とある村人A~Z

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砦都ヴォラキスにて

その2 冬と雪

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「ギォッ」
「ニンゲンッ」
「ニンゲンデタッ!」
「ギァッ」
「ニンゲンキタ?」
「ソトサムイ」
「デタクナイ」
「ハヤクデロ!」
「ギャッ!?」
「オスナオスナ」
「ドウゾドウゾ」
「ニンゲンタベル?」
「マルカジリ?」
「オヤツカンカク?」
「ヤメラレナイトマラナイ?」
「オンナイル」
「エルフ!」
「エルフダエルフ!」
「ミミナガイ!」
「ヤワラカイ!」
「イイニオイ!」
「アッタカイ!」
「キモチイイ!」
「ナカマフエル?」
「ナカマフヤス?」
「フエタラクウ?」
「オトコモイル」
「オトコカタイ」
「アシクサイ」
「デモウマイ」
「グラムニジュウゴエン」
「ハゴタエバツグン」
「ホネマデアイシテ?」
「ゴチソウ?」
「ゴチソウダ!」
「オモチカエル?」
「ゴチニナル?」
「キュウキョク?」
「シコウ?」
「ゴチソウ!」
「ゴチソウ!」
「ゴチソウ!」
「ゴチソウ!」
「メシアゲル?」
「メシアガル?」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」
「イタダキマス!」



冬小鬼ウィンターゴブリンですわ」
雪小鬼スノウゴブリンですか…… こりゃ珍しい」
ベルフェさんの言葉に半ば被せるようなタイミングでそう呟いた俺は、何故だかちょっとばかり怪訝そうな顔で小首を傾げている彼女と目が合った。
……あれ?



 横倒しにされて雪に埋もれた幌橇ホロゾリの中からぞろぞろと現れたのは、ベルフェさんと比べても頭一つ分以上も背の低い小柄な人型の影。

 白目の部分が殆ど無いギョロリとした真っ黒で大きな目に、尖った鷲鼻と耳。 額には一見すると瘤のようにも見える短い角が生えていて、大きく耳まで裂けた口からは垢で汚れた鋭い乱杭歯が覗いている。
毛の少ない灰緑色の肌は、まるで石や岩のようにがさがさざらざらしていて、潤いとは縁遠そうだ。
猫背気味で背は低く、一番大柄な奴でも俺の胸に届くか届かないか程度。
何故だか一様に妙に小奇麗な衣服で身を包み、その上から何の物だか判らない獣の毛皮を纏って口々に好き勝手なことを言ってくれてはいるが、つまるところこいつらはアレだ。 【小鬼ゴブリン】って奴だ。

ユキゴブ…… ですよね?」
フユゴブですわね」
ほぼ同時にそう呟いた俺たちは、再び視線を絡ませて小首を傾げるのだった。
おや? まさかとは思うんだけど、ベルフェさんはひょっとして……?
『珍しく割れてるわねぇ』
参考までに、女神様はドッチ派なんでしょうかね?
『どうでも良い派』
あ、はい。



 【小鬼ゴブリン】というのは、中央大陸の広範に棲息している人型の魔物で、性格は概ね粗暴で刹那的。 かなりの雑食で食欲旺盛。 そこいらの道端に生えている雑草から人や馬、果ては他の魔物まで、口に入るものであれば大概何でも食べる。
身長は七~八歳ぐらいの人族の子供と同じか少し高い程度と小さいが、見た目よりも力が強く、人と同じように武器や道具類を扱えるので、決して侮ることは出来ない。
それでも、単体であれば人族の成人男性と比べてまだ弱く、正面から一対一で戦えば余程の事が無い限り人族側が勝つだろう。
だが、この【小鬼】と言う魔物は、これまた人と同じように集団で暮らし、行動している。
きっちりとした陣形を組んだり、細やかな連携を取ったりとまではいかないまでも、剣やら弓やらと言った武器を手にした魔物が集団で襲ってくるというのは、それだけで十分な脅威に違いない。

