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第二章 乱宴
13 不興を買った代償
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「ギリアム公爵閣下とオルフィリア公爵夫人の極秘任務について…私から皆様に、説明させて
頂きます」
アルフレッドのこの冒頭だけで…会場中の注目を集めたことは、言うまでもない。
ティタノ陛下の御前ではあるが、どよめきが起こり、口々にこそこそ話をしているのが、直ぐに
わかる。
「数日前…さる男爵令嬢が、誘拐される事件が起きました」
いきなり…核心を投げかける。
「その男爵令嬢は…実は留学先で、私と共同研究を行った女性だったのです」
これは…本当の話。
図書館で働いていたアンナマリーの元に、アルフレッドが資料を探してくれと頼んだのが、
そもそものきっかけだったよう。
そして…研究テーマに沿って、資料を的確にそろえつつ、話をしているうちに…仲良くなった。
アルフレッドが一緒に共同研究として発表しようと、持ちかけ…。
留学先の学校には、2人の名前で研究記録が残っている。
「その身分に比して、私との関りがあったため…どうやら、利権目的の悪人に狙われてしまった
ようでした」
アルフレッドは…これ見よがしに、悔しそうな表情を露にする。
実際…アンナマリーは何もしてないのに攫われたのだから、当然と言えば当然だ。
「犯人は私に…男爵令嬢を返して欲しければ、ファルメニウス公爵夫妻に…デオリード宮殿の
パーティーに出るように言えと、要求してきました…」
これにより…人々のヒソヒソ声がピークに。
「いや…参りましたよ…。
しかも指定された日付と時間が…見事に、ティタノ陛下の歓待パーティーと一致していましてね…。
相手の意図が手に取るようにわかっただけに…こちらで何とか出来ないかと思案しましたが…。
如何せんガルドベンダには、そう言ったノウハウがありませんでしたから…。
だから…結局、王立騎士団に連絡して、ギリアム公爵閣下にすべてをお話しました」
「そうしたら…。
随分とあっさり、デオリード宮殿のパーティーに出ると…言ってくださいました」
ここからアルフレッドの声は…ひときわ大きくなる。
「その理由として…。
何の罪もない者を、いついかなる時も、悪人から守るのが、己の本来の役目である。
だから…それがいつであろうと…行くとおっしゃった!!」
そして胸に手を当て、
「武と文…その違いはあれど…その精神だけは、私も見習いたく思います!!
次代のガルドベンダを担うものとして…。
罪なき者が悲しむことのないように、正当な評価が受けられるように…。
この国をよくしていきたいと、思います!!」
ギリアムの前に立ち…頭を垂れ、
「ありがとうございました…、ギリアム公爵閣下」
そのアルフレッドの真摯な姿に…会場中から拍手が巻き起こった。
アンナマリー嬢と付き合っていることは、上手く隠して…ファルメニウス公爵家を持ち上げた。
これにより…ギリアムとフィリーがいなかった事に対する嫌疑は、完全に晴れたのだ。
「ギリアム公爵よ…。首尾は上手くいったようじゃが…」
ティタノ陛下…称賛されているギリアムに対し、それとなーく、近づき、
「わしはひじょーに、気分を悪くしたが?」
かなりの小声で言った。
まあ…あの3バカ…拍手に乗じて逃げよったから…。
「申し訳ございません、ティタノ陛下…。
私もフィリーも不在により、しょうもない連中が横行しましたことは…。
お詫びのしようもございません」
ギリアムもまた…小声で話す。まさに本音と建前の攻防だった。
「その者たちはに、追って沙汰を申し伝えますが…。
ひとまずこの場は、ティタノ陛下の御気分の回復に努めたいと思います」
「なら、オルフィリア公爵夫人はどこじゃ?」
「我が妻はいま…帰りの道中でございます。それにつきましては、今しばらくのご猶予を…。
かわりに…武の本分と言える参加型の余興を、ご用意いたします」
「ほ~う。
武と名がついたからには、並大抵のものでは、わしを楽しませることはできんぞ」
「心得ております…」
こうして…公での密談が成立し、ギリアムは…急ぎフォルトに指示を出すのだった。
そしてしばしのち…。
会場はギリアムが帰還したという事と、事の詳細が分かり…。
一転して、ギリアムとフィリーを称えるムードになった。
そんな中…、
「会場の皆々様…よくぞ今宵のパーティーに、ご参加くださいました!!
