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第2章 日常の終わり 大乱の始まり
31話 発覚 其の2
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ディスプレイに浮かび上がったヤハタの顔に誰もが驚き、呆れた。が、同時に誰もが確信する。この男こそが山県令子の協力者。山県令子はヤハタの手引きを受け復讐を決意、今回の件を引き起こした。が、その裏には更にタナトスがいた。スサノヲ達の感情に侮蔑が混ざり始め、少しもしない内に驚きや呆れを完全に塗りつぶしてしまった。が……
『話が違うぞタナトス!!その子は巻き込まないと言う約束の筈だッ!!』
開口一番の言葉に全員が困惑した。何をどうしてか必死の形相でタナトスに食い下がるヤハタの言動が私達の予測と食い違っていた。しかも鬼気迫る形相で、だ。しかし、タナトスはヤハタの言動など意にも介さず。
「あぁ、その話ですか?でも貴方がそれを言えるのですか?私を出し抜こうなんて千年は早い」
『クソッ、初動が遅すぎると思えば道理でッ!!』
「腑抜けを量産するしか出来ない旗艦の人間にしては気骨があると評価してあげますが、所詮は只のお坊ちゃん。見積もりが甘いんですよ。そうそう、貴方に教えた重要な情報は全部出鱈目ですから、恥をかかない様に注意して下さいね。ではサヨウナラ」
分かり切っていたが、明らかにヤハタの分が悪い。両者の会話の端々から浮かび上がるのは、双方が共に利用し合っていた可能性。だが、結果的にヤハタは都合よく利用されるに終わった。
『待てッ!!レイコ君、君は、君はそれでいいのか?君が想う男性との詳しい関係は分からないが、だがしかし女性を戦場に送り込む事を望む男なんていない。且つて助けられ共に戦った仲間となれば尚の事だ。渡した鎮静剤……効いていないのか、それとも使っていないのか?』
会話は更に進み、やがて誰もが予想した事実が当人の口から暴露された。山県令子を匿っていたのはヤハタだったという情報は、ソレを聞いた全員に道理で見つからない訳だと納得させた。その根拠は複合企業S-INという巨大財閥の当主の影響力と財力であり、スサノヲとヤタガラスが躍起になって探す旗艦アマテラス最大の異物である地球人1人を匿う程度など雑作も無い程に強大だ。
「匿ってくれた事。それに食事と寝る場所を与えてくれた事には感謝してるから1つだけ教えてあげるわ」
どれだけ歪んでいたとしても、ヤハタが山県令子を救った事実に変わりはない。だが、ヤハタの言葉に反応した山県令子の目はとても冷めていた。恩人であるという認識など微塵もないのだろう。
『いやそんな事よりッ!!』
「アナタがそこの女に抱いてるのは愛情なんかじゃない」
『なっ、何を言い出すんだ?ソレに僕は……』
図星を突かれたのか、ヤハタは酷く動揺した。
「アナタは誰も愛していない。それは打算って言うの。アナタは自分を見て欲しいだけ、愛さないけど愛して欲しい、自分の所有物になって欲しいという一心で自分の価値感と行動の結果を押し付ける。相手がどう思うか全く考えないでね。そして優しくもない。アナタは嫌われるのが怖いから優しくしているだけ。アナタの中には自分しか居ない。我儘で独善的で自己中心的で相手の都合も事情も感情も一切考慮しない出来ない……心に自分一人だけの場所しか存在しない。アナタの心には他人を受け入れる場所が無くて、だから狭くて小さくて軽くて脆いアナタはいずれ他の誰かに目移りするわ。ねぇ、そんな軽薄な感情に一片の価値でもあると思う?そんなアナタが誰かから選ばれると思う?」
ヤハタという男を淡々と評価する山県令子の言葉を聞いた彼はそれ以上の言葉を掛けらず固まってしまった。図星か、あるいは少女からの評価に何か思うところがあったのか、いずれにせよヤハタはそれ以上を語れず、口惜しそうな表情のまま俯いてしまった。
「フフッ、残念だけどこの子の言う通り。アナタ、部屋に籠ってお人形とでも遊んでいた方が良いですよ?幾ら大人ぶってもそれがアナタの限界、ソレからルミナ」
タナトスに名前を呼ばれたルミナは反射的に銃口を向けた。が、相手はその程度では怯えもしないし怯みもしない。英雄に狙われながら命の危機に微塵も動じない、正に化け物。
