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第8章 暗躍
5 王宮でのひと悶着
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――――王宮。
「そうか…ご苦労だった。
父上にはオレから報告しておく」
ローカス卿の報告を受けているのは、ケイルクス王太子殿下だ。
「少しでも進展があってよかったよ。
ステンロイド男爵家はまだしも、オルフィリア嬢については本当に何も
出てこなかったからな」
「まあ…名ばかり貴族についての扱いは、随分とズサンですからね…。
これを機に一度、しっかりしておくことをオススメします。
一部犯罪の温床にも、なっていることですし…」
「まあな…それも今度の議題に載せるよう、父上に進言しておく」
ケイルクス王太子殿下は頭をかく。
「で?
すでに調べ始めたんだろう?
何か出たか?」
「いえ…さすがにこの短期間では…。
しかし徐々に集まると思いますし、是が非でも集めます」
「助かるよ…ローカス卿が優秀で…。
やっぱり今回の出張、ローカス卿を置いていくべきだったな…」
「それは難しいと思います。
ケイルクス王太子殿下だけでなく、国王陛下まで出向くとなると、
団長の私が行かないわけには…」
「まあなあ…」
二人して神妙な空気の中、
「失礼いたします!!」
近衛騎士が入ってきた。
「ベンズ卿、どうした?」
ベンズ・トウード・コウドリグス侯爵。
近衛騎士団の副団長を務めている。
歳は30代半ばぐらい、短く切った銀髪に四角い顔、いかつい表情と
体躯はまさに、ザ・兵士!といった感じだ。
「その…王女殿下が…」
「今度は何やった~!!」
ケイルクス王太子殿下はさらに沈む。
もやは問題しか起こさないという考えだ。
「その…お庭を散歩中…逃走を図ったようで…」
「はあ?あいつは建国記念パーティーまで外に出すなって、父上
直々のご命令だぞ!!」
「それが…私の不在中、国王陛下から許可が出たと、王后陛下が
嘘をついて連れ出したようで…」
「カンベンしてくれ~(ケイルクス)」
「で?今、王女殿下はどこに?(ローカス)」
「私がたまたま王女殿下が出ようとしていた、裏門の近くにいま
して…国王陛下に確認が取れるまで、絶対に通さないとお話しし、
だいぶ暴れられましたが、通しませんでした。
今はお部屋に戻られております」
「ベンズ卿!お手柄だ!!ありがとう(ローカス)」
「いえ…自分は役目を果たしたまでです(ベンズ)」
「で?父上はなんと?(ケイルクス)」
「王太子殿下から、お二人にしっかり言い聞かせるように…と
(ベンズ)」
「はー、ホントは父上からのほうがいいんだが…(ケイルクス)」
「致し方ありません。
先の出張の事後処理が終わっておりませんので…(ローカス)」
実は先日レティア王女殿下がギリアムの所に尋ねて来た時に、
国王陛下も王太子殿下も不在だった。
理由は進めていた国家プロジェクトに、天災が原因による問題が
発生し、どうしても出かけざるを得なかったのだ。
もちろん王女殿下には出ないように、周りにも出さないようにと
よーく言い聞かせたのだが…まあ結果は御覧の通りだ。
ケイルクス王太子殿下はローカス卿を伴い、レティア王女殿下の
部屋へ。
「ホンットお前、いい加減にしろよ!!」
部屋で王后陛下に慰められている、レティア王女殿下に対し
息まく。
「な…なによ!!お兄様…協力してくれると思ったのに…」
「そうですよ。
レティアはギリアムのためにいろいろ必死になってやっている
というのに…」
「そーやって母上が甘やかすから、コイツがつけあがるんです
ってば!!」
一喝する。
「コイツが今、市勢でどういわれているかきーたでしょ?
救国の英雄様の所に無遠慮に押し掛けた挙句、相手にされて
いないのもわからない、バカ王女って」
「ヒ…ヒドイ!!そんな噂、誰が!!」
「ホントのことなんだから、しょーがないだろ!!」
「な…なんてことを言うんですか!!ケイルクス!!
仮にもたった一人の妹に向かって!!
