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第六章 黒幕
4 わかって…るんだね
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「申し訳ございません!!王后陛下…。
私が…先だってオルフィリア公爵夫人に無礼を働き、過失とはいえ傷付けてしまった事…。
未だに尾を引いているようです!!すべては…私の不徳の致すところ…」
もっともらしく泣いてるけどさぁ…。嘘泣きだってバレバレだぞ。
私はめっちゃシラケてたんだが…。
「あれはもう、終わったことでは?」
レファイラの言葉も…何かわざとらしいな…うん。
「そう聞いており…すっかり安心しきっておりました…。
その私の不徳の致すところでございます…」
すると外野が待ってましたとばかりに…。
自分で終わったことだと言っておいて、根に持つ陰湿女だの、ヒドイだの、心が狭いだの…
まあ、好き勝手言ってくれてるよ。
……気にならんけどさ。
私は周り全部に悪人にされる事なんざ、あんま気にしないんだけどね…。
ただ…。
「奥様…もういいです」
やっぱりダイヤの方が…耐えられないか…。
別にいいよ…って言っても、無駄だろうから、好きにさせよう。
私は…ダイヤの目をじっと見て、
「……わかってる…んだね?」
「ええ。オレは…汚い世界で生きてきましたので…」
「わかった。何とかするから…」
「ありがとうございます。でも、無理しないでください、奥様…。
オレはオレで…向こうがそういう態度に出るなら、考えがありますので…」
「ダイヤこそ…無茶はしないでね。犬死はダメよ!!」
するとダイヤの頬が…僅かに緩んだ気がしたので、私は少し安堵する。
周りのヤジ声が大きいせいで、私達のヒソヒソは聞き取れないだろうね。
私は…改めて礼の形を取り、
「わかりました、レファイラ王后陛下…。この場での手続き、お受けいたします…」
静かに頭を下げる。
ああ…。
勝ち誇った顔でもしてんだろうが、知るか!!
こうして…王宮弁護士が呼ばれ、サクサクと手続きが済んだ。
もちろん何枚か同じものを書いて、控えとしてもらったが…あまり意味はないだろう。
だからと言って、やられっぱなしも癪だ!!
私はフォルトに耳打ちする。
「エマと一緒に行ってくれない?」
「し、しかし…。奥様の元を離れるわけには…」
「ダメよ…。途中で万が一何かあったら、2人の方がいい。
それに…王宮にはギリアムもいるから!!」
フォルトもエマも…後ろ髪を引かれる思いだったろうが、私の言葉に従い離れた。
ひとまずは、それでいい。
そんな中…満面の笑みでダリアが近づいてきて、
「さあさ、それじゃあ、ダイヤは私たちと一緒に来てちょうだい!!
話したいことが沢山あるのよ!!アナタ好きなものとか、聞かせて欲しいわ」
何だか周りにお花が見えるけどさぁ…。頭本当にイっちまったか?
「アナタは正気ですか、ダリア夫人…」
「え…?」
当然ダイヤから返されたのは、物凄い睨み返し。
「私は客としてここにきているのではなく、オルフィリア奥様の護衛としてここに来て
いるのです!!仕事をしているんです!!
傍を離れて談笑など、どうしてできると思うのですか!!」
これはもっともだよ…。
ましてダリアはずっと、護衛騎士を務める団を、率いてきたんだからね。
態度を緩和するのとそれとは、全くの別物だぜ。
「オルフィリア公爵夫人…」
あんだよ!!レファイラ!!
「こちらは…正規の手続きを踏んで、しっかりとそちらとの約束を守ったのです。
少しの間くらい…良いではありませんか?」
……なるほど、わかった。
私から…少しずつ周りをはぎ取る気なんだろう。
ギリアムが戻ってこないのも、思えばおかしい。
用事が済めば…即座に私の元に返ってくるはずなのに…。
足止めされているとしか思えない。
もしそうなら…かなり入念に組まれた作戦が、決行されているってことだ。
さて…どうする?