「何だ?」
「貴女に客人が来ていますよ。もうすぐここに現れる頃合いでしょう。貴女の大切な人ですから、丁重にお迎えしてあげて下さいな。それでは……アクィラ=ザルヴァートル総帥。約束は果たしましたよ」
タナトスは相変わらず不敵に笑いながら、とんでもない台詞を口に出した。その名は連合内においてその知らない者など存在しないと断言できる程度の大物。連合の頂点たるアマテラスオオカミ、フタゴミカボシの姫に続く影響力を持つとまことしやかに囁かれる人物。連合最大の商家"ザルヴァートル"と呼ばれる一族と、一族が創設した財団の頂点に立つ現総帥の名前。有り得ない、そんな人物の名がどうしてタナトスの口から出てくるのだ。
「オイ、何て言ったッ!?」
「ちょっと待てッ!!その名前は!!どうしてあの女からその名前が出てくるんだ!?」
「馬鹿なッ!!連合最重要人物の一人だぞ!!何の連絡も無しに来る訳が無い!!」
「入管|(※入艦管理部門の略称)は何と言っている?ザルヴァートル財団総帥が来艦するとなればスサノヲかヤタに連絡が入る筈だ!!」
スサノヲ達も、ヤタガラスも、艦橋も、この事態を見守る全員が例外なく浮足立った。誰もがこの状況下で最悪を超える人物の来訪を予測できなかった。
『入管と連絡がついた。同姓同名の老女を確認したが、護衛すら付き添わず単独で来艦したとの報告があった。旗艦法|(※旗艦秩序維持法)に違反は見られず、また機工熾天使不帯同の事実から財団総帥とは認識出来なかったが故に素通ししたと予測される』
よって唯一冷静であったヒルメが代わりに入管に詳細を確認したのだが、結果は最悪の現実を変えるには至らなかった。アクィラ=ザルヴァートルという名の女性がザルヴァートル財団の総帥か否かの判別は出来なかった。遺伝子検査まで含めた詳細な本人確認は、犯歴がない、犯罪組織と結びつきが全くない完全クリーンな人間には行われないからだ。
本人かも知れないが、偽物の可能性も否定できない。タナトスから仕掛けられた二択に誰もが意識を割かざるを得なくなった。言わずもがな、本来ならば考えるまでもない問いかけだ。
財団総帥はその重要性から常に機工熾天使を護衛に付けており、更に清廉潔白で知られる総帥がタナトスと行動を共にするはずがなく、更に何らの祭事や会談も無いのにこんな場所に姿を現すようなレベルの人物ではないという揺るがない事実を誰もが知っているからだ。
だが、誰もが混乱する。状況の全てが偽物だと理解してるが、もし……万が一、本物であった場合という可能性が論理的な思考をかき乱す。
「ヒルメ……その財閥総帥は今どこだ?」
『今、調べた。もうそこまで来ている。それからルミナ……』
ただ1人、状況を必死で理解しようとするルミナはヒルメに総帥の現在地を尋ねるが、当の本人は何か別の思考に演算を割いているようで、言葉だけを聞けば平時の神らしい冷静な返答ではあるものの何か引っかかる様な物言いをしていた。その煮え切らない態度に違和感を抱くルミナだが……
「何だ?」
『いや……どうか平静でいてくれ』
「何を言っているんだ?」
ヒルメの煮え切らない態度にルミナは違和感を抱いたが、相変わらずヒルメは要領を得ない言動に終始する。一方、彼女以外の大多数はザルヴァートル財団総帥と同じ名を持つ老女が本物か偽物か否か、つまるところタナトスの言葉の真意を未だに測りかねていた。
しかし事態は膠着するスサノヲ達を嘲笑う様に進行する。やがて一台の自動運転車がルミナ達の居るビルの前に止まると、その中から1人の老女が姿を見せた。
誰もがその顔を見て驚き、目を丸くした。その人物こそ連合最大規模を誇るザルヴァートル財閥の総帥たるアクィラ=ザルヴァートルその人だった。タナトスの言葉通りの展開を前に半信半疑だったスサノヲ達は当然ながらそちらに意識を向ける、向けざるを得なくなった。
一番の問題はヒルメの言葉通りに護衛……財団がその財力と技術力の粋を集めて製造した"機工熾天使"と呼ばれる四機の式守の姿が見えないという事実。
スサノヲとヤタガラスは反射的にこう考える。もし機工熾天使不在のこの状態下で財団総帥の身に何かあれば、旗艦アマテラスとアマツミカボシの連合内における立場は最悪レベルに落ち込んでしまい二度と立ち上がれない、と。
