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崩れゆく王都
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王城の大広間に響くのは、兵士や使者たちの怒号だった。
「殿下! 西の街道は完全に封鎖されました! 避難していた人々が……魔物の群れに呑まれて!」
「南部からも報告です! 三つの村が壊滅、住民の大半が消息不明に!」
「北の砦が……陥落しました……!」
次々と告げられる絶望の知らせに、レオンハルトのこめかみが脈打つ。
「なぜだ……なぜこれほどまでに、魔物の数が増えている……!」
聖女マリアが祈りを捧げているはずだ。だが、状況は好転するどころか悪化の一途を辿っている。
王都の民は怯え、城下町では暴徒が暴れ始めていた。パンを奪い合い、家を焼き討ちし、泣き叫ぶ声が夜を貫いている。
「……もう、俺には……」
重く沈む思考の中で、ふと浮かんだのはイザベルの笑顔だった。
柔らかく、静かに人を包み込むあの笑み。人々が寄り添うように彼女のそばへ集まった光景。
(あの時……なぜ、俺は……)
悔恨が胸を締めつける。だが、時間を巻き戻すことなどできない。
◆
その夜。王都の城壁の外に、異様な唸り声が響いた。
「魔物の群れが、集結しています!」
「数は……およそ五百! いや、千かもしれませぬ!」
見張り台からの報告に、レオンハルトは息を呑む。
暗闇の中、無数の赤い瞳がぎらつき、城下町を包囲するかのように蠢いていた。
「ば、ばかな……これほどの群れが、一体どこから……!」
「聖女マリアの祈りを強めるよう、申し伝えてください!」
家臣の言葉に、レオンハルトは無言で頷いた。だが心の奥では薄々気づいていた。
マリアには、真の聖女としての力など存在しないのだと。
◆
翌日。王城の中は混乱の極みに達していた。
「食糧庫が暴徒に襲われました!」
「地下水路に魔物が侵入、兵が全滅しました!」
「聖女マリア様が……倒れました!」
「……なに?」
思わず声が裏返る。
駆けつけた執務室の扉の向こう、ベッドに横たわるマリアの姿があった。顔は青ざめ、震える唇からか細い声が漏れる。
「お兄様……わたくしは……聖女では……ないのです……」
その一言で、世界が崩れ落ちる音がした。
「そんなはずはない! お前には神託があったはずだ!」
「いいえ……あれは……ただの……幻聴でした……わたくしは……イザベル姉様の……影を奪っただけ……」
マリアの目から涙が零れ落ちる。
レオンハルトの喉が凍りついた。信じたものがすべて、欺瞞にすぎなかったと知る絶望。
(俺は……国を……そしてイザベルを……)
後悔は怒涛のように押し寄せた。だが、その刹那――。
轟音が城を揺らした。窓の外を覗けば、城壁が崩れ、炎が立ち上る。魔物の群れが、ついに王都に雪崩れ込んだのだ。
◆
夜の王都は、地獄そのものと化していた。
民は泣き叫び、家屋が焼け落ち、街路には逃げ惑う人々が溢れる。子供を抱いて必死に走る母、倒れ伏す兵士、血を吸う魔物の姿。
「ぐわあああっ!」
「たすけ……いやだ、死にたくない!」
断末魔の叫びが四方から響く。
レオンハルトは剣を抜き、必死に魔物を斬り払った。だが、無限に湧き出すような数の前に、彼の力など無に等しい。
「殿下! お逃げください!」
「まだだ! まだ城は落ちていない!」
必死に抵抗を叫ぶ。しかし、胸の奥では分かっていた。
これは、終わりだと。
◆
王城の玉座の間。
燃え盛る炎の中、レオンハルトはひとり立ち尽くしていた。
剣は折れ、鎧は血と煤で汚れ、体は満身創痍。それでも、彼は最後の一歩を踏みしめる。
「神よ……どうか、この国を……」
祈りは虚しく、瓦礫が降り注ぐ。
最後に彼の脳裏に浮かんだのは、イザベルの姿だった。
