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第11章 希望を手に 絶望を超える
144話 心に希望を 重ねた手に勝利を 其の4
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「貴様等ぁ、貴様等ぁ!!」
戦場を震わせる叫び。殺意と憎悪と憤怒と焦燥と混乱の混合物。しかし、無理からぬ話。最善を尽くし、命を賭け、運も味方したこの状況をたった2人に覆されようとしているのだから。
直後、空気が震え始め、残った最後の首が不規則に蠢き、ドロドロに溶け落ち、その次に戦場周辺の地面が青い濁流の如く集い、逆流し始め、最後には空気中を揺らめく青い粒子までが一点に向け集束し始めた。青い光が作りだす流れの先は空高くに舞ったオロチが落下した場所。其処には、巨大な穴が開いていた。
「危険です」
アマテラスオオカミが危険、と漠然に零した。彼女の周囲には無数のディスプレイ、その全てが警告を発している。
「どうされました?」
「地下から桁違いの反応が、でも……これでは……」
神が見たのは地下からせり上がる超巨大なエネルギー反応。オロチに再び大きな変化が訪れる。8つの長い首が消え、地中に溜まったゾッとするほどに濃く暗い青色の水たまりが徐々に消え、穴から何かが猛烈な勢いで飛び上がった。
暗い地の底から遥か上空に飛び上がった、青い人型をした異形のオロチ。サイズを極限まで縮小させた異形の最終形態。その大きさは人の倍程、基本的に人の身体を模しているが一部相違もあり、真っ青な身体には手と足には人のそれよりも一回り以上大きな鋭い爪が付き、その背には身体を覆うほどに巨大な一対の翼が生えている。
相貌には前頭部から後頭部に掛け巨大な二本の角が生え、口には牙が生え、そして口以外の部位、鼻と目がない。そんな顔にも関わらず、どんな感情に支配されているか容易く理解できる。その口は怒りに震え、大きく歪んでいる。歪んだ結果、己を見失った。だがその攻撃性だけは失っていない心情を正しく現しているかのようだった。
いや、と誰かが否定した。悪魔だ。そう呼ぶ方が相応しい。怒りと狂気に歪み、己も他者も拒絶するオロチ。地球において神とさえ呼ばれた男が変貌した悪魔が姿を見せた。
「不味いです。ざっと計測しただけで……いえ、まだエネルギーが増えている?そんな!?こんな、こんな桁違いのエネルギーを何処から供給しているの?エネルギー、尚も増加中。こんなのもう、もう兵器とは呼べない。正しく悪魔……急いで退避して下さい!!あれだけのエネルギー量が激突、解放されたらその島が吹き飛ぶ……可能な限り逃げて下さい!!」
堪らず避難警告を出すアマテラスオオカミ。無駄と知りながら、逃げ場などないと知りながら、それでも。
「私がァ、私こそがァァァ!!」
間髪入れず飛び掛かるオロチ。凄まじい勢いで強襲するオロチを見た伊佐凪竜一とルミナは一瞬、ほんの僅か互いを見た。何度目か交差する視線に、恐怖も不安もない。名残惜しそうな感情を残し、伊佐凪竜一はオロチを見上げた。ルミナは――同じく名残惜しそうな視線をスクナに向けた。悲し気な微笑みがスクナの瞼に焼き付く。その視線に、浮かべた表情に、スクナは彼女が何をするか理解した。
「やめんか馬鹿者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
叫び。それまで如何なる状況であっても冷静さを保ち続けた男の悲壮に満ちた叫び声が響き渡った。初めて見せた彼の激情に、仲間達も驚いた。師弟として長く傍に居たからこそ、彼女が何をするのか理解したのだろう。
そして、もう一人も。戦場から遠く離れた位置から混成軍の部隊長が叫んだ。彼自身の言葉ではない。遠く離れた場所から見守る関宗太郎首相の言葉を伊佐凪竜一に届ける為、名もなき兵士が名も知らぬ地球人の為に命を懸け、言葉を届けに参じた。
「オイ!!聞こえてるかそこのクソ日本人!!お前ンとこの首相からだ、良いかよく聞け。『私は顔と名前を判別できる人物はそう多くない。決断する者にそんな情報は』……ってクソ長げぇよ馬鹿!!オイッ、良いか無茶するなッ!!」
彼等の死を望む者などいない。寧ろ助けたい。無謀で、無茶で、無意味など百も承知で、それでも動いた。が、願いは叶わない。他ならない2人がそれを拒絶した。