みんなの仕込みは…どこまで上手くいくかわからない。
完全な未知数。
「……ダリア夫人」
私は…ひとまず、聞いてみたいことを、口にすることにした。
「仮にも…護衛騎士をして来たアナタが、護衛騎士をしている者を、勤務中にたいした
用事もないのに、連れ出していいかどうか…わからないのですか?」
「たいした用事もない…」
ダリアがぼそりと呟き…一瞬だが、私を鋭く睨んだのを、私は見逃さなかった。
「少々お言葉が過ぎるのでは?オルフィリア公爵夫人…。
ダリア夫人は、積年の想いがあるのです。それを知りつつ、遠ざけてきたのはそちらでしょう?」
うっせーよ!!ゾフィーナくそばばぁ!!
ダリアの雰囲気を察して、出てきた手腕はさすがだがな!!
「……礼節を間違わないでいただければ、こちらとてそれなりの対応は致しました。
それを欠いた以上、態度を硬化させるしかなかったのです」
十分温情はかけたぞ、うん。
「オルフィリア公爵夫人!!」
勢いよく扇子をたたんだレファイラが、私をギッと睨み、
「何も長い時間、外させろとは言っていません!!
少しの間…温情をかけてあげなさいと、言っているのです!!
家族水入らずで、話したいことがあるでしょうから!!」
…あのよ。ダイヤはラスタフォルス侯爵家を家族とは思ってないんだよ。
まあ、そんな事を言った所で、またうるさいだろうがな。
あ~、マ・ジ・で!!
ハリセンでひっぱたきてぇ~!!!
でもまぁ…そんなことをしても、意味がねぇな。
仕方ねぇ…。
私は…深呼吸を数回したのち、
「ダイヤ…行きなさい」
「奥様!!」
これにはダイヤが…信じられないと言いたげに、縋るような目を向けて来る。
助けてほしい…と言うより、私が心配なんだろうな…。
どうあっても、私のそばにいたいようだ。
「長い時間ではないと言っているでしょう?
本当にそうか…自分の目で確認する方が、いいと思うわ。
それを鑑みて…私もギリアムも態度を決める」
グレンフォ卿は…先代ファルメニウス公爵と戦ってくれた人間だ。
でも…それを差し引いても、ダリアの態度は目に余る。
アンタの旦那がファルメニウス公爵家に与えた恩義…どんどん軽くなってるってわかって…
ないだろうな。
ダイヤは…苦しそうな顔をしていたが、ぎゅっと引き締め…。
やがて無表情になると、私に対し、頭を下げてから…離れた。
ダリアは…勝ち誇った顔を隠すことなく、ダイヤを連れてこの場を去る。
やれやれ…アンタは本当に、悪手まみれの事をするよね…。
さてと…残るはハートだけか…。
すると…待ってましたとばかりに、外野がざわつき始めた。
公衆の面前で、ハートが素っ裸を晒したのは事実だからね…。
さて…どうするかね…。
私が思案していると、
「オルフィリア公爵夫人…」
誰ともなく、声が上がった。
そもそも…ここにいる貴婦人連中、私が顔を知らない奴ばかりだよ。
「この国の貴婦人のトップとして、この際ハッキリさせたいのですがね…。
先の公開演武における、その私兵の戦いぶり…決して容認してはならぬと思いますが?」
私は…静かに扇子を開き、
「試合形式が、騎士の決闘の類であれば、そのお言葉も最もと捉えますが…。
戦争形式と銘打った以上、あれは正当と見るべきです」
「しかし、実際に傷付いた人間がいる以上、その人間に対し、何かしら償いをするべき
では?」
また別のが出てきたから、
「……傷付いた人間など、いるのですか?」
ちょっとすっとぼけてやる。
すると周りの外野共が…
「なっ!!ドロテア嬢は間違いなく、生まれも育ちも貴婦人の身分!!
あのような辱めを受けて、平気だと思うのですか!!」
「そうです!!私は見ていて、気絶しそうになりました!!」
「私だって、顔をおおっておりました!!」
「ショックで寝込んで…」
「私など…」
口々に言い出した。
レファイラやゾフィーナくそばばぁは…それを静かに見ているだけ。
ま、下を動かした方がいいっちゃいい事だが…。
だがそんな中…。
「オルフィリア公爵夫人は、人前で裸になるのは平気だと思われますが!!
