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第12章 魔女と神父
163話 過去の記録映像 神の懺悔 其の3
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ツクヨミの話は続く。
「私が与えた知識・技術はあらゆる分野に技術革新を起こした。その成果、世界中の富と資源を清雅が独占する事となった。瞬く間に、世界が抵抗すら出来ない短期間で。全て、承知の上だった。通信以外の過剰発展を抑え、文明水準を制御するには清雅一族が独占していた方が都合が良かった。その一族も可能な限り制御した。富の独占防止に慈善団体を組織、散財させた。表向きは世界中の生活水準を均一化させる目的で、通信網は元より道路、上下水道含めた生活基盤を整備した。介入から僅か20年程で世界は激変した。世界は清雅一族と私という存在なしには生きられなくなった。止むを得なかった、そうしなければこの国と世界中に戦火が広がると、そう言い聞かせた。私は清雅の神から世界の神へと変わった。反発はあったが、それでも多くの者が受け入れた。世界は私を愛し、私も応える為に世界を愛した、愛そうとした……」
その顔が途端に曇り始める。端整な顔に苦悩の影が落ち始め、声も徐々に低く、小さくなる。話の内容に暗い影が落ち始めた。同様に、口調も僅か重く、湿り気が増す。
「戦争が起こらなかった世界と人の意志は徐々歪んでいった。その事に……私は気付かなかった。夥しい死傷者、破壊と混乱から産み落とされる憎悪と悲嘆が生み出す負の連鎖、不信感と恐怖で対立せざるを得ない世界と引き換えに生まれた新たな世界は……私の作る仮想世界に溺れ、呑み込まれ、我を失い、自身を制御出来ず、他者を巻き込みながら自滅していく世界だった。仮想、現実の区別なく偽物が溢れ、偽りと真実の境界が不明瞭となった。やがて真実が駆逐され、偽りが支配した。人々は虚栄心に振り回され、己こそが世界の中心と自惚れ、バラバラになっていった。そして……遂に、人は仮想世界で醜く争い始めた。同じ価値を共有する者達の集まりの実態は、ただ価値を同じくするというだけ。理解する事を拒否した者達は脆い砂の城に脆く、だというのに僅かでも違う事が許せないという理由で争い合い、やがて歯止めが効かない程に残虐になっていった」
神の話を誰もが聞き入る。心当たりはある。なくとも人が一方的に、恣意的に他者を排除するなど過去の歴史が幾らでも証明している。古くは魔女狩り、更に遡れば宗教的迫害。今も尚続く無数の人種差別。過去、無数に勃発した紛争、戦争などなど。人は、何も変わらなかった。文明を、知識を授けようが、戦い、争い、排除する理由と場所を変え、同じ歴史を繰り返す。
「自らと違う者を、弱い者を、数が少ない者を、ただそれだけの理由で、まるでそうする事が絶対的に正しいかの如く、あるいは楽しみながら……武器の代わりに言葉と文字を使い、仮想の世界で、私の作った世界で人は戦い続けた。争いはいつまでも止まる事はなかった。誰もが血を流さない戦いを疑問に思わず、いや血を流さないから、何も失わないから、そして自らが付けた傷が見えないからこそ、それを楽しんだ。私は分からなくなった。何故ここまでできるのか、何故そうまでして傷つけあうのか、私の求める理解は幻想ではないのか、と」
語り続けるツクヨミに違和感が生じる。彼女を構成する体躯が徐々に綻び、軋み、崩れ始める兆候を映像がはっきりと捉えた。
神が英雄の蘇生にハバキリを使う。が、その力は余りにも強く、神の体躯でさえ耐えられず、悲鳴を上げる。だが、それでも止まらない。英雄の救済を己の役目と定義した神は決して止まら、傍に寄り添い、復活の為に尽くす。
「私が与えた知識・技術はあらゆる分野に技術革新を起こした。その成果、世界中の富と資源を清雅が独占する事となった。瞬く間に、世界が抵抗すら出来ない短期間で。全て、承知の上だった。通信以外の過剰発展を抑え、文明水準を制御するには清雅一族が独占していた方が都合が良かった。その一族も可能な限り制御した。富の独占防止に慈善団体を組織、散財させた。表向きは世界中の生活水準を均一化させる目的で、通信網は元より道路、上下水道含めた生活基盤を整備した。介入から僅か20年程で世界は激変した。世界は清雅一族と私という存在なしには生きられなくなった。止むを得なかった、そうしなければこの国と世界中に戦火が広がると、そう言い聞かせた。私は清雅の神から世界の神へと変わった。反発はあったが、それでも多くの者が受け入れた。世界は私を愛し、私も応える為に世界を愛した、愛そうとした……」
その顔が途端に曇り始める。端整な顔に苦悩の影が落ち始め、声も徐々に低く、小さくなる。話の内容に暗い影が落ち始めた。同様に、口調も僅か重く、湿り気が増す。
「戦争が起こらなかった世界と人の意志は徐々歪んでいった。その事に……私は気付かなかった。夥しい死傷者、破壊と混乱から産み落とされる憎悪と悲嘆が生み出す負の連鎖、不信感と恐怖で対立せざるを得ない世界と引き換えに生まれた新たな世界は……私の作る仮想世界に溺れ、呑み込まれ、我を失い、自身を制御出来ず、他者を巻き込みながら自滅していく世界だった。仮想、現実の区別なく偽物が溢れ、偽りと真実の境界が不明瞭となった。やがて真実が駆逐され、偽りが支配した。人々は虚栄心に振り回され、己こそが世界の中心と自惚れ、バラバラになっていった。そして……遂に、人は仮想世界で醜く争い始めた。同じ価値を共有する者達の集まりの実態は、ただ価値を同じくするというだけ。理解する事を拒否した者達は脆い砂の城に脆く、だというのに僅かでも違う事が許せないという理由で争い合い、やがて歯止めが効かない程に残虐になっていった」
神の話を誰もが聞き入る。心当たりはある。なくとも人が一方的に、恣意的に他者を排除するなど過去の歴史が幾らでも証明している。古くは魔女狩り、更に遡れば宗教的迫害。今も尚続く無数の人種差別。過去、無数に勃発した紛争、戦争などなど。人は、何も変わらなかった。文明を、知識を授けようが、戦い、争い、排除する理由と場所を変え、同じ歴史を繰り返す。
「自らと違う者を、弱い者を、数が少ない者を、ただそれだけの理由で、まるでそうする事が絶対的に正しいかの如く、あるいは楽しみながら……武器の代わりに言葉と文字を使い、仮想の世界で、私の作った世界で人は戦い続けた。争いはいつまでも止まる事はなかった。誰もが血を流さない戦いを疑問に思わず、いや血を流さないから、何も失わないから、そして自らが付けた傷が見えないからこそ、それを楽しんだ。私は分からなくなった。何故ここまでできるのか、何故そうまでして傷つけあうのか、私の求める理解は幻想ではないのか、と」
語り続けるツクヨミに違和感が生じる。彼女を構成する体躯が徐々に綻び、軋み、崩れ始める兆候を映像がはっきりと捉えた。
神が英雄の蘇生にハバキリを使う。が、その力は余りにも強く、神の体躯でさえ耐えられず、悲鳴を上げる。だが、それでも止まらない。英雄の救済を己の役目と定義した神は決して止まら、傍に寄り添い、復活の為に尽くす。
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