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第四章 裁判
10 ギリアム独壇場
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手紙については…本当にいい加減にしろと言いたかったから、ちょっとすっきりしたわ。
ギリアムの言は続く。
「これがまず1つ目だが…2つ目!!
グレンフォ卿に関しては、ダイヤに強引な事をしたこと…最初の手紙で詫びてきているんだ。
気が動転していたとはいえ、申し訳なかったと。ファルメニウス公爵家に対しても…だ」
「ただ…ダリア夫人、ダリナ嬢、グレリオ卿に関しては、一貫してダイヤと話をさせろの一点張り。
フィリーに無礼を働いた後の手紙でも、こちらに詫びは一切なし。
そして…ガルドベンダで会った時も、詫びは一切なし。
失礼すぎると思うのは、私だけか?」
あ…会場ざわざわ、でっかくなった…。
「まあ…最後3つ目が…私が最も、ダイヤをラスタフォルスに行かせることを、拒否したくなった
部分なのだが…」
ギリアム…ちょっと呼吸を整えたっぽい。
「仮に…ダイヤをラスタフォルスに迎え入れたとして…その後のビジョンが全くできていないと
こちらが判断したからだ!!」
ギリアム…目をつぶって首を振りつつ、あり得んって態度をありありと出している。
そうね…。まさにここ数カ月の動向を追って…私もそう思った。
「そ、そんな言いがかりを…」
また怒鳴ろうとしたようだが、
「失礼ながらギリアム公爵閣下…。それは越権行為ではありませんか?」
マガルタが脇から出てきた。
「もちろん、全く関係なければ、越権行為だ。
しかし…重要な事が一つある。ダイヤは現在…ファルメニウス公爵家の家臣なんだ。
言わば…家族を養子に出すようなものだ。
その状態で…相手先にしっかりと、迎え入れる準備をしているのか?力があるのか?
そういったことを見るのは、むしろ当然と思っているが?」
養子斡旋所だって、マトモなとこはちゃんと調査するぞ、そういう事。
「それこそ、言いがかりです!!
ダイヤには…ラスタフォルス侯爵家の全てを、継がせる準備が出来ています!!
グレリオとダリナも、ダイヤを迎え入れ、家族一丸となってサポートす」
「そんなものより、傍系の説得が先だろうが!!」
ギリアムの声は…より確かな怒りを伴い、会場中に響き渡った。
「ダリア夫人は…傍系の人間と、しっかり話をしたのか?
話と言うのは、命令ではなく、相手の気持ちを聞いたうえで、自分の気持ちを話し…落としどころを
見つける事だ。
決別する場合もあるが、最初からやらないなど、面倒くさい事をダイヤに全て押し付けようと
していると、思われても仕方ないぞ!!」
「な、何を仰いますか!!傍系は止めろと言うのに、頻繁にウチに尋ねてきて」
「その者たちと、しっかり話をしているのかと、言っているんだ!!」
うっわ、怒鳴るわけじゃないのに、デカい声!!
ダリアの言葉を…思いっきり切ってるし。
「は、話は常にしています!!」
ダリアのこの言葉で…ギリアムの目が、一層険しくなった。
「ファルメニウス公爵家の情報収集能力を、舐めるんじゃない!!
ラスタフォルス侯爵家に行った傍系はな…言っても療養中だ、仕事だと言って…ちっとも取り合って
貰えなかったと、話していたぞ。それ全てを総合して導き出されたのは…」
ひゅうっ…っという、ギリアムの息を吸う声が…私の耳に響いたような気がした。
「ダイヤが現れてから…今日にいたるまで…傍系と殆ど話をしていないという、事実だった!!」
外野のざわざわがオーケストラになってきたが、ギリアムは構わず話を続ける。
「ダイヤを迎え入れたい…と言うのは、探し求めている親族からしたら、当然の気持ちだ!!
それを否定するつもりはさらさらない!!