故に彼らがタナトスよりもアクィラ=ザルヴァートル総帥に注力してしまったのも又仕方のない話。タナトスは優秀である彼らの思考に僅かな隙を作ると、その間に山県令子を引き連れハイドリの光の中に消えてしまった。
後に残ったのは大きな傷を残した居住区域とそこに住む人々、そしてタナトスの奸計に意識を奪われた結果、2人を逃がす羽目になり呆然と立ち竦むスサノヲとヤタガラスだった。
『話が違うぞタナトス!!その子は巻き込まないと言う約束の筈だッ!!』
開口一番の言葉に全員が困惑した。何をどうしてか必死の形相でタナトスに食い下がるヤハタの言動が私達の予測と食い違っていた。しかも鬼気迫る形相で、だ。しかし、タナトスはヤハタの言動など意にも介さず。
「あぁ、その話ですか?でも貴方がそれを言えるのですか?私を出し抜こうなんて千年は早い」
『クソッ、初動が遅すぎると思えば道理でッ!!』
「腑抜けを量産するしか出来ない旗艦の人間にしては気骨があると評価してあげますが、所詮は只のお坊ちゃん。見積もりが甘いんですよ。そうそう、貴方に教えた重要な情報は全部出鱈目ですから、恥をかかない様に注意して下さいね。ではサヨウナラ」
分かり切っていたが、明らかにヤハタの分が悪い。両者の会話の端々から浮かび上がるのは、双方が共に利用し合っていた可能性。だが、結果的にヤハタは都合よく利用されるに終わった。
『待てッ!!レイコ君、君は、君はそれでいいのか?君が想う男性との詳しい関係は分からないが、だがしかし女性を戦場に送り込む事を望む男なんていない。且つて助けられ共に戦った仲間となれば尚の事だ。渡した鎮静剤……効いていないのか、それとも使っていないのか?』
会話は更に進み、やがて誰もが予想した事実が当人の口から暴露された。山県令子を匿っていたのはヤハタだったという情報は、ソレを聞いた全員に道理で見つからない訳だと納得させた。その根拠は複合企業S-INという巨大財閥の当主の影響力と財力であり、スサノヲとヤタガラスが躍起になって探す旗艦アマテラス最大の異物である地球人1人を匿う程度など雑作も無い程に強大だ。
「匿ってくれた事。それに食事と寝る場所を与えてくれた事には感謝してるから1つだけ教えてあげるわ」
どれだけ歪んでいたとしても、ヤハタが山県令子を救った事実に変わりはない。だが、ヤハタの言葉に反応した山県令子の目はとても冷めていた。恩人であるという認識など微塵もないのだろう。
『いやそんな事よりッ!!』
「アナタがそこの女に抱いてるのは愛情なんかじゃない」
『なっ、何を言い出すんだ?ソレに僕は……』
図星を突かれたのか、ヤハタは酷く動揺した。
「アナタは誰も愛していない。それは打算って言うの。アナタは自分を見て欲しいだけ、愛さないけど愛して欲しい、自分の所有物になって欲しいという一心で自分の価値感と行動の結果を押し付ける。相手がどう思うか全く考えないでね。そして優しくもない。アナタは嫌われるのが怖いから優しくしているだけ。アナタの中には自分しか居ない。我儘で独善的で自己中心的で相手の都合も事情も感情も一切考慮しない出来ない……心に自分一人だけの場所しか存在しない。アナタの心には他人を受け入れる場所が無くて、だから狭くて小さくて軽くて脆いアナタはいずれ他の誰かに目移りするわ。ねぇ、そんな軽薄な感情に一片の価値でもあると思う?そんなアナタが誰かから選ばれると思う?」
ヤハタという男を淡々と評価する山県令子の言葉を聞いた彼はそれ以上の言葉を掛けらず固まってしまった。図星か、あるいは少女からの評価に何か思うところがあったのか、いずれにせよヤハタはそれ以上を語れず、口惜しそうな表情のまま俯いてしまった。
「フフッ、残念だけどこの子の言う通り。アナタ、部屋に籠ってお人形とでも遊んでいた方が良いですよ?幾ら大人ぶってもそれがアナタの限界、ソレからルミナ」
タナトスに名前を呼ばれたルミナは反射的に銃口を向けた。が、相手はその程度では怯えもしないし怯みもしない。英雄に狙われながら命の危機に微塵も動じない、正に化け物。
「何だ?」
「貴女に客人が来ていますよ。もうすぐここに現れる頃合いでしょう。貴女の大切な人ですから、丁重にお迎えしてあげて下さいな。それでは……アクィラ=ザルヴァートル総帥。約束は果たしましたよ」