(もし……お前がここにいたなら……)
言葉は続かない。
闇と炎に呑まれ、王都は崩壊した。
「殿下! 西の街道は完全に封鎖されました! 避難していた人々が……魔物の群れに呑まれて!」
「南部からも報告です! 三つの村が壊滅、住民の大半が消息不明に!」
「北の砦が……陥落しました……!」
次々と告げられる絶望の知らせに、レオンハルトのこめかみが脈打つ。
「なぜだ……なぜこれほどまでに、魔物の数が増えている……!」
聖女マリアが祈りを捧げているはずだ。だが、状況は好転するどころか悪化の一途を辿っている。
王都の民は怯え、城下町では暴徒が暴れ始めていた。パンを奪い合い、家を焼き討ちし、泣き叫ぶ声が夜を貫いている。
「……もう、俺には……」
重く沈む思考の中で、ふと浮かんだのはイザベルの笑顔だった。
柔らかく、静かに人を包み込むあの笑み。人々が寄り添うように彼女のそばへ集まった光景。
(あの時……なぜ、俺は……)
悔恨が胸を締めつける。だが、時間を巻き戻すことなどできない。
◆
その夜。王都の城壁の外に、異様な唸り声が響いた。
「魔物の群れが、集結しています!」
「数は……およそ五百! いや、千かもしれませぬ!」
見張り台からの報告に、レオンハルトは息を呑む。
暗闇の中、無数の赤い瞳がぎらつき、城下町を包囲するかのように蠢いていた。
「ば、ばかな……これほどの群れが、一体どこから……!」
「聖女マリアの祈りを強めるよう、申し伝えてください!」
家臣の言葉に、レオンハルトは無言で頷いた。だが心の奥では薄々気づいていた。
マリアには、真の聖女としての力など存在しないのだと。
◆
翌日。王城の中は混乱の極みに達していた。
「食糧庫が暴徒に襲われました!」
「地下水路に魔物が侵入、兵が全滅しました!」
「聖女マリア様が……倒れました!」
「……なに?」
思わず声が裏返る。
駆けつけた執務室の扉の向こう、ベッドに横たわるマリアの姿があった。顔は青ざめ、震える唇からか細い声が漏れる。
「お兄様……わたくしは……聖女では……ないのです……」
その一言で、世界が崩れ落ちる音がした。
「そんなはずはない! お前には神託があったはずだ!」
「いいえ……あれは……ただの……幻聴でした……わたくしは……イザベル姉様の……影を奪っただけ……」
マリアの目から涙が零れ落ちる。
レオンハルトの喉が凍りついた。信じたものがすべて、欺瞞にすぎなかったと知る絶望。
(俺は……国を……そしてイザベルを……)
後悔は怒涛のように押し寄せた。だが、その刹那――。
轟音が城を揺らした。窓の外を覗けば、城壁が崩れ、炎が立ち上る。魔物の群れが、ついに王都に雪崩れ込んだのだ。
◆
夜の王都は、地獄そのものと化していた。
民は泣き叫び、家屋が焼け落ち、街路には逃げ惑う人々が溢れる。子供を抱いて必死に走る母、倒れ伏す兵士、血を吸う魔物の姿。
「ぐわあああっ!」
「たすけ……いやだ、死にたくない!」
断末魔の叫びが四方から響く。
レオンハルトは剣を抜き、必死に魔物を斬り払った。だが、無限に湧き出すような数の前に、彼の力など無に等しい。
「殿下! お逃げください!」
「まだだ! まだ城は落ちていない!」
必死に抵抗を叫ぶ。しかし、胸の奥では分かっていた。
これは、終わりだと。
◆
王城の玉座の間。
燃え盛る炎の中、レオンハルトはひとり立ち尽くしていた。
剣は折れ、鎧は血と煤で汚れ、体は満身創痍。それでも、彼は最後の一歩を踏みしめる。
「神よ……どうか、この国を……」
祈りは虚しく、瓦礫が降り注ぐ。
最後に彼の脳裏に浮かんだのは、イザベルの姿だった。
(もし……お前がここにいたなら……)
言葉は続かない。
闇と炎に呑まれ、王都は崩壊した。
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