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第一章 演武
4 そもそもの起点は…
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「そもそもこのことは…随分と前に、我が夫ギリアムが、問題提起したことです。
そのような状態になったら…どうするのか?と。
そしてそれはだいぶ前の事です。
ご存じでしょう?
それなのに対策もせず、手をこまねいていたならば…要人警護というものを、舐めているか
いい加減に考えているとしか、思えません」
「フィリアム商会では…男女差別をなるべくせずに、職業選択の自由を与える事をモットーに
しております。
ゆえに女性騎士を採用し…醜聞についての対応も、しっかりとしております。
そこまでやってこそ、男女同権を歌えると思っておりますゆえ。
昨今、そんなギリアムや私に…随分と無礼な突っかかり方をしてらっしゃる方がいらして…、
いい機会なので、これでどうなるか…見るのも一興と思い、あえて止めずにおります」
じい様…ぐうの音も出ないようだ。
ティタノ陛下は…平常心そのもの。
この計画を話し、昨今の流星騎士団の態度を話したら…そっちの方が、めっちゃ怒ってたもん。
ヤジの大合唱に私の事が混じっているが…構わん構わん。
イシュロとラディルスが…報告するいいネタを作ってやっているだけさぁ~。
ん?何やらこちらに走ってくる影が…。
「さっさと止めなさいよっ!!アンタたちぃ――――――――――――っ!!」
…メイリンよ…気でも狂ったか?
「女性を裸で戦わせて楽しむなんて、最低よ――――――っ!!」
ティタノ陛下の御前じゃぞ。
「……ローエン、あの失礼極まりないバカはなんじゃ?」
「すぐに捕らえますので、ご容赦を!!」
だよねぇ…。
許可されてないのに、ティタノ陛下の御前に出た挙句、あの言葉使い…。
言っていることが正しくても、言葉使いがアウトだ。
…メイリンって、社交界教育受けたんだよね?
計算してやるならまだしも…あれ、自分に正当性があるから、こっちが従って当然って
態度だぞ?悪手もいい所だ。
あ、メイリンに槍が向けられた。
なんかほざいているが…、あ、ツァリオ閣下が飛んできてぶん殴った…。
あら、しかもぐーだわ。
そして…やっぱり飛んで来た、アルフレッドと一緒にドナドナしてった…。
アルフレッドも殴られて、怒鳴られてる…。
ちゃんと見とけって事だろうなぁ…。ホントになぁ…。
めでたくご退場~。
さてさて…勝負は…まだつかな~い。
ドロテア…かなり参ってるなぁ…。
スタミナがどうとかより、精神的に…そんな顔だ。
「おっちち、おちち、女性騎士のおちちは、最高だ~。
おっちちぽろぽろ、おっ尻ぷりぷり、揺らして戦う、乙女~最高!!」
変な替え歌…即興で作るの上手い奴、どこにでもいるなぁ…。
しかも周りもつられて歌い出したから…結構な大合唱になって来たなぁ…。
ハートは…と言えば、攻撃をしつつ、体をくねらせ、ヤジを飛ばす男どもに、最大限の
サービスをする。
スッゴイね。
私にゃできない、サービスの仕方…最高じゃん!!
……ただ、ドロテアの方は持たないだろうから、そろそろ終いにせにゃーな。
イシュロとラディルスも…全体的な調査は、終えたろうし。
私が思ったのと、その声が響いたのは、ほぼ同時だった。
「国王陛下の御命令である――――――――――――――――っ!!
試合終了ぅ―――――――――――――――――――――――――っ!!」
……ケルカロス陛下は籠城中のハズだから…レファイラだな。
国王陛下不在の場合は…王后が、国王の代理で命令できるからな…。
ティタノ陛下が審判だから…動かないと思っていたが、動きやがったか…ちっ!!