世の女性の殆どは、辱めを受けるのです!!」
これにはちょっとピキッと来たので、
「あのですね…。私は好きで裸を晒したわけではない…と、裁判でも申し上げました。
ある意味今仰った方の言葉は…侮辱ですよ」
「でしたら!!」
これも…雑多過ぎて誰が言ったか分からない。
「理由をハッキリと聞かせていただきたいです!!」
まあ…確かにね。裁判でははぐらかしたが…でも、それにはちゃんと理由があるのさ。
「……調査段階だと申し上げております。
調査段階の事を、私が自分から言うのは避けさせていただいただけですよ」
ギリアムも言っていたが、恐らく…私が助けたあの子は、あそこで見殺しにされる運命だった
のだろう。
それで…混乱に乗じて、子供が死んでいると誰かが言えば…ファルメニウス公爵家に捜査が
入る。
場合によっては…様々な利権を没収されたり、制約をかけられることもあり得る。
滅多な事は言わない方がいい…。
指揮したのがジョノァドである以上、自分がやった証拠など残すまいよ。
子供を置き去りにしたルートは、急ピッチで調査しているが、秘密裏にやらなきゃいけないから、
まだ発見されてない。
こういう時…ファルメニウス公爵家のデカさが仇になる。
レファイラとゾフィーナくそばばぁは…多分、私の口から言わせたいのだろう。
私が裸になった経緯…。
暗殺者の糸にやられた事、子供を助けたこと…。
全て私の自作自演にしてしまえば、追求を逃れられるだけでなく、私の評判を一気に落とせる。
いや…それだけじゃない。
私の言ったことが、本当かどうか…私の名誉のために調べるとか、もっともらしい事を言って、
ファルメニウス公爵家に入る名分を得るかもしれない。
どちらにせよ、美味しい話だろう。
…………………………………。
はっ!!
……甘いよ。
若造ならまだしも、わたしゃ還暦越えばばあだぜ?
全てが自分の思い通りになる世界にしようなんざ、これっぽっちも思っちゃいねぇ。
どんなに頑張ったってわかり合えない人間はいるし、そもそもわかり合う価値もない人間も
この世にいるって知っている。
このまま…有耶無耶なままなら、邪推も揶揄もされるが…。
所詮、邪推や揶揄の範囲で止まる。
それで止めといた方がいい案件さ。
かくたる証拠が見つからない限りは…な。
私は…扇子で静かに顔を仰ぎつつ…外野のヤジをしばし…涼しい顔で受けるのだった。
私が…先だってオルフィリア公爵夫人に無礼を働き、過失とはいえ傷付けてしまった事…。
未だに尾を引いているようです!!すべては…私の不徳の致すところ…」
もっともらしく泣いてるけどさぁ…。嘘泣きだってバレバレだぞ。
私はめっちゃシラケてたんだが…。
「あれはもう、終わったことでは?」
レファイラの言葉も…何かわざとらしいな…うん。
「そう聞いており…すっかり安心しきっておりました…。
その私の不徳の致すところでございます…」
すると外野が待ってましたとばかりに…。
自分で終わったことだと言っておいて、根に持つ陰湿女だの、ヒドイだの、心が狭いだの…
まあ、好き勝手言ってくれてるよ。
……気にならんけどさ。
私は周り全部に悪人にされる事なんざ、あんま気にしないんだけどね…。
ただ…。
「奥様…もういいです」
やっぱりダイヤの方が…耐えられないか…。
別にいいよ…って言っても、無駄だろうから、好きにさせよう。
私は…ダイヤの目をじっと見て、
「……わかってる…んだね?」
「ええ。オレは…汚い世界で生きてきましたので…」
「わかった。何とかするから…」
「ありがとうございます。でも、無理しないでください、奥様…。
オレはオレで…向こうがそういう態度に出るなら、考えがありますので…」
「ダイヤこそ…無茶はしないでね。犬死はダメよ!!」
するとダイヤの頬が…僅かに緩んだ気がしたので、私は少し安堵する。
周りのヤジ声が大きいせいで、私達のヒソヒソは聞き取れないだろうね。
私は…改めて礼の形を取り、
「わかりました、レファイラ王后陛下…。この場での手続き、お受けいたします…」
静かに頭を下げる。
ああ…。
勝ち誇った顔でもしてんだろうが、知るか!!
こうして…王宮弁護士が呼ばれ、サクサクと手続きが済んだ。
もちろん何枚か同じものを書いて、控えとしてもらったが…あまり意味はないだろう。
だからと言って、やられっぱなしも癪だ!!