にも拘らず、致しかたない事情とはいえ、主催者が留守に致しましたこと…この場を借り
お詫び申し上げます。
その埋め合わせと言っては何ですが…武の総本山に相応しい催しを用意いたしましたので、
ごゆるりとご鑑賞くださいませ!!」
ギリアムが…口上を述べる。
使用人が…皆様を庭に誘導。
もちろん必ず見なきゃいけないワケじゃ無いから、中にいてもいいんだけど…殆どの人が
庭に出てきた。
庭には…鎧と槍を持たせた案山子が、軍隊のようにきちんと整列した状態で、配置されていた。
案山子の下には滑車がついており、移動させるための人員を配置。
そして…ギリアムが愛馬にまたがり、長槍と剣を携え、やって来た。
「これより皆様に!!戦争式一騎打ちをお見せする!!」
驚嘆の声が上がったのは…言うまでもない。
決闘の戦争形式と同じで…剣だけでなく何でもあり。
おまけに…相手の命を奪ってもいいと、銘打って行われるものだ。
「え~、ギリアムの一騎打ちって…相手、誰がするんだぁ?」
ローカスが…ちょっと訝しみながら、まじまじと見ている。
「並の奴では、相手になるまいよ…あの坊主が相手ではな…。
お前には声がかからんかったのか?」
「いや…。全然…」
この国に…ギリアムと相対せる人間など、数えるほどしかいない。
一騎打ちならなおの事…だ。
まあ…そんな皆様の好奇と関心の目は…やがて馬に乗って現れた、人物を…更なる驚愕と
共に迎える事となる。
「なかなか面白い趣向ではないか!!気に入ったわ!!ギリアム公爵!!」
やっぱり愛馬にまたがって…槍と剣を携えたティタノ陛下が現れた。
「お前もオルフィリア公爵夫人もおらんで…。
ち~っとも、楽しくなかったんじゃ!!
このわしをシラケさせたぶん、しっかりと楽しませろ!!」
ティタノ陛下は…先ほど家臣から、いい具合にまとまった商談の結果を聞いていた時より、
遥かに楽しそうな顔をしている。
観客の皆さま…度肝を抜かれて、驚いている。
驚いて当然だ…。
最重要の来賓を、催しに使うって…普通ない…。
「ティタノ陛下!!ななな、何を…」
ああ…ケルカロス陛下まっつぁお。
「単なる余興じゃ!!笑って済ませろ!!」
そう言われても…ねぇ…。
周りの意見など、ほぼほぼ無視な2人は…何とも楽しそうに、馬上で槍を構えた。
通常は…木刀とか、槍の先を削ったりするものだ。
あくまで…ショー的な物だし。
でも…この2人に限っては、そんな事するわきゃない。
本当にガチの…真剣勝負である。
大きなドラが…高らかにその音を響かせたとき…馬の蹄が土を噛む。
最初から手綱など無いかの如く、2人は両手で槍を構え、相手めがけて振り下ろす。
柄と柄がぶつかり合う鈍い音…振り下ろす、振り上げる…そして突く!!
真剣であるからこそ、その様は…人の緊張をより大きく掻き立てる。
決して声を上げず…いや、あげられず、瞬きすらままならず、その眼を見開く。
しかし…それを嘲笑うかの如く、2人の打ち合いは、常人の目に追えるような速度ではなかった。
一騎打ちのその様だけでも、人によっては驚嘆すべきものだったが、やがて…。
滑車のついた案山子兵が、係に押され、2人の元に迫る。
人々が先ほどと打って変わって、叫びをあげる。
その案山子兵の槍は…明らかに二人に向いていたから。
打ち合っていた二人は、絶妙な間合いでそれをかわし…、すぐさま後ろに回り込んだ馬が、
案山子兵の頭めがけて、蹄を落とす!!