だが…迎え入れたいのと、迎え入れる準備が出来ているかどうかは…別だ!!
さらに言えば、迎え入れた後、どうするのかも、しっかり考えているか…だ!!」
私は…これを聞きながら、縁側で茶をすすっている気分になってきた。
私の出番…なさそうだからさ。
ギリわんこよ…。
キミは本当に、人生何度目かね…。
しかも…まだ追撃する気だ…。
「最初に言っておくがね…、私はジェルフ卿を擁護するつもりは全くない!!
だが、彼がファルメニウス公爵家のパーティーでダイヤを犯罪者だと言った事は、紛れもない事実だし、
あんな揶揄は、どこにいたって出て来る。
一生それに付きまとわれても…やりたいかどうか…。
そもそもダリア夫人は、ダイヤに選択肢を与えたのか?与えていないだろう!!
ラスタフォルス侯爵家の全てうんぬんより、それだろう!!まずは!!」
さすが…この世界の警察機構のトップだけあるよ。
一度犯罪者の烙印を押されたら…消える事はないと思ったほうがいいこと、わかってる。
「そして、ジェルフ卿がダリア夫人に言ったことは、失礼極まりないが…。
ダリア夫人がグレダル卿に言ったことも、失礼極まりない!!」
私も聞いてて、そう思ったよ…。
「まず…揉め事の原因がラスタフォルスの事である以上…グレダル卿に、対処を丸投げなど
あり得ない!!
ラスタフォルスが主になって、解決するべきだ。
確かにグレダル卿の直系かもしれんが、そもそもグレダル卿は、ラスタフォルスに対しての
決定権も無ければ、責任も無いんだ」
「それに!!こちらの調べで、ダリナ嬢とグレリオ卿を、正式にラスタフォルスに入れる時だって、
グレダル卿の子供たちから、反発が出たのだろう?それを…グレダル卿が説得してくれたんだろう?
ダリア夫人はそれが当たり前の事だと、思っていないか?だとしたら、お門違いもいい所だ!!」
「グレダル卿はラスタフォルス侯爵家の家臣でも、小間使いでもないんだぞ!!
あくまで好意でやってくれたことに対し、さも当然どころか、もっとやれなど、良く言えたな!!
それだけ見たって、私の大事な家族を任せるに値しない!!」
「確かに傍系が多いと対処も大変かもしれんが、そういう家なのだから、しょうがないだろう!!
ダリア夫人のせいではないが、グレダル卿のせいでもない!!誰のせいでもないのだから、
腹をくくって、心ゆくまで対話する…を、するしかないだろう!!」
「もし、ダイヤを引き取ってから、傍系が一丸となって反対して来たら、どう対処する気だった
んだ!!
本当に準備を整えたと言うなら、答えろ!!
その答えいかんによって…私もフィリーも今後の付き合い方を、決めようじゃないか!!」
さすが、我が頼もしき旦那様。
ダリアが…一番誰かに任せたい、眼をつぶりたいところを、的確につきやがった。
いや~、さて、どう言うのかな?
私はダリアの言葉を待ったが…唇を噛みしめ下を向いたまま、微動だにしない。
……こりゃぁ、本気でグレダル卿に丸投げする予定だったのかぁ?
それとも、ファルメニウス公爵家に対処させる気だったとか?
どっちも当然のことと思っていたなら…救いようがないが?
強硬姿勢を崩さなくて、正解だったな…。
ダリアの答えが、暫くなかったので、ギリアムは改めて、
「ケルカロス国王陛下…私は以上の事を持もちまして、私の大切な家臣を、行かせるわけにはいかないと
判断いたしました」
「確かに…理にかなっているな…」
ケルカロス国王は納得しているっポイけど…。やっぱり…、
「ギリアム公爵…。それは違うのではありませんか?