「ふん…。クッチェンバラスのバカ娘か…。どうする、オルフィリア公爵夫人…」
「……ちょうど、そろそろ調査が終わったと思われます」
「そうか…なら、異議は唱えずにおくかの…」
…試合終了か。
何だか…最後はあっけなかったな。
私はこの時点で貴族席をぐるっと見渡すと…一応退席はなし…か。
まあ、ティタノ陛下がいちゃあ、そうなるよね…。
これなら…仕込みがより、生きてきそうだなぁ…。
私は心の中で…ニンマリした。
そんなこんなで、下卑たヤジと共に、公開演武は幕を下ろした…。
テラスで見ていたフィリー軍団は…。
「予定通りとはいえ、アイツ本当に上手いよなぁ~」
感心しながら中に戻ると、ちょーど戻ってきたハートが、
「見た見た?みんな~。アタシの戦いぶり、凄かったっしょ!!」
「あー、凄かった」
「何よ!!その棒読み!!もっと褒めないさい!!」
「すごいスゴイ」
やっぱり棒読みだ。
ハートのこれは…トランペストにとって、日常茶飯事なのだろう。
「あのさ…ご歓談中悪いんだけど…」
話しかけてきたのは、ローカスだった。
「さっさと服着てくれや」
目のやり場に本当に…困る格好だと言いたいのだろう。
「え~、サービス精神旺盛なんだから、素直に楽しめば…いたっ!!」
ジョーカーに小突かれ、服を着に行くハートだった。
「な、なんて言うか…その…スゴイですね…えっと…いろいろ…」
戦い慣れしている中でも、特に様々な経験を積んだ歴戦の猛者たちでも…信じられない
光景を目撃すると、きょどるようだ。
「あ~、アイツはただ一人、女性として奥様の護衛に課されたテストを、クリアーしてますから」
かなりシレっと答えたのは、スペードだ。
「ど、どんなテストだよ?」
ローカスが…ちょっとこわごわと聞いてきた。
「ん?男の前であったとしても、全裸で普通に戦闘!!」
これは…近衛騎士団所属の皆様の、顎が外れた。
「い、いい、いや、そりゃマズいだろ…」
誰ともなく、声が上がったのだが、
「要人警護が任務の人たちが、なに甘ったるい事、言っているわけ?」
着替えてきたハートが、戦線復帰。
「奥様は…特にお忍びで動くことが、多い方なのよ!!
普通に大層な護衛を付けられないし、特に…お風呂なんかは、アタシも一緒に入る事あるの。
そんな時に敵が襲ってきたら、服着ている暇なんて、ないでしょ!!
馬鹿じゃない」
ぷんすか怒っている。
「まあ、こいつの試験の場がまさに、奥様と一緒に入ってる風呂場だったからなぁ」
「でも…あの時のお前には、さすがのご当主様も引いてたぞ、多分…」
「え~、褒めてくださったわよぉ」
普通の茶飲み話のノリで話しているが、
「えっと…どんな感じだったの?」
やっぱり怖いが、聞きたいらしい。
「まず…襲撃犯として、風呂に3人ばかり侵入させたんだよ。
奥様は予めわかってらしたから、下着付けてたんだけどね。
その3人を…まず風呂場の仕切り棒で叩き出して…そしたらそいつら、往来の真ん中に逃げ
込んだんですよ。
まあ、これもご当主様の指示だったんですけど。
そこに…コイツは素っ裸のまま追いかけて行って、往来の真ん中でお縄にして…」
スペードは配慮したのか、そこで止まったんだが…。
「その後、縛り上げて、玉と竿を切り落とそうとしたところで…ご当主様のストップが入った
のよね」
あっさり答えるハート。
「お前さ…さすがに、縛り上げた時点で、服着ろよ」
クローバ…呆れてる。
「え~、だって!!アタシならまだしも、奥様の風呂を覗こうなんて、不届きもの!!
切り落としちゃった方がいいじゃん。後々のためにさ~」
「後々ってなんだよ」
「あ、男はあそこを切っちゃえば…精力減退して、大抵の事にやる気失くすから」
てへぺろ…の、ノリで話すハートに対し…。
恐怖の眼差しを向ける近衛騎士団の猛者たち…。
心なしか…後ずさってるし。
そしてファルメニウス公爵家に帰ってくると…。
「ご協力感謝いたします、ティタノ陛下…」
私は改めて頭を下げる。
「構わん!!わしを侮辱した連中を、追い詰める事にも繋がっとるし…。
第一、ギリアム公爵が忙しい中、心を砕いたのに、それを仇で返すとは何事じゃ!!