頭もそうだが、体も槍も…ことごとく粉々になるか、ひしゃげるか…だ。
その様は…まさに地獄絵図。
さすがティタノ・ウラフィス・バクシバルドとギリアム・アウススト・ファルメニウスの選んだ
愛馬である。
大陸中探しても、ここまで気性が荒く、攻撃的な馬はいないだろう…。
皆様の目が…真っ白くなっていく。
そんな中でも、案山子兵は導入され…縦横無尽に攻めて来る槍を馬だけでなく、本人たちも
叩き落とし、結果…無残にも案山子兵はぶっ壊れた。
その間も…2人は互いを牽制し合い、隙あらば槍で攻撃…を繰り返す。
やがて同時に打ち込まれた槍を…互いが肩の所でつかみ…馬と体の動きが止まる。
暫くそのまま…均衡状態が続いたが、やがて…。
落雷を思わせる激しい音と共に…2人の槍が中心から砕けるように…粉々になった。
2人の力に…槍の強度の方が耐えられなかったようだ。
盛大な歓声は…2人を称える物であった。
槍が砕けたら、終わり…。
それが終了の合図だった。
周りに散乱した案山子兵の無残な姿は…何物も2人の間に割って入れず、邪魔も出来ず…
そんな怪物2人の戦いを、象徴するように瓦解の山を作っていた。
馬上で呼吸を整えた2人は…。
「相変わらずのお手並みですね…。ティタノ陛下」
「お前とて素晴らしぞ!!このわしと…ここまで打ち合える者は、大陸広しと言えど、
一握りじゃ!!わはは」
すっかり機嫌が直ったようで、馬を並べつつ、ギリアムの肩をバシバシと叩く。
それを見ていた観客たちは…みな一様に感嘆を述べるが、特に…。
「いやいや、素晴らしいな…!!お前も頑張れローカス!!」
ローエンは…この催しが、大層お気に召したようだ。
「しょ、精進します…」
武をしっかりとやっている人間だからこそ、2人の化け物性がわかるのだろう。
ちょっと汗かきつつ、微妙な顔のローカス…。
その少し離れた場所では…。
「お父様…」
運動したわけでもないのに、体中が汗まみれのアルフレッドとステファン。
「何だ?アルフレッド…ステファン…」
ツァリオも…流石に驚きを隠せない声だ。
「オレは…今後、文の代表として、一層、交渉術と弁論術を磨くことを誓います…。
すべてに!!」
「オレも!!」
「……そうしろ。わしもそうする」
汗かきつつ、ひじょーにカチコチした声で、誓うアルフレッドとステファンに…ツァリオ閣下が素直な
言葉を吐くのだった…。
頂きます」
アルフレッドのこの冒頭だけで…会場中の注目を集めたことは、言うまでもない。
ティタノ陛下の御前ではあるが、どよめきが起こり、口々にこそこそ話をしているのが、直ぐに
わかる。
「数日前…さる男爵令嬢が、誘拐される事件が起きました」
いきなり…核心を投げかける。
「その男爵令嬢は…実は留学先で、私と共同研究を行った女性だったのです」
これは…本当の話。
図書館で働いていたアンナマリーの元に、アルフレッドが資料を探してくれと頼んだのが、
そもそものきっかけだったよう。
そして…研究テーマに沿って、資料を的確にそろえつつ、話をしているうちに…仲良くなった。
アルフレッドが一緒に共同研究として発表しようと、持ちかけ…。
留学先の学校には、2人の名前で研究記録が残っている。
「その身分に比して、私との関りがあったため…どうやら、利権目的の悪人に狙われてしまった
ようでした」
アルフレッドは…これ見よがしに、悔しそうな表情を露にする。
実際…アンナマリーは何もしてないのに攫われたのだから、当然と言えば当然だ。
「犯人は私に…男爵令嬢を返して欲しければ、ファルメニウス公爵夫妻に…デオリード宮殿の
パーティーに出るように言えと、要求してきました…」
これにより…人々のヒソヒソ声がピークに。
「いや…参りましたよ…。
しかも指定された日付と時間が…見事に、ティタノ陛下の歓待パーティーと一致していましてね…。
相手の意図が手に取るようにわかっただけに…こちらで何とか出来ないかと思案しましたが…。
如何せんガルドベンダには、そう言ったノウハウがありませんでしたから…。
だから…結局、王立騎士団に連絡して、ギリアム公爵閣下にすべてをお話しました」
「そうしたら…。
随分とあっさり、デオリード宮殿のパーティーに出ると…言ってくださいました」
ここからアルフレッドの声は…ひときわ大きくなる。
「その理由として…。
何の罪もない者を、いついかなる時も、悪人から守るのが、己の本来の役目である。
だから…それがいつであろうと…行くとおっしゃった!!」
そして胸に手を当て、
「武と文…その違いはあれど…その精神だけは、私も見習いたく思います!!