家族同然と言うならば、ダイヤがラスタフォルス侯爵家に行ってからも…出来るサポートを
ファルメニウス公爵家でしてあげれば、良いのではないですか?」
……グレダル卿以外で、それも…ダリアは期待していたんだろうな…。
だから、何の対処もせず、自分の見たい部分だけ見て、とにかくダイヤを手に入れようとした
んだろう…。
するとギリアムは…厳かにお辞儀をして、
「それは私の主義として、絶対にやる気はありません!!完全な越権行為ですので!!」
キッパリと言い切った。
「それに…ファルメニウス公爵家がそれをやれば、大抵のものは、ひれ伏すしかない。
結果として当主に、いつまでたっても力がつきません」
「しかし…最初からそれでは、潰れる者もいるでしょう?
ずっとでないにせよ、暫くはサポートしてもよいのでは?」
私はちょっとポーカーフェイスの下で、青筋立てたよ。
……っつーかよ、レファイラ…。
テメェの娘はまさに、しがない男爵令嬢だった私を、めっちゃ潰しに来たんだけど?
止めるどころか、煽った人間が何言ってるかね?
ギリアムはレファイラの言葉に…少しだけ言葉を止めた後…、
「ファルメニウス公爵家の家臣で、私が当主になってから…3人いるのです…。
全く跡継ぎとして見られていなかったのに、ひょんな縁から当主にならないか…と、声が
かかった者が…」
おや…初耳~~~。
「その3人に声をかけてきた者たちにも、私は今と同じような提案をしました。
そして…ファルメニウス公爵家のサポートは、一切期待できない旨も話しました」
この辺の差別をしないのが、ギリアムのいい所やね。
「そうしたら、担ぎ上げたい人間は、当主になってからの起こりうる問題提起や自分たちの
やれることなど、リスト化して持ってきましたよ。
それをもとに…何度も当人と話し合い、時には私のアドバイスも聞き…3人はそれぞれ、
自分でやると決め、出て行きました。
退職金代わりの選別は渡しましたが、それ以外…出て行ってから私はサポートなどしていません。
今でもたまに手紙が来ますが…。
苦労しても、何とか…楽しくやっていると言ってきています」
顔が…心なしかほころんでいたが…また再度、厳しくなり、
「私が…ダイヤに手紙を見せろと言ったのは、証拠品以外にそれがあったのです。
もし担ぎ上げたいなら、最低限度!!自分のやれることを、よ~く考えて、提案するべきだと思い
ましたのでね。
ですが…サポートをすると書いてあっても、具体的に何が出来て、何をやるつもりか…。
ビジョンが全く書いていないのです。傍系についても、一切書かれていない。
私に対して、先ほど何も答えられなかったところを見ると、本当に何も考えていなかったようですね」
かなり…口調に呆れが入っている。
「お、お待ちください!!」
あや…。今度はダリナが出てきたか…。
「私は騎士として、厳しい訓練に耐え、しっかりとやってきました!!
傍系に対しても、いつもハッキリと意見をしています!!」
「意見を言うだけなら、子供でも出来る!!」
ギリアムの厳しい一言…。
「私が行っているサポートや対処と言うのは…双方の意見を出しつつ、終着点を探すことだ!!
子供の喧嘩のように、わがままを言い合うことではない!!
ファルメニウス公爵家のパーティーで、しょーもない事を言っていた傍系も傍系だが、キミらの
対応だって、おおよそ誰かをサポートする人間の物とは思えない!!」
「ダリナ嬢は文字通り、子供の喧嘩だし…。グレリオ卿に至っては、反論の1つも出来ない!!
それで何をサポートする気だ!!サポートと言えば、聞こえはいいがな!!
その実…何もせず、権利だけ保証してもらいたがっている、寄生虫としか思えんぞ、私は!!」
一息に話し終えたギリアムは、頭をガシガシ掻いている。
自分で言ってて、本当に呆れてきたみたい。
「そ、それはあんまりです!!出来る事はせいいっ」
「一生懸命やるのも、精一杯やるのも、ある意味当たり前だ!!」
もうやめときなよ…。ギリアムは頭の回転が超いいから、言いくるめるの無理だって。
ギリアムの言は続く。
「これがまず1つ目だが…2つ目!!