わしだったら、全員の首をとっくに切っとるわ!!」
「まあ…難しい所ですよ。
あまり推奨しすぎると、風紀の乱れに繋がりますし」
ギリアムの…重い声。
「そうですね…。
今の所は、現在の方法を維持しつつ、私の護衛に限ってのみ、今の条件でよろしいかと…」
どんなに法を強化しても、必ず網をかいくぐるやつはいる。
だからって…手をこまねいているのも、また良くないしね。
今回の問題提起の波紋が…どんな結果を生むか…注目するしかない。
私の投げかけた、超どでかい爆弾が…果たしてどうなるか…。
明日のファルメニウス公爵家主催のパーティー…出来れば最初から最後まで、いたかったんだけどね。
でも仕方ない。
アンナマリーを助けに行かねば…。
秘密裏に動いてくれる人員は確保できたから、ひとまず…成り行きを見守るしかない。
そして私は…できるだけ早く、帰ってくるしかない。
そうそう、大事な事を忘れるところだった。
私は…ファルメニウス公爵家に帰って来たドロテアの元に…。
「ご苦労様…。よく頑張ったわよ」
「はい…。でも…」
すごく…悲しそうな顔をしつつ、
「ギリアム公爵閣下が提起した問題は…。本当に真剣に…考えねばいけなかったのですね…」
下を向いた。
言葉で言い聞かせられて、覚悟するのと…実際に当事者になるのは、訳が違う。
だから…ギリアムは言ったんだ。なのに…なんで真剣に考えなかったんだ、ダリアよぉ…。
私は…ダイヤの事とは別に、ちょっと…女性として、団長として…どうなのよと思い、
拳に…思わず力が入った…。
その時…。
「オルフィリア様、ギリアム様がお呼びです」
ビロッディが呼びに来たので、私は席を外す。
「ドロテア卿…修練場に行かないか?」
「え…?」
慰めるでも、励ますでもなく、ビロッディのかけた言葉はそれだった。
「ドルグスト卿がよく言っていただろう?
試合が終わった時…できるだけ早く、反省会をやるべきだ…って。
それが強くなる近道だから…って。
もちろん、体が辛くなければ…だがな」
微笑みつつ、手を差し伸べる。
ドロテアは少し…下を向いて考えたが、
「……付き合ってもらえますか?」
「もちろん」
ビロッディの手を取り…立ちあがるのだった。
そのような状態になったら…どうするのか?と。
そしてそれはだいぶ前の事です。
ご存じでしょう?
それなのに対策もせず、手をこまねいていたならば…要人警護というものを、舐めているか
いい加減に考えているとしか、思えません」
「フィリアム商会では…男女差別をなるべくせずに、職業選択の自由を与える事をモットーに
しております。
ゆえに女性騎士を採用し…醜聞についての対応も、しっかりとしております。
そこまでやってこそ、男女同権を歌えると思っておりますゆえ。
昨今、そんなギリアムや私に…随分と無礼な突っかかり方をしてらっしゃる方がいらして…、
いい機会なので、これでどうなるか…見るのも一興と思い、あえて止めずにおります」
じい様…ぐうの音も出ないようだ。
ティタノ陛下は…平常心そのもの。
この計画を話し、昨今の流星騎士団の態度を話したら…そっちの方が、めっちゃ怒ってたもん。
ヤジの大合唱に私の事が混じっているが…構わん構わん。
イシュロとラディルスが…報告するいいネタを作ってやっているだけさぁ~。
ん?何やらこちらに走ってくる影が…。
「さっさと止めなさいよっ!!アンタたちぃ――――――――――――っ!!」
…メイリンよ…気でも狂ったか?
「女性を裸で戦わせて楽しむなんて、最低よ――――――っ!!」
ティタノ陛下の御前じゃぞ。
「……ローエン、あの失礼極まりないバカはなんじゃ?」
「すぐに捕らえますので、ご容赦を!!」
だよねぇ…。
許可されてないのに、ティタノ陛下の御前に出た挙句、あの言葉使い…。
言っていることが正しくても、言葉使いがアウトだ。
…メイリンって、社交界教育受けたんだよね?