次代のガルドベンダを担うものとして…。
罪なき者が悲しむことのないように、正当な評価が受けられるように…。
この国をよくしていきたいと、思います!!」
ギリアムの前に立ち…頭を垂れ、
「ありがとうございました…、ギリアム公爵閣下」
そのアルフレッドの真摯な姿に…会場中から拍手が巻き起こった。
アンナマリー嬢と付き合っていることは、上手く隠して…ファルメニウス公爵家を持ち上げた。
これにより…ギリアムとフィリーがいなかった事に対する嫌疑は、完全に晴れたのだ。
「ギリアム公爵よ…。首尾は上手くいったようじゃが…」
ティタノ陛下…称賛されているギリアムに対し、それとなーく、近づき、
「わしはひじょーに、気分を悪くしたが?」
かなりの小声で言った。
まあ…あの3バカ…拍手に乗じて逃げよったから…。
「申し訳ございません、ティタノ陛下…。
私もフィリーも不在により、しょうもない連中が横行しましたことは…。
お詫びのしようもございません」
ギリアムもまた…小声で話す。まさに本音と建前の攻防だった。
「その者たちはに、追って沙汰を申し伝えますが…。
ひとまずこの場は、ティタノ陛下の御気分の回復に努めたいと思います」
「なら、オルフィリア公爵夫人はどこじゃ?」
「我が妻はいま…帰りの道中でございます。それにつきましては、今しばらくのご猶予を…。
かわりに…武の本分と言える参加型の余興を、ご用意いたします」
「ほ~う。
武と名がついたからには、並大抵のものでは、わしを楽しませることはできんぞ」
「心得ております…」
こうして…公での密談が成立し、ギリアムは…急ぎフォルトに指示を出すのだった。
そしてしばしのち…。
会場はギリアムが帰還したという事と、事の詳細が分かり…。
一転して、ギリアムとフィリーを称えるムードになった。
そんな中…、
「会場の皆々様…よくぞ今宵のパーティーに、ご参加くださいました!!
にも拘らず、致しかたない事情とはいえ、主催者が留守に致しましたこと…この場を借り
お詫び申し上げます。
その埋め合わせと言っては何ですが…武の総本山に相応しい催しを用意いたしましたので、
ごゆるりとご鑑賞くださいませ!!」
ギリアムが…口上を述べる。
使用人が…皆様を庭に誘導。
もちろん必ず見なきゃいけないワケじゃ無いから、中にいてもいいんだけど…殆どの人が
庭に出てきた。
庭には…鎧と槍を持たせた案山子が、軍隊のようにきちんと整列した状態で、配置されていた。
案山子の下には滑車がついており、移動させるための人員を配置。
そして…ギリアムが愛馬にまたがり、長槍と剣を携え、やって来た。
「これより皆様に!!戦争式一騎打ちをお見せする!!」
驚嘆の声が上がったのは…言うまでもない。
決闘の戦争形式と同じで…剣だけでなく何でもあり。
おまけに…相手の命を奪ってもいいと、銘打って行われるものだ。
「え~、ギリアムの一騎打ちって…相手、誰がするんだぁ?」
ローカスが…ちょっと訝しみながら、まじまじと見ている。
「並の奴では、相手になるまいよ…あの坊主が相手ではな…。
お前には声がかからんかったのか?」
「いや…。全然…」
この国に…ギリアムと相対せる人間など、数えるほどしかいない。
一騎打ちならなおの事…だ。
まあ…そんな皆様の好奇と関心の目は…やがて馬に乗って現れた、人物を…更なる驚愕と
共に迎える事となる。
「なかなか面白い趣向ではないか!!気に入ったわ!!ギリアム公爵!!」
やっぱり愛馬にまたがって…槍と剣を携えたティタノ陛下が現れた。
「お前もオルフィリア公爵夫人もおらんで…。
ち~っとも、楽しくなかったんじゃ!!