グレンフォ卿に関しては、ダイヤに強引な事をしたこと…最初の手紙で詫びてきているんだ。
気が動転していたとはいえ、申し訳なかったと。ファルメニウス公爵家に対しても…だ」
「ただ…ダリア夫人、ダリナ嬢、グレリオ卿に関しては、一貫してダイヤと話をさせろの一点張り。
フィリーに無礼を働いた後の手紙でも、こちらに詫びは一切なし。
そして…ガルドベンダで会った時も、詫びは一切なし。
失礼すぎると思うのは、私だけか?」
あ…会場ざわざわ、でっかくなった…。
「まあ…最後3つ目が…私が最も、ダイヤをラスタフォルスに行かせることを、拒否したくなった
部分なのだが…」
ギリアム…ちょっと呼吸を整えたっぽい。
「仮に…ダイヤをラスタフォルスに迎え入れたとして…その後のビジョンが全くできていないと
こちらが判断したからだ!!」
ギリアム…目をつぶって首を振りつつ、あり得んって態度をありありと出している。
そうね…。まさにここ数カ月の動向を追って…私もそう思った。
「そ、そんな言いがかりを…」
また怒鳴ろうとしたようだが、
「失礼ながらギリアム公爵閣下…。それは越権行為ではありませんか?」
マガルタが脇から出てきた。
「もちろん、全く関係なければ、越権行為だ。
しかし…重要な事が一つある。ダイヤは現在…ファルメニウス公爵家の家臣なんだ。
言わば…家族を養子に出すようなものだ。
その状態で…相手先にしっかりと、迎え入れる準備をしているのか?力があるのか?
そういったことを見るのは、むしろ当然と思っているが?」
養子斡旋所だって、マトモなとこはちゃんと調査するぞ、そういう事。
「それこそ、言いがかりです!!
ダイヤには…ラスタフォルス侯爵家の全てを、継がせる準備が出来ています!!
グレリオとダリナも、ダイヤを迎え入れ、家族一丸となってサポートす」
「そんなものより、傍系の説得が先だろうが!!」
ギリアムの声は…より確かな怒りを伴い、会場中に響き渡った。
「ダリア夫人は…傍系の人間と、しっかり話をしたのか?
話と言うのは、命令ではなく、相手の気持ちを聞いたうえで、自分の気持ちを話し…落としどころを
見つける事だ。
決別する場合もあるが、最初からやらないなど、面倒くさい事をダイヤに全て押し付けようと
していると、思われても仕方ないぞ!!」
「な、何を仰いますか!!傍系は止めろと言うのに、頻繁にウチに尋ねてきて」
「その者たちと、しっかり話をしているのかと、言っているんだ!!」
うっわ、怒鳴るわけじゃないのに、デカい声!!
ダリアの言葉を…思いっきり切ってるし。
「は、話は常にしています!!」
ダリアのこの言葉で…ギリアムの目が、一層険しくなった。
「ファルメニウス公爵家の情報収集能力を、舐めるんじゃない!!
ラスタフォルス侯爵家に行った傍系はな…言っても療養中だ、仕事だと言って…ちっとも取り合って
貰えなかったと、話していたぞ。それ全てを総合して導き出されたのは…」
ひゅうっ…っという、ギリアムの息を吸う声が…私の耳に響いたような気がした。
「ダイヤが現れてから…今日にいたるまで…傍系と殆ど話をしていないという、事実だった!!」
外野のざわざわがオーケストラになってきたが、ギリアムは構わず話を続ける。
「ダイヤを迎え入れたい…と言うのは、探し求めている親族からしたら、当然の気持ちだ!!
それを否定するつもりはさらさらない!!