この子が今までどれだけ自分を磨いて努力してきたか…」
ケイルクス王太子殿下はガシガシ頭を掻きながら、
「もう母上もいい加減認めてください!!
レティアはギリアムに嫌われてるってことを!!」
「なっ!!
この子ほどの美人はこの国にはいないというのに…」
「美人であっても万人に好かれるわけではありません!!
嫌われている相手に好かれようと思ったら、それなりの作戦や
相手の好みに近づける努力が必要なんです!!
外面ばっかり磨いてりゃいいわけじゃ、ありません!!」
すると王后陛下はわなわなしながらローカス卿の方を向き、
「あなたはこんな所で何をやっているのです!!
レティアの根も葉もない中傷の噂を流している者共をさっさと
ひっ捕らえて…」
完全な八つ当たりなのだが、ローカス卿は無表情のまま胸に
手を当て、頭を少し垂れて、
「むろん、噂の火消しは全力でやっております。
しかしながら…根も葉もないものではないだけに、苦戦して
おります」
「な!!」
「そりゃそーだろーよ。
婚約した男の所に、未練たらしく無遠慮に押し掛けて、その男が
気を利かせて出て行ったにもかかわらず、いつまでも居座ろうと
する。
淑女の鏡とならなきゃいけない王女がしょーもねーって…
全部そのまんまじゃねーか、どう否定する気だ!!」
「そ…それは…私とギリアムの仲だし…」
「特に親しい仲じゃないのは、平民の子供だって知ってる!!」
泣き出してしまったレティア王女に目もくれず、
「とにかく母上!!
アナタがレティアとギリアムをくっつけたいなら、まずは
レティアがギリアムに嫌われているという前提で作戦を考えて
ください!!
じゃなきゃオレは、金輪際協力しません!!」
言っていることは至極まともなのだが、残念ながら王女殿下にも
王后陛下にも伝わらないようだ。
王女殿下はずっと泣いているままだし、王后陛下は不当なことを
言われている…としか思えないという目だ。
そして王后陛下が何かを言おうとした、その時。
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血相変えて入ってくるベンズ卿
「そうか…ご苦労だった。
父上にはオレから報告しておく」
ローカス卿の報告を受けているのは、ケイルクス王太子殿下だ。
「少しでも進展があってよかったよ。
ステンロイド男爵家はまだしも、オルフィリア嬢については本当に何も
出てこなかったからな」
「まあ…名ばかり貴族についての扱いは、随分とズサンですからね…。
これを機に一度、しっかりしておくことをオススメします。
一部犯罪の温床にも、なっていることですし…」
「まあな…それも今度の議題に載せるよう、父上に進言しておく」
ケイルクス王太子殿下は頭をかく。
「で?
すでに調べ始めたんだろう?
何か出たか?」
「いえ…さすがにこの短期間では…。
しかし徐々に集まると思いますし、是が非でも集めます」
「助かるよ…ローカス卿が優秀で…。
やっぱり今回の出張、ローカス卿を置いていくべきだったな…」
「それは難しいと思います。
ケイルクス王太子殿下だけでなく、国王陛下まで出向くとなると、
団長の私が行かないわけには…」
「まあなあ…」
二人して神妙な空気の中、
「失礼いたします!!」
近衛騎士が入ってきた。
「ベンズ卿、どうした?」
ベンズ・トウード・コウドリグス侯爵。
近衛騎士団の副団長を務めている。
歳は30代半ばぐらい、短く切った銀髪に四角い顔、いかつい表情と
体躯はまさに、ザ・兵士!といった感じだ。
「その…王女殿下が…」
「今度は何やった~!!」
ケイルクス王太子殿下はさらに沈む。
もやは問題しか起こさないという考えだ。
「その…お庭を散歩中…逃走を図ったようで…」
「はあ?あいつは建国記念パーティーまで外に出すなって、父上
直々のご命令だぞ!!」
「それが…私の不在中、国王陛下から許可が出たと、王后陛下が
嘘をついて連れ出したようで…」
「カンベンしてくれ~(ケイルクス)」
「で?今、王女殿下はどこに?(ローカス)」
「私がたまたま王女殿下が出ようとしていた、裏門の近くにいま