このわしをシラケさせたぶん、しっかりと楽しませろ!!」
ティタノ陛下は…先ほど家臣から、いい具合にまとまった商談の結果を聞いていた時より、
遥かに楽しそうな顔をしている。
観客の皆さま…度肝を抜かれて、驚いている。
驚いて当然だ…。
最重要の来賓を、催しに使うって…普通ない…。
「ティタノ陛下!!ななな、何を…」
ああ…ケルカロス陛下まっつぁお。
「単なる余興じゃ!!笑って済ませろ!!」
そう言われても…ねぇ…。
周りの意見など、ほぼほぼ無視な2人は…何とも楽しそうに、馬上で槍を構えた。
通常は…木刀とか、槍の先を削ったりするものだ。
あくまで…ショー的な物だし。
でも…この2人に限っては、そんな事するわきゃない。
本当にガチの…真剣勝負である。
大きなドラが…高らかにその音を響かせたとき…馬の蹄が土を噛む。
最初から手綱など無いかの如く、2人は両手で槍を構え、相手めがけて振り下ろす。
柄と柄がぶつかり合う鈍い音…振り下ろす、振り上げる…そして突く!!
真剣であるからこそ、その様は…人の緊張をより大きく掻き立てる。
決して声を上げず…いや、あげられず、瞬きすらままならず、その眼を見開く。
しかし…それを嘲笑うかの如く、2人の打ち合いは、常人の目に追えるような速度ではなかった。
一騎打ちのその様だけでも、人によっては驚嘆すべきものだったが、やがて…。
滑車のついた案山子兵が、係に押され、2人の元に迫る。
人々が先ほどと打って変わって、叫びをあげる。
その案山子兵の槍は…明らかに二人に向いていたから。
打ち合っていた二人は、絶妙な間合いでそれをかわし…、すぐさま後ろに回り込んだ馬が、
案山子兵の頭めがけて、蹄を落とす!!
頭もそうだが、体も槍も…ことごとく粉々になるか、ひしゃげるか…だ。
その様は…まさに地獄絵図。
さすがティタノ・ウラフィス・バクシバルドとギリアム・アウススト・ファルメニウスの選んだ
愛馬である。
大陸中探しても、ここまで気性が荒く、攻撃的な馬はいないだろう…。
皆様の目が…真っ白くなっていく。
そんな中でも、案山子兵は導入され…縦横無尽に攻めて来る槍を馬だけでなく、本人たちも
叩き落とし、結果…無残にも案山子兵はぶっ壊れた。
その間も…2人は互いを牽制し合い、隙あらば槍で攻撃…を繰り返す。
やがて同時に打ち込まれた槍を…互いが肩の所でつかみ…馬と体の動きが止まる。
暫くそのまま…均衡状態が続いたが、やがて…。
落雷を思わせる激しい音と共に…2人の槍が中心から砕けるように…粉々になった。
2人の力に…槍の強度の方が耐えられなかったようだ。
盛大な歓声は…2人を称える物であった。
槍が砕けたら、終わり…。
それが終了の合図だった。
周りに散乱した案山子兵の無残な姿は…何物も2人の間に割って入れず、邪魔も出来ず…
そんな怪物2人の戦いを、象徴するように瓦解の山を作っていた。
馬上で呼吸を整えた2人は…。
「相変わらずのお手並みですね…。ティタノ陛下」
「お前とて素晴らしぞ!!このわしと…ここまで打ち合える者は、大陸広しと言えど、
一握りじゃ!!わはは」
すっかり機嫌が直ったようで、馬を並べつつ、ギリアムの肩をバシバシと叩く。
それを見ていた観客たちは…みな一様に感嘆を述べるが、特に…。
「いやいや、素晴らしいな…!!お前も頑張れローカス!!」
ローエンは…この催しが、大層お気に召したようだ。
「しょ、精進します…」
武をしっかりとやっている人間だからこそ、2人の化け物性がわかるのだろう。
ちょっと汗かきつつ、微妙な顔のローカス…。
その少し離れた場所では…。
「お父様…」
運動したわけでもないのに、体中が汗まみれのアルフレッドとステファン。
「何だ?アルフレッド…ステファン…」
ツァリオも…流石に驚きを隠せない声だ。
「オレは…今後、文の代表として、一層、交渉術と弁論術を磨くことを誓います…。
すべてに!!」
「オレも!!」
「……そうしろ。わしもそうする」
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