ひとまず一回ヤりましょう、公爵様 11

木野 キノ子

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第一章 演武

3 注目の試合の行方は?

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打ち合いは…かなり続いた。
ハートの武器は…小太刀の長さの剣と…ナイフが数本…。
そして隠し武器…暗器の類がそれなりに…。

演武はその時々によって違うが、今回は…制服でやることになった。
鎧等は一切身に付けない。

これも…作戦の一つ。

私は…瞬きもほとんどせず、試合に食い入る。
この試合だけは…そうしないといけない気が、していたから…。

試合は…ドロテアの猛攻が続く。
ハートは抑えるだけで精一杯…に、見えただろうなぁ、大多数には。

その頃…控室のテラスでは、フィリー軍団が一つのテラスに集まっていた。

「…あいつ、相変わらず上手いよなぁ…」

クローバが感心半分、ため息半分…と言うような、なぜか複雑な表情だ。

「まあなぁ…。この手の事をやらせたら、本当にな…」

スペードもちょっと苦笑いをしているよう…。

「まあ…演出的なことをさせたら、あいつが一番うまい…任せておけばいいのさ」

ダイヤも…ハートが本当は余裕だと言う事を、見抜いている。
ジョーカーは…にこやかなまま、何も語らず、ジェードも表情が柔らかいまま。

観客の興奮は、まさに絶頂だろう。
物が飛ぶ飛ぶ、喉が枯れんばかりに叫ぶ叫ぶ。

猛攻が続く中、ドロテアの剣は…ハートの制服の胸の部分を…かなりしっかり破った。
その衝撃で…ハートの胸のあたりの布は一気にはだけ、胸丸出しの状態に。

……出だしは上々。

「やったぁ、ドロテアの勝ちよ~」

ガルドベンダ公爵家のブースで、一人ガッツポーズをする、メイリン。

「まだ試合は、終わってねぇぞ」

相変わらずの苛ついた声だ。
ティタノ陛下の終わり…の合図が出るまで、試合は続く。

「何言ってんの?胸が見えたまま戦うなんて…」

普通のご令嬢の考えは、そうだろうが…。

観衆の歓声は鳴りやまない。
試合は…続くからね。

ハートは…胸がはだけた瞬間、体制を立て直し…猛攻を始める。

ドロテアは…剣だけでなく、他の武器にも対応できる応用力がある。
それによって…一躍実力を伸ばしたといっていい。
事実…男の騎士であっても、ドロテアに勝つのは容易ではない。
本人の…たゆまぬ努力の賜物だろう。

ウチの護衛騎士達も…スゴイってみんな、褒めていた。

攻撃のたび、ハートのあらわになった胸が揺れ、観衆の中にいた…男たちが騒ぎだす。
ハートは全く意に介さず、猛攻を続けやがて…。

ハートの武器の切っ先が…ドロテアの胸の布を捕えた。
そのまま回転の力を一気に加え、ドロテアの胸の布が、下三分の一だけ破れる。

さすがにね…。
ドロテアが覚悟したとはいえ、丸出しにはできんよ。
それに…元娼婦から言わせてもらえれば、ちょっとだけ見えてるのが…好きな野郎もいるんよ。
ハートが丸出しである以上、ドロテアはきわどい方が、より観客の情欲を煽る。

当然ハートの猛攻が止むはずもなく、2人して胸出しで戦っている。
ティタノ陛下は…当然止めない。
外野がどうであれ、これは…作戦行動だからね。

観衆の男たちが…誰が号令するともなく、口々に言い始める。

「ひゅーっっ、どっちも胸あるじゃーん、ラッキー」

「すっげぇ、揺れてる!!今日来て良かったぁ~」

「乳丸出し女の戦~い、いいじゃん、いいじゃ~ん」

「おっちち、おっちち!!」

……私は観客の様子を見つつ、娼婦特有の勘を働かせる。
すこーし、ワザとらしいのが…いる。
やっぱり…モントリアは仕込んだみたいだな。
できるだけ…下卑たヤジを飛ばせる人員を…。
イシュロとラディルスに…脇の依頼をしておいてよかった…。
これで…尻尾の元を掴めるかもしれない…。

私は改めてハートとドロテアを見る。

ハートは…本当に楽しそうだ…。
さすがに得意…と言うだけあって、下卑た男たちが何を好むか…よくわかっているよう。
サービス精神旺盛だな…。
ますます、前世の私のようだ…。

対してドロテアは…やっぱり完全に、恥辱にまみれてる…。
それでもハートの攻撃に相対しているのは…見事というところだけれどね…。

外野のやじが…とどまらない。

攻撃を繰り出すたび、それを受けるたび、揺れる乳と飛び出す、男のやじ…。
なんかもう…戦闘ストリップ劇場ってとこか…。

しかし…聞き耳を立てていると、

「さすが!!オルフィリア公爵夫人の護衛!!
主人と同じように、衆人環視の真っ裸が平気なんだなぁ~」

「主人もやればいいのにぃ~」

「そうだそうだ、民衆の味方なんだから、サービスしろ!!」

……あら、敵の仕込みだろう皆さま。
素敵なヤジでございますこと。
そんなテメェらに、私がいう事は1つ!!やって欲しけりゃ、金払いな!!
仮にもファルメニウス公爵夫人様なんだから、高いぞ?ん?ほれ。

私がそんな事を思っていたら、

「外野は少し、黙らせるか?」

ティタノ陛下が気を使ってくれたから、

「ありがとうございます。ティタノ陛下…。
しかし…仮にもギリアムの妻で、アナタ様がお気に召された女でございます。
あのようなヤジ…意に介するとお思いですか?
ああいったモノには…強いですよ、わたくし…」

