ひとまず一回ヤりましょう、公爵様5

木野 キノ子

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第4章 交流

4 交流会後の懇親会は…ヘドネの戦場だよん

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懇親会の大ホールは…特に凝った調度品や装飾で満たした。
交流会をすると決めた時…やはり一番気を付けなきゃいけないのは、貴族に対する対応だった。
どうしても…私はド庶民歴が長いから…その辺は勉強中だがまだ疎い。

でもそこで助けになってくれたのは…、フィリアム商会や王立騎士団で知り合った夫人方だ。
様々な流行や、ブティック、職人など、有名どころから穴場まで、かなり教えてくれた。
そのおかげで…大ホールの装いが出来上がったと言っても過言じゃない。

恩返しは…今後しっかりとしていかないとね。

「オルフィリア公爵夫人…今日の催しは、素晴らしかったですわ」

そう言って集まってくれたのは…百戦錬磨の猛者夫人…クァーリア・ケイティ・サーシャ・
エティリィの4人だった。

「このお食事もお酒も…すべてフィリアム商会で開発したり、掘り出したりしたものが…
大半なんでしょう?」

「ええ…、皆さまの尽力あっての、賜物ですわ」

いつの間にか…私の周りには人が集まってきていた。
色々…聞きたいのだろうし、正式な夫人になったからこそ、私とお近づきになりたいのだろう。
ま、適宜やるか…。

「オルフィリア公爵夫人…」

そんな中、聞きなれた声で、私は振り向く…。
テオルド卿・リグルド卿…そして…。

「今日は…大変素晴らしい祭典でございました…。出来ましたら…このまま形骸化せずに、
この祭典が引き継がれますことを、願ってやみません」

本当の本音だろうなぁ…。
私は…2人の後ろに控えている、エリザ夫人・ルイーズ・フェイラにちらりと眼をやる。

「家族で…ここに来られるようになったなら…、良かったと思います」

「本当に…何から何まで、ありがとうございます…」

テオルド卿…本当に丁寧に頭を下げている…。
ルイーズ・フェイラは何か…言いたそうにしていたのだが、

「国王陛下のおなりぃ~!!」

その声で…ホールにいた全員がびしっとなる。
静かに入ってくる国王陛下…。その後ろにケイルクス王太子殿下の姿も…。

私は…ギリアムの隣にスッと移る。

「ギリアム公爵よ…式典ご苦労であった…。
王立騎士団・近衛騎士団共々…精進していることが分かり、私も安心したぞ」

「もったいないお言葉でございます…国王陛下…」

国王陛下がこの懇親会までくるのは…珍しい事だ…。

こう言った…親しい人間との懇親会的なものは、基本無礼講が暗黙の了解だから…。
特に私は…この懇親会で、身分の上下関わらず、話したい人たちに話して欲しかったから、
ギリアムの名前で正式にその旨通達してある。
入る順番だって、てんでバラバラ。
身分が低かろうが、高かろうが、自分のタイミングで入って何ら問題ない。
ただ…どうしたってそういう場に国王陛下が来ると…みんな恐縮しちまうからな。

まあ…この会場には、フィリアム商会の総力を結集して、この国にはない物や、優れた技術を
集めたから…。
それを見たいんだと思う。

事実ギリアムに…色々聞き始めた…。
ケイルクス王太子殿下も…商会をやっているからこそ、聞いておきたいんだろうなぁ…。
目つきがかなり…真剣になっている。

ギリアムはその説明を、臣下に任せたりせず、一つ一つ丁寧にやっている。
だからひとまず…私はギリアムに国王陛下のお相手を任せることにした。

懇親会は…夫人が主役だからさ…。
いつまでもギリアムに、引っ付いているわけにはいかない。

私はギリアムから離れる。

とはいえ…。
私は会場中を見回しながら、やっぱり…王立騎士団は王立騎士団で…。
近衛騎士団は近衛騎士団で、まとまっちまってる…。
まあ、普段接する機会が多い人間とつるむのは、当たり前っちゃ当たり前なんだが…。
それじゃあ、懇親会の意味がない。

と、思っていると…。

「オルフィリア公爵夫人…本日はとても楽しめました…ありがとうございます」

ジュリアだった。

「楽しんでいただけたなら良かったです…ジュリア侯爵夫人…。
今後…武のファルメニウスとして、王立騎士団・近衛騎士団の垣根を超えて、修練する場を
作るのが、ギリアムと私の目標ですから…」

「大変素晴らしいですね…。ウチの子たちも、大きくなったら騎士になるでしょうから…
その時に今回のような環境が、整ってくれていれば…と、思います」

……ジュリアは、ローエンじい様がいなくなって、近衛騎士団が酷くなっちまったのを、
目の当たりにしているからなぁ…。

ただ…私とジュリアが楽しげに話しているのを見た、近衛騎士団関係の女性たちが…

「あ、あの…オルフィリア公爵夫人…お話させていただいても?」

「わ、私も…」

「私もいいですか…」

と、結構寄ってきてくれたから、良かったっちゃ良かった。

お話してみると…上位入賞者の関係者だった。
まあ…今まで色々と大変だったんだろうなぁ…。

「それにしても…驚きましたわ…。
この祭典もですが…ケイシロン公爵家の事も…」

ああ、だろうね…。
じい様が再度ケイシロン公爵閣下になって、ローカスは…色々な話し合いの末、やっぱり
もう一度小公爵として、やり直すことになった。
だから…ルリーラが公爵夫人、マギーは小公爵夫人って事になるなぁ…。