計算してやるならまだしも…あれ、自分に正当性があるから、こっちが従って当然って
態度だぞ?悪手もいい所だ。
あ、メイリンに槍が向けられた。
なんかほざいているが…、あ、ツァリオ閣下が飛んできてぶん殴った…。
あら、しかもぐーだわ。
そして…やっぱり飛んで来た、アルフレッドと一緒にドナドナしてった…。
アルフレッドも殴られて、怒鳴られてる…。
ちゃんと見とけって事だろうなぁ…。ホントになぁ…。
めでたくご退場~。
さてさて…勝負は…まだつかな~い。
ドロテア…かなり参ってるなぁ…。
スタミナがどうとかより、精神的に…そんな顔だ。
「おっちち、おちち、女性騎士のおちちは、最高だ~。
おっちちぽろぽろ、おっ尻ぷりぷり、揺らして戦う、乙女~最高!!」
変な替え歌…即興で作るの上手い奴、どこにでもいるなぁ…。
しかも周りもつられて歌い出したから…結構な大合唱になって来たなぁ…。
ハートは…と言えば、攻撃をしつつ、体をくねらせ、ヤジを飛ばす男どもに、最大限の
サービスをする。
スッゴイね。
私にゃできない、サービスの仕方…最高じゃん!!
……ただ、ドロテアの方は持たないだろうから、そろそろ終いにせにゃーな。
イシュロとラディルスも…全体的な調査は、終えたろうし。
私が思ったのと、その声が響いたのは、ほぼ同時だった。
「国王陛下の御命令である――――――――――――――――っ!!
試合終了ぅ―――――――――――――――――――――――――っ!!」
……ケルカロス陛下は籠城中のハズだから…レファイラだな。
国王陛下不在の場合は…王后が、国王の代理で命令できるからな…。
ティタノ陛下が審判だから…動かないと思っていたが、動きやがったか…ちっ!!
「ふん…。クッチェンバラスのバカ娘か…。どうする、オルフィリア公爵夫人…」
「……ちょうど、そろそろ調査が終わったと思われます」
「そうか…なら、異議は唱えずにおくかの…」
…試合終了か。
何だか…最後はあっけなかったな。
私はこの時点で貴族席をぐるっと見渡すと…一応退席はなし…か。
まあ、ティタノ陛下がいちゃあ、そうなるよね…。
これなら…仕込みがより、生きてきそうだなぁ…。
私は心の中で…ニンマリした。
そんなこんなで、下卑たヤジと共に、公開演武は幕を下ろした…。
テラスで見ていたフィリー軍団は…。
「予定通りとはいえ、アイツ本当に上手いよなぁ~」
感心しながら中に戻ると、ちょーど戻ってきたハートが、
「見た見た?みんな~。アタシの戦いぶり、凄かったっしょ!!」
「あー、凄かった」
「何よ!!その棒読み!!もっと褒めないさい!!」
「すごいスゴイ」
やっぱり棒読みだ。
ハートのこれは…トランペストにとって、日常茶飯事なのだろう。
「あのさ…ご歓談中悪いんだけど…」
話しかけてきたのは、ローカスだった。
「さっさと服着てくれや」
目のやり場に本当に…困る格好だと言いたいのだろう。
「え~、サービス精神旺盛なんだから、素直に楽しめば…いたっ!!」
ジョーカーに小突かれ、服を着に行くハートだった。
「な、なんて言うか…その…スゴイですね…えっと…いろいろ…」
戦い慣れしている中でも、特に様々な経験を積んだ歴戦の猛者たちでも…信じられない
光景を目撃すると、きょどるようだ。
「あ~、アイツはただ一人、女性として奥様の護衛に課されたテストを、クリアーしてますから」
かなりシレっと答えたのは、スペードだ。
「ど、どんなテストだよ?」
ローカスが…ちょっとこわごわと聞いてきた。
「ん?男の前であったとしても、全裸で普通に戦闘!!」
これは…近衛騎士団所属の皆様の、顎が外れた。
「い、いい、いや、そりゃマズいだろ…」
誰ともなく、声が上がったのだが、
「要人警護が任務の人たちが、なに甘ったるい事、言っているわけ?」
着替えてきたハートが、戦線復帰。
「奥様は…特にお忍びで動くことが、多い方なのよ!!
普通に大層な護衛を付けられないし、特に…お風呂なんかは、アタシも一緒に入る事あるの。
そんな時に敵が襲ってきたら、服着ている暇なんて、ないでしょ!!