だが…迎え入れたいのと、迎え入れる準備が出来ているかどうかは…別だ!!
さらに言えば、迎え入れた後、どうするのかも、しっかり考えているか…だ!!」
私は…これを聞きながら、縁側で茶をすすっている気分になってきた。
私の出番…なさそうだからさ。
ギリわんこよ…。
キミは本当に、人生何度目かね…。
しかも…まだ追撃する気だ…。
「最初に言っておくがね…、私はジェルフ卿を擁護するつもりは全くない!!
だが、彼がファルメニウス公爵家のパーティーでダイヤを犯罪者だと言った事は、紛れもない事実だし、
あんな揶揄は、どこにいたって出て来る。
一生それに付きまとわれても…やりたいかどうか…。
そもそもダリア夫人は、ダイヤに選択肢を与えたのか?与えていないだろう!!
ラスタフォルス侯爵家の全てうんぬんより、それだろう!!まずは!!」
さすが…この世界の警察機構のトップだけあるよ。
一度犯罪者の烙印を押されたら…消える事はないと思ったほうがいいこと、わかってる。
「そして、ジェルフ卿がダリア夫人に言ったことは、失礼極まりないが…。
ダリア夫人がグレダル卿に言ったことも、失礼極まりない!!」
私も聞いてて、そう思ったよ…。
「まず…揉め事の原因がラスタフォルスの事である以上…グレダル卿に、対処を丸投げなど
あり得ない!!
ラスタフォルスが主になって、解決するべきだ。
確かにグレダル卿の直系かもしれんが、そもそもグレダル卿は、ラスタフォルスに対しての
決定権も無ければ、責任も無いんだ」
「それに!!こちらの調べで、ダリナ嬢とグレリオ卿を、正式にラスタフォルスに入れる時だって、
グレダル卿の子供たちから、反発が出たのだろう?それを…グレダル卿が説得してくれたんだろう?
ダリア夫人はそれが当たり前の事だと、思っていないか?だとしたら、お門違いもいい所だ!!」
「グレダル卿はラスタフォルス侯爵家の家臣でも、小間使いでもないんだぞ!!
あくまで好意でやってくれたことに対し、さも当然どころか、もっとやれなど、良く言えたな!!
それだけ見たって、私の大事な家族を任せるに値しない!!」
「確かに傍系が多いと対処も大変かもしれんが、そういう家なのだから、しょうがないだろう!!
ダリア夫人のせいではないが、グレダル卿のせいでもない!!誰のせいでもないのだから、
腹をくくって、心ゆくまで対話する…を、するしかないだろう!!」
「もし、ダイヤを引き取ってから、傍系が一丸となって反対して来たら、どう対処する気だった
んだ!!
本当に準備を整えたと言うなら、答えろ!!
その答えいかんによって…私もフィリーも今後の付き合い方を、決めようじゃないか!!」
さすが、我が頼もしき旦那様。
ダリアが…一番誰かに任せたい、眼をつぶりたいところを、的確につきやがった。
いや~、さて、どう言うのかな?
私はダリアの言葉を待ったが…唇を噛みしめ下を向いたまま、微動だにしない。
……こりゃぁ、本気でグレダル卿に丸投げする予定だったのかぁ?
それとも、ファルメニウス公爵家に対処させる気だったとか?
どっちも当然のことと思っていたなら…救いようがないが?
強硬姿勢を崩さなくて、正解だったな…。
ダリアの答えが、暫くなかったので、ギリアムは改めて、
「ケルカロス国王陛下…私は以上の事を持もちまして、私の大切な家臣を、行かせるわけにはいかないと
判断いたしました」
「確かに…理にかなっているな…」
ケルカロス国王は納得しているっポイけど…。やっぱり…、
「ギリアム公爵…。それは違うのではありませんか?