男の下卑たやじなんざ…浴びてなんぼの世界で生きてきた女だからなぁ、私は。
私の笑顔が…真実だとわかったのか、一瞬だけ…ふっと笑った。

お…ハートが仕掛けたっぽい。
攻撃をかわしたフリして…ドロテアの武器に自分のズボンの飾りを引っかけた…。

勢いよく振られたドロテアの武器に引っ張られ、ハートの太ももから上のズボンが…
びりびりに裂ける。

…よくやるよ、全く。
後でほめてあげよ。

ハートは…モントリアがドロテアの服にした細工と同じものを、自らの服にした。
簡単な力で…直ぐに破けるように…ね。

そして露になる、ハートの尻…下着は…なんとTバックだ…。
本当に…よくわかってるなぁ…。
完全素っ裸より、見えそうで見えない方が、男の欲情を誘う…って。

「うっぉぉおーっ、尻もいいぞ、あの姉ちゃん!!」

「いいぜ、最高~!!」

いいヤジありがとう、スケベな男どもよ。
ハートは…水を得た魚のように、攻撃をさらに激化する。
本当に…私とそっくり。

ハートの戦い方も、基本は他の皆と同じ。
戦っている間に、相手の弱い所を探り、そこを縦横無尽に突く…いわゆる基本というものが
無い戦法と攻撃…。
だから…基本の中だけで、やって来た人間では、絶対に限界が来る。
戦争慣れ、ゲリラ戦慣れをしたような人間でないと…なかなか対処は難しい。

ああ、言い忘れたけど…。
この演武については、ティタノ陛下の御前だし、本気でやるよう、ドロテアには言ってある。
その上で…ショー的要素を入れるから…ってね。

ハートは…猛攻を続け、ドロテアの服を…少しずつ剥いでいく。
もちろん…18禁指定にはならないように…ね。

でも…野郎どもの期待値を上げるには、十分だ。
おそらく…モントリアもほくそ笑んでいるだろう…。

すげぇぞ、ハート!!
間違いなく、今日の一番はアンタだ!!

「すっげぇぇぇっ!!女騎士二人のストリップだぁ~。
乳も尻もいいじゃ~ん」

「両方スタイル抜群って!!いいねいいね、もっとやれ~、脱げ~」

あ~ら、下卑た男性の皆さま。
とってもいい感じでございます事…ほほほ。

ハートは…まだまだ余裕だね。
そりゃぁ、そうか。
トランペストの生活状況を見れば…、体力と持久力が無きゃ、やってこれなかっただろう。

だから…ハートは演出に余計力を入れる。

揺れる乳と、躍動するヒップラインに、男たちのヤジは最高潮…。
もう、普通の令嬢じゃ、聞いていられないだろうなぁ…。
私にとっちゃ、最高の心地いい音楽だけどぉ。

そんな時だった…。

「ティタノ陛下…」

聞きなれた声…。
誰かと思えば、ローエンじい様か…。
まあ、この人もこういう場が好きとは思えない。

「もう、演武をお止め下さい…」

「なぜじゃ?」

ちょっとローエンじい様が、驚いたっぽい。

「いえ…厳正な公開演武でこのような…」

「それはまず、ケルカロス国王に言うべきじゃろ?」

「それが…トイレから出ていらっしゃらなくて…」

実はですね。
作戦の一つとして…この最後の演武、国王陛下はギリアムと共に、トイレに籠城中。
この最後の演武の間中、出てこなければ…何か優遇してもらえるらしいから、国王陛下も必死。
ギリアムはそれに協力する形のため、籠城を崩すのは困難。
ティタノ陛下以外に…一応強制停止がかけられる人だし、ローエンじい様に強く出れないから、
ご退場願った。

「じゃ、出てくるまで待て」

まあ、そういう対応になるよね。

「いや、しかし…」

「わしに命令できる立場か?貴様は」

そう言われちゃうと…下がるしかないよね…。
人が死にそう…ってんじゃないし。

「オルフィリア公爵夫人…」

今度は私か…。

「このような催しは、いかがなものかと思うのですが…」

まあ、じい様は風紀の乱れについて、許す人じゃないからなぁ。
でも…私も引かんよ。

「なぜ…このような催しが良くないのでしょうか?」

「は?」

じい様が呆けた…珍しいなぁ。

「そもそも…演武と言いますが、完全に実戦の場と考えよ…と、国王陛下からお達しがあった
ハズです。
ローエン卿は、実戦の場で服を剥がされたら、要人警護をすっぽかせとおっしゃるのですね?」

「と、とんでもない!!」

「でしたら…服を剥がされた程度で、うだうだ言うべきではないのでは?」

私はかなり真面目な顔して言ったよ。
だって…本当にそう思うもん。
この演武の目的は…モントリアを有頂天にすることも勿論だが、そもそも…ギリアムが提起した
女性騎士の問題…もっと真剣に考えて欲しいからだ。
実例が生じないと…もっと言えば、実害が生じないと、人は本気で考えない。討論もしない。
そんな生き物だと、私は思っているからさ…。

「しかし…二人は女性です」

「それが何だというのです?
2人は自らの意志で…、要人警護をかって出ているのですよ?
それとも…奴隷のように有無を言わさず、要人警護に付けられたのでしょうか…?
後で聞いていただければわかると思いますが、私の私兵は自ら進んで私の警護をやっています。
ですから問題ありません。
まあ、流星騎士団がどうかは知りませんので、あとで聞いてみてください」

私のああ言えばこう言うは、病的に上手いで。

じい様…次の言葉が出ないねぇ…。
いい機会だから、追い打ちをかけておくか…。
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