 大抵は洞窟や森の中と言った人の目や手のあまり届かない場所に集落のようなものを作ってムレで暮らしていて、兎や鼠なんかの小さ目のケモノを中心とした狩猟を主体に生活しているらしいのだが、群の頭数アタマカズが増えて獣を狩るだけでは食糧を賄い切れなくなってくると人里の近くに出没するようになり、人や家畜を襲うようになる。
そう言った場合も、やはり基本的には集団で行動をするため、その対応には冒険者たちをはじめとしたそれなりの纏まった戦力が必要だ。

 そして、【小鬼】という魔物の特徴として誰もが思い浮かべるものの一つに、その非常識とも言える繁殖力が挙げられる。
凡そ人型で性交の出来る生物イキモノであれば殆どの種族と子を成すことが出来る上に、『片親がどんな種族であっても生まれてくるのは確実に【小鬼】』と言う、かなりとんでもない生殖能力を持っていて、特定の発情期やら繁殖期のようなものが存在しておらず、一年を通して繁殖力旺盛であるため、極端な話、食糧が続く限りどんどん増え続けるのだ。
個人的には今日コンニチまで大した被害に遭ったことが無いからいまいちピンと来…… いや、待てよ? もう随分前になるけど収穫寸前のカブ玉菜キャベツを根こそぎやられたような記憶が薄らぼんやりとあるような……
あれ? なんだか突然殺意が湧いてきたんだけど、どうしたものだろうか?
『まあ、ちょっと落ち着きなさいな』
むぅ…… 女神様に免じて、ここは抑えておきましょう。
命拾いしたな【雪小鬼】共めっ!
『はいはい……』

 まあ、俺の話は置いておくとしても、「【小鬼ゴブリン】一匹見かけたら近くに三十匹は居ると思え」なんて言う格言めいた言葉が何百年も前からあるくらいだから、昔から相当な被害があったんだろうなぁ、とは思う。
『もし本当の名前がゴキカブリンだったとしても、私は驚かない自信があるわ』
なんですか? その不吉な気配しか感じない名前は。 天界にはそんなのが居たりするんですか? まさか、こっちの世界には居ませんよね? ねえ、ちょっと女神様?

 また、【小鬼】と言えば四大氏族を始めとした他種族の雌を繁殖目的で攫ったりすることが屡あることから、【豚鬼オーク】と並ぶ女性の敵としても広く広く、それはもう広~く知られている。
『明日にでも滅んだら良いと思うわ』
め…… 女神様?
『可及的速やかに滅んだら良いと思うのよ』
そっ、そう…… ですね。

 しかし、この【小鬼】。 魔物ではあるのだが人の言葉がそこそこ通じるため、それなりに対話が可能で、場合によっては取引や交渉が出来ることもある。
極少数ではあるが人に紛れて商人や労働者として真っ当に暮らしている者もいることから、国や地域によっては魔物ではなく、いくらか人に近い存在、【亜人アジン】として人と大差の無い扱いをされることもある。
随分昔の話になるが、馬車で隣に座っていた行商人の爺さんと仲良くなって、道中で色々と話が弾んだ末の別れ際、「ワシぁ、これでも小鬼での~」なんて良い笑顔で打ち明けられて驚いたことがある。 随分小柄だとは思っていたけれど、皺くちゃの爺さん婆さんになってしまうと、人間も小鬼も案外見分けがつかないものだ。
それでも、そう言った【人の中で暮らす小鬼】は本当に極々一部の例外のようなものでしかないので、大半どころか十中八九は人類に対して敵対的な魔物と言って差し支えの無い存在と思っておいて問題は無い。
現に、俺たちの目の前で今もギャアギャアと喚いている連中は、どう控え目に見たところで友好的ではなさそうだ。

「雪ゴブの方が一般的だと思うんですが……」
「ガロさんともあろう者が何を仰いますの? 冬ゴブの方が語呂が良いですわ」
語呂…… だと?
ベルフェさんの言葉に若干納得のいかないものを感じながら、こちらを窺っている【小鬼】たちに目を遣ると、「さあ、これからご馳走の時間ですよ!」と言わんばかりに気合を入れて、こちらへ飛び掛かる準備をしているところだった。



