G.o.D 神魔戦役篇

風見星治

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第12章 魔女と神父

152話 素性不明の依頼人

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 撮影した映像に補足する形で当時の様子を語り終えたミルヴァが大きく溜息をつくと同時に映像が一旦終わった。周囲がほの暗い闇に包まれる。

「フム、つまり君達はその時に初めてマジンを見たと言う事か」

 誰も、何も言えないまま呆然と何も映さない真っ黒なディスプレイを眺める中、カートが率直な感想を口に出した。

「そうなるね。だけど」

「あぁ、異常だな」

 異常との評をミルヴァは素直に肯定した。アイビスも無言でうなずく。魔の刃と書いてマジン。ツクヨミが与えた知識を基に清雅が対旗艦アマテラス、対スサノヲを想定して作り上げたナノマシン兵器。そのお披露目会に招待されたとなれば異常という言葉が口を突くのも頷ける。カートは椅子に体重を預け、天井を見上げた。

「そう。マジンって、要は旗艦アマテラスとスサノヲを想定した秘密兵器で、だったら僕達に見に来いって言うのはおかしいです」

「この時点で依頼人が清雅内部、しかも相当に重要な職に就く人間だと言う確信を得た。金払いが良いのも納得だし、清雅市への手引きも内通者ならお手の物だ。だが、コイツの言う通り異常だ」

「だろうね。何より目的が分からない」

 アイビスに続け、ミルヴァも改めて異常と口にした。カートは2人の言葉に唸る。疑問は一つ、マジンの存在を知られたくないのにどうして2人に見せたのか。結果的に世界中に周知しなかったが、それは結果論でしかなく、もし2人がこの情報を世界中に流せば想像以上に混乱するなど余りにも想像しやすい。現に、この場の誰一人として正常でいられなかった。当然、暴露されれば清雅は少なからぬ痛手を負う。

 あの時点でならば信じなかったであろう可能性もある。ただ、そんな曖昧な可能性に賭ける理由は見当たらない。情報統制を行えばダメージはない。が、それならば最初から兵器の存在を教えなければよいだけ。

 何れにせよ危ない橋を渡る理由にはならず、教える理由はもっとない。詰まるところ、「依頼人」を清雅の何者かと仮定すると、ミルヴァとアイビスを清雅市中央区のテロ現場に招くのはただリスクを抱えるだけの行為でしかない。

 清雅も一枚岩ではなく、旗艦側と通じて清雅源蔵を追い落とそうとする勢力がいたのかもしれない。が――

「清雅側の人間ならカガセオ連合と交渉が上手く行く可能性がゼロだって分かってる。だから戦うって選択肢を選んだ訳だし、その辺りは暴露映像からも確かだ。だから尚の事、秘密兵器を見に来いなんて言う奴なんて居る訳がない」

 ミルヴァの指摘に異を唱える声は上がらない。清雅源蔵の強硬な姿勢に反発する勢力がいたとしても、やはりリスクが高いだけ。ツクヨミを奪われてしまえば彼女と清雅が共に作り上げた通信網が使用不可能となり、地球全土が機能不全に陥るのは火を見るよりも明らか。

 ――現実には和平派という頭にお花が咲いた連中もいた訳だが、この時点では誰も知らない情報である。

「清雅って世界中から恨まれていて、そんな状況でスサノヲ?って連中を相手にする必要があるなら横槍は少しでも減らしたいって考えるのが普通です。でもあんな情報がもし世界中にバレたら、世界中が一層清雅に疑惑の目を向けるし、宇宙から来た連中も勝つ為ならばって反清雅組織をあおるかきつけるかしたうえで武器を横流しして清雅と戦わせたんじゃないかなって。だから」

「尚の事、見せる理由はない訳だ」

「そうなりゃ流石の清雅も負けたんじゃないかな?結果、清雅の準備は全部無駄になって、最悪B級映画よろしくヤツ等に支配されていただろうね」

「だから尚の事、危ない橋を渡る理由が分からないです」

「そう、私もソレが気になる。だが肝心の依頼人は終戦以後から完全に音信不通なのだね?」

「はい。お金はちゃんと払ったって連絡来たんだけど……だけど僕達の質問には一切答えずそのままフェードアウト。以後の連絡もなし」

「なるほど。初日の流れと素性不明の依頼人については良く分かった。では、次に移ろう」

「分かった。何とか逃げ帰ったアタシ達に次の依頼が来たのは翌日の昼過ぎの話だ」

 カートに急かされたミルヴァは続きを語り始め、相棒のアイビスはその時に録画した映像を空中に投影する。
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