ひとまず一回ヤりましょう、公爵様5

木野 キノ子

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第1章 狩猟

5 敵の謀略

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さて…狩猟大会の開始式典は、厳かに盛大にとり行われた。
様々な楽器の演奏から始まり、国王陛下のお言葉及び開始の合図によって、狩猟大会の
選手たちは、野山に散っていく。

一方、観客は…だべる!!

え?
だってさぁ…。
テレビ中継があるわけでもないからさぁ…一応取材の記者は入ってるけどさぁ…。
詳細がわかるのなんて、後日だよ?
獲物持って選手が返ってくるまで…暇でしょうがねぇ…ハズなんだけど!!

私はと言えば…ひっきりなしに挨拶してくる連中の対応に大忙し。
普通だったら適当に流してもいいんだが…、マギーを私のそば仕えみたいに見せるためには、
そういうわけにいかない。

やっとひと段落ついたころには…一時間以上が経過していた。

…………………………………疲れた~~~~~。

それにしても…。
私は王家のスペースに目をやる。
さっきからバカ王女が、異様に静かなのが気になる…。

王族は基本スペースにいて、皆からの挨拶を受けたり、気に入った人間と喋ったりする。
私はもちろん一番最初に挨拶に行った。
国王陛下からはお言葉をもらったが、他3人はダンマリだった。
まあ、私を認めたくないから当然だがね。

バカ王女は顔を扇子で隠していたから、表情は見えなかった。

まあ、ここで暴れたりしたら、また謹慎…悪けりゃもっとひどくなるのは、さすがにわかってる
みてーだ。

一息つきたかったから、スペースに戻る。
ギリアムが配慮してくれたようで、スペースは王家の場所からかなり遠い。
スペースの場所は、序列の高い順に決めていい事になっている。
普通は王家の近くに行きたがるが、ウチは…まあ、ね。

スペースに入ってしまったら、許可なく入ったり、喋ったりするのは禁止だし。

「お疲れ様です、奥様」

フォルトがすかさず飲み物を出してくれた。
それを飲みつつ、

「あ~、やっぱお初の大きなイベントだから、人がひっきりなしに来る~。
警備の皆も大変だよね~。
今度また、開発した新商品を持って行こ」

「で、ございますね」

エマもお茶とお茶菓子を用意してくれている。

「ね~、皆も一息入れな~い?」

「そういうわけにはまいりません(テオルド卿)」

「一日立ちっぱなんて、しょっちゅうですよ(デイビス卿)」

「護衛である以上、気は抜けませ~ん(ヴァッヘン卿)」

「どうぞご心配なく(リグルド卿)」

「体力には自信がありますから(ガイツ卿)」

護衛騎士の皆様も似たり寄ったりの答えだった。

「マギーもくつろいでね。
大変だったでしょ」

「あ…はい…」

やっぱりお疲れの様。

私はお菓子で糖分を補充しつつ、改めて頭を働かせる。
解せないことが多いから。

まず何で…王家はスペースを遠くに取ることを、許可したのだろう…。
王后陛下とバカ王女は、私の苦しむさまを、より近くでみたいはずだ。
それなら…王家の近くに取るのがベスト。
危険なことをしてくる…とは思うから、一定の距離は必要だが、全く見えない所、
あずかり知らない所で私がくたばることなど、望むまい…。
特にバカ王女はずっと自分が欲しくてたまらなかったものを、私にかすめ取られたと
思ってるから、余計にな…。

となると…徐々に苦しめられる物…。
毒を使う可能性大…。

しかし…。

毒を盛るってのは、そんなに簡単じゃない。
特に相手が警戒していた場合。
それでも己のテリトリー内なら、ワンチャンあるかもだけど、ファルメニウス公爵家の
スペースじゃまず無理。
ファルメニウス公爵家の人間達も、わかっているからこそかなり警戒して、毒味も二重三重に
してるし…。
この状況で、私なら何が出来るか…う~ん。

私が悩んでいると、

「どうしたの?フィリー…」

マギーが心配そうにのぞき込んでくる。

「ああ、ゴメン…。
考えることが多くて…」

「ファルメニウス公爵夫人になったんだから、仕方ないわ」

マギーよ…。
癒されるなぁ…。

「でもいいの?他の人と交流しなくて」

「ん~、さっき挨拶したんだけど…あんまり親しくしたいって思う人、いなかったから」

正直…みんな目が飢えた獣か、蔑みを帯びるかのどっちかだったんだもん。

まあ、レイチェルやジュリア…百戦錬磨の猛者夫人たちには、今日の狩猟大会、私をつけ狙って
いる奴らがいるから、危ないので欠席をお願いした。
皆親族含めどうしても出たい…とかじゃなかったらしく、素直に欠席してくれた…。
有難し。