 【小鬼ゴブリン】というのは、どうやら寒さに強い魔物ではないらしく、一般的には冬になると冬眠すると言われていて、実際、冬場に見かけることは滅多に無い。
しかし、どうやら中には目の前にいる連中の様な例外もいるようで、そう言った【小鬼】は特別に【雪小鬼スノウゴブリン】だとか【冬小鬼ウィンターゴブリン】だとか呼ばれている。
実のところ、【雪小鬼】も【冬小鬼】も、地域によって呼び方が違っていると言うだけで、どちらも冬場に出てくる【小鬼】を指す言葉であることに違いは無く、どちらも意味的には同じものだ。
ちょっとうろ覚えで自信は無いが、中央の方だと【雪小鬼】で、東に行くにつれて【冬小鬼】と呼ぶ割合が増えてくる…… だっただろうか?
雪だろうが冬だろうが、好きに呼べば良いのだろうが、俺は断然なので、実に残念なことながら、どうやらであるらしいベルフェさんには悪いような気はするものの、ここはちょっと譲れない。 なので、こいつらは【雪小鬼】だ。 【雪小鬼】以外の何者でもない。 という事にさせていただこう。
『一人で盛り上がっているところ悪いのだけれど、そろそろ突っ込んでくるんじゃないかしら?』
おっと…… 確かに今はこんなこと考えてる場合じゃありませんでしたね。
ベルフェさんの邪魔にならないようにしないと……

「……まあ、雪か冬かは置いておくとしまして、ここは手早く片付けてしまいましょう。 ガロさんは少し下がっていてくださいな」
「了解です」
ベルフェさんはそう言って腰に差していた双剣をすらりと抜き放つと、膝上まで雪に埋もれていると言うのに普段となんら遜色の無い足取りで、音も無くするりと間合いを詰めていった。
俺は勿論、そそくさと後ろに引っ込んだ。



   ◆ ◆ ◆ ◆



「【風撃ゲイルストライク】っ!」

 幌橇の影から弓を射かけようとしていた【雪小鬼】の首から上が、ベルフェさんの掌から放たれた魔術の一撃によって跡形も無く吹き飛んだ。
普段は双剣を使ってズバズバやっているのであまり目立った印象はないのだが、偶に使っている魔術の威力や精度から考えてみると、どうやらベルフェさんは魔術の扱いにおいても相当な腕前を持っているようだ。
本人が言うには「それなりに」とのことだったが、【小鬼】の頭と言えど、それを軽く消し飛ばしてしまうような魔術を半ば反射的に、即座に撃てるような魔術師は、世の中にそう多くはないように思える。

 そんな事を考えながら視線を戻してみると、首から上を失って矢を番えようとした格好のまま動かなくなった【雪小鬼】の体が軽い音を立てて前のめりに倒れた。 勢い良く流れ出た血液が、真白だった雪をどす黒く染め溶かしながらじわじわと広がっていく。
その光景にちょっとばかり思うところがあったものの、上下や左右に半分にされたり、三~四分割されたりしてすっかりと静かになった【雪小鬼】たちを端から順に目で追って数える。
細かく分割され過ぎていて解り辛いのがいくらか混ざってはいるが、一、二、三、四、五の六の…… え~っと、今ので多分タブン二十一匹目かな?

「ふう…… これで最後ですわね」
「おや、最後でしたか。 じゃあ全部で二十一匹ですね」
「【冬小鬼】と言っても中身は普通の【小鬼】と大差ありませんし、まあ、こんなものでしょう。 あとは…… 橇の積荷の確認を終えましたら、一先ず休憩に。 結局ここまで本来の目的である【純白百足ホワホワ】には出遭えていませんが、良い頃合ですし、お弁当にいたしましょう」

 季節柄低い位置ではあるものの、太陽は中天をいくらか過ぎたあたりで俺たちを照らしている。
たしかにそろそろ昼食時だ。 言われてみれば結構腹も空いているような気がする。

「そうですね。 じゃあ、俺はその辺に【雪小鬼】の屍骸まとめておきますんで、ベルフェさんは中の方を確認しちゃってください」
「では、【冬小鬼】の方はガロさんにお任せしますわ」
「はいはい。 【雪小鬼】は任せといてください」
「……」
「……」