タナトスは相変わらず不敵に笑いながら、とんでもない台詞を口に出した。その名は連合内においてその知らない者など存在しないと断言できる程度の大物。連合の頂点たるアマテラスオオカミ、フタゴミカボシの姫に続く影響力を持つとまことしやかに囁かれる人物。連合最大の商家"ザルヴァートル"と呼ばれる一族と、一族が創設した財団の頂点に立つ現総帥の名前。有り得ない、そんな人物の名がどうしてタナトスの口から出てくるのだ。
「オイ、何て言ったッ!?」
「ちょっと待てッ!!その名前は!!どうしてあの女からその名前が出てくるんだ!?」
「馬鹿なッ!!連合最重要人物の一人だぞ!!何の連絡も無しに来る訳が無い!!」
「入管|(※入艦管理部門の略称)は何と言っている?ザルヴァートル財団総帥が来艦するとなればスサノヲかヤタに連絡が入る筈だ!!」
スサノヲ達も、ヤタガラスも、艦橋も、この事態を見守る全員が例外なく浮足立った。誰もがこの状況下で最悪を超える人物の来訪を予測できなかった。
『入管と連絡がついた。同姓同名の老女を確認したが、護衛すら付き添わず単独で来艦したとの報告があった。旗艦法|(※旗艦秩序維持法)に違反は見られず、また機工熾天使不帯同の事実から財団総帥とは認識出来なかったが故に素通ししたと予測される』
よって唯一冷静であったヒルメが代わりに入管に詳細を確認したのだが、結果は最悪の現実を変えるには至らなかった。アクィラ=ザルヴァートルという名の女性がザルヴァートル財団の総帥か否かの判別は出来なかった。遺伝子検査まで含めた詳細な本人確認は、犯歴がない、犯罪組織と結びつきが全くない完全クリーンな人間には行われないからだ。
本人かも知れないが、偽物の可能性も否定できない。タナトスから仕掛けられた二択に誰もが意識を割かざるを得なくなった。言わずもがな、本来ならば考えるまでもない問いかけだ。
財団総帥はその重要性から常に機工熾天使を護衛に付けており、更に清廉潔白で知られる総帥がタナトスと行動を共にするはずがなく、更に何らの祭事や会談も無いのにこんな場所に姿を現すようなレベルの人物ではないという揺るがない事実を誰もが知っているからだ。
だが、誰もが混乱する。状況の全てが偽物だと理解してるが、もし……万が一、本物であった場合という可能性が論理的な思考をかき乱す。
「ヒルメ……その財閥総帥は今どこだ?」
『今、調べた。もうそこまで来ている。それからルミナ……』
ただ1人、状況を必死で理解しようとするルミナはヒルメに総帥の現在地を尋ねるが、当の本人は何か別の思考に演算を割いているようで、言葉だけを聞けば平時の神らしい冷静な返答ではあるものの何か引っかかる様な物言いをしていた。その煮え切らない態度に違和感を抱くルミナだが……
「何だ?」
『いや……どうか平静でいてくれ』
「何を言っているんだ?」
ヒルメの煮え切らない態度にルミナは違和感を抱いたが、相変わらずヒルメは要領を得ない言動に終始する。一方、彼女以外の大多数はザルヴァートル財団総帥と同じ名を持つ老女が本物か偽物か否か、つまるところタナトスの言葉の真意を未だに測りかねていた。
しかし事態は膠着するスサノヲ達を嘲笑う様に進行する。やがて一台の自動運転車がルミナ達の居るビルの前に止まると、その中から1人の老女が姿を見せた。
誰もがその顔を見て驚き、目を丸くした。その人物こそ連合最大規模を誇るザルヴァートル財閥の総帥たるアクィラ=ザルヴァートルその人だった。タナトスの言葉通りの展開を前に半信半疑だったスサノヲ達は当然ながらそちらに意識を向ける、向けざるを得なくなった。
一番の問題はヒルメの言葉通りに護衛……財団がその財力と技術力の粋を集めて製造した"機工熾天使"と呼ばれる四機の式守の姿が見えないという事実。
スサノヲとヤタガラスは反射的にこう考える。もし機工熾天使不在のこの状態下で財団総帥の身に何かあれば、旗艦アマテラスとアマツミカボシの連合内における立場は最悪レベルに落ち込んでしまい二度と立ち上がれない、と。
故に彼らがタナトスよりもアクィラ=ザルヴァートル総帥に注力してしまったのも又仕方のない話。タナトスは優秀である彼らの思考に僅かな隙を作ると、その間に山県令子を引き連れハイドリの光の中に消えてしまった。
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