馬鹿じゃない」
ぷんすか怒っている。
「まあ、こいつの試験の場がまさに、奥様と一緒に入ってる風呂場だったからなぁ」
「でも…あの時のお前には、さすがのご当主様も引いてたぞ、多分…」
「え~、褒めてくださったわよぉ」
普通の茶飲み話のノリで話しているが、
「えっと…どんな感じだったの?」
やっぱり怖いが、聞きたいらしい。
「まず…襲撃犯として、風呂に3人ばかり侵入させたんだよ。
奥様は予めわかってらしたから、下着付けてたんだけどね。
その3人を…まず風呂場の仕切り棒で叩き出して…そしたらそいつら、往来の真ん中に逃げ
込んだんですよ。
まあ、これもご当主様の指示だったんですけど。
そこに…コイツは素っ裸のまま追いかけて行って、往来の真ん中でお縄にして…」
スペードは配慮したのか、そこで止まったんだが…。
「その後、縛り上げて、玉と竿を切り落とそうとしたところで…ご当主様のストップが入った
のよね」
あっさり答えるハート。
「お前さ…さすがに、縛り上げた時点で、服着ろよ」
クローバ…呆れてる。
「え~、だって!!アタシならまだしも、奥様の風呂を覗こうなんて、不届きもの!!
切り落としちゃった方がいいじゃん。後々のためにさ~」
「後々ってなんだよ」
「あ、男はあそこを切っちゃえば…精力減退して、大抵の事にやる気失くすから」
てへぺろ…の、ノリで話すハートに対し…。
恐怖の眼差しを向ける近衛騎士団の猛者たち…。
心なしか…後ずさってるし。
そしてファルメニウス公爵家に帰ってくると…。
「ご協力感謝いたします、ティタノ陛下…」
私は改めて頭を下げる。
「構わん!!わしを侮辱した連中を、追い詰める事にも繋がっとるし…。
第一、ギリアム公爵が忙しい中、心を砕いたのに、それを仇で返すとは何事じゃ!!
わしだったら、全員の首をとっくに切っとるわ!!」
「まあ…難しい所ですよ。
あまり推奨しすぎると、風紀の乱れに繋がりますし」
ギリアムの…重い声。
「そうですね…。
今の所は、現在の方法を維持しつつ、私の護衛に限ってのみ、今の条件でよろしいかと…」
どんなに法を強化しても、必ず網をかいくぐるやつはいる。
だからって…手をこまねいているのも、また良くないしね。
今回の問題提起の波紋が…どんな結果を生むか…注目するしかない。
私の投げかけた、超どでかい爆弾が…果たしてどうなるか…。
明日のファルメニウス公爵家主催のパーティー…出来れば最初から最後まで、いたかったんだけどね。
でも仕方ない。
アンナマリーを助けに行かねば…。
秘密裏に動いてくれる人員は確保できたから、ひとまず…成り行きを見守るしかない。
そして私は…できるだけ早く、帰ってくるしかない。
そうそう、大事な事を忘れるところだった。
私は…ファルメニウス公爵家に帰って来たドロテアの元に…。
「ご苦労様…。よく頑張ったわよ」
「はい…。でも…」
すごく…悲しそうな顔をしつつ、
「ギリアム公爵閣下が提起した問題は…。本当に真剣に…考えねばいけなかったのですね…」
下を向いた。
言葉で言い聞かせられて、覚悟するのと…実際に当事者になるのは、訳が違う。
だから…ギリアムは言ったんだ。なのに…なんで真剣に考えなかったんだ、ダリアよぉ…。
私は…ダイヤの事とは別に、ちょっと…女性として、団長として…どうなのよと思い、
拳に…思わず力が入った…。
その時…。
「オルフィリア様、ギリアム様がお呼びです」
ビロッディが呼びに来たので、私は席を外す。
「ドロテア卿…修練場に行かないか?」
「え…?」
慰めるでも、励ますでもなく、ビロッディのかけた言葉はそれだった。
「ドルグスト卿がよく言っていただろう?
試合が終わった時…できるだけ早く、反省会をやるべきだ…って。
それが強くなる近道だから…って。
もちろん、体が辛くなければ…だがな」
微笑みつつ、手を差し伸べる。
ドロテアは少し…下を向いて考えたが、
「……付き合ってもらえますか?」
「もちろん」
ビロッディの手を取り…立ちあがるのだった。
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