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14 理想の王族。新たに生まれた想い
しおりを挟むなにかお礼を!わしらにできることなら、なんでもします!という村人たちに丁寧に断りを入れ、また馬車に乗り、城へと帰路に着いた。
城下へ降りる時と同じようにレオは馬車にのっている間黙ったままだった。百合香もまた、先程の出来事で胸がいっぱいで……言葉で言い表せないその感情に胸を馳せていた。
行きとは違いあっという間に城へと馬車が着いた。レオにエスコートされ、同じ部屋へと案内され、ソファーへと座るとようやく息を吐き身体の力が抜けた。同時にいつ準備されたのか……侍女によって温かい紅茶が用意されていた。
レオは部屋に入ってからもずっと扉の近くで立ったままで何かを考えているようだった。
『レオさま。せっかくですから一緒に頂きませんか?温かい紅茶は疲れがとれますよ』ニコッ
そう百合香が声をかけると、ようやく百合香へ視線が向けられた。レオはゆったりとした足取りで百合香の方へと近づき向かいのソファーへと腰かけた。
すぐに侍女が紅茶をレオの前へと置いた。
またしてもいつ準備したのか分からないほどすぐにだされた紅茶に、百合香は侍女を見つめ尊敬の念を送っていた。
すぐにその視線に気付いた侍女は百合香へと優しい笑みを返す。そんなやり取りをしていると……帰路中からずっと無言だったレオが、ようやく口を開いた。
レオ「わたしはずっと、自分が許せなかったのです。第二皇子である私が皇太子として選ばれた時。王族として、騎士として、この国を、民を守ろうと誓いました。けれどわたしは無力で……結局誰も救えなかった。多くの者たちが命をおとしていくのを見続けることしか出来なかった。
……聖女さまが現れたとき、やっと救われると思ったのです。……私の心が。民たちが……ではなく、役立たずの皇太子という重責から逃れられるのではと一番に思ったのです。……最低でしょう?
聖女さまが村を救ってくださったあの光を浴びたとき、ずっと心の片隅にあった靄がパッと無くなったのがわかりました。その時に気付いたのです。私は王族に相応しくないと……。国と民を守るだなんて、大口を叩いておいて、一番大事なのは自分ではないかと。
……けれど、聖女さまが言ってくださった言葉。私は嬉しかったのです。民のために頭をさげられる人がこの国を想っていないはずがないのだと。胸を張り、顔をあげ、人々の支えであれと。私が理想とする王族そのものの姿でした……。
民を思い、国を想う。一番大切なことをあなたは思い出させてくれた……。
ありがとうございました。聖女さま。ようやくわたしも心が決まりました。
わたしは民の光でありたい。女神さまという光だけではなく、いくつもの光が必要だった。私がその一つになってみせましょう。」
『はい。ニコッ
レオさまはきっと民の光になれます。そして私も、物語の中の女神さまではなく、御堂 百合香として皆の光になれるよう頑張ります。
レオさま、あなたが今まで民へしてきた支援はとても立派なことでした。それしか出来なかったのではありません。その一つ一つが民にとって光だったのです。決して、今までの努力を無駄なんて思わないでください。
その優しさも、強さも、あなたは誰よりも王族であろうとした。レオさまこそが理想の王族そのものの方だと私は思います。』
レオ「……………ありがとうございます聖女さま。」
瞳を揺らしながら、レオは今までで一番の優しい微笑みで百合香をみつめていた。その瞳には今までにない暖かい光が宿っていた。
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