G.o.D 神魔戦役篇

風見星治

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神魔戦役篇 エピローグ

181話 誰も 計画していない

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 黒点観測部門主幹室――

「ハァ……どうして私がこんな事してるんですかねぇ」

「しかも彼女の部屋に僕まで呼びつけて。当然、理由は話して頂けるのでしょうね?」

 部屋に3つの影が踊る。一人は部屋の主ニニギ、もう一人は特兵研室長ヤマヒコ。最後に――

「あぁ。で、まだかね?」

 スクナ。スサノヲの総代で第一部隊隊長。今は同時に艦内主要部門との交渉役を任される文字通り旗艦の要。その彼が時間を作ってまで2人を呼び出した。が、肝心の理由は語らず。

「私は観測が仕事で暗号プロテクト解除は仕事じゃないんですけどねぇ」

 画面を睨みながら何かを黙々とこなすニニギの言葉には棘が隠し切れていない。堪らず「スマン」と零すスクナだが、相変わらず理由は黙して語らず。

「他に頼れそうな人物がおらんのでな」

「アマテラスオオカミが残した指示、ねぇ。気にならないと言えば嘘になりますけど」

「そんな重要なモノなんですか、コレ?」

「あぁ。で、分かってるとは思うが」

「誰にも言いやしませんよ。ハイ」

 完了、とニニギがスクナを遮った。ディスプレイに幾つもの文章が浮かび上がる。神が残した指示。不正閲覧、改竄阻止を目的に幾重にも張り巡らされた暗号の奥に隠された指示は大仰かつ複雑な暗号に反し僅か数行の箇条書きと、非常に簡素だった。長大な指示と身構えていた三者は三様に肩透かしを食らう。が、旗艦の神はこの為だけに凄まじく複雑な暗号を組み上げ、信のおける者以外に見せないようスクナに言づけた。

「神の関与が疑われる。故意か寓意か不明だが細心の注意を払え。でなくば……我々は、滅びる!?」

 指示の一番最初に記されていた一文をニニギがなぞる。

「こん、な!?」

「そうか」

 ヤマヒコが動揺し、スクナがほぞを噛む。

「神って、じゃあこれって主星の……姫の仕業って事?」

 同じく動揺を隠せないニニギが背後のスクナを見やる。ギシ、と椅子が僅か軋んだ。連合において「神」と言えば、基本的に二柱の神を指す。旗艦の神、アマテラスオオカミ。主星の神、素性不明の「姫」と呼ばれる存在。

「分からん。ワシも当初は姫の関与を疑っていたが、明言を避けているのならば予測出来なかったか、さもなくばそれ以外の神か……あるいは比喩的な表現か。だが、何れにせよワシ等のする事は決まっておる」

「ですね。しかし、こう前途多難だと祈りたくなりますね」

 スクナの決意に賛同するヤマヒコが神経質そうな顔を更にしかめる。

「祈る前に行動しましょ。彼等の様に。口を閉ざして、誰かの思うがままに流されるのはもう御免ですし」

 ニニギも同調した。

「あれ、でも?」

 決意を語るニニギの口から間を置かず疑問が突いて出た。指示を一通り目でなぞった視線が違和感に気付く。

「そう言えば、ルミナに関する指示ないですよね?確か、何でしたっけアレ?」

「プロジェクト・イースター、でしたか」

「そうそう。あ、直接指示もらったんですかね?」

 プロジェクト・イースター。何もかもが不明の計画名にニニギがスクナを見上げた。神が一個人に対し発した勅令は、奇しくも神の代わりに生まれた新たな英雄ルミナと関連している。とすれば、今回の一連とも何か関係があるのでは、と考えるのは決して考え過ぎではない。

 指示を与えたのは、徐々に演算能力が削られているとはいえ未来視さえ可能とうたわれる性能を持つ旗艦の神。とすれば今回の件もある程度予測していたのでは、と考えるのは寧ろ自然な流れ。

「あ、あぁ」

 が、スクナの反応は酷く鈍い。顔にも、声にも隠し切れない困惑と疑問、その他色々な感情が浮かぶ。

「え?何かあったんです?」

「今更になって秘密なんてナシですよ?」

 余りの変化にニニギもヤマヒコも食い下がる。ややあって――

「その時のやり取りを見せた方が……早いかな」

 辛うじてそれだけを腹の底から絞り出したスクナは端末を操作、一枚のディスプレイを呼び出した。

 ※※※

「アマテラスオオカミに伺いたい」

「改まって、何かありましたか?」

 映像に神が映る。タケミカヅチ計画の予備パーツで組み上げ、ヒルメと偽ったアマテラスオオカミの赤い髪が映像の中央で僅かになびいた。どうやら何処かに向け徒歩で移動中らしく、映像が規則的に揺れ動く。

「はい。部下から一つ。ルミナに関し、貴方が勅令という形で高度医療機関サクヤに出したプロジェクト・イースターに関連するデータを受領したい、と。恐らく此度の件を想定しておられたと思うのですが、今後はお忙しくなるでしょうから以後は12部隊で引き継ぐと申しておりまして」

 映像の揺れがピタ、と収まった。スクナの問いかけに神が足を止める。揺れ動く赤い髪が重力に沿い、直線を描く。何事かを演算しているのか、映像は微動だにしない神の背をジッと映し続ける。

「あの」

 動きのない神に痺れを切らしたスクナの動揺交じりの声が映像から聞こえた。直後、神は振り返り、こう語った――




















「何です、ソレ?」
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