ルリーラとマギーは…黒山の人だかりに囲まれている…。
近衛騎士団関係の夫人&令嬢としては…絶対に知っとかなきゃいけないからなぁ。

ま、私は少しフリーを楽しもうかね…。

余談だが…王立騎士団は平民率が高いため、平民をどうするか…は、結構議論したんだよね。
礼儀作法がどうしても…ってことになりかねないから。
ギリアムとしては…分け隔てなく参加してよいとのことだったが…、やっぱり騎士団員は
まだしも、奥方は控えたい…とのことで、なしになった。

やっぱり…この壁ばかりは、いかんともしがたい。

あっちゃこっちゃ行って、会話に加わったり、要望を聞いてみたり…。
いろんな意見を聞くのは、大事だからね…。

そんな私を…影から見ていたのは…。

「知らない人とも…すぐに仲良くなってしまうんですね…、あの方…」

ルイーズだった。

「まあ…間違いなくコミュニケーション能力が高くないと…やれない地位にいますからね」

エリザ伯爵夫人は、やっぱり影で見ながら…言った。

「でも…どうやって、人の心があんなにわかるんですか…?言う事も…正確で…。エリザおば様…」

フェイラも…何だかずっと私を見ているようだった。
だいぶ…しおらしくなっているようだ。

「もともとの性格もあるでしょうけれど…たゆまぬ努力をされたろうし、環境が…人を見抜けないと
やってこれなかったのだと思うわ…」

エリザ伯爵夫人とは…私は一度会っているんだよね。
勿論2人には内緒で。
私がかなり正確に…2人に関して悪意も誇張することもなく、状況を説明したこと…大分褒めて
くれたんだよね…。

「わ…私も…」

「ん?」

「私も…社交界に出るために…色々お母様に習って…努力したんです…。
人との接し方とか…言葉とか…私はそれが苦手だから…お母様が特に…教えてくださって…」

ルイーズは下を向き、唇を噛みしめているようだ。

「でも…全く通用しなかった…。私…私…」

「ルイーズ…」

エリザ伯爵夫人は、ルイーズの肩に手を置き、

「あのね…ルイーズ…。あなたが教えてもらったことは…こちらを傷付けてこない人用の
モノだったの…。
だから…最初から傷つけようと寄ってくる人には…ね」

恐らく…バカ王女が突っかかってきた時の事だろうな…。
バカ王女は、コミュ障な上、傷つきやすい人間に対応できる奴じゃないよ…可哀想だけどね。

「エリザおば様…私も…これから誰かに…攻撃されるんですか?
あの…仮面舞踏会みたいに…」

なるほどね…フェイラにとっちゃ、あれがかなりショックだったわけだ。
まあ…性格の違いはあっても、基本どっちも箱入りだからな。

「あんな状況は、本当に特殊よ…でも…、危険というのは普通の時でもあるものだから…。
対策や…今後の為に、少しずつやっていくしかないわ…。
当面は…お父様やお兄様の出席するパーティーだけに、出ながら…やっていきましょう。
私も…出来るだけ時間を作るから」

「はい…」

3人がそんな話をしているとはつゆ知らず…。
私は場を移りながらのおしゃべりに、勤しんでいた。
もちろん私の身分なら…向こうからくるのを待っていてもいいのだが、興味のある人間には
こっちから特攻かけたいからさ。
それもあって、無礼講にしたのさ。

「オルフィリア公爵夫人…凄いですね…何だか…皆さんと話をして…」

そんな事を言っているのは、レイチェルだった。

「まあ…あの人はどんな人でも、対応してしまえるからね…」

ジュリアは…レイチェルのそばで話している。
私からは少し離れているが、私を目で追っているレイチェルに付き合っているようだ。

私がサクサク動いていると…。

「オルフィリア公爵夫人~!!」

何だか聞きなれた声が…。
振り向けば、ルリーラとマギーの姿が…。

「ふう…ローカスのせいで、大変ですわ…」

ちょっと疲れてるね。

「まあ…かなりの電撃結婚でしたからね…。
せめて内々にでも、お披露目があれば、違ったと思いますが…」

「本当ですわ…だから、私と主人も怒ったんですよ…」

「すみません…」

マギーは…相変わらずすまなそうだなぁ。
家ではそれでいいけど、こういう場ではしゃんとした方がいいよ。

「あら、アナタが謝ることじゃないわ…。殆どローカスの独断でしょ?
それなのにあの子ったら…私たちの面倒も見ないで、自分だけ楽しそうに…」

そうね…。
珍しい酒が沢山ある~って言って、他の団員と…飲み比べしてるよ。
まあ、フィリアム商会で出している物は、かなり好評だからね…。

その時だった…。

「久しぶりねぇ…オルフィリア公爵夫人…。
狩猟大会後の舞踏会が無くなってしまったから…アナタと会うのは3度目かしら…。
寂しかったわぁ」

……来たか。
私の頭は…氷が張った池のように…ほの暗く寒く…冷たくなった。
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