ひとまず一回ヤりましょう、公爵様

木野 キノ子

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第10章 信念

10 3年前に起きた、クレアとの確執5

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あり得ない話編、第二弾だよ~。

「ええそうです。
オルフィリア嬢はご存じなようなので、包み隠さずお話し
しますが…」

お、デイビス卿にチェンジ。

「このパーティーの翌日、タニア侯爵夫人が騎士団を訪ねて
来まして…」

「乗り込んできたの間違いだろう」

まあ、ギリアムからしたら、そうだろうけどさぁ。

「続けてください、デイビス卿」

「私が対応したのですが、まあ…泣きながら色々訴えられて
いましたが、要約するとギリアム公爵閣下とクレア嬢が騎士団の
本部で仲睦まじくしていたと、証言しろというもので…」

ありゃりゃ。

「もちろん私もほかの団員…一兵卒に至るまで拒否しました。
事実無根の…いわゆる嘘の証言などできないと」

…この人も、ちょっとギリアムっぽい。
あ、だから副団長やれるんやな。

「それでどうしたのですか?」

「最後は怒って帰られました」

ホント、いい年こいた人間のすることじゃネー。
この後のことも、もちろん!

「そしてそのあと…例の怪文書が出回った…と」

「ええ、そうです」

怪文書とは…

騎士団の団員は、ギリアムの奥方として、クレア嬢を認めていた
にも拘わらず、それを証言しない。
クレア嬢は困窮した団員たちに、金銭的援助をしたり、様々な
差入れをして励ましたり、悩みを聞いたりしていたのに。
騎士団員は恩知らずもいいところ。
クレア嬢は何も悪くないのに、心を痛め臥せっている。

…こんな内容。
言葉はもう少し複雑に書かれていたらしいが、簡潔に言うと
こんなかんじ。

「これこそ事実無根ですよね」

私が聞けば、

「もちろんです。
まず、団員の誰もクレア嬢を奥方として認めてなどいません。
金銭的な援助を受けた人間はいません。
これは徹底して調べましたので、間違いありません。
差入れ自体を持ってくるときは、クレア嬢はいましたが、配るのは
使用人に任せて、さっさと団長の所に行ってしまいました。
言葉を交わしたことなど、数えるほどですよ。
それだって、挨拶の延長と言ったところです」

デイビス卿がすらすらと答えた。

そーだよねぇ…。

んでさ、タニア侯爵夫人……………………言っていい?

娘ともども……ばかでしょ?

フォルトから聞いたよ。
ギリアムは自分個人ではなく、騎士団員に対して攻撃されたこと
で、完全に切れちゃったって。

ギリアム・アウススト・ファルメニウスって男はさー。
社会頭も勉強頭もピカ一にいいんだよ。
そして自分の持ってる武器を、正確に把握もしてるのさ。

フィリアム商会が立ち上げてからすぐに、大陸で1,2を争う
大きさになったのは、もちろん運営する人たちが優秀だから
というのもあるが、何よりギリアムの名声が関係している。

救国の英雄様は、自国のみならず、他国でも大変な人気だ。
そして恩義を受けた隣国に至っては、関税をほぼほぼタダに
する勢いで、様々な優遇をしてくれたそう。
まあ…戦争中、ギリアムがたくさんの物資を援助したからね~。

そしてそれ以外の国も、ギリアムに感服しているせいか、関税の
値段を安くするか、物品そのものの価格に色を付けてくれている。
そういったことが、大いに関係しているのさ~。

だからギリアムは自分の名声とフィリアム商会の力を使い、
オペロント侯爵にかなりガチの制裁を加えた。

目には目を歯には歯を。
オペロント侯爵に事実無根の中傷をされたこと。
クレア嬢と夫人にも大変な失礼をされたことを、文書などに
せず、世間話として国内だけではなく、国外にも知れ渡るよう
商会関係者に指示した。
優秀な人間たちは、即座に実行。
結果、オペロント侯爵の取引先は、こぞって価格を上げるか
取引中止を申し渡した。
それだけでなく、ギリアムはオペロント侯爵の爵位剥奪にも
乗り出した。
オペロント侯爵は侯爵全体の序列では、下の方なのだ。
ゆえに侯爵家とは言え、ファルメニウス公爵家がその気になれば、
貴族の称号自体も十分剥奪できる。

