくて良いよ」
「していない。……一応、事前に連絡して菓子折りを……」
「いらないよ、僕が伝えておくから」
「……織和」
「……なんだか昔みたいで楽しいね」
そう続ければ、小緑君は変な顔をしていた。
純白君のところには慈門君がいた。そのことを考えているのだろう。「まあ、そうだな」と少し端切れの悪い返事をする。
そんな小緑君をじっと観察していた純白君はわざとらしく大きな溜息を吐いた。
「ま、いいでしょう。それじゃあ見回りが来る前にさっさと帰りましょう。――あいつに見つかると厄介なので」
あいつ、というのが誰を指しているのか分かってしまう。
なるべく意識しないように脳の外へと押し出していたが、どうしても胸の奥がざわつき始めてしまった。
今の自分は先生には見られたくない。
僕は「そうだね」と頷き、二人について校舎を後にする。
あまり遅くなると補導される。正直さっさと風呂に入りたかったが、今はそれを顔に出さないように二人に付き合うことに気を回すことにした。
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