だからいつも親しくしている人間は、今日は一人もいない。
マギーは私と離れずになっているから、とりあえずオッケー。

ギリアムは…警備担当として、総指揮をとらねばならないから、観客席ばかりにとどまれない。
会場全体を見回って、ほころびが無いか確認している最中だ。

近衛騎士団は今日は会場全体に散っている。
だから警備自体は、己たちの連れてきた護衛騎士に頼るところが多いのは皆一緒。

う~ん、う~ん。

私が唸っていると…それを嘲笑うかのように、

「――――――――――――――――――――――――――――――っ!!」

辺りを包み込んだ轟音が、鼓膜を打ち付けた。

「な、なに?」

私が振り返れば、森のあちこちから…火の手が上がっていた。

「奥様!!絶対に我らのそばを離れないでください!!」

皆が一斉に臨戦態勢に入るのだが…。
運悪く、火の勢いが強いうえ、こちらは風下だった。

「奥様!!避難を!!」

「わかった!!マギー!!」

「はい!!」

私たちは皆でスペースを出て、森の中へ…。
周りの所々から、悲鳴が聞こえる。
しかし私たちは止まらない。
黒幕実行犯の仕掛けたフェイクである可能性もあるし…、とくに猛獣を放つこの狩猟大会は、
危険であることを了承の上、皆来ている。
護衛は必ず連れてきているハズだし、ある意味自己責任の世界だから。

ファルメニウス公爵家のスペースは、王家から離れているとはいえ、会場全体を見回せるよう、
結構奥にあるのだ。
馬車のある所まで、結構かかる。
だから、威厳を示さにゃならん立場はツライ!!

そんな中、進行方向の横にある茂みがガサガサと揺れたため、私ら一行は足を止める。

「たっ、助けてください!!」

中から出てきたのは…私よりも少し身長が高いくらいの…細身の令嬢だった。
ショール付きの帽子を被っていて、顔はわからない。

「にっ、逃げていたら…みんなとはぐれてしまって…」

「とにかくこってちへ!!走れますか?」

「は…はい」

護衛騎士の一人が、私たちの所へ連れてきた。

「走りましょう!!」

そう言って駆けだそうとしたのだが、

「ま、待ってください…、今になって…震えが…」

茂みから出てきた女性が、私の腕を掴んできた…瞬間だった。
私の体は電気ショックを与えられたように、すさまじい圧の衝撃が腕の細胞にのしかかった。

もうそこからは…無意識だったと思う。

懐に隠しておいた短剣を素早く引き抜き、私を掴んでいる女性の腕に、一気に振り下ろした。

そして…私の短剣は地面に刺さったのだった。

「おっ、奥様、何を!!」

私の短剣が地面に刺さった時…女性の姿はすでになかった。

「全員気をつけて!!
あの女は敵よ!!
おそらく近くに仲間がいる―――――――――――――っ!!」

私の喉の奥から…目一杯魂の叫びが吐き出される。

すると…、

「おいおい…なんでバレたんだぁ?
腕が鈍ったんじゃないか?」

私の声に対比するように…暗くて静かなテノールの響きがあたりにこだました。

「バカ言わないで。
私の変装は完璧だって知ってるでしょ?
殺気なんて、微塵も出してない。
ジェードが近くにいたんじゃない?」

「そんなはずはないだろう?
あいつはクローバが止めているハズだ…」

まあ、わかんないだろうねぇ。
私は前世の経験のおかげで…体の一部に触る…及び触られることで、誰だかわかるように
なってるんだ。
そして…ルベンディン侯爵家の仮面舞踏会で、アンタは私の腕を掴んだからね。
それもかなり強く。
だから…わかったよ。
アンタだって!!

「まあ、いいさ。
私たちのすることは…結局変わらん」

その声を合図とするように…周りの木々の中から、3人の人間が姿を現した…。

全員が覆面をし、つなぎの様な服を着ている。
そして周りの茂みが揺れる。

重低音の唸り声を伴って現れたそれは…狩猟大会に放たれている種と同じ、様々な猛獣たちだった。

「さぁて…ショータイムとしゃれこもうかぁ!!」
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