私はフォルトに耳打ちする。
「エマと一緒に行ってくれない?」
「し、しかし…。奥様の元を離れるわけには…」
「ダメよ…。途中で万が一何かあったら、2人の方がいい。
それに…王宮にはギリアムもいるから!!」
フォルトもエマも…後ろ髪を引かれる思いだったろうが、私の言葉に従い離れた。
ひとまずは、それでいい。
そんな中…満面の笑みでダリアが近づいてきて、
「さあさ、それじゃあ、ダイヤは私たちと一緒に来てちょうだい!!
話したいことが沢山あるのよ!!アナタ好きなものとか、聞かせて欲しいわ」
何だか周りにお花が見えるけどさぁ…。頭本当にイっちまったか?
「アナタは正気ですか、ダリア夫人…」
「え…?」
当然ダイヤから返されたのは、物凄い睨み返し。
「私は客としてここにきているのではなく、オルフィリア奥様の護衛としてここに来て
いるのです!!仕事をしているんです!!
傍を離れて談笑など、どうしてできると思うのですか!!」
これはもっともだよ…。
ましてダリアはずっと、護衛騎士を務める団を、率いてきたんだからね。
態度を緩和するのとそれとは、全くの別物だぜ。
「オルフィリア公爵夫人…」
あんだよ!!レファイラ!!
「こちらは…正規の手続きを踏んで、しっかりとそちらとの約束を守ったのです。
少しの間くらい…良いではありませんか?」
……なるほど、わかった。
私から…少しずつ周りをはぎ取る気なんだろう。
ギリアムが戻ってこないのも、思えばおかしい。
用事が済めば…即座に私の元に返ってくるはずなのに…。
足止めされているとしか思えない。
もしそうなら…かなり入念に組まれた作戦が、決行されているってことだ。
さて…どうする?
みんなの仕込みは…どこまで上手くいくかわからない。
完全な未知数。
「……ダリア夫人」
私は…ひとまず、聞いてみたいことを、口にすることにした。
「仮にも…護衛騎士をして来たアナタが、護衛騎士をしている者を、勤務中にたいした
用事もないのに、連れ出していいかどうか…わからないのですか?」
「たいした用事もない…」
ダリアがぼそりと呟き…一瞬だが、私を鋭く睨んだのを、私は見逃さなかった。
「少々お言葉が過ぎるのでは?オルフィリア公爵夫人…。
ダリア夫人は、積年の想いがあるのです。それを知りつつ、遠ざけてきたのはそちらでしょう?」
うっせーよ!!ゾフィーナくそばばぁ!!
ダリアの雰囲気を察して、出てきた手腕はさすがだがな!!
「……礼節を間違わないでいただければ、こちらとてそれなりの対応は致しました。
それを欠いた以上、態度を硬化させるしかなかったのです」
十分温情はかけたぞ、うん。
「オルフィリア公爵夫人!!」
勢いよく扇子をたたんだレファイラが、私をギッと睨み、
「何も長い時間、外させろとは言っていません!!
少しの間…温情をかけてあげなさいと、言っているのです!!
家族水入らずで、話したいことがあるでしょうから!!」
…あのよ。ダイヤはラスタフォルス侯爵家を家族とは思ってないんだよ。
まあ、そんな事を言った所で、またうるさいだろうがな。
あ~、マ・ジ・で!!
ハリセンでひっぱたきてぇ~!!!
でもまぁ…そんなことをしても、意味がねぇな。
仕方ねぇ…。
私は…深呼吸を数回したのち、
「ダイヤ…行きなさい」
「奥様!!」
これにはダイヤが…信じられないと言いたげに、縋るような目を向けて来る。
助けてほしい…と言うより、私が心配なんだろうな…。
どうあっても、私のそばにいたいようだ。
「長い時間ではないと言っているでしょう?