して…国王陛下に確認が取れるまで、絶対に通さないとお話しし、
だいぶ暴れられましたが、通しませんでした。
今はお部屋に戻られております」
「ベンズ卿!お手柄だ!!ありがとう(ローカス)」
「いえ…自分は役目を果たしたまでです(ベンズ)」
「で?父上はなんと?(ケイルクス)」
「王太子殿下から、お二人にしっかり言い聞かせるように…と
(ベンズ)」
「はー、ホントは父上からのほうがいいんだが…(ケイルクス)」
「致し方ありません。
先の出張の事後処理が終わっておりませんので…(ローカス)」
実は先日レティア王女殿下がギリアムの所に尋ねて来た時に、
国王陛下も王太子殿下も不在だった。
理由は進めていた国家プロジェクトに、天災が原因による問題が
発生し、どうしても出かけざるを得なかったのだ。
もちろん王女殿下には出ないように、周りにも出さないようにと
よーく言い聞かせたのだが…まあ結果は御覧の通りだ。
ケイルクス王太子殿下はローカス卿を伴い、レティア王女殿下の
部屋へ。
「ホンットお前、いい加減にしろよ!!」
部屋で王后陛下に慰められている、レティア王女殿下に対し
息まく。
「な…なによ!!お兄様…協力してくれると思ったのに…」
「そうですよ。
レティアはギリアムのためにいろいろ必死になってやっている
というのに…」
「そーやって母上が甘やかすから、コイツがつけあがるんです
ってば!!」
一喝する。
「コイツが今、市勢でどういわれているかきーたでしょ?
救国の英雄様の所に無遠慮に押し掛けた挙句、相手にされて
いないのもわからない、バカ王女って」
「ヒ…ヒドイ!!そんな噂、誰が!!」
「ホントのことなんだから、しょーがないだろ!!」
「な…なんてことを言うんですか!!ケイルクス!!
仮にもたった一人の妹に向かって!!
この子が今までどれだけ自分を磨いて努力してきたか…」
ケイルクス王太子殿下はガシガシ頭を掻きながら、
「もう母上もいい加減認めてください!!
レティアはギリアムに嫌われてるってことを!!」
「なっ!!
この子ほどの美人はこの国にはいないというのに…」
「美人であっても万人に好かれるわけではありません!!
嫌われている相手に好かれようと思ったら、それなりの作戦や
相手の好みに近づける努力が必要なんです!!
外面ばっかり磨いてりゃいいわけじゃ、ありません!!」
すると王后陛下はわなわなしながらローカス卿の方を向き、
「あなたはこんな所で何をやっているのです!!
レティアの根も葉もない中傷の噂を流している者共をさっさと
ひっ捕らえて…」
完全な八つ当たりなのだが、ローカス卿は無表情のまま胸に
手を当て、頭を少し垂れて、
「むろん、噂の火消しは全力でやっております。
しかしながら…根も葉もないものではないだけに、苦戦して
おります」
「な!!」
「そりゃそーだろーよ。
婚約した男の所に、未練たらしく無遠慮に押し掛けて、その男が
気を利かせて出て行ったにもかかわらず、いつまでも居座ろうと
する。
淑女の鏡とならなきゃいけない王女がしょーもねーって…
全部そのまんまじゃねーか、どう否定する気だ!!」
「そ…それは…私とギリアムの仲だし…」
「特に親しい仲じゃないのは、平民の子供だって知ってる!!」
泣き出してしまったレティア王女に目もくれず、
「とにかく母上!!
アナタがレティアとギリアムをくっつけたいなら、まずは
レティアがギリアムに嫌われているという前提で作戦を考えて
ください!!
じゃなきゃオレは、金輪際協力しません!!」
言っていることは至極まともなのだが、残念ながら王女殿下にも
王后陛下にも伝わらないようだ。
王女殿下はずっと泣いているままだし、王后陛下は不当なことを
言われている…としか思えないという目だ。
そして王后陛下が何かを言おうとした、その時。
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血相変えて入ってくるベンズ卿
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