伊佐凪竜一とルミナの眼差しに誰もが理解する。既に命を投げ捨てた2人は、例え肉体の消滅を引き換えとしても清雅修一を止めるつもりだと。
戦場を震わせる叫び。殺意と憎悪と憤怒と焦燥と混乱の混合物。しかし、無理からぬ話。最善を尽くし、命を賭け、運も味方したこの状況をたった2人に覆されようとしているのだから。
直後、空気が震え始め、残った最後の首が不規則に蠢き、ドロドロに溶け落ち、その次に戦場周辺の地面が青い濁流の如く集い、逆流し始め、最後には空気中を揺らめく青い粒子までが一点に向け集束し始めた。青い光が作りだす流れの先は空高くに舞ったオロチが落下した場所。其処には、巨大な穴が開いていた。
「危険です」
アマテラスオオカミが危険、と漠然に零した。彼女の周囲には無数のディスプレイ、その全てが警告を発している。
「どうされました?」
「地下から桁違いの反応が、でも……これでは……」
神が見たのは地下からせり上がる超巨大なエネルギー反応。オロチに再び大きな変化が訪れる。8つの長い首が消え、地中に溜まったゾッとするほどに濃く暗い青色の水たまりが徐々に消え、穴から何かが猛烈な勢いで飛び上がった。
暗い地の底から遥か上空に飛び上がった、青い人型をした異形のオロチ。サイズを極限まで縮小させた異形の最終形態。その大きさは人の倍程、基本的に人の身体を模しているが一部相違もあり、真っ青な身体には手と足には人のそれよりも一回り以上大きな鋭い爪が付き、その背には身体を覆うほどに巨大な一対の翼が生えている。
相貌には前頭部から後頭部に掛け巨大な二本の角が生え、口には牙が生え、そして口以外の部位、鼻と目がない。そんな顔にも関わらず、どんな感情に支配されているか容易く理解できる。その口は怒りに震え、大きく歪んでいる。歪んだ結果、己を見失った。だがその攻撃性だけは失っていない心情を正しく現しているかのようだった。
いや、と誰かが否定した。悪魔だ。そう呼ぶ方が相応しい。怒りと狂気に歪み、己も他者も拒絶するオロチ。地球において神とさえ呼ばれた男が変貌した悪魔が姿を見せた。
「不味いです。ざっと計測しただけで……いえ、まだエネルギーが増えている?そんな!?こんな、こんな桁違いのエネルギーを何処から供給しているの?エネルギー、尚も増加中。こんなのもう、もう兵器とは呼べない。正しく悪魔……急いで退避して下さい!!あれだけのエネルギー量が激突、解放されたらその島が吹き飛ぶ……可能な限り逃げて下さい!!」
堪らず避難警告を出すアマテラスオオカミ。無駄と知りながら、逃げ場などないと知りながら、それでも。
「私がァ、私こそがァァァ!!」
間髪入れず飛び掛かるオロチ。凄まじい勢いで強襲するオロチを見た伊佐凪竜一とルミナは一瞬、ほんの僅か互いを見た。何度目か交差する視線に、恐怖も不安もない。名残惜しそうな感情を残し、伊佐凪竜一はオロチを見上げた。ルミナは――同じく名残惜しそうな視線をスクナに向けた。悲し気な微笑みがスクナの瞼に焼き付く。その視線に、浮かべた表情に、スクナは彼女が何をするか理解した。
「やめんか馬鹿者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
叫び。それまで如何なる状況であっても冷静さを保ち続けた男の悲壮に満ちた叫び声が響き渡った。初めて見せた彼の激情に、仲間達も驚いた。師弟として長く傍に居たからこそ、彼女が何をするのか理解したのだろう。
そして、もう一人も。戦場から遠く離れた位置から混成軍の部隊長が叫んだ。彼自身の言葉ではない。遠く離れた場所から見守る関宗太郎首相の言葉を伊佐凪竜一に届ける為、名もなき兵士が名も知らぬ地球人の為に命を懸け、言葉を届けに参じた。
「オイ!!聞こえてるかそこのクソ日本人!!お前ンとこの首相からだ、良いかよく聞け。『私は顔と名前を判別できる人物はそう多くない。決断する者にそんな情報は』……ってクソ長げぇよ馬鹿!!オイッ、良いか無茶するなッ!!」
彼等の死を望む者などいない。寧ろ助けたい。無謀で、無茶で、無意味など百も承知で、それでも動いた。が、願いは叶わない。他ならない2人がそれを拒絶した。
伊佐凪竜一とルミナの眼差しに誰もが理解する。既に命を投げ捨てた2人は、例え肉体の消滅を引き換えとしても清雅修一を止めるつもりだと。
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