本当にそうか…自分の目で確認する方が、いいと思うわ。
それを鑑みて…私もギリアムも態度を決める」
グレンフォ卿は…先代ファルメニウス公爵と戦ってくれた人間だ。
でも…それを差し引いても、ダリアの態度は目に余る。
アンタの旦那がファルメニウス公爵家に与えた恩義…どんどん軽くなってるってわかって…
ないだろうな。
ダイヤは…苦しそうな顔をしていたが、ぎゅっと引き締め…。
やがて無表情になると、私に対し、頭を下げてから…離れた。
ダリアは…勝ち誇った顔を隠すことなく、ダイヤを連れてこの場を去る。
やれやれ…アンタは本当に、悪手まみれの事をするよね…。
さてと…残るはハートだけか…。
すると…待ってましたとばかりに、外野がざわつき始めた。
公衆の面前で、ハートが素っ裸を晒したのは事実だからね…。
さて…どうするかね…。
私が思案していると、
「オルフィリア公爵夫人…」
誰ともなく、声が上がった。
そもそも…ここにいる貴婦人連中、私が顔を知らない奴ばかりだよ。
「この国の貴婦人のトップとして、この際ハッキリさせたいのですがね…。
先の公開演武における、その私兵の戦いぶり…決して容認してはならぬと思いますが?」
私は…静かに扇子を開き、
「試合形式が、騎士の決闘の類であれば、そのお言葉も最もと捉えますが…。
戦争形式と銘打った以上、あれは正当と見るべきです」
「しかし、実際に傷付いた人間がいる以上、その人間に対し、何かしら償いをするべき
では?」
また別のが出てきたから、
「……傷付いた人間など、いるのですか?」
ちょっとすっとぼけてやる。
すると周りの外野共が…
「なっ!!ドロテア嬢は間違いなく、生まれも育ちも貴婦人の身分!!
あのような辱めを受けて、平気だと思うのですか!!」
「そうです!!私は見ていて、気絶しそうになりました!!」
「私だって、顔をおおっておりました!!」
「ショックで寝込んで…」
「私など…」
口々に言い出した。
レファイラやゾフィーナくそばばぁは…それを静かに見ているだけ。
ま、下を動かした方がいいっちゃいい事だが…。
だがそんな中…。
「オルフィリア公爵夫人は、人前で裸になるのは平気だと思われますが!!
世の女性の殆どは、辱めを受けるのです!!」
これにはちょっとピキッと来たので、
「あのですね…。私は好きで裸を晒したわけではない…と、裁判でも申し上げました。
ある意味今仰った方の言葉は…侮辱ですよ」
「でしたら!!」
これも…雑多過ぎて誰が言ったか分からない。
「理由をハッキリと聞かせていただきたいです!!」
まあ…確かにね。裁判でははぐらかしたが…でも、それにはちゃんと理由があるのさ。
「……調査段階だと申し上げております。
調査段階の事を、私が自分から言うのは避けさせていただいただけですよ」
ギリアムも言っていたが、恐らく…私が助けたあの子は、あそこで見殺しにされる運命だった
のだろう。
それで…混乱に乗じて、子供が死んでいると誰かが言えば…ファルメニウス公爵家に捜査が
入る。
場合によっては…様々な利権を没収されたり、制約をかけられることもあり得る。
滅多な事は言わない方がいい…。
指揮したのがジョノァドである以上、自分がやった証拠など残すまいよ。
子供を置き去りにしたルートは、急ピッチで調査しているが、秘密裏にやらなきゃいけないから、
まだ発見されてない。
こういう時…ファルメニウス公爵家のデカさが仇になる。
レファイラとゾフィーナくそばばぁは…多分、私の口から言わせたいのだろう。
私が裸になった経緯…。
暗殺者の糸にやられた事、子供を助けたこと…。
全て私の自作自演にしてしまえば、追求を逃れられるだけでなく、私の評判を一気に落とせる。
いや…それだけじゃない。
私の言ったことが、本当かどうか…私の名誉のために調べるとか、もっともらしい事を言って、
ファルメニウス公爵家に入る名分を得るかもしれない。
どちらにせよ、美味しい話だろう。
…………………………………。
はっ!!
……甘いよ。
若造ならまだしも、わたしゃ還暦越えばばあだぜ?
全てが自分の思い通りになる世界にしようなんざ、これっぽっちも思っちゃいねぇ。
どんなに頑張ったってわかり合えない人間はいるし、そもそもわかり合う価値もない人間も
この世にいるって知っている。
このまま…有耶無耶なままなら、邪推も揶揄もされるが…。
所詮、邪推や揶揄の範囲で止まる。
それで止めといた方がいい案件さ。
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