『貴方たち…… 変なところで強情ね』
誰しも譲れない部分ってあると思うんですよ。 ええ。
女神様にもそういうものってあるんじゃないですか?
『無いとは言わないけれど…… そういうのは、せめてもう少し別な場面で見せて欲しい気がするわね』
ベルフェさんがここまで引かないとは思ってなかったので、正直なところちょっとばかり困ってたりもしますが、俺としてもここで引く訳には……
『いや、そこは貴方が折れておきなさいよ』
女神様は相変わらず難しい注文をなさる。



「しかし、【純白百足ホワイトホワイトセンチピード】…… でしたっけ。 未だに尻尾の先すら見当たりませんけど、ここからはどうするんです? まだ先に進むんですか?」
「【冬小鬼】を埋め終えたら、もう少し先まで進んでみましょう。 ここまで姿を見せませんでしたが、【純白百足】は気配の殺し方に長けていますので、決して気は抜かないようにしてください。 あれのアゴの攻撃力はワタクシでも十分に脅威となり得るものです。 油断していると横からガブっとやられて真っ二つにされかねない危険な相手ですわ」
「ベルフェさんでも、ですか…… それはちょっと怖いですね」
「え? ええ。 まあ…… そう、ですわ、ね。 ちょっと怖い、ですか。 ガロさんは、何と言いますか…… いえ、なんでもありませんわ」

 まだ何か言いた気にしていたベルフェさんだったが、葡萄酒ワインを飲み終えたマグを雪で濯いでから背嚢リュックの中に放り込むと、積み上げてある【雪小鬼】の方へと向かって行った。



 ベルフェさんはいつの間にか食事を終えてしまっていたが、俺の手には本日の昼食であるところの薄切り鶏肉と炒め玉葱のサンドが、まだ半分以上も残っている。
二人とも同じくらい喋りながら同じものを食べてた筈なんだけどなぁ……
『ベルフェちゃんは食べるの早いものね』
そうなんですよねぇ。

 可憐だとか綺麗だとか儚いだとか、そんな感じの言葉が当たり前のように浮かんでくる外見からは欠片も想像できなかったのだが、ベルフェさんは結構な早食いで、量に関してもかなりよく食べる。
今でこそ慣れてきたけれど、出会った頃━━グラの酒場での一件から暫くの間━━は、あの小さい口と細い身体の中に目の前の料理が凄い勢いで消えていく光景がいまいち信じられなくて、目を疑ったことが何度もあったぐらいだ。
食べ方は綺麗だし、とても幸せそうに食べるので、慣れさえすれば見ていて気持ちの良いものだったりもするのだが、そもそも目立つ容姿をしていることも相まって、街の食堂なんかだと、いつの間にか他のお客さんらの注目を集めていたりして居心地が悪くなることもあるから、少しばかり考え物かもしれない。
『早食いって、冒険者にとっては結構重要な技術スキルだったりするのよ? 職業柄、常にゆっくりできる環境で食事が出来るとは限らないでしょう?』
なるほど。 そう言えば昔、どこかでそんな話を聞いたことがあったような気もしますね。

「あっ! ちょっとベルフェさん? ちょっと待ってくださいよ。 俺もすぐ行きますからー!」

 ソースにちょっと拘った自信作なので、もう少しゆっくりと味わっていたかったところなのだが、一気に頬張って葡萄酒で強引に流し込む。
ベルフェさんと同じ要領でマグを濯いでから背嚢の横にぶら下げると、俺は彼女の背中を追うのだった。






「【小鬼ゴブリン】にしては小奇麗な格好をしていると思ったら…… これ、幌橇の中にあった商品の服ですわね」
「あー…… それは俺もちょっと気になってたんですが、そう言うことですか。 橇の中で一晩過ごしたような跡がありましたし、大方、獲物を探してうろついてた【雪小鬼】たちが昨夜の内にこの幌橇を見つけて、中で休んでたところに俺たちが出くわしたってとこですかねー」
「ええ。 恐らくそんなところでしょう。 あらあら…… 女物も男物もサイズも何もまるで出鱈目ですが、防寒具としては丁度良かったのでしょうね」