家族同然と言うならば、ダイヤがラスタフォルス侯爵家に行ってからも…出来るサポートを
ファルメニウス公爵家でしてあげれば、良いのではないですか?」
……グレダル卿以外で、それも…ダリアは期待していたんだろうな…。
だから、何の対処もせず、自分の見たい部分だけ見て、とにかくダイヤを手に入れようとした
んだろう…。
するとギリアムは…厳かにお辞儀をして、
「それは私の主義として、絶対にやる気はありません!!完全な越権行為ですので!!」
キッパリと言い切った。
「それに…ファルメニウス公爵家がそれをやれば、大抵のものは、ひれ伏すしかない。
結果として当主に、いつまでたっても力がつきません」
「しかし…最初からそれでは、潰れる者もいるでしょう?
ずっとでないにせよ、暫くはサポートしてもよいのでは?」
私はちょっとポーカーフェイスの下で、青筋立てたよ。
……っつーかよ、レファイラ…。
テメェの娘はまさに、しがない男爵令嬢だった私を、めっちゃ潰しに来たんだけど?
止めるどころか、煽った人間が何言ってるかね?
ギリアムはレファイラの言葉に…少しだけ言葉を止めた後…、
「ファルメニウス公爵家の家臣で、私が当主になってから…3人いるのです…。
全く跡継ぎとして見られていなかったのに、ひょんな縁から当主にならないか…と、声が
かかった者が…」
おや…初耳~~~。
「その3人に声をかけてきた者たちにも、私は今と同じような提案をしました。
そして…ファルメニウス公爵家のサポートは、一切期待できない旨も話しました」
この辺の差別をしないのが、ギリアムのいい所やね。
「そうしたら、担ぎ上げたい人間は、当主になってからの起こりうる問題提起や自分たちの
やれることなど、リスト化して持ってきましたよ。
それをもとに…何度も当人と話し合い、時には私のアドバイスも聞き…3人はそれぞれ、
自分でやると決め、出て行きました。
退職金代わりの選別は渡しましたが、それ以外…出て行ってから私はサポートなどしていません。
今でもたまに手紙が来ますが…。
苦労しても、何とか…楽しくやっていると言ってきています」
顔が…心なしかほころんでいたが…また再度、厳しくなり、
「私が…ダイヤに手紙を見せろと言ったのは、証拠品以外にそれがあったのです。
もし担ぎ上げたいなら、最低限度!!自分のやれることを、よ~く考えて、提案するべきだと思い
ましたのでね。
ですが…サポートをすると書いてあっても、具体的に何が出来て、何をやるつもりか…。
ビジョンが全く書いていないのです。傍系についても、一切書かれていない。
私に対して、先ほど何も答えられなかったところを見ると、本当に何も考えていなかったようですね」
かなり…口調に呆れが入っている。
「お、お待ちください!!」
あや…。今度はダリナが出てきたか…。
「私は騎士として、厳しい訓練に耐え、しっかりとやってきました!!
傍系に対しても、いつもハッキリと意見をしています!!」
「意見を言うだけなら、子供でも出来る!!」
ギリアムの厳しい一言…。
「私が行っているサポートや対処と言うのは…双方の意見を出しつつ、終着点を探すことだ!!
子供の喧嘩のように、わがままを言い合うことではない!!
ファルメニウス公爵家のパーティーで、しょーもない事を言っていた傍系も傍系だが、キミらの
対応だって、おおよそ誰かをサポートする人間の物とは思えない!!」
「ダリナ嬢は文字通り、子供の喧嘩だし…。グレリオ卿に至っては、反論の1つも出来ない!!
それで何をサポートする気だ!!サポートと言えば、聞こえはいいがな!!
その実…何もせず、権利だけ保証してもらいたがっている、寄生虫としか思えんぞ、私は!!」
一息に話し終えたギリアムは、頭をガシガシ掻いている。
自分で言ってて、本当に呆れてきたみたい。
「そ、それはあんまりです!!出来る事はせいいっ」
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