そしてギリアムの逆鱗に触れたくないほかの貴族たちは
オペロント侯爵家との付き合いを、当然やめた。

生まれながらの貴族が、貴族でなくなるというのは、本人が
望まない限り、死刑と同等だ。

当然、オペロント侯爵はギリアムに即詫びを入れてきたが、
取り合ってもらえるはずもない。
そしてあれほどもてはやしていた取り巻きたちは、手のひらを
返し、こぞってオペロント侯爵家を悪しざまに罵った。

この状態になるまで、2か月ほどだったというんだから…
本当にギリアムは、猛攻と特攻が上手なんやね。

これがこのまま続いたら、今現在オペロント侯爵家は存在して
いなかっただろう。

それを止めたのが…今は亡きフレイア伯爵夫人だ。
フレイア伯爵夫人は気の強い人ではないが、辛抱強く芯は強い。
ゆえに、パーティーの直後から、テオルド卿に何度も何度も
お願いしたそうだ。
どうか一度だけでいいから、チャンスをやってくれと。
このまま自分の妹と姪が、悲惨な末路を迎えるのは、忍びない
から…と。
最初は相手にしなかったテオルド卿だが、それでも辛抱強く頭を
下げるフレイア夫人についに折れて、ギリアムに攻撃の手を
緩めてもらうことと、慈悲をもらいたい旨、願い出たらしい。

他ならぬテオルド卿の頼みであったため、ギリアムは

噂が事実無根であると、クレア嬢およびタニア侯爵夫人に証言
させること
クレア嬢に二度と勘違いさせぬようにすること
もう一回このようなことがあった場合は、絶対に容赦しない

という、条件のもと和解に応じたのだった。

「まあこれが全容だ…」

あ~、ギリアムは相変わらず不満そうやね~。

「わかったかい?フィリー」

「何がです?」

急にふるなや。

「彼らの言動を考えれば、私のしたことは決してやりすぎ
などではないということが」

あ…根に持ってたんやね。
意外とちっさいな。

「ん~、それはつまり…。
レオニール卿の意見が間違ってると、言いたいのですか?」

「そうです」

ハッキリ答えんな!!
あのね、ギリアム。
レオニール卿が苦言を呈してくれてるのは、何よりあんたの
ためなんだよ!!
自分がヤな思いしても、あんたのこと大切にしてんのよ!!

…と言ってやりたいが、それでは売り言葉に買い言葉だ。
だからここは…。

「なんか…悲しいです…」

ちょっと伏目がちに、涙をためて…と。

「ど…どうしたんですか?」

慌ててるねギリアム、予想外だってか。

「私の意見も、レオニール卿と同じなので…。
だからギリアム様は、私の意見が間違ってるとおっしゃってるん
ですよね?」

「!!」

あ、レオニール卿驚いてら。
まあ、だよね。

「なっ、なぜ!!」

「オペロント侯爵家が完全に悪いですが…それにしたって
やりすぎですよ、ギリアム様。
あ、制裁の話ではなく、パーティー会場でのこと限定ですがね」

「せっ、説明を求めます!!」

乗り出してきたね~。

「そうですね…では…」

私はギリアムではなく、皆の方を向き、

「実は私、フォルトからこの話を聞いて、一つ考えたことが
あります」

「なんでしょうか?」

「私がギリアム様の立場だったら…あの場でどう、行動したか…
です」

「ほう」

みんな興味津々って眼ぇしてる。
よしよし。

「だからそれに対する、皆さまのご意見もお聞きしたい。
もちろん、どんな意見であれ、ギリアム様に責めさせたりは
致しません」

ここでまたギリアムに向き直り、

「あ、もちろんギリアム様のご意見も、大いに聞きたいです」

「…わかりました」

わかりやすくぶすくれてるね、ギリアム。
ま、私にそんな顔したって、無駄やけどね。
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