 山と積まれた【雪小鬼】の内、手ごろな位置にあった屍骸が着ている服を摘みながら顔を顰めているベルフェさんを横目に、俺は背嚢から取り出した円匙シャベルを組み立てて街道脇に穴を掘っていた。
流石に街道の真ん中に大穴を空けるわけには行かないので、まずは街道の両脇を固めている雪壁を大雑把に崩し、それなりの広さの空間を確保してからどんどん下へと掘り進めて行く。
街道はヴォラキスや近隣の村落の持ち回りで定期的な除雪が行われているから、今のところ膝丈程度の積雪で済んでいるが、その両側を囲んでいる高い雪壁は、俺やこの辺の住人たちが勝手に雪壁と呼んでいるだけで、その実、殆ど人の手が入っていない自然に降り積もるに任せただけの只の雪だ。 ただ、それが俺の身長を優に超える高さにまで積もっていると言うだけで……
それを取り除いた上で【小鬼】と言えど二十一匹分もの屍骸が納まるような穴を掘るとなると結構な手間になってしまうのだが、このまま野晒しにしておくわけにも行かないので仕方ない。
俺が今日こんな所までベルフェさんに付いてきたのは、討伐した魔物の素材の運搬と、その後片付けを担うためなのだから、これは歴とした俺の仕事の一つに当たる。

 冒険者組合ギルドに行けば、こういった運搬や後処理等を専門とした補助役サポーターだとか回収役ルーターだとか呼ばれている職業の人間を斡旋してもらったり、募集して雇ったりすることも出来るらしいのだが、訪れたばかりの都市で信頼のおける人材を探すのは手間がかかる上、仮令そういった人材が見つかったとしても毎回都合良く仕事を引き受けてもらえるとも限らない。
単独で依頼クエストをこなすことの多いベルフェさんにとって、その辺が毎回の悩みの種であったらしく、いつだったかの酒の席で、そんな愚痴を洩らしていたベルフェさんに「荷物持ちぐらいなら手伝いましょうか?」と提案してみたところ、二つ返事で了承されて今日コンニチに至っているのだった。
それ以降、ベルフェさんの方で人手が必要で、俺に空いている時間がある限りは、こうして同行させてもらっているのだが、ベルフェさんはきっちりと報酬を弾んでくれるので、実は俺の方でも財政的に結構助かっていたりする。
その分しっかりとした働きで返そうと思っているので、今もこうして頑張っているわけだ。
『お陰で冬の間も結構贅沢させてもらっているものね』
いや、ほんとにありがたいんですよね。
冬を越すだけの貯えは十分にしておいたつもりだったんですが、最近、ベルフェさんと一緒に食べに出ると、気付いたらちょっと怖い金額になってることが多々ありまして……
『なんて言うか、ちょっとしたマッチポンプな気がしないでもないのだけれど…… まあ、貴方が納得しているならそれで良いんじゃないかしら』
まあ、俺もベルフェさんも二人とも助かってるんだから良い事には違いないんじゃないかと。



 憎たらしいほどに積もっている雪を退けるべく一心不乱に掘り進んでいくと、やがて懐かしくも愛おしい土の色が目に入るようになってきた。
一昨日に夕食を食べた酒場の話や、近所で見かけた猫の話。 明日の天気や今晩の献立等々。 ベルフェさんとの他愛も無い会話で気を紛らわせながら、只管に円匙を振るっていく。

「とりあえずっ! 埋めるだけでっ! 良いんですよっ! ねっ!」
「一通り見てはみましたが、めぼしいものは持っていないようでしたし、左耳も全部切り取ってまとめてありますので、あとは埋めてしまえば問題ないかと。 やはり燃やしてしまうのが確実ではあるのですが、油も勿体無いですし、今の時期であれば埋めるだけでも大丈夫ですわ」
「了解っ! ですっ! じゃあどんどん掘っていきますんでっ!! もうちょっとっ! 掘れたらっ! 端から放り込んじゃぼあっ!?」
「ガロさんっ!?」

 漸く股下ぐらいの深さまで掘り進めることのできたの底に更に円匙を突き入れようと振りかぶったその瞬間、背にしていた雪壁を突き破り、やたらと硬くて重くて大きな何かが俺